吉柳咲良「私は『ロミジュリ』を“ハッピーエンド”だと思っています」ミュージカル「ロミオ&ジュリエット」【インタビュー】2024/03/19
5月から上演がスタートするミュージカル「ロミオ&ジュリエット」でジュリエット役に大抜てきされた吉柳咲良。連続テレビ小説「ブギウギ」(NHK総合ほか)では、ヒロイン・福来スズ子(趣里)に影響を与える最終盤のキーパーソン役で出演するなど、この春、舞台に映像にと多彩なフィールドで大活躍中だ。そんな吉柳に、「ロミジュリ」オーディション秘話、趣里からもらった言葉など、それぞれの現場での貴重なエピソードを聞いた。
── このミュージカル「ロミオ&ジュリエット」にはどういうイメージがありましたか?
「以前拝見したことがあるんですけど、その楽曲の素晴らしさにひかれてジュリエット役を演じたいと思いました。悲劇と言われる作品ではあるし、最後のシーンには“これでよかったのかな”“いい方法じゃなかったんじゃないか”といろいろな意見があるだろうけど、私は『ロミジュリ』をハッピーエンドだと思っていて。もちろん、起こらなければよかったことではあるけど、この2人が結果としては“結ばれた”ということでいいんじゃないかと思うんです。若さに突っ走った数日間の盛り上がり方は、あの最後があるからこそ、切なくてはかないものになっているんだろうなと感じます」
── おっしゃる通り、名曲ぞろいの舞台ですが、特に好きなナンバーはありますか?
「本当にどの曲も好きなんですけど、『ジュリエットを演じてこの曲を歌いたい!』と思ったのは名曲中の名曲である『エメ』です。初めて聴いた時、心がものすごく揺さぶられました。しかも『エメ』で一幕が閉じるのがいいんですよね。後奏で泣けるんです。前奏で気持ちが高ぶって、歌っているのを見て、どんどん入り込んで、後奏で涙ドバーッみたいな(笑)。あと、好きなのは『ひばりの歌声』。一通りの愛を育んできた彼らのお別れの時間の歌で。若い2人が、そうするしかない現実と戦っているさまが切なくて、大好きなんです」
── いざご自身で歌われるとなると喜びもひとしおでは?
「そう、感動するんです。歌いながら、毎回、“あー、私『エメ』を歌ってるー!”と1人で盛り上がっています(笑)。まだロミオ(小関裕太、岡宮来夢のダブルキャスト)とは合わせて歌っていなくて(※取材時)、もうすぐ一緒の稽古が始まるんです。ずっと1人で歌っていたから、ロミオと歌えるんだと思うとワクワクします。私、大丈夫かなという不安もありつつ、どういうハーモニーになるのか、すごく楽しみですね」
── そもそもジュリエット役に決まった時の気持ちはいかがでしたか?
「自分とジュリエットは似ても似つかない存在です。ジュリエットの持つ、ピュアで乙女で可憐(かれん)な感じは、私には全くないもので。ただ、とにかく私は『エメ』が歌いたくて(笑)、その1点でオーディションを受けました。そうしたら、オーディションの時、演出の小池(修一郎)先生から『吉柳さんはペットボトルの水をみんなで飲みましょうとなった時に、自主的にみんなに配るタイプですよね。でもジュリエットは配られるのを待つタイプなんですよ』と言われて(笑)」
── とても分かりやすい例えですね(笑)。
「でも、本当にその通りなんです (笑)。確かに私は配っちゃう。だからもう駄目だな、絶対落ちたなと思って帰ったので、マネジャーさんから合格の連絡があった時には、思わず『えっ、何でですか?』と聞きました(笑)。私が選ばれた理由は分からないんですけど、稽古が進むうちに、小池先生から、何が足りないのか、どこを補っていかなければならないのかというご指示が、事細かに出てくると思うので、全部受け止めて、ビシバシ鍛えていただこうという気持ちでいっぱいです」
── ジュリエットは、今回、奥田いろはさんとのダブルキャストです。
「いろはを初めて見た時に、可憐(かれん)さの中に秘める強さみたいなものを感じて、ジュリエットに選ばれた理由がすごく分かりました。いろはとも話したんですけど、性格もタイプも違うから、お互いにない部分を補っていけそうだよねって。互いのお芝居を客観的に見ることができ、自分にはない部分を吸収する時間があって、同じ苦しみを分かち合える。ダブルキャストにはいいところがたくさんあると思うので、一緒にやっていくのが楽しみです」
── そして、連続テレビ小説「ブキウギ」に、水城アユミ役で出演。趣里さんが演じる主人公のスター歌手・スズ子にある影響を与える若手人気歌手という役どころです。まず、“朝ドラ”出演ということに対しての心境をお聞かせください。
「やっぱり女優という職業をやっていると、誰もが一度は夢見る場所ですよね。その、朝ドラというものに、20歳になる直前に出演できたことは、タイミング的にも意味を感じています。気合を入れ直すというか、ギアが一つ入った感じがしました」
── アユミを演じるにあたって、事前に準備したことなどはありますか?
「作り過ぎない方が面白いかもと思って、あまり考えずに臨みました。監督からは『爆発力のある人間であってほしい』と言われたんです。もちろん悪目立ちは駄目ですけど、スズ子を脅かす存在、若さ故のエネルギーが画面越しに伝わるような存在であってほしい、と。だから、強さというものだけは意識していました。例えば、目線の使い方。人って、恐縮している時は体がよく動くんですよ。(ペコペコしながら)『あ、すみません』って。でも、アユミはそうならない。彼女はある意味、スズ子を対等に見ているからこそ、しっかり見据えるっていうことをするんです。そういった、ちょっとした所作や目線に強さが出るよう気を付けていました」
── 歌にもそういう力強さみたいなものを出そうと?
「そうですね。一番は爆発力、エネルギーを大事にしていました。体力は使いましたけど、途中からアドレナリンが出て、ただただ楽しくやっていました(笑)」
── 趣里さんとの共演はいかがでしたか?
「アユミは、スズ子に対する尊敬や憧れを持っているけど、それをそこで終わらせず、憧れの人がきっかけで始まった物語を自分の夢につなげていくという思いがすごく強くて。大先輩だけどちゃんとライバル心も抱けるんです。私たちはやっぱり先輩というだけで恐縮してしまうけど、そうではなく、ちょっとヒヤッとするぐらいの真っすぐさを持っている── 。そんな心(しん)の強い役を遠慮することなく演じることができたのは、やっぱり趣里さんのおかげだったなと思います」
── 趣里さんと接する中で、印象に残っていることがあればお聞かせください。
「趣里さんがいる現場ってすごく温かったし、明るくて。合間に世間話もさせていただいたんですけど、趣里さんは私の話をしっかり聞いてくれました。私が『女優さんというだけである種の枠にハマるような感じがする。でも私はその枠からはみ出たい、イメージを壊していきたい』みたいなことを言ったら、趣里さんは『絶対その方がいい。咲良は咲良であるほど面白いから、絶対にイメージを壊したいなら壊していいと思う』って言ってくださって。本来あるべき姿というものを認めてくれて、いいと言ってくれる人がこんなにも近くにいたんだなと。芸能界の先輩である趣里さんにそんなふうに言っていただけたことがすごく自信につながったし、だからこそ変に遠慮することなく、水城アユミっていう人物を演じることができました」
【プロフィール】
吉柳咲良(きりゅうさくら)
2004年4月22日生まれ。栃木県出身。第41回ホリプロタレントスカウトキャラバン「PURE GIRL 2016」グランプリを受賞。主な出演作は、ミュージカル 「ピーター・パン」(主演・ピーター・パン役)、ミュージカル「デスノート THE MUSICAL」(弥海砂役)など。吉柳咲良1st写真集「Only」が3月22日に発売。
■出演情報
ミュージカル「ロミオ&ジュリエット」
5月16日~6月10日:東京・新国立劇場 中劇場
6月22・23日:愛知・刈谷市総合文化センター
7月3~15日:大阪・梅田芸術劇場メインホール
文/高瀬純 ヘアメーク/市岡愛 スタイリング/能城匠
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