池上彰&ビートたけしが「テレビがつまらなくなった」と言われる現代に物申す! たけしは「人々が、本物とインスタントの違いがつかなくなっていることが恐ろしい」と危惧!?2018/03/19
3月18日から5夜連続でBS 民放5局で特別放送している「BS民放5局特別企画 池上彰の5夜連続 BIG対談」。共通プレゼンターの池上彰さんが、各界で活躍する「知の巨人」5人と日本の過去や未来について語る番組です。
その中で、BSジャパンでは3月21日に池上さんと笑いのスペシャリストであるビートたけしさんの対談を放送。2人が語るのは「テレビは死んだのか?」や「政治家の品格」「あの事件の裏側」まで!? 過激なテーマにドキドキしてしまいますよね。果たして、どんな対談になったのでしょうか? ということで、池上さんとたけしさんを直撃! 番組収録の感想や、テレビやインターネットに対する印象、BSならではの魅力についてお伺いしました。
── 収録を終えて、いかがでしたか?
池上 「共演は4回目ですけど、2人だけでじっくり話したのは初めてでしたね」
たけし 「そうですね」
池上 「今日は、『テレビは死んだのではないか?』というたけしさんが、今のテレビ界に対してどう思っているのか聞き出したかったんです。BSジャパンとしても、『たけしさんがどんなことを言ってもカットしないで放送したいです。責任は取りますから!』ということだったので、何が出てくるかなと思っていたんですけど…。収録中のたけしさんは、いろんな部分に配慮して、ギリギリのところで何を言えばいいのかということをわきまえていらっしゃったので、面白くなかったなというのが若干ありました(笑)。たけしさんは、いかがでしたか?」
たけし 「最近は、『ヤバい話だ』と感じると条件反射みたいに避けてしまいますね。昔は何も分からない状態でつかんじゃっていたのに、今はつかむ前にそれがどういうことか分かっているから、手を出さないという。それだけの知識がインプットされてしまって。条件反射的に『これ以上立ち入っちゃいけない話はしない』という感じになってますね(笑)」
池上 「もうちょっと冒険してもいいような…」
たけし 「生放送では冒険していますよ(笑)」
池上 「そっか! 限られたところでね(笑)。『テレビでは言えない』と言われますけど、『テレビでは“言わない”』んでしょ?(笑)」
たけし 「そうですね! 今日は池上さんだから言わなかったけど、たまに言っている時もあるんですよ。でも、『どうせ放送しないだろう』という諦めが先に立っているので。収録現場ではみんな笑っていて『いい出来だな、俺』と思って実際の放送見たら、やけに俺無口になっていたり(笑)。そういうのがすごく多いんですよ」
池上 「今、『池上さんだから』と言われましたけど、私がいると何か問題がありますか?」
たけし 「やっぱりある程度アカデミックな話をしないといけないでしょ?(笑)。そこにお笑いも付け加えたいと思うんだけど」
池上 「だから今日も“アキレスと亀”の話とか、いよいよ視聴者は分からないんじゃないかと思って、つい解説しちゃったりして(笑)」
── 池上さん×たけしさんという珍しい組み合わせの対談でしたが。
たけし 「基本的に話をするのが好きですからね。芸人とはよく話をするから、お笑い以外のジャンルの人と話をするのが好きなんです。ただそういうジャンルでも、話が下手な人と話すのは最悪なんですけど(笑)。知識が得られて、自分に対して疑問を返せるような人との会話が一番楽しいですね」
池上 「全く違うジャンルの人が一緒に話をして、異種格闘技みたいですよね。格闘技になったかどうか分からないですけど(笑)」
── 今回の対談のテーマとして「テレビは死んだのか?」や「ネット時代の生き方」なども盛り込まれていますが、お二人は、テレビとインターネットに対してどのようなイメージをお持ちですか?
たけし 「テレビは、まず経済効果がありますよね。あと、評価の仕方が視聴率じゃないですか? だけど、自分が出演していて視聴率が悪い番組も、街を歩いていると褒められることもあるんですよね。テレビ東京で制作したSPドラマ『破獄』は、視聴率はあまり良くなさそうだったけど、『MIPCOM2017』や『東京ドラマアウォード2017』『ギャラクシー賞』などいろんな賞をもらっていますからね。結局視聴率って何なんだ?って。インターネットも、便利だけどその便利さが邪魔するというか。例えば、スポーツジムで走っている人がいるじゃないですか? 自分で走っているのか走らされているのか分からない状態で、あれを果たして運動と言えるのか?くらいの感じはインターネットにはあると思いますね」
池上 「私がたけしさんとの対談の中で印象的だったのは、『テレビは、みんなで集まって見る時代だったのが、今はそれぞれスマホで見られる。見られ方が違ってきたことによって、今後テレビが変わってくるだろう』とお話しされていたことでした。他にも『アナログからデジタルになったけど、デジタルは本当に全て表現しているんだろうか? ドットが集まったフィルムの良さのようなアナログこそが、いろんなものが描けるという時代が来るかもしれない』と言われていたお話も印象に残っています。そういう意識を持っていることが大事なのかなと思いましたね」
たけし 「インターネットについて例えると、インスタントのみそ汁と、出汁(だし)をとってワカメや豆腐を入れて時間をかけて作ったみそ汁を比べた時に、違う味になることは分かっている。でも、便利なのは明らかにお湯をかけて済む方なんですよね。そして、一番怖いのは、その味が良くなっているということ」
池上 「どんどん良くなっていますね」
たけし 「そして、人間が、インスタントと本物との区別がつかなくなっている。『手間をかけた味の方が良いのにな』と言えなくなって、その間にいることが恐ろしいかな」
池上 「でも、そう言うってことは『本物は違うんだぞ』って言いたいんでしょ?」
たけし 「そうですね」
池上 「ということは、インターネットやデジタルにちょっと懐疑的?」
たけし 「ネットでお笑いを、1時間ずっと見ている人はいないだろうからね。動画サイトでお笑いのネタを見るとしても15秒で終わるから、前後の脈絡なしに、ただおかしいっていうだけじゃないですか? 古典落語みたいに筋を振って、最後にその筋振りがお笑いとして生きてくるというような手法はネットではありえなくなってきているだろうとは思いますね」
── 地上波と比べて、BSならではの魅力を教えてください!
たけし 「BSは、規制がゆるい印象があります。スポンサーがあまりいない証拠かな(笑)。結構勝手なことをしても許してもらえるから、こっちの方がやりやすいなという感じはしますね」
池上 「大人の番組が多いという気がします。今日もたけしさんがいろんな毒を吐いたんですけど、BSだと視聴者が笑って受け止めてくれるのかなと。すぐクレームが来ることはないと思います(笑)。あと、たけしさんの話をじっくり聞くと、随分悪口を言っているんだけど、実は、本当にテレビとお笑いを愛していることが伝わってくるんですよね。そういうニュアンスをくみ取ることができるのは、2時間流すことができるBSの番組だからこそだなと思いました」
たけし 「ありがとうございます!」
池上 「BSのことヨイショしときました(笑)」
【プロフィール】
池上彰(いけがみ あきら)
1950年8月9日生まれ。長野県出身。ジャーナリスト。現在、東京工業大学特命教授、信州大学・愛知学院大学特任教授、京都造形芸術大学客員教授、名城大学教授に就任。「メディアのめ」(NHK Eテレ)、「池上彰のニュースそうだったのか!!」(テレビ朝日系)、「グッド!モーニング」(テレビ朝日系)などに出演。「日曜ゴールデンの池上ワールド 池上彰の現代史を歩く~Walking through Modern History~」(テレビ東京系)が4月8日からスタート。
ビートたけし(びーとたけし)
1947年1月18日生まれ。東京都出身。「世界まる見え! テレビ特捜部」(日本テレビ系)、「新・情報7DAYS ニュースキャスター」(TBS系)、「ビートたけしPresents 奇跡体験!アンビリバボー」(フジテレビ系)、「ビートたけしのTVタックル」(テレビ朝日系)、「名医とつながる!たけしの家庭の医学」(テレビ朝日系)、「たけしのニッポンのミカタ!」(テレビ東京系)のほか、ドラマ「破獄」(テレビ東京系)や映画「アウトレイジ 最終章」などの話題作に出演し、多方面で活躍。2019年NHK大河ドラマ「いだてん~東京オリムピック噺~」にも出演。
【番組情報】
BS民放5局特別企画
池上彰の5夜連続BIG対談「池上彰×ビートたけし テレビは死んだのか!?」
BSジャパン
3月21日 午後8:00~9:55
取材・文/鬼木優華(テレビ東京担当)
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