【独占インタビュー】監督・横山彰利が長年温めた作品がついに始動! 制作秘話からまさかの出来事までを語る――新番組「サイエンスSARU×MBSオリジナルショートアニメ大作戦!」2024/03/01
3月1日よりMBS/TBS系にて「サイエンスSARU×MBSオリジナルショートアニメ大作戦!」(金曜深夜1:50ごろ)がスタートします。アニメ「DEVILMAN crybaby」(Netflix)、「平家物語」(フジテレビほか)、2024年10月に放送が決定したアニメ「ダンダダン」(MBSほか)を制作するアニメーション制作会社「サイエンスSARU」イチ押しのクリエーターたちが手掛けた、珠玉の90秒アニメーションを全4回にわたってお届けします。
第1回は、日本最古の書物である「古事記」や「播磨国風土記」をベースにした「オオクニヌシとスクナビコナ」で、横山彰利さんが監督を務めています。オオクニヌシを演じるのは「マッシュル-MASHLE-」(TOKYO MXほか)のマッシュ・バーンデッド役など話題作への出演が絶えない小林千晃さん、スクナビコナを演じるのは「チェンソーマン」(テレビ東京系)のポチタ役などで人気急上昇の井澤詩織さん、ナレーションは「とある科学の超電磁砲」(TOKYO MXほか)の御坂美琴役などで高い演技力に定評のある佐藤利奈さんが担当しています。
TVガイドWebでは、数々の名作アニメーションを手掛けてきた監督・横山彰利さんに、ショートアニメの魅力や第1回の見どころについてお伺いしました。
――MBSとのコラボ企画ということですが、企画が生まれた経緯を教えてください。
「以前よりアニメーターの森久司さんと『古事記』の企画を考えていました。サイエンスSARUさんにこの企画を出させていただいたところ、短編アニメーションなら企画がかなうかもしれないということで、どれを作ろうか相談し、今回の『オオクニヌシとスクナビコナ』になりました」
――本作の大まかなプランというのは、年月を温められていたのでしょうか。
「10年前から考えていました。いろいろな会社にも企画を出してはいたのですが、やっと今回のサイエンスSARUさんで始動がかなったのでうれしかったです」
――これまで数々の名作を手掛けられてきましたが、ショートアニメの魅力をお聞かせいただけますでしょうか。
「移動中ですと、尺が長い作品は集中して見ることができないケースが多いですよね。実は私もそうなんです(笑)。電車移動の際にはついついショート動画作品を見てしまいます。このように短い尺だったらもっと気軽に何度も見ていただけるのではと感じました」
――特にどういった層の方々に見ていただきたいですか。
「現代では『古事記』をじっくり学ぶ機会があまりないと思うので、どの世代に向けても本作が新鮮に感じてもらえるのではと思っています。ぜひ全世代に見ていただきたいです」
――ショートアニメ企画の第1回「オオクニヌシとスクナビコナ」では監督を務めているということで、見どころなどを教えてください。
「『古事記』というと少し古めかしい感じに捉えがちなのですけれども、ぶっ飛んだ内容がとても多いのです。今回は『播磨国風土記』から引き出してみました。最もとんでもない話なのに、固く考えずに短編で見られるというところが見どころになっています」
――「古事記」のどのあたりにひかれたのでしょうか。
「私も昔はイザナギやイザナミ、アマテラスなどの神様の名前や内容をなんとなく知っている程度でした。この企画について考えるようになってからは、冒頭のイザナギ&イザナミから、神話でありながら……かつ神話だからこそ、一般的にタブー視しそうな特殊なテーマが面白く魅力に感じました」
――タブー視された特殊なテーマとは?
「魅かれるドラマに手塚治虫先生の『奇子』があるのですが、倫理と本能が交錯したり、せめぎ合いをしたりする展開がものすごく好きなのです。『古事記』も人間が古墳時代から本能中心で平和に生きてきたところに上書きされる倫理が混ざってくるという、右脳と左脳のせめぎあいみたいなところが、エロスな部分も含めて書かれています。その昔、稗田阿礼(ひえだのあれ)の言葉を、太安万侶(おおのやすまろ)がまとめたものが今の『古事記』です。当然、都合の悪い話は残らないと思うのですが、それでも今の『古事記』がとんでもない内容で残っているというのは大変興味深いことですよね」
――いろいろなタブーが凝縮された「古事記」をテーマに作り上げた「オオクニヌシとスクナビコナ」ですが、こだわった点はございますか。
「なるべくダイジェストにならない工夫をしました。『古事記』というと古めかしく感じますが、少しロールプレーイングっぽさを出しつつキャッチーに、そして短い尺でさまざまな最新アクションを入れています。“古いけれど新しい!”という感じが見どころになっています」
――キャストに小林千晃さん、井澤詩織さん、佐藤利奈さんを起用されていますが、一緒に制作してみていかがでしたか。
「短いセリフひと言で表現するのは難しいと思うのですが、基本的にオオクニヌシは超イケメン、常にモテる男性で、女性にずっと助けてもらっているキャラクターです。小林さんはその感じを思い切り出してくださっていたり、井澤さんのスクナビコナもいたずらっぽい感じをうまく出してもらえたりで良かったです。佐藤さんのナレーションも、子どもたちに語りかけるような優しい感じに仕上げてくださったので、全部狙い通りになりました」
――制作中にちょっとした奇跡が起きたエピソードがあると伺いましたが……?
「アニメーションの制作期間に東京・神田明神へ3回ほどお参りに行ったのですが、訪れるたびにおみくじを引いたら3回とも大吉だったのでテンションが上がりました(笑)。なぜかというと、神田明神は大国主命(おおくにぬしのみこと)と少彦名命(すくなひこなのみこと)が御祭神なのです。なんだかうれしいですよね!」
――これまでさまざまな名作を生み出されてきた中で、作品づくりにあたって大切にしていることがあればお聞かせください。
「視聴者に喜んでいただくのを想像しながら全力を注いでいます。最近は周りのスタッフへの感謝の気持ちが若干おざなりになっている傾向にあることに気づいたので、常に感謝の気持ちを忘れないように心掛けています」
――今後、サイエンスSARUが「こんなクリエーター集団になったらいいな」など思いをお聞かせください。
「オリジナルアニメが作れる、作りたいものを思い切り創作できるようにやってこられたスタジオなので、自分が知る限りでもたくさんの有望な若手が育っていると感じますし、今後もそのような存在であってほしいなと思っています」
――サイエンスSARUのロゴキャラとはまた別に、サイエンスSARUという名の主人公のキャラクターを作るとしたら、どんなキャラクターを作ってみたいですか。
「作ってもいいよと言われるのであれば、イナバノシロウサギがいいですね。かわいらしい感じのキャラでいろいろと作ってみたいです」
――ちなみに、そのキャラクターはどんな声を想像されていますか。
「声はEunyoungさん(サイエンスSARU・代表)がいいですね」
――最後に視聴者の皆さまへメッセージをお願いいたします。
「自分たちの祖先が今のアニメにも通じるようなぶっ飛んだ話を『古事記』で作っていたとなると、地続きで昨日、一昨日、1年前、数年前と延長線上に捉えられれば、もっと身近に感じられるのかなと思います。『古事記』を元にしたショートアニメ『オオクニヌシとスクナビコナ』を見て、その世界観に興味を持っていただけたらうれしいです。ぜひご覧ください」
――貴重なお話、ありがとうございました。横山監督が長年温めてきた作品、とても楽しみにしています!
【プロフィール】
横山彰利(よこやま あきとし)
11月9日生まれ。兵庫県出身。AB型。スタジオぎゃろっぷでアニメーターのキャリアをスタートさせ、その後フリーランスとして活動を開始。富野由悠季、今川泰宏、渡辺信一郎、湯浅政明、礒光雄など、日本を代表するアニメーション監督の作品にも参加し、「∀ガンダム」(フジテレビ)、「サムライチャンプルー」(フジテレビ)、「電脳コイル」(NHK教育)、「カイバ」(WOWOW)、映画「四畳半タイムマシンブルース」(2022年)などの絵コンテや演出を務める。「フォトカノ」(TBS系)で初監督を務め、その後も「Cutie Honey Universe」(AT-Xほか)、「日本アニメ(―ター)見本市『ザ・ウルトラマン』」(15年)、「月とライカと吸血姫」(テレビ東京ほか)にて続々と監督としての手腕を発揮する。
◆最初に夢中になったキャラクター:「なかなか思い出せないのですが、麻上洋子さん演じる『宇宙戦艦ヤマト』の森雪が好きでした」
【番組情報】
「サイエンス SARU×MBS オリジナルショートアニメ大作戦!」
3月1日スタート
MBS/TBS系全国28局ネット スーパーアニメイズムおしり枠
金曜 深夜1:50ごろ〜全4回(3作品)
AT-X
「オオクニヌシとスクナビコナ」
3月30日(土)午後9:00~9:05
4月1日(月)深夜4:30~4:35
4月6日(土)午前7:00~7:05
※TVer、MBS動画イズムほかにて配信あり
取材・文/山本恵代(TBS・MBS担当) 撮影/蓮尾美智子
キーワード
関連リンク
この記事をシェアする