「ハコビヤ」主演の田辺誠一が明かした価値観の変化――「自由でいることを大切にしています」2024/02/16
田辺誠一さん演じる洋食屋と運び屋の二つの顔を持つ男・白鳥剣が、通常の宅配便では不可能なものを運ぶさまを描くドラマ「ハコビヤ」(テレ東系)。剣がこなすのは、分単位の正確性が要求されるものや届け先が分からないモノなど、依頼人がどうしても自分では届けられないものばかり。ですが、そういった特殊な運びの依頼を成し遂げることで、彼らが抱えるさまざまな思いも一緒に届けていくヒューマンドラマです。
今回は、主演の田辺誠一さんを直撃取材。いつもとは違った役作りや撮影の裏話、大事にしている考え方などを明かしてくれました!
――今回演じられる白鳥剣という役柄について、どのように役作りをされていますか?
「通常演じる時はどんな役に対しても、もっと面白くしたいと思っていろんなことがやりたくなって、やりすぎちゃうんですよね(笑)。でも、剣という役はちょっと寡黙な謎めいたキャラクターだったので、そういう欲を捨てて引き算をしていきました。自分がどう映っているのか分からないので、味付けが薄過ぎないか、怖さもあります。他の作品で脇役で演じさせていただく時は、自分でどれだけ埋められるか、どうやったらインパクトがあるかを考えながらやりますから。でも今回は主役をやらせていただいているので、自分からはなるべく仕掛けずに、共演者の皆さんの演技を受ける形で演じさせていただいています。僕自身もいろいろやってしまうと、ごちゃごちゃして落ち着かなくなってしまうので。だから、やりたいことを思いついても我慢しました(笑)」
――本作で演じられる剣は、ここでしか見られないレアな田辺さんなんですね。
「そうですね。引き算をしながら演じる役はなかなかないので。そこに何が残るのか、何が映るのか、怖いですけどその挑戦は楽しいです」
――そんな剣にあらためて注目したいです。主演ということでセリフ量も多いと思うのですが、どのように覚えていらっしゃるのでしょうか?
「家で延々と口に出して読みながら覚えています。とにかく体になじませられるよう、ひたすら繰り返して音読しています。今回は特に全シーン出させていただいているので、分量が多かったんですけど…大変な方がやりがいがあるので(笑)」
――田辺さんの仕事への思いが伝わってきます。今回テレ東の連続ドラマ初主演ということで、テレ東という局に対してどんな印象をお持ちですか?
「とにかく全力で攻めていると思います。まず、ジャンル。サウナやお酒など一見テーマにならなさそうなものを掘り下げて、それを魅力的な物語にできるところがすごいですよね。さらに、深夜ドラマだと予算もそこまでなかったり、撮影時間も限られている中で、ストーリー的にも妥協せず、丁寧な撮り方をされているんです。本作も時間をかけてかなり丁寧に撮っています。だから、大変な部分もあると思うんですけど、プロデューサーや監督がこだわって作品を生み出している印象がありますね。そういった点も含めて、攻めているなと感じます」
――「丁寧に撮られている」というのは、シーンのカット数が多いということでしょうか?
「カット数も多いですし、それを全部順取りするんですよ。だから、時間もかかるし労力も使うため、皆大変です(笑)。さらに、ベテランのスタッフの方々ばかりなので、もっと効率がいいやり方も熟知されていらっしゃると思うんですけど、本作ではそれよりも丁寧さを大切にしたいという皆さんの心意気が伝わってきたので。そういった作品に対する愛情を大切にしたいと思いました」
――貴重な裏話をありがとうございます! ドラマのタイトル「ハコビヤ」にちなみ、今まで受け取ったものの中で印象に残っている宅配便はありますか?
「最近はいろいろ欲しいものがあっても自分で買ってしまいますけど、昔は宅配便で何か届くとか、手紙が来るということ自体がそんなになかったので、そういう時はやっぱりうれしかったですね。実家から送られてくるミカンとか、カニとか…!?(笑)」
――それはうれしいですね!(笑)。それでは最後に、田辺さんが日々過ごされる上で大事にされている考え方がございましたら、教えてください。
「若い時はいっぱいあった気がするのですが…だんだんそぎ落とされてきたというか、肩の力が適度に抜けたといいますか。昔はいろんなことにがんじがらめになって『これは格好悪い』とか自分で決めつけていたりしたんですけど、逆に今は自由でいることを大切にしています。何か想像する時や思いつきなど、自分で制限をつけないようにしているかな。あとは、すごく物理的なことを言うと、台本の上に物を置かないとか(笑)。以前、先輩に『台本というのは、これから私たちが命を吹き込んでいろんなことが生まれてくるものだから、丁寧に扱いなさい。お墓の上に鞄を置いているようなものだ』と言っていただいたことがあって、それからは大切なものとして扱っています」
【プロフィール】
田辺誠一(たなべ せいいち)
1969年4月3日生まれ。東京都出身。NHK大河ドラマ「どうする家康」、「刑事7人」シリーズ(テレビ朝日系)、NHK連続テレビ小説「らんまん」、映画「雪の華」「BLEACH 死神代行篇」「斉木楠雄のΨ難」などの話題作に出演し、多方面で活躍。
【番組情報】
ドラマ25「ハコビヤ」
テレ東系
金曜 深夜0:52~1:23
取材・文/鬼木優華(テレビ東京担当) 撮影/尾崎篤志 ヘアメーク/杉山裕則(pink) スタイリスト/中川原寛(CaNN)
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