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比嘉愛未「静かだけど強さがある、真っすぐでピュアな愛情を大切に演じています」――「作りたい女と食べたい女 シーズン2」インタビュー2024/01/29

比嘉愛未「静かだけど強さがある、真っすぐでピュアな愛情を大切に演じています」――「作りたい女と食べたい女 シーズン2」インタビュー

 2022年末にNHK総合で放送され話題を呼んだ夜ドラ「作りたい女と食べたい女」のシーズン2が1月29日から放送されます! 自らの恋心に向き合う“作りたい女”野本さんこと野本ユキ(比嘉愛未)と、その恋の相手である“食べたい女”春日さんこと春日十々子(西野恵未)。前作では、春日さんへの恋心に気付いた野本さんの姿が描かれましたが、2人の恋の行方は…?

 また、シーズン2からは新たなメンバーが加わります! 小食で「会食恐怖症」の“食べたくない女”南雲さんこと南雲世奈(櫻坂46・藤吉夏鈴)。そして、野本さんがSNSで知り合うレズビアンの女性・矢子さんこと矢子可菜芽(ともさかりえ)は、食べることは好きだけれど料理はしたくない“作りたくない女”です。

 女性たちが心を通わせ、時に支え合い、時に料理を囲んで楽しい時間を過ごしながら、それぞれが抱える悩みや生きづらさと向き合っていく温かな物語が再スタートします。今回は、作りたい女・野本さんを演じた比嘉さんにインタビュー! 共演者の皆さんとのエピソードや、ドラマの中での恋愛観などをお伺いしました。

――まずは、シーズン1を振り返って思い出に残っているシーンを教えてください!

「野本さんが体調不良の時に春日さんが家に来てくれて、最後にパッと自分が着ていたものをかけてくれたところです。体調を崩した時に優しく看病してくれて、さらにふわっと優しさで包んでくれて。このシーンが好きですね」

比嘉愛未「静かだけど強さがある、真っすぐでピュアな愛情を大切に演じています」――「作りたい女と食べたい女 シーズン2」インタビュー

――西野さんと久しぶりの再会だと思うのですが、いかがでしたか?

「実は久しぶりでもないんです。シーズン1の撮影をきっかけにプライベートでも仲良くなって、2人で大好きなおすし屋さんに行く会を2、3カ月に1回開いています」

――すてきですね! プライベートではどんなお話をされているんですか。

「私たちは同い年なのですが、恵未ちゃんはアーティストとして、私は役者として全然違う道を生きてきたんです。それぞれの価値観は近いんですけど、たどってきた経験や見方が違うので、お互いが抱えている問題や悩みがあったら素直に相談しています。アドバイスし合うこともあるし、単に聞いてもらうだけで救われることもあります。悩み相談だけではなく、普通の友達のように、たわいもないことや楽しかったことなど、良いことも悪いこともシェアできるぐらい仲良くなれたんです。あらためて思いますが、大人になって心から信頼できる友達ができるってまれなことなので、出会わせてくれたこの作品にも感謝ですし、恵未ちゃんとは必然的な出会いな気がしています」

――ちなみに、好きなおすしのネタはなんですか?

「私は中トロですね! 幸せな気持ちになります。赤身だと物足りないので中トロと、希少部位の脳天もすごくおいしいです!」

――では、西野さんが好きなおすしのネタはご存じですか。

「忘れてしまったので、今度聞いておきます(笑)。でも、お互い好き嫌いがあまりないので、撮影の合間でも止められるぐらい食べちゃいます。『食べないでください』と叱られて『すみません』って言いながら楽しんで撮影しています」

――仲が深まった上でのシーズン2の撮影はより楽しそうですね!

「初めて会った時から、恵未ちゃんは本当にピュアで穏やかなので、一緒にいて心地がいい人だったんです。前回は彼女が初めてのお芝居だったので、『私にできることがあれば支えてあげたい』という気持ちだったのですが、今は完全に信頼関係もあって、一緒にいいものを作ろうという絆が強まりました」

比嘉愛未「静かだけど強さがある、真っすぐでピュアな愛情を大切に演じています」――「作りたい女と食べたい女 シーズン2」インタビュー

――ここからは作品についてお伺いさせていただきます。女性同士の場合は特に、他人から見て友情と恋愛の違いが分かりにくいと思うのですが、どのように演じ分けていたのでしょうか。

「今回、演じ分けていたつもりもないんです。そもそものテーマとして『レズビアンやLGBTQ+の人たちを特別な存在として描かない』というのがあって。まだ浸透していないことや差別、同性婚の問題など課題はありますが。なので、ドラマの中では友情のように仲良く見えていても、私の中ではしっかり恋愛の気持ちでいて、『この人が好き』という感情をとにかく大事にしています。真っすぐでピュアな愛情は究極のピュアな感情というか、静かだけどちゃんと強さがあって、最強だと思っています」

――恋愛って何なんだろうと考えさせられますね…。

「野本さんを演じながら、自分も学ぶことが多くて。どうしても大人になっていくと、ピュアな恋じゃなくて、どこか打算的だったり、駆け引きなどをしてしまう人がたくさんいると思うんです。でも、この世界観の中にはそれがなくて、原作もすてきですし、その原作を壊さないように脚本家の山田(由梨)さんもすごく丁寧に作ってくださっていて、監督やみんなの思いが詰まった台本があるので、私は自分の雑念をそぎ落として、ナチュラルに思いを伝えようという感覚で演じています。この作品は、そぎ落とす作業です」

――小さい頃や学生の頃の恋愛を思い出しますね。

「そうです。それが一番プラトニックでピュアですよね。ずっと残っている感じ、ありませんか? 今、それを『出して』と言われても難しいですけど、でもちゃんと確かにありましたよね。ただ一緒にいたい、一緒においしいご飯を食べて、ただ過ごすという…究極ですけどね」

比嘉愛未「静かだけど強さがある、真っすぐでピュアな愛情を大切に演じています」――「作りたい女と食べたい女 シーズン2」インタビュー

――作中で、野本さんが春日さんとのデートの洋服を調べている時に「彼ウケ抜群」「彼のためにおめかし」という見出しを見て違和感を覚えるシーンなど、すごく考えさせられたんですが、シーズン1を経て、日常生活などでジェンダーについて考えるようになったことなどはありますか。

「たくさんあります。人生観というか、あらためて自分の言葉遣いを気を付けようと思うきっかけにはなりました。例えば、女性に『彼氏いるの?』と聞いてしまう。この一言はすごく無意識ですけど、もしレズビアンの方だったら答えづらくなってしまいますよね。悪気はないんですけど、言葉一つがナイフにもなるし、癒やしにもなるということをとても感じました。『パートナーいないの?』と言い方を変えてみるとか、ちょっとの心掛けが思いやりになりますよね。絶対にしなきゃいけないとまでは言わないですけど、ちょっとした心配りをすることで、傷つけずに、自分も平和でいられるのかなと思います。一人一人、みんなが気を付けていけば、性的マイノリティーだけではなく、さまざまな人たちが過ごしやすく、生きやすくなる世の中になると考えています。だから、バリアフリーにすればいいんだって思っているんですけどね。なるべくフラットにすることが一番平和だと思います」

――難しいですね…。

「難しいけれど、みんなが一歩ずつ歩めば大きな力になると思うんです。だから、NHKさんが夜ドラでこの題材を扱うことも、大きな一歩なんですね。私もそこに携わらせていただいて、微力ながらも一緒に歩んで、ドラマを見てくれた人たちが踏み出すきっかけになったり、気を付けるきっかけになれば、大きな力になると信じています。そういった意味では、シーズン2のお声がけがあった時に確かな手応えを感じました。『ちゃんと伝わってるんだ』と感じてうれしかったです」

――きっと視聴者の皆さんも気付かされることがたくさんあって、考えながら見てくださると思います。

「今まで気付くきっかけがなかっただけで、それに気付ける人はちゃんと思いやりがある人です。考えられるということは、すてきなことです」

比嘉愛未「静かだけど強さがある、真っすぐでピュアな愛情を大切に演じています」――「作りたい女と食べたい女 シーズン2」インタビュー

――そのように多くの人に伝わったことで制作されたシーズン2からは、南雲さん役の藤吉さん、矢子さん役のともさかさんが加わりましたが、共演した感想はありますか?

「藤吉夏鈴ちゃんとはもう何度も同じシーンを撮影していて、ともさかさんはこれからなんです。ともさかさんとの共演は初めてですが、個人的に一度お食事したことがあり、品があって柔らかい、大人な女性の代表格としての憧れがあったので、矢子さんを演じてくださることが心強いです。野本さんは、矢子さんに相談をしてすごく支えられる場面もあるので、俳優としても、女性としても、先輩として思いっきり甘えて、頼っていこうと思っています。夏鈴ちゃんは一回り以上年下ですが、すごく心(しん)がある女の子です。でも、アンニュイというか、つかみきれない不思議な魅力があるので、ずっと観察しています。ちょこっといじったりすると笑ってくれて、それがうれしくて、どんどんいじっています。私は基本的に笑ってほしいのでふざけているんですけど、嫌がることなく笑ってくれて、かわいいんです。私の中で“推し”です。現場は穏やかで、合間もずっと笑いが絶えない平和な世界です」

――比嘉さんが西野さん、藤吉さん、ともさかさんとのパーティーでご飯を作ってあげるとしたら、何を作りたいですか。

「悩ましいけど…私はお酒もおつまみも大好きなので、おつまみをちょこちょこ作りたいです。テーマを決めるとしたら、沖縄料理を作って、みんなで“リトル沖縄”っぽくして、音楽もかけて『イーヤーサーサー』って踊りたいです。泡盛とか飲んで、凝ったおもてなしができたら楽しいだろうなと思いました」

――楽しそうですね!! 最後に、視聴者の皆さまに向けてのコメントをお願いします。

「シーズン2ですが、前回をご覧になった方も初めてという方も楽しめる内容になっています。テーマ性は深いものですが、男性女性関係なく、人間として生きていく上で生きづらさが解消されるような、そっと寄り添ってくれるような言葉たちがたくさん散りばめられています。毎日、夜寝る前に見て、ほっこり癒やされて、おいしいご飯を見て、おなかをグーっと鳴らして眠りにつける作品になっていると思うので、ぜひご覧になってください。よろしくお願いします」

――ありがとうございました!

比嘉愛未「静かだけど強さがある、真っすぐでピュアな愛情を大切に演じています」――「作りたい女と食べたい女 シーズン2」インタビュー

【番組情報】

夜ドラ「作りたい女と食べたい女」シーズン2
1月29日スタート
NHK総合
月~木曜 午後10:45~11:00

取材・文/Kizuka(NHK担当) 撮影/尾崎篤志



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