ゴリエが語る、「ワンナイ」にすべてをささげたあの頃「この幸せが永遠に続け!!」。つかんだ夢が、手のひらからこぼれ落ちた瞬間【ロングインタビュー】2023/11/17
2000年~06年に放送されていた、伝説的な人気を誇ったフジテレビのコント番組「ワンナイR&R」。その前身番組「エブナイ THURSDAY」内のコントキャラクターとして誕生したガレッジセール・ゴリさん扮(ふん)する「ゴリエ」は、「ワンナイ」の放送とともに大ブレーク。CDデビュー、「紅白歌合戦」出場、女性ファッション誌「Popteen」「CanCam」専属モデル就任、ハワイ州オアフ島のマスコットガールに公式任命など、一世を風靡(ふうび)しました。
そんなゴリエさんが、なんと21年に復活。冠番組のスタートや、お昼のバラエティー「ぽかぽか」(フジテレビ系)の水曜レギュラーへの就任、YouTubeにアップした代表曲「Mickey」のダンス動画は790万回以上の視聴数を記録するなど、再び注目を集めています。
そんな大活躍中のゴリエさんに、復活後の心境や「ワンナイ」放送当時のエピソード、そして11月25日に開催を控えるイベント「サンリオピューロランド×ゴリエ ミュージカル~THE BATTLE OF LOVE~」に向けての意気込みなど、さまざまなお話をお聞きしました。
「今のゴリエは、『人に喜んでもらいたい』という思いが100%」
――2021年に復活したゴリエさん。22年1月に公開した「Mickey」のダンス動画は、790万回を超える視聴数を記録(23年11月17日現在)。加えて、コメント欄は「懐かしい」「かわいい」「今もダンスのキレがすごい」「元気が出る」など、温かいコメントであふれています。「ゴリエ」の復活を決めた時、この反響は想像していたのでしょうか?
「最初に宮迫博之さんから『ゴリエちゃんと轟のコラボが見たいっていうコメントが多いから、やらへん?』って電話をもらった時は、『ゴリエ、棺桶入っちゃったし…』って思ったの。『一度お亡くなりになったキャラクターを、15年もたって復活させるのもどうなんだろう?』って。別にみんなに求められているわけでもないだろうし、今さら感もあるんじゃないかって心配で、正直乗り気じゃなかったんだけど。一応ね、出身地のフジテレビ知事に聞いてみることにしたの」
――フジテレビが「出身地」なんですね。
「復活するにしても許可をもらわないといけないから一応聞いてみたら、二つ返事でOKで。なんなら『ゴリエちゃんのカツラも衣装も、全部大事に保管してます!』と。次に吉本興業にも聞いてみたら『全然いいですよ』ということで、“1回限りの復活”という意味で轟と一緒にYouTubeを撮ったら、そこですごい反響があって…」
――「涙が出る」「懐かしい」「ワンナイ大好きだった」など、たくさんの喜びの声が届いていましたね。
「なんかね、『笑った』『面白い』のほかに、『泣けた』っていうコメントがたくさんあって。全然、泣かす内容でもないのよ? 轟とふざけ合ってるだけなんだけど、うれし泣きしたとか、そういうことを言ってくれる人が多くて『1回だけでもやってよかったな』って。そしたら『くらしのマーケット』さんからゴリエとしてCMのオファーをいただいて、畳みかけるようにフジテレビの『新しいカギ』というコント番組から出演オファーが来て。『15年ぶりにPecori♥Nightを踊ってほしい』と」
――「新しいカギ」では、チョコレートプラネットの松尾駿さん、霜降り明星のせいやさんと「Pecori♥Night」を披露しました。
「せっかく復活させるんだったら、やっぱり期待してくれている方とか、あの頃を懐かしみながら見てくれる方にがっかりさせたくないと思って、1カ月もらってちゃんと練習したの。15年踊ってないのよ? 本気で体も絞って、当時のキレも戻して、しっかり踊り切って。そしたらフジテレビさんから『すごく視聴率がよかったです』ってうれしい言葉ももらって、『なんとかやり切った!』『完全燃焼できた』と思ったら、今度はまたフジテレビさんから『2022年の春からワンクール、ゴリエちゃんの深夜番組がスタートします』と。それ聞いて『まだゴリエ続くの!?』って」
――ご自身としても驚きの連続だったのですね。
「『頑張れるだけ頑張ります』とお返事しました。そこからゴリちゃんがやってる『ゴリ★オキナワ』っていうYouTubeチャンネルに『ゴリエちゃんのMickeyをもう1回見たい』っていう声がたくさん届くようになって、『Mickey』のPVを撮ることに。しかもフジテレビさんは『フジテレビ中、どこでもロケ地として使っていいよ』と言ってくれて。チアのダンスチーム50人にも協力してもらって、その再生回数が700万回以上。そしたら次は『ぽかぽか』の水曜レギュラーとして出演してほしいっていうお話をもらったんだけど、ゴリエ、『それはちょっと待って!』って」
――「ぽかぽか」は生放送です。
「生放送って素じゃない? ゴリエはコントのキャラクターだから。コントのキャラクターが生放送のレギュラーになるって前代未聞だから成立するか不安だったんだけど、フジテレビさんが『ゴリエちゃんがほしい』って言うもんだから。『だったら、呼ばれるだけやってみよう』ってゴリエ思ったの。自分としてはゴリエにしがみつくつもりもないし、17年前に『ワンナイR&R』とともに終わったっていう気持ちでいたから。今こうしてオファーをいただけて、『懐かしい』『うれしい』って喜んでもらえるなら、その間だけは頑張ろうかなっていう気持ちでやってます。現時点では、自分から何かを仕掛けようっていう思いはないです」
――数々の温かい声が、ゴリエを続ける原動力になっているんですね。
「そうそう。なんかね、報われるのよね。その声があるから頑張れる。復活してから『当時、娘が幼稚園で踊ってました』『高校生の頃、文化祭でゴリエの格好で踊りました』って言葉をかけてもらうことも多くて、そのたびに『みんなの思い出の1ページにゴリエがいたんだな』って感じるの。一個人が頑張ってきたものが、無数の知らない場所で生きてきた人たちの思い出のアルバムの中に入ってるって、こんなにうれしいことない。一番『エンターテインメントの仕事に携わってきてよかったな』って思う瞬間かも。だからこそ、気軽にやっちゃいけないなっていう気持ちになってくるんです。ゴリエとして適当なことを言って誰かを傷つけてしまうことはしたくない、喜んでくれる人がいる以上は精いっぱい頑張ろうって。今のゴリエは、『人に喜んでもらいたい』という思いが100%でやっています」
「カメラが回ってない時も、ゴリエはゴリエでいなきゃいけないの」
――あらためて、ゴリエさんが誕生したきっかけについても教えてください。
「もともと、フジテレビの深夜に『エブナイ THURSDAY』という番組があって。その中で『エブナイ度チェック』っていう、『こういう彼氏には注意!』といったことをランキング形式にしてショートコントを披露するコーナーがあったのね。そこに出てきたあば擦れの女の子がゴリエちゃん。川ちゃん(川田広樹)にいいように使われているのに、それに気づかず『川ちゃんのため』と思って川ちゃんの友達に抱かれたりとか…。深夜番組は、そういう天然であば擦れのゴリエちゃんでよかった。でもゴールデンで放送するとなったら、深夜は見ていなかった子どもたちがたくさん見てくれるようになったんです。すると、プロデューサーの琢ちゃん(渡辺琢)が『ゴリエちゃんはみんなのゴリエちゃんだから、あば擦れな振る舞いは減らしていきましょう』と。そこから、今のゴリエちゃんになりました」
――「ゴリエちゃんでいる時は、ロケで長時間外にいても、公衆トイレは使わない」というルールがあったとか…。
「ロケの時、1回ゴリエちゃんが公衆トイレで男子トイレに入っちゃったのね。そしたら周りで見ていた子どもたちが『ゴリエちゃんが男の子のトイレに入っていったー!!』って、大騒ぎになっちゃって。その時、『ゴリエちゃんは、人前でトイレに入るのはなしにしよう』って決めたの。あとは、ゴリエちゃんは男性の気を引くためにフォックスパンティーをよく見せるんだけど、チラッと見えた時に男性っぽい膨らみがあるとよろしくないということで、股の間に収めさせていただいたり。それを朝から晩まで、10時間」
――キャラクターを作り込むために、そんな陰の努力があったとは…。当時は学校でも大流行で、私もただただ視聴者として楽しんでいました。
「カメラが回ってない時も、ゴリエはゴリエでいなきゃいけないの。ずっと。バックヤードでも。だって、中森明菜ちゃんが『ゴリエちゃん~!!』って話しかけてくれるんだもん。明菜ちゃんよ? 小さい頃から見ていたあの明菜ちゃんだけど、ゴリエだから『明菜じゃ~ん!!』って呼び捨てにして。どんな大先輩に会っても、ゴリエはゴリエじゃなきゃいけないから」
夢に見た自分たちのコント番組が、手のひらからこぼれ落ちた瞬間
――伝説的な大反響を巻き起こした「ワンナイR&R」。目まぐるしい日々だったのではないかと思うのですが、ゴリエさんの当時のスケジュールはどんな感じだったのでしょうか?
「週1回、水曜日か木曜日だったと思うんだけど、朝の6:00とか7:00から、夜の11:00、12:00まで、フジテレビの本社でぶっ通しでコント撮影でした。まだ湾岸スタジオがなかったの。朝一でフジテレビに来て、ゴリエをやって、午後からは落武者になったり、夜はゴリケル・ジャクソンになったり。終わった頃にはヘロヘロだったんだけど、撮影が終わると宮迫さんやぐっさん(山口智充)と、フジテレビの目の前にあった平城苑という焼き肉屋さんで焼き肉を食べて帰るのが毎週でした」
――「ワンナイ」のほかにもたくさんお仕事がありハードな日々だったかと思うのですが、「ワンナイ」とともに過ごした6年間は、ゴリエさんにとってどんな時間でしたか。
「ゴリエは小さい頃から『8時だョ!全員集合』(TBS系)という面白いテレビコントで笑い、それに対抗するように始まった『オレたちひょうきん族』(フジテレビ系)で新しい刺激を受けて。さらに『夢で逢えたら』『ダウンタウンのごっつええ感じ』(ともにフジテレビ系)というコント番組でウッチャンナンチャンさんやダウンタウンさんによる新進気鋭の未来のお笑いを見せてもらい、『とぶくすり』(フジテレビ系)ではナインティナインさんに笑って…。そうやってフジテレビの伝統のお笑いコント番組を経てきた中で、やっと自分たちが“コント番組といえば”のフジテレビでコント番組のレギュラーを勝ち取ることができたの。それを手に入れた時、『絶っっっ対に手放したくない!!』って。日本で一番のコント番組にするために、とにかく必死でした」
――大切な場所を守るために、必死に食らいついた日々。
「ゴリエだけ、ディレクターの琢ちゃんに『台本ができたら早めにほしい』と言って。だいたい収録の2日前に台本が上がるから、ゴリエだけ2日前にもらって、1人で夜中まで書き直してた。『ごめん』って謝るところを『ペコリ~』って言った方が面白いなとか、『うれしい』じゃなくて『ヨロコビ~』の方がいいなとか、台本が真っ黒になるまで書き直して。それを収録当日に琢ちゃんに見せて、アドバイスをもらいながら直して、一日中収録して…。落武者やゴリケル・ジャクソンも、いっぱい考えた末に思いついたキャラクター。ゴールデンに昇格してからは、とにかく高視聴率の連続。ゴリエは『紅白歌合戦』にも出演を果たして。学校中で子どもたちがみんな『ペコリ~』『ヨロコビ~』って言ったり『Mickey』を踊ってるって聞くと、『自分が目指した一番人気のコント番組に、本当になれたんだ…』と思ったの。『この幸せが永遠に続け!!』って思って頑張ってきたけど…」
――2006年12月20日の放送をもって、番組は終了を迎えました。
「終わることが決まった時、すべて燃え尽くした備長炭みたいになっちゃった。もう、灰。これから何を頑張って生きていけばいいのか、分からなかった。ほかにも番組があって、そこももちろん頑張ってたけど、やっぱり夢に見た自分たちのコント番組を手に入れたもんだから。それくらい『ワンナイ』は大きなものだったから、それが手のひらからこぼれ落ちた瞬間、夢をつかむ握力がなくなっちゃって…。そこから15年。まさかもう一度、ゴリエをやるとは思わなかった」
――復活後も、多方面で精力的に活動を続けています。
「あの頃のメンバーが全員いるわけでもないし、やっぱりあの頃とは熱量も違う。『何が何でも、絶対に日本一面白い番組を作ってやる!!!!!』っていう、あの頃のような気概はもうないけど、今はみんなに『懐かしい』って楽しんでもらいながら、みんなの心にゴリエが寄り添えたらいいなって思ってるかな。“懐メロ”じゃないけど、“懐コン”みたいな。懐かしのコント。そんな思いで、今は頑張ってますね」
――11月25日には、東京・サンリオピューロランドにて「サンリオピューロランド×ゴリエ ミュージカル~THE BATTLE OF LOVE~」が開催されます。幅広い世代の方が足を運ぶイベントになりそうな予感がしますが、どんな公演になる予定ですか?
「ゴリエは天然でバカだけど、いいところって、真っすぐなところ。人を疑うことなく純粋に人を好きになるので、やっぱりゴリエのテーマは“愛”かなと。ということで、悪に愛を奪われた街を舞台に、愛を取り返すコメディーミュージカルをお届けします。そこににぎやかなコントキャラクターがいっぱい登場してくれるの。ジェラードンの(アタック)西本くんとかみちぃには、これまで生み出してきたコントキャラクターの何かをやってもらうつもり。正義の役を演じるインポッシブルの2人には、思いっきりバカバカしいこともやってほしい! あとはゴリエの娘の丸山礼ちゃんに、桜井美里ちゃんも出てくれるの。ゲラゲラ笑ってもらうことはもちろん、みんなには懐かしいゴリエの曲とダンスも楽しんでもらえたらいいなと思ってます」
――お稽古、頑張ってください!
「あの頃のキレイなまんまのゴリエで踊るので。その分、努力しますから!!」
「ワンナイR&R」放送当時、「夜9:00には寝なさい」と親から言われていたのですが、木曜日に学校に行くと、クラスは「“水10”見た?」「“ワンナイ”見た?」「昨日のゴリエ、めっちゃ面白くなかった!?」といった話題で持ち切り。「“すいじゅう”?」「“わんない”?」「“ごりえ”?」。聞いたことのない言葉の意味を友達に尋ねると「昨日のテレビ! 見てないん?」「めっちゃおもろいで、ヤバいで!」という返答が。
家に帰って新聞のテレビ欄でそれらしき番組を探すと、「水10!」そして「ワンナイR&R」というタイトルの番組を発見。「みんなが言ってたやつ、これか!」と少しすっきりするも、放送は夜の10:00から。毎日夜9:00には寝ないといけないルールがあった中、母親に「この『水10!』『ワンナイ』ってテレビを見たいから、水曜だけは夜9:00に寝るルールなくして!」と頼み込み、やっと迎えた翌週の水曜日。少し眠い目をこすりながらも、ドキドキ高鳴る胸。いよいよ、夜10:00。映し出されたのは、桁外れの身体能力を持ちながらもさも当然のように振る舞う、女の子の姿をした「ゴリエ」(確か、とんでもない体勢で自転車をこいでいたような…?)。初の「ゴリエ」との出会いは衝撃でした。その後も次々に繰り出されるコントに「???」と不思議に思いながらも、気づいたら1人で大笑い。次の日、友達と「水10見た!」と話せたことが、あの頃は本当にうれしかったです。
そんな話を取材の冒頭に何げなくお話していたのですが、インタビューの中盤で「さっきの話、我慢してるけど、心では涙ぐんでる」「自分が一生懸命頑張ってた番組を、自分が知らない地方のどこかで、毎週楽しみに見ていた少女がいたってことだよね。そんなこと聞くと、本当に報われる」と言葉をかみ締めながら伝えてくれるゴリエさん。筆者にとっても、心に残る取材となりました。
【プロフィール】
松浦ゴリエ(まつうら ごりえ)
1月29日生まれ。A型。バラエティー番組「ワンナイR&R」(フジテレビ系)でガレッジセール・ゴリが女性に扮して演じているキャラクター。「ワンナイ」の前身である「エブナイ THURSDAY」で初登場。2002年、「水10!」枠に昇格し全国ネットの放送となった「ワンナイR&R」が爆発的な人気となる。04年「Mickey」、05年「Pecori♥Night」をリリースし、大ヒット。06年、「ワンナイR&R」放送終了。21年、宮迫博之からの誘いや「くらしのマーケット」のCM出演の依頼などのタイミングが重なったことを機に、15年ぶりにゴリエが復活。22年、「ゴリエと申します。」(フジテレビほか)が放送開始。さらに16年ぶりの新曲「若いってすばらしい/私のママは2個結び」をリリース。23年1月より、「ぽかぽか」(フジテレビ系)の水曜レギュラーとして出演中。
【公演情報】
「サンリオピューロランド×ゴリエ ミュージカル~THE BATTLE OF LOVE~」
日時:2023年11月25日(土) 午後3:30開場/午後4:00開演
会場:サンリオピューロランド 1階エンターテインメントホール(東京都多摩市落合1丁目31)
出演者:ゴリエ、丸山礼、桜井美里、横山ミル(てんぐ)、インポッシブル、ジェラードン(アタック西本、かみちぃ)、ハローキティ、シナモロール、ハンギョドンほか
※イープラスにて、チケット好評発売中
取材・文・撮影/宮下毬菜
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