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「大奥 Season2」制作統括が語る見どころ――古川雄大が演じる幕末編の主役・瀧山は「思っていたよりチャーミング」2023/11/07

「大奥 Season2」制作統括が語る見どころ――古川雄大が演じる幕末編の主役・瀧山は「思っていたよりチャーミング」

 男女が逆転した江戸パラレルワールドが描かれたドラマ10「大奥」(NHK総合)。現在放送中のSeason2・第15話(10月31日放送)では、第11代将軍・徳川家斉(中村蒼)が黒木(玉置玲央)らのおかげで赤面疱瘡(あかづらほうそう)を恐れずに暮らせる世になりました。そして、11月7日放送の第16話からは、男子による家督相続が広まった世へと様変わりした「幕末編」が始まります。

 今回は制作統括・藤並英樹チーフプロデューサーに、Season1とSeason2の違いや、7日からスタートする「幕末編」で瀧山を演じる古川雄大さんや胤篤(天璋院)役の福士蒼汰さんの印象、これからの見どころを伺いました!

――「大奥」はこれまで何度か映像化されている作品ですが、今回ドラマにしようと思った理由に、新型コロナウイルスの影響があったのでしょうか?

「原作は完結したということもありますし、もともとの企画者であった岡本(幸江)プロデューサーが、10年前からやりたい企画だったこともあります。それに、やはり新型コロナというものがあって、時代の捉え方や見え方、つまり人類に対する脅威がすごく身近に迫ってきたという肌感覚がありました。もちろん、ジェンダーなどの観点もありますが、未知の疫病に対しての恐怖は、今取り上げるべき課題なんじゃないかと思っておりました」

――Season1と2に分けた理由を教えてください。

「家光の時代から幕末の大政奉還までという『大奥』の始まりから終わりを描いていくにあたって、1クールのドラマでは描ききれないと思って、Season1、2という形でドラマ化しました」

――Season1と2でどのような違いがあるのでしょうか?

「Season1は将軍の色を濃く出して、将軍とそのバディの関係で見せていくドラマでした。Season2は医療編、幕末編と分けていて、医療編は、日本という国の脅威になる赤面疱瘡や一橋治済(仲間由紀恵)という巨大な怪物にチームで立ち向かっていく人々の群像劇として描きたかったんです。そして幕末編は、大政奉還という大きなトピックを迎えるにあたって、戦争という大きなものに武力で立ち向かうのではなく、無血開城という選択で平和に向かって悪戦苦闘する人々の群像劇という形を取りたくて、幕末編、医療編という形にしました。それが顕著に現れているのはキービジュアルなんです。Season1の時には将軍と対になる2人で3パターン作ったのですが、Season2は医療編、幕末編と群像でキービジュアルを作りました」

――Season1に出演されていた家光役の堀田真由さんや綱吉役の仲里依紗さんなど、顔の表情がすごく豊かでしたが、ドラマ全体を通して狙いがあったのでしょうか。

「狙いというわけではなく、それを見いだしているのがよしながふみさんの原作であり、森下(佳子)さんの脚本だと思うんです。原作でも脚本でも大奥に生きる人たちの業や悲しみを非常に丹念に描いていただいて、それを表現するにあたって演出が丹念に切り取り、俳優の皆さんが演じようとしてくださった結果だと思います」

――Season2の後半はスケール感を考えると映像化するのが難しそうですが、どのように撮影されたのでしょうか?

「『大奥』は全話を通してもともと好きなコミックで、よしながさん自体すごく好きな漫画家さんなので、そこにはリスペクトを持って取り組みたいなと思っていました。森下さんもこのリスペクトが非常に高く、ご自身でもおっしゃっていますが、コース料理をうまく折り詰めのお弁当に入れるのがとても上手なので、よしながさんが作られたおいしいコース料理を、余すところなく、物足りないことはないようにうまく折り詰めの中に入れてくださいました。もちろん、大河ドラマで幕末を描くことがあるように、非常にスケールは大きくなっていくんですが、原作でも描かれているように、一人一人の登場人物の内面や人物関係に収れんしていきます。撮影が終わって編集中の映像を見ていたら、大奥というすごく狭い世界から、大政奉還や倒幕はこう見えるんだという新しい発見があったんです。小さい世界というか、個々の人間の日常の中から歴史を見るのはこういうことなのかもしれないなという見方ができるので、そこを皆さんにもお楽しみいただければうれしいです」

「大奥 Season2」制作統括が語る見どころ――古川雄大が演じる幕末編の主役・瀧山は「思っていたよりチャーミング」

――「幕末編」から登場する瀧山を演じる古川雄大さんの起用理由を教えてください。

「瀧山はすごく華があって人を引きつける力があると思うんですけども、そういった俳優さんが誰だろうと考えた時に、古川さんは美形で、ミュージカルという大きな舞台の中でも大勢の観客を引きつけて離さない魅力があり、彼の求心力というか、人を引きつける陽の部分を感じたので、瀧山という役どころをお願いしました」

――花魁(おいらん)と武士姿の両方を演じる古川さんに要望されたことはありますか?

「花魁や武士姿だからという差はあまりなかったです。古川さんはすごく求心力があるし、人を引きつける魅力があるので、そこを損なわず、そのまま出していただければいいのかなと。古川さんは初めての時代だったので、所作などで最初はすごく緊張された部分がありましたが、むしろ所作にとらわれずに、型にはまらず演じていただければというお話はしました。自然体でいる古川さんの中に、瀧山と同化している部分や同調している部分があると思うので、そこを出していただければと。先ほど、古川さん自身が太陽の陽だと話をしましたけど、ある種の品のよさと明るさがあると思っていて、それは瀧山に通じているところだと思うんです。それを変に過剰にしたり強調しなくとも、その品のよさや明るさはきっと出てくるので、そこを大切にしていったらどうでしょうかと伝えました」

――実際に演技をご覧になって、どのように感じられたのでしょうか?

「いい意味で思っていたよりチャーミングでした。古川さんがいろんな瀧山の表情を出してくださっていて、今の印象は、格好いいよりもかわいいの方が強いです。かわいい古川雄大さん演じる瀧山を楽しんでいただけたらうれしいです」

――瀧山のバディとなる胤篤役として登場する福士蒼汰さんは、Season1で万里小路有功を演じていました。Season1の時にすでにSeason2の胤篤の役もオファーされていたのでしょうか?

「Season1を作りながらSeason2の準備をしていく中で、あらためて森下さんと話した時に、Season1の有功と家光の2人が大奥の出発点になっていて、その有功というキャラクターを的確に福士さんに演じていただいたことと、コミックでもうり二つで、生まれ変わりのようであるという表現もあるので、Season1の有功を経て福士さんにオファーをした形になります」

「大奥 Season2」制作統括が語る見どころ――古川雄大が演じる幕末編の主役・瀧山は「思っていたよりチャーミング」

――オファーした際の福士さんの反応はいかがでしたか?

「福士さんには撮影現場も含めて非常に気に入っていただいて、Season1のクランクアップの時に『ぜひ、有功としてなのか分からないけれど、また戻ってきたいです』とおっしゃっていたので、胤篤でオファーした時にはすごく喜んでいただけました。それは僕らスタッフもとてもうれしかったです」

――有功とは全く違うキャラクターになりますが、福士さんの演技を見てどんな感想を持たれましたか?

「原作だと有功と胤篤でまた違ったキャラクターで、そこの演じ分けも意識していただいていますし、堅実に演じていただけていると思います。一方で、福士さんの持つノーブルな感じや聡明さは有功や胤篤に通じるものがあるので、そこは連続性を持って演じていただいていると思っています。有功もそうでしたが、胤篤も非常にチャーミングな男性で、そこも福士さんがうまく演じてくださっています」

――Season1、2ともに、衣装とセットがとても豪華ですが、こだわったところを教えてください。

「Season1が始まった時に、演出の大原(拓)を中心に話をしていったんですが、家光の時代から大政奉還まで200年以上の時代を制作していくにあたって、江戸時代の中にもバブルの時代や質素な時代があるので、その時代によってカラーをちゃんと付けていくことは、特にSeason1では意識しました。Season2でもその意識を踏襲して、原作のイメージを損なわない世界と、有功などが受け継いできた大奥の底辺に流れる連続性を、衣装を通して大事にしていった方がいいのかなと思い、衣装チームの皆さんに非常に繊細に作り上げていただきました。特に医療編は、大奥の治済や田沼意次(松下奈緒)は非常に豪華ですが、鈴木杏さん演じる平賀源内や黒木は町民というか、庶民に近いので質素なんです。ただ、質素の中にもシックであるなど、見ている視聴者の皆さんの期待度に応えられるようなものにはしていきたいなと話してはいました」

「大奥 Season2」制作統括が語る見どころ――古川雄大が演じる幕末編の主役・瀧山は「思っていたよりチャーミング」
「大奥 Season2」制作統括が語る見どころ――古川雄大が演じる幕末編の主役・瀧山は「思っていたよりチャーミング」

――有功が着ていた流水紋を瀧山や胤篤も着ることになりますが、どのように工夫されて違いを出されたのでしょうか?

「具体的なことは衣装デザイナーの方が詳しいんですけど、こだわりで言うと、有功の流水紋を最初に作る時に、演出と衣装チームが話し合って、そこに福士さんも入って素材や色などにこだわって作って、その上でそれを引き継ぐための瀧山の流水紋、胤篤の流水紋というところで、やはり、有功の流水紋があったからより力を入れてやっていったのかなと思います。先ほども出ましたけど、2クールにわたってのドラマで間が空いている中で、前回のSeason1を踏襲して視聴者の皆さんの期待に応えられるように、ある種、プレッシャーなんですけど、そのプレッシャーをうれしく感じながら制作していきました」

――時代劇がお好きとのことですが、藤並さんが考える時代劇に合う俳優はどんな人ですか?

「今回の俳優の皆さんもそうですが、時代劇に限らず非常に好感が持てる俳優さんは、活舌がいい人と所作が奇麗な人です。時代劇だと独特のセリフ回しがあったり、着物の所作もあるので、セリフの明快さや所作の美しさは、時代劇を演じる俳優さんに期待をするところではあります」

――今だからこそ時代劇で伝えたいことは何でしょう?

「時代劇だからこそ、普遍的なテーマがより伝わりやすくなると思っています。特に死の部分は、現代劇だと伝わりづらいところもありますし、いわゆる家族や血縁の業は『大奥』の中で非常にテーマ性を持っていますが、そういったものを時代劇で表現しやすい。現代の設定では扱いづらいお話やテーマでも時代劇で扱えるし、時代劇というフィルターを1枚通して見てもらうことで、毒気さも含めて見やすくなっている部分があると思います」

――最後に幕末編の見どころをお願いします!

「第16話から幕末編が始まりますが、出てくる登場人物が聞いたことのない人ばかりで、教科書やこれまでの時代劇でもやってこなかった将軍の時代が始まります。そういう意味では非常に取っつきにくいと思いますし、瀧内公美さんが演じる阿部正弘はたぶん誰も知らない感じだと思うんですが、誰も知らない人たちだからこそ、ある種、フィルターを抜きにして見ていただけるんじゃないかなと思っています。原作は男女逆転のパラレルワールドですが、起こっている出来事や出てくる登場人物のキャラクター、特に将軍のキャラクターについては史実をベースにしている部分があるので、新たに出てくる13代、14代、15代の将軍が、本当にこういう人だったかもしれないなというふうに見ていただければいいなと思っているのが一つ。それともう一つは、この時代を取り上げた時代劇でいうと、大河ドラマ『篤姫』(2008年)がありますが、『篤姫』が好きだった人には、堺雅人さんが演じた家定の聡明さを愛希れいかさんが体現してくださっているので、『篤姫』との対比として見ていただけると面白いかもしれません。陰間の花魁として登場する瀧山の華やかさ。どこをとっても美形なので、それを楽しんでいただきつつ、歴史の一端を楽しんでいただければうれしいです」

――ありがとうございました!

「大奥 Season2」制作統括が語る見どころ――古川雄大が演じる幕末編の主役・瀧山は「思っていたよりチャーミング」

【番組情報】

ドラマ10「大奥 Season2」
NHK総合・NHK BS4K
火曜 午後10:00~10:45 ※総合では11月7日は午後10:25~11:10

NHK担当/K・H



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