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さとうほなみがマネジャーにも伝えていなかったある秘密とは?――舞台「剥愛」インタビュー2023/11/09

さとうほなみがマネジャーにも伝えていなかったある秘密とは?――舞台「剥愛」インタビュー

 11月10日〜19日まで東京・シアタートラムにて上演される、脚本家・演出家の山田佳奈が主宰する劇団・□字ックの新作公演「剥愛」(愛知公演:11月22日、23日、大阪公演:11月25日、26日)。山田による3年ぶりの書き下ろしとなる本作は、ある片田舎の集落にある剥製師の工房を舞台に、多面的な正義のもと他者の正義を糾弾する現代社会を反映しながら、愛情のゆがみ、欲望、人が過ちを犯していくまでを丁寧に描いていきます。

 ここでは、本作の主人公・千田菜月を演じる、さとうほなみさんのインタビューをお届け。舞台への意気込みをはじめ、これまでの俳優業についても振り返っていただきました。

さとうほなみがマネジャーにも伝えていなかったある秘密とは?――舞台「剥愛」インタビュー

――初めに、本作を読んだ時の第一印象と、見どころを教えてください。

「最初にプロットを読ませていただいた時から心をつかまれた作品です。脚本・演出の山田佳奈さんの作品は“家族の話”が特徴的に描かれることが多く、中でも家族間で掛け違えてしまったボタンをあえて直そうとしないところが面白いと思います。本作で描かれている家族の関係性もいびつで、それが山田さんの作品ならではの部分です。現実世界でもそれぞれのご家庭にストーリーがあると思っているので、皆さんにもどこか響くところがあると思います」

――山田さんとは初タッグかと思いますが、本作が決まる前から何かで影響を受けられていたのでしょうか?

「実は以前に山田さんの映画『タイトル、拒絶』を見たことがあり、その時にかなりの衝撃を受けました。同作は女性のお話でもあり、個々が抱えているものが爆発してしまうことを感じられる作品で、それを隠さずに描く山田さんは率直に“えぐい!”と思いました。一つ一つ『このシーンが好き』と説明できるぐらいハマった作品でもあったので、その時から山田さんの作品を意識をするようになりました」

さとうほなみがマネジャーにも伝えていなかったある秘密とは?――舞台「剥愛」インタビュー
さとうほなみがマネジャーにも伝えていなかったある秘密とは?――舞台「剥愛」インタビュー

――そんな山田さんからオファーが来た時はどんなお気持ちでしたか?

「最初は『ついに来てしまったか…』と覚悟の思いが込み上げました。その後、菜月の目線で描かれたプロットを読んだ時に、彼女が抱えているものがすごく分かるような気がして、『ここで菜月をやらせていただかないと、何か終えられない気がする』と思い、ぜひやらせてくださいとお願いしました」

――菜月の役柄についても教えてください。

「私が演じる菜月は、今では主流でなくなってしまった剥製師の父を持つ出戻りの長女です。過疎化した小さな村で変なうわさが広まってしまって手のひらを返されたり、人間関係が露骨に見えたりするような生きづらい環境で、家族や自分自身と向き合っていきます」

さとうほなみがマネジャーにも伝えていなかったある秘密とは?――舞台「剥愛」インタビュー
さとうほなみがマネジャーにも伝えていなかったある秘密とは?――舞台「剥愛」インタビュー

――本作に向けて準備していることや、意識していることはありますか?

「これはまだ誰にも言っていないのですが、実は剥製が苦手で…」

――えっ…!

「洋服の毛皮とかも苦手なタイプなのですが、剥製ってそれが形になっている究極の状態なんですよね…。絶対に舞台上に剥製はあるはずなので、それを触るのかな…とか考えたりしてちょっとビビっています。マネジャーさんにも言っていませんでしたから、山田さんはもちろん知らないと思います(笑)」

――そんな苦手な剥製を扱う作品でも「やらなくてはいけない」と思えた役ということですよね。

「そうですね。正直、最初はそんなことは気にもしていなくて、最近になって『そういえば、私って剥製苦手だよな』って気づいたんです。山田さんが剥製をテーマにした作品を書きたいとずっとおっしゃっていたのを知っているので、このタイミングで私も関わらせていただける奇跡に感じる幸せの方が大きいです」

さとうほなみがマネジャーにも伝えていなかったある秘密とは?――舞台「剥愛」インタビュー

「俳優としてまだ見られていない景色をもっと見てみたい」

さとうほなみがマネジャーにも伝えていなかったある秘密とは?――舞台「剥愛」インタビュー

――2017年に「黒の手帖」(テレビ朝日系)でさとうほなみとして俳優デビューをされてから6年ほどたっていると思います。これまでの活動を振り返ってみていかがですか?

「素晴らしい作品と、すてきな方々とずっと出会わせ続けていただいている感覚が強いです。もちろん思い悩む期間もありましたが、どちらかといえばあっという間で、楽しんでいられた気がします」

――取材にあたってこれまでのインタビューも読ませていただいたのですが、さとうさんのどこかつかめないところに魅力を感じました。

「個人的に、自分を説明するような型やキャッチフレーズのようなものはなくていいなと思っているので、今『つかめない』と言っていただけてうれしかったです!」

――型にはまらないことが俳優業に生かされていると感じることはありますか?

「そうですね。自分の型を作ってしまうことは、お芝居をする時に邪魔になると思っています。型を作ってしまうと、それがお芝居中によぎる瞬間もあると思うんです。役柄に本人としての印象を与えてしまうことが個人的にあまり好きではないので、うまく働いているかもしれません」

さとうほなみがマネジャーにも伝えていなかったある秘密とは?――舞台「剥愛」インタビュー

――さとうさんはアーティストとしても活躍されていますが、それぞれで培った表現力が生かされていると感じることはありますか?

「私が所属する『ゲスの極み乙女』は特殊なところがあって、曲の途中で語りや寸劇が入ることがあり、私もMV中でお芝居をすることがありました。佳奈さんはそれを見て私を認識してくれたそうで、それがここまでつながったので、やってよかったなと思います。ただ今はちょっと恥ずかしくて自分では見られません(笑)。ライブでは『ほな・いこか、語りがうまくなったね』と言っていただけるので、ちょっとした相乗効果もあるのかも」

――今後の俳優としてのビジョンを教えてください。

「いろいろなことに挑戦させていただく機会があったら、それはそれで楽しいだろうなと思います。でも今は、自分の中でお芝居をすることがとても楽しくて、俳優としてまだ見られていない景色をもっと見てみたい気持ちが強いです。ご一緒させていただきたい方々もたくさんいるので、このままいい出会いを続けさせていただければいいなと思っています」

――では、最後に今後の活躍を楽しみにされているファンの皆さまに向けてメッセージをお願いいたします。

「これからのお仕事もたくさん素晴らしいものが控えています。発表されているものも、まだ発表になっていないものも、間違いないと断言できます! 舞台『剥愛』は、演じる側も見てくださる方もある意味、心をえぐられるような作品だと思いますが、どこか皆さんの心に残る作品になればいいなと思っていますので、ぜひチェックしてもらえたらうれしいです」

さとうほなみがマネジャーにも伝えていなかったある秘密とは?――舞台「剥愛」インタビュー
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さとうほなみがマネジャーにも伝えていなかったある秘密とは?――舞台「剥愛」インタビュー

【プロフィール】

さとうほなみがマネジャーにも伝えていなかったある秘密とは?――舞台「剥愛」インタビュー

さとうほなみ
1989年、東京都生まれ。俳優。近年の主な出演作は、「六本木クラス」(テレビ朝日系)、NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」、「あなたがしてくれなくても」(フジテレビ系)、Abema配信ドラマ「30までにとうるさくて」、Netflix配信映画「彼女」、Amazon Prime配信映画「次元大介」。2023年11月10日には、映画「花腐し」の公開が控えている。ゲスの極み乙女のドラマー“ほな・いこか”としても活動している。

【公演情報】

「剥愛」
東京公演:2023年11月10日(金)~19日(日)シアタートラム
愛知公演:2023年11月22日(水)、23日(木・祝)穂の国とよはし芸術劇場 PLAT アートスペース
大阪公演:2023年11月25日(土)、26日(日)扇町ミュージアムキューブCUBE01

取材・文/松村有咲 撮影/尾崎篤志



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