呪物蒐集家・田中俊行が呪物を集めていて一番大変なこととは?2023/10/29
オカルトファンの間では、知らざる人はいない怪談師であり、呪物蒐集(しゅうしゅう)家でもある田中俊行。母親の影響で、幼少期から稲川淳二のファンで、怪異には興味があったという。そんな田中が、ゲストと互いの秘蔵コレクションについて語り合う「田中俊行のオカルト・コレクション」(MONDO TV)が放送される。そこで、田中のルーツや呪物について直撃取材してきた。
── そもそも田中さんにとって、呪物とはどのようなものでしょうか?
「呪物というと、呪われている、怖い、悪いというイメージがあるじゃないですか。そうではなく、僕が集めている呪物は、特別な力が宿ったとされる物。そこにはいいも悪いもなく、人間に禍福をもたらすと言われている物なんです。決して人に害を及ぼすだけの物じゃなく、幸せをもたらすこともあります。そんな呪物の裏に、必ずいるのが呪術師。彼らが呪術をかけ、精霊や神様を宿した物を呪物と呼んでいます。一方で、死んだ人の魂や念がこもった物を、“いわくもの”と呼んでいます」
── 呪物だけでなく、“いわくもの”も集めていらっしゃるんですか?
「はい。例えば、僕の抱いている人形のチャーミーも“いわくもの”です。僕はもともと、怪談などを集めていたのですが、そのイベントでお客さんから譲られたのがチャーミー。よく分からない子どもの魂が入っていて、災いを起こすと言われていました。最初、僕の家に来た時はポルターガイスト現象のようなことが起きたんです。部屋の電気がめちゃめちゃ激しく点滅して止まらなかったり。パソコンでメールを見ようとしても立ち上がらない。もともとは怪談を集めている中で、怪談の1エピソードとして、いわくつきの物を集めていたんですが、チャーミーと出合い、実際に物にも念というのが宿るのか、と思い始めたのが呪物を集めるようになったきっかけ。当時、大型台風のチャーミーが地元に上陸したので、人形にチャーミーと名付けました(笑)。以来、世界中に呪物が存在していることを知り、調べていくと、呪物から地域の人の思い、歴史、カルチャーも見えてきて、呪物にハマっていくようになりました」
── ただ、一般の感覚でいうと、なかなか呪物を集めることは理解できないと思います。
「おそらく、目に見えない物や霊などについて、僕も懐疑的なところがあるからだと思います。実際、幽霊をはっきり見たことはありません。霊感もすごく弱いと言われましたから。けれど、怪談の取材や呪物蒐集をしていると、偶然か勘違いか、不思議なこともあります。例えば、呪物を手に入れてから、その呪物が毎晩夢に出てくるとか。それって、プラシーボ効果の可能性もあるじゃないですか。白いもやを見たり、足音を聞いたりしたことがあっても、それが幽霊なのかどうかも分かりません。だからこそ、そういう超常的なものを追い求めているという一面はあると思います」
── もしかしたら強い守護霊が田中さんを護っているからこそ、あまり被害がないのかもしれませんね。
「それがですね、霊能者の方に見てもらったことがあるんです。そうしたら“見たことないものがいる”と。なんと『めちゃくちゃデカい毛虫が憑(つ)いている』と言われました。なんで僕に憑いているのか、霊能者の方に聞いてもらったら、毛虫いわく、どうやら僕に憑くと面白いことがあるとのこと。どこからか、そういううわさを聞いてきたらしくて。どこで聞いてきたんだよ!とツッコミたくなったぐらい(笑)。ただ、やがて毛虫は変態するらしいので、何に変わるのか楽しみにしています」
── 呪物を集めていて、一番大変なことというと?
「ディープな呪物には、それぞれルールが存在しています。朝には、この呪文を唱えなければいけない、赤い飲み物を供えないといけない、お香をたいてお経を読む、卵を食べるな、肉を食べるな、とさまざまなルールがあります。ただ、今の呪物部屋はキッチンにあるので、卵や肉を調理する時は隠れて食べるようにしています。集めるだけでなく、呪物蒐集家は、集めた後も大変なんです」
── ちなみに“いわくつき”のチャーミーと暮らしていて、何か被害にあったことは?
「いや、チャーミーは僕に福をもたらしてくれているんです。以前は兵庫県の実家に暮らしていたんですが、チャーミーは売れっ子になり、さまざまな心霊番組やイベントに呼ばれ、チャーミーだけ上京していたんです。それから僕にもいろいろと仕事が舞い込み、チャーミーを追いかける形で上京しました。チャーミーのおかげで仕事が増え、結果的に福をもたらしてもらっています。まさにチャーミーのおかげで、『田中俊行のオカルト・コレクション』という番組が作られたといっても過言じゃありません」
── では、そんな「田中俊行のオカルト・コレクション」の見どころを教えてください。
「個人的に印象に残っているのは『#10』に登場した怪談作家・田辺青蛙さんが持参した古い市松人形。オールナイトの怪談イベントで9割ぐらいの人が、人形の声を聞いているんです。息をしているのではないかと、袋を頭にかぶせると、実際に袋が動いたり。記録用カメラで長時間録画し倍速で見ると、人形が動いているのが分かるんです。僕らの業界ではとても有名な人形ですが、興味深かったですね。この番組はオカルトファンの方だけでなく、オカルトにまったく興味のない人もきっと楽しんでいただけると思います。呪物の背景が見えてきたり、世界の呪物も紹介していますので、これまで知らなかった世界が広がると思います。ぜひ、ご覧になってください!」
【プロフィール】
田中俊行(たなか としゆき)
1978年生まれ。イラストレーター、怪談師、呪物蒐集家。YouTube「不思議大百科」「トシが行く」。「呪物蒐集録」(竹書房刊)が発売中。
【番組情報】
「田中俊行のオカルト・コレクション」第2シーズン #8~#11
MONDO TV
11月8日スタート
水曜 午後11:30~深夜0:00ほか
いわくつきの品々を蒐集しているオカルトコレクター・田中俊行がゲストと互いの秘蔵コレクションについて語り合う。
#8:ヌガザカ 怪談屋/猫と武器とビキニアーマーとアクション映画愛好家
#9:塚本守 2000カ所の心霊スポット巡り/因縁物も収集
#10:田辺青蛙 ホラー/怪談作家
#11:悠遠かなた オカルトYouTuber/廃虚写真家
取材・文/今井敏行 撮影/尾崎篤志
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