「たとえあなたを忘れても」堀田真由×萩原利久がお互いに身を委ねられる“安心感”、4度目の共演で感じている思いを語り合う2023/10/29
ABCテレビが4月から新設し、日曜夜10時の全国ネット連続ドラマ枠の第3弾として放送中のドラマ「たとえあなたを忘れても」。脚本家・浅野妙子さんが手掛ける本作は、夢を失った女性と、記憶を失った男性が奏でる切なくも美しいヒューマンラブストーリーです。
いよいよ放送がスタートした本作。第1話では、主人公・河野美璃(堀田真由)が1杯のメロンジュースをきっかけに同じ時間を過ごすようになった青木空(萩原利久)と出かける約束をするも、待ち合わせ場所に現れなかっただけでなく、その後、偶然再会しても美璃のことを全く覚えていないという展開が描かれ、そのラストに「切なすぎる」「今後の展開が気になる」と反響が集まっています。
美璃と空は今度どうなっていくのか気になるばかりですが、先週の堀田さんのインタビュー(https://www.tvguide.or.jp/feature/feature-2510033/)に続き、今週は堀田さんと萩原さんのインタビューをお届け。4度目の共演となるお二人に、撮影中のエピソードやお互いに感じている思いを聞いていくと、息ぴったりな掛け合いを見せてくれました。
――堀田さんと萩原さんは本作で4度目の共演になりますが、ここまでの撮影を通して感じていることは何かありますか?
萩原 「これ、逆に気になるんですけど、5度目ってどうなるんだろう(笑)」
堀田 「確かにね(笑)。これ以上、何の作品で共演するのかな」
萩原 「そういう意味では、変化なのかは分からないのですが、何かを感じられる最後のチャンスになるかもしれないと、少しだけ思ってきました」
――今回の撮影であらためて感じた、お互いの魅力を教えてください。
堀田 「声がすてきだと思います。やっぱり、お芝居する上で声ってすごく大切じゃないですか。その中でも、今回はすごく空にピッタリだなと思いますし、穏やかで声のトーンも聞いていて心地良い。すごく柔らかくて、なんというか、ヒーリング効果のあるような、私の好きな声ですね。安心感もあって、今回も助けられてばかりです」
萩原 「僕も安心感がありますし、こういった作品をやる上では、どこか役者目線でいくと、勝負感のようなものがあるんです。『今頑張らなきゃ』『いろいろなところで向き合わなきゃ』という、よろいをまとうような感覚があって、その感覚を持っていて、一緒に戦うことができるってすごく珍しいというか。バチッとそれがハマる状態になれることって、すごく恵まれているなと感じています。同じシーンでも『あ、たぶん今、同じ位置から同じ方向を目指せている気がする』と思えて、これが安心感なんだと思います。美璃とのシーンはそう思えることが特に多いので、自分の中で迷ったりふに落ちていない部分があっても、段取りで実際に合わせてみると、そのままその場所に持って行ってもらえるような感覚があるので、僕はこれを安心感というところに位置付けているのかなと思います」
――初共演や2度目の共演だと得られない感覚ですね。
萩原 「そうですね。それが段々と得られることもあるのかもしれないのですが、やっぱり初日からそれが持てているというのは、“4度目の力”があるのかもしれません」
――「一緒に戦える」という言葉もありましたが、制作発表会見を見ていても雰囲気がすごくいいなと感じました。萩原さんと岡田結実さんの掛け合いも印象的です(笑)。
萩原 「いやぁ、岡田さんはもうプロですから!(笑)」
堀田 「幼なじみみたいだよね(笑)」
――物語の中でも、岡田さん演じる藤川沙菜はキーパーソンになってくると思いますが、岡田さんの印象を教えてください。
堀田 「私、お芝居では初めてお会いしたのですが、なぜか会ったことがある気がするんです。それも“安心感”といいますか、『初めまして』という感じがしないんですね。初対面だとそこから組み立てていくのに時間がかかったり、私自身も気を使ってしまって踏み込めなかったりすることもあるのですが、現場では結実ちゃんからスッと懐に入ってきてくださって。すごく話しやすいんですよ」
萩原 「分かります。本当に明るい!」
――そんな沙菜と空の掛け合いは、“関西弁”を使った会話がとても印象的です。第1話のラストでもその掛け合いが少しだけ見られましたが、萩原さんは関西弁のセリフは初挑戦と伺いました。
萩原 「めちゃくちゃ難しいです(苦笑)。それこそ、堀田さんは(関西弁で)しゃべれるけど普段は標準語でしゃべっていて、逆に僕はしゃべれないけど今回は関西弁でしゃべる、そういう意味では苦戦しているのがいつかバレるんじゃないかと、自分の中でずっと緊張感があります。何もないところから始めると、イントネーションが難しいのもあって、強弱でやってしまう部分があるんです。『ここを立てなきゃ』と、音というよりも強弱でやってしまって、言葉を言った時に『僕は関西弁をしゃべります!』という感じが出てしまう現象が起きるんです。ネーティブな人は決して強く言っているわけではないから、これがなかなか難しい。やろうと思ってできるものではないので、もう反復するしかないんです。自分でしゃべっていても、合っているのか間違っているのか、ジャッジが効かない瞬間が多々あるのですが、ここまでしゃべってきて『たぶん今のは間違えたな』と、なんとなく分かるようになってきました」
――萩原さんが苦戦されているという方言ですが、堀田さんが萩原さんの関西弁をどう感じているか、ぜひお聞きしたいです。
萩原 「ぜひ! 忖度(そんたく)なしでお願いします!」
堀田 「(かなり悩みながら)う〜ん…でも関西弁の中でもいろいろ種類があるじゃないですか。私は滋賀出身なのですが、滋賀と神戸の言葉ってちょっと違うんですよ。なので、方言指導の先生が私のそばで(萩原さんに)ご指導されている時は『え、そうやって言ったりするんだ』と思うこともありますね」
萩原 「うまいな〜、うまくかわされました(笑)」
――堀田さんにとっても、逆に現場で学ぶことも多い?
堀田 「そうですね、『こうやって言うんだ』と気付かされることも多いです。滋賀も関西なのですが、隣が京都なこともあって、すごく関西色が強いわけではなくて、ちょっと京都っぽさもあったりと全然違うんですよ。でも、映像を見ていても、萩原さんをはじめ、皆さん(の関西弁は)全然違和感はなかったです」
――作中では関西弁でお話されているキャストの方も多いですよね。萩原さんは役作りを通して関西弁のイメージの変化などはありましたか?
萩原 「確かに、クランクインする前はとにかく強いイメージがありました。なんというか、スパーンと飛んでくるようなイメージがありましたけど、理解していくと意味としては標準語と一緒ですから、そういうイメージは変わったかもしれないです」
――ここまで撮影をしてきて、クランクインする前とは作品に込められたメッセージ性というのも受け取り方がだいぶ変わったかと思います。あらためてお二人が感じているこの作品の魅力を教えてください。
萩原 「それぞれの目線で見ると、きっといろいろなメッセージがあるし、見方によって受け取り方も違うと思うんですけど、特に空に絞って言うなら、小さい日常を切り取って描いている作品だと思うんです。僕自身もそうだったのですが、いろいろと情報が多すぎる社会において、そういう日常の中の小さな幸せってすごく見逃しがちだし、自分自身もその幸せを見つけにくい生き方をしているような気がしてしまって。でも、もしかすると本当の幸せって、待っていて降ってくるようなものではなく、何げない日常の中にいくらでもあって、それをどれだけ見つけて拾えるか。見つけに行った人にだけ、そういう小さな幸せを感じて、ちょっとだけ心が温かくなって、日常も明るくなる気がします。それは空を演じていても、記憶障害を抱えながらもすごくポジティブに生きている姿から強く感じますし、僕自身も小さな日常の幸せを見つけられて、与えることができる人でありたいです。そういうことができる社会になったらいいなと、僕なりにこの脚本から感じ取っていて、表現して届けたいメッセージの一つなのかなと思います」
――本作のテーマの一つに“記憶”があると思いますが、そういった小さな幸せは記憶に残りますよね。
萩原 「そうですね。いいことも悪いことも、自分がされたことってすごく覚えているじゃないですか。すごく残るからこそ、相手にはいい記憶として覚えておいてもらいたいですし、小さな幸せの記憶が多くなれば、それが積もり積もって大きな幸せになったりするのかなとも思うんです。そういう部分はしっかりと脚本からくみ取って、一つのメッセージとして発信していきたいです」
堀田 「どうしても、普通に生活している日々の中だと、大きい出来事だけに目を向けてしまうことってあるじゃないですか。今日1日の中での大きい出来事を布団の中に入って思い返したりするのですが、今日という日が当たり前だと思っていても、人や時間が突然なくなってしまうかもしれないというのがこの作品のテーマとして感じて。最近は『今日は家にいて外には出なかったけど、無駄な1日ではなかったな』と思うようになったんです」
萩原 「それいいなぁ」
堀田 「家にいたのなら『すごくゆっくり休めたんだな』と考え方によっても捉え方が全然変わってくるので、『今日は無駄な1日だったのかな』と思うことがなくなりました。今日という一瞬も、とてもかけがえのない瞬間だからこそ、大切に生きようと思いますし、萩原さんがおっしゃっていた小さな出来事にも目を向けられるようになるので、日々の中で自分のことを愛してくれている人、自分に関わっている人をより一層自分も愛して大切にしたいと思える、そんな作品になっていると思います」
【取材後記】
本作で4度目の共演となる堀田さんと萩原さん。初共演は2019年と約4年前にさかのぼりますが、初共演した時のことを覚えているか聞くと、2人は声をそろえて「覚えています!」と即答。萩原さんが「今じゃこんなにがっつり共演するなんて想像もしなかった」と言うと、堀田さんも「4回とも関係性が奇麗にバラけているんだよね」と感慨深そうに振り返っていました。「5度目の共演はどうなるんだろうね」という2人に、スタッフから「次はバディものですかね?」と言葉がかけられると、「今度はバチバチな感じかな?」「コメディーっぽい感じじゃない!?」と盛り上がる仲むつまじい姿が印象的でした。
【プロフィール】
堀田真由(ほった まゆ)
1998年4月2日生まれ。滋賀県出身。主な出演作にNHK連続テレビ小説「わろてんか」、NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」、「3年A組-今から皆さんは、人質です-」「CODE-願いの代償-」(ともに日本テレビ系)、「風間公親-教場0-」(フジテレビ系)、「オカルトの森へようこそ」(WOWOW)、「大奥」(NHK総合)、「いとしのニーナ」(FOD)、映画「ハニーレモンソーダ」(2021年)、「バカ塗りの娘」(23年)など。11月23日公開の映画「翔んで埼玉〜琵琶湖より愛をこめて〜」、24年1月12日公開の映画「ある閉ざされた雪の山荘で」、1月26日公開の映画「劇場版 君と世界が終わる日に FINAL」への出演を控える。
萩原利久(はぎわら りく)
1999年2月28日生まれ。埼玉県出身。主な出演作にNHK連続テレビ小説「エール」、「3年A組-今から皆さんは、人質です-」(日本テレビ系)、「美しい彼」シリーズ(MBSほか)、「月読くんの禁断お夜食」(テレビ朝日系)、「真夏のシンデレラ」(フジテレビ系)、映画「十二人の死にたい子どもたち」「あの日のオルガン」(ともに2019年)、「花束みたいな恋をした」(21年)、「劇場版 美しい彼〜eternal〜」「キングダム 運命の炎」「ミステリと言う勿れ」(いずれも23年)など。現在、出演する「萩原利久のwkwkはぎわランド」(フジテレビほか)が放送中。
【番組情報】
「たとえあなたを忘れても」
テレビ朝日系
日曜 午後10:00〜10:54
※放送終了後、TVerで最新話を見逃し配信
※TELASA、U-NEXTでは全話見逃し配信
取材・文/平川秋胡(ABCテレビ担当)
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