「CHEF-1グランプリ2023」エビ料理に革命を起こした3回戦を振り返る【韓国&アジア料理・スパニッシュ&中南米料理・ジャンルレス・フードクリエイター編】2023/10/20
日本全国47都道府県からプロ・アマ問わず若手料理人が集結し、料理バトルを通じて地域を盛り上げ、今後の日本の料理界を背負う次世代のスター料理人を発掘していく「シェフNo.1決定戦」こと「ザ・プレミアム・モルツ presents CHEF-1グランプリ2023」(テレビ朝日系=ABCテレビ制作)。
今大会から、「日本料理」「フレンチ」「中国料理」「イタリアン」「韓国料理&アジア料理」「スパニッシュ&中南米料理」「フードクリエイター」「ジャンルレス」の八つの料理ジャンル別にエントリーして行われ、3回戦は「各料理ジャンルTOP5」のシェフたちの戦いが繰り広げられた。テーマは「エビ料理に革命を起こせ!」。この勝負を勝ち抜き、各ジャンルNo.1になった者だけが次の準決勝に駒を進めることができる。準決勝、決勝の放送が目前に迫るここでは、しのぎを削った各ジャンルの戦いの軌跡を振り返っていく。
完成させた“日本人らしいスペイン料理”、その皿にかける思いは審査員に届くのか!?
個人的に難しいと感じたのが、この「スパニッシュ・中南米料理」部門。パエリアやシュラスコ、タコスと代表的な伝統料理はあるものの、そこに革命を起こすというのは日本料理やフレンチ以上にハードルが上がると感じたからだ。そんな中、このジャンルには今料理界でも注目を集める中南米料理のシェフたちが集結。ラテン4カ国の料理が相まみえる戦いは静かに火ぶたが切られることとなった。
この熾烈(しれつ)な戦いで勝ち残ったのは、スペインバスク料理の清水和博シェフ。「中南米料理のベースはスペイン料理。負けられない」と意気込んでいた清水シェフは、この大一番に“ある秘密兵器”を用意していた。調理に使ったのは、日本ではほぼ見ることのないスペイン産の高級食材・カラビネロと呼ばれる真っ赤なエビ。調理場でもひときわ目を引くエビの存在に、調理の様子を見守っていたスタッフたちも見入ってしまうほどだ。
深い甘みと濃厚なみそが特徴のこの希少食材を余すことなく丸ごと1匹使い、「スペイン人が考えつかないところを推していく」という気持ちで作り上げたのは、「カラビネロのポテンシャル」。日本でいう“天ぷら茶漬け”をスペイン料理として再構築した一皿を完成させた。
このジャンルの審査を担当したのは、昨年コンクールでフランス料理界最高峰の称号「M.O.F」を獲得した「ガストロノミー ジョエル・ロブション」総料理長・関谷健一朗さんと、オープンから1年を経ずにミシュランの星を獲得した中国料理「慈華(いつか)」オーナーシェフ・田村亮介さん。出場シェフの中でも人一倍スパニッシュへの意地とプライドを持っていただけあって、その思いは2人にも伝わり、関谷さんからは「エビのうま味をちゃんと1匹使い切った」と清水シェフの技量を高く評価する場面も。
最終的に清水さんが勝ち残った要因について、関谷さんは「スペイン人が作らないようなスペイン料理を作ったこと」「エビのおいしさをちゃんと引き出したこと」を挙げる。まさしく、この大会テーマである「革命を起こせ」に沿った結果となった。結果発表後、ホッと安堵(あんど)した表情を見せる清水シェフだったが、人一倍自分のジャンルに思いを持っているからこそ、すでに次の戦いを見据えた表情を浮かべていた。
審査員2人をうならせた、“大使館出身”の刺客が作る一皿とは
「韓国・アジア料理」を勝ち抜いたのは、異色のキャリアを持つ料理人だった。イスラエル大使館の公邸料理人・十文字淳シェフ。出場者の中には、昨年のファイナリスト・鄭大羽シェフもいる中、十文字シェフが作り上げた料理は、“美しい”という言葉がぴったりな一皿となった。
このジャンルを審査するのは、田村さん、そして16年連続ミシュラン三つ星「日本料理かんだ」から和食のレジェンド・神田裕行さん。アジア各国の料理を極めたシェフたちの料理を厳正にジャッジしていく中、十文字シェフが作り上げた料理を前に、思わず田村さんは「絵画のように美しい」と口にする場面も。
そもそも十文字シェフが得意とするイスラエル料理では、エビはタブーとされている。つまり、一見すると十文字シェフにとっては相性最悪なテーマのように見られた。しかし、ニューカレドニア産の天使のエビをベースに、松の実やクミンを合わせて“エビのケバブ”を作り、“世界最小のパスタ”とも呼ばれるクスクス、エビの殻やコリアンダーで作ったアメリケーヌソースで、不利な状況を全く感じさせない美しい一皿「天使の海老と地中海の出会い」を作り上げた。
見てほれぼれする一皿は、味もまた想像を上回るものだった。試食した2人の審査員からは「味の上品さ、構成、すごくいい」と絶賛。3回戦のテーマである「エビ料理に革命を起こせ!」というハードルを悠々に超えて見せただけでなく、「見て楽しい、食べておいしい」という料理そのものに求められるものを突きつけた。十文字シェフの前に審査されていた焼き肉一筋20年の料理長・齋藤清明シェフの料理が「革命的」と評価されていたが、それをも上回った十文字シェフに軍配が上がった。
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