「CHEF-1グランプリ2023」エビ料理に革命を起こした3回戦を振り返る【日本料理・フレンチ・中国料理・イタリアン編】2023/10/20

それぞれが“革命の壁”にぶつかる中、意外な一皿が勝負を分ける

　中国料理では、出場シェフたちも警戒するある人物の姿が。過去に数々のコンテストでグランプリを獲得し、中国料理界隈では知らぬ人はいない、“コンテストキラー”こと「wakiya一笑美茶樓」の立岩幸四郎シェフだ。ほかにも、都内の高級店から大阪下町の町中華まで、全国から意欲に満ちたシェフたちが勝ち上がってきた。実力派がそろったこのジャンルを審査したのは、和食のレジェンド・神田さんに加えてオープンから1年をたたずにミシュランの星を獲得した中国料理「慈華（いつか）」のオーナーシェフ・田村亮介さん。

　それぞれがエビを使ってさまざまなアプローチをした一皿を提供するも、立ちはだかるのは“革命”の壁。味や技法に賞賛の声が上がっても「革命は起きていない」という審査員の言葉にシェフたちも頭を抱える。立岩シェフもその壁にぶつかり、「厳しいですね」と悔しさをにじませる。

　そんな中、審査員に「革命を起こしながら、一皿の完成度が素晴らしい」と言わしめたのは、沖縄のホテルのレストランで働く當山翔太シェフだった。調理前、「勝てるんじゃないかな」と自信を口にしていた當山シェフ。いざ調理が始まれば大ぶりのオマールエビを一尾ずつ丁寧に処理していき、エビのみそやテール、チリソースやクリームチーズを使い、中国料理の技でそのうま味を最大限に引き出しつつ、新たに構築した「海老のモンブラン」を完成させた。その高い技術と意外性のある一皿は2人の審査員をもうならせ、見事に準決勝へと駒を進めた。

「断トツNo.1！」の高評価を得たのは、“エビ×スイーツ”!?

　生ダチョウ肉×生エビという組み合わせや車エビを使った“冷たい”リゾット、さらにイタリアンらしいユニークなティラミスも登場した「イタリアン」。ここでは、「断トツNo.1！」というこれまでにない高い評価を得た一皿が誕生した。

　そのシェフこそ、大阪の名店から地元に戻り、現在はスイーツも手掛ける二刀流・久保貴シェフ。調理前、「僕はたぶんエビ料理史上初だと思っている」と語っていたが、作り上げたのは「PURI×PURIショートケーキ」。シフォン生地にボタンエビを中心に作ったタルタルソース、南イタリアで作られる香辛料が効いたンドゥイヤペーストを層にし、最後はクリームでコーティングした、見た目は完全なる“スイーツ”で勝負をかけた。

　「イタリアン」をジャッジしたのは堀江さんと神田さん。“エビ×スイーツ”というイタリアンらしいセンスとその斬新さに驚かされながらも、「見た目からワクワクして、食べてもおいしい」と神田さんは絶賛。さらに、「感激しました。いろいろとエビ料理食べたけど、ダントツNo.1です」というコメントまで飛び出し、これまでにない高評価に周囲をざわつかせる。

　この日、「イタリアン」部門では久保シェフのケーキをはじめ、5人中3人がティラミスやケーキで挑むという意外性あふれる戦いとなったが、「奇をてらっているがちゃんと着地している」と審査員両者の高評価を得た久保シェフが準決勝へと勝ち進んだ。勝敗を分けたのは、「ンドゥイヤを使ったこと」と堀江さんが言い切るように、イタリアンのエビ料理に革命を起こした久保シェフが“イタリアンNo.1”の称号を手にした。次に待ち受けるのは、各ジャンルの最強料理人だ。