「アラクオ」最終回直前! 矢内達也プロデューサーが明かす裏話とともに、作品を振り返る<インタビュー後編>2023/09/23
EXILE/FANTASTICSの佐藤大樹さんが地上波連続ドラマ単独初主演を務めるドラマ「around1/4(アラウンドクォーター)」。かつてのアルバイト仲間だった新田康祐(佐藤)、平田早苗(美山加恋)、橋本明日美(工藤遥)、横山直己(松岡広大)、宮下一真(曽田陵介)ら5人が、アラサー前の25歳=アラクオを迎える中、それぞれが直面する“25歳の壁”、そして“恋の分岐点”にフォーカスを当て、人生と恋に悩み傷つき過ちを繰り返しながらも、自分なりの乗り越え方を見つけていく物語は、いよいよクライマックスへ。
TVガイドwebでは本作でプロデューサーを務める矢内達也さんを直撃。インタビュー後編では、5人のメインキャラクターのキャスティング秘話に続き、初回の見逃し配信が同局ドラマの中で歴代最高再生数を記録する要因にもつながった、ドラマ制作の舞台裏とこだわりを明かしてくれた。
――前編では佐藤さん、美山さん、工藤さんのキャスティング秘話をお聞きしましたが、後編ではまず松岡さんのキャスティング理由から伺えたらと思います。松岡さんとは、お仕事でご一緒するのは今作が初めてだそうですね。
「5人の中では唯一会ったことがなかったんです。直己って、斜に構えている感じというか、あまり言葉数が多くないので、演技するのは一番難しいと思うんです。5人でいてもあまりしゃべらないからこそ、表情や動き、立ち振る舞いで見せていくことが多いので、演技力のある方を探していたんです。そしたら、ABCテレビの社内で『壁サー同人作家の猫屋敷くんは承認欲求をこじらせている』の松岡さんが本当にすごいというのを聞いて。男女問わず、スタッフみんなが松岡さんのことを好きになる“スタッフキラー”らしいです(笑)。最初は人から聞いたことだったり映像を見ただけで、彼の人となりは分からなかったのですが、クランクインする前の本読みですでに役を考えて作ってきてくれて、ピッタリだと思いました。実は、松岡さんにはドキッとさせられたことがあって」
――どんなことがあったのでしょう?
「本読みがめちゃくちゃ面白くて『良かった』と思っていたんですけど、初めて本読みをした5人でのシーンの時に『本読みの時の方が面白かったな』と正直思ったんです。もちろんそんなことは言わないですが、ドライ、リハーサルを現場で見ていたら松岡くんがやって来て『矢内さん、今あんまり面白くなかったって思いませんでした?』と言われたんです。『おお…!?』となりましたよ(笑)。それから『本読みの時はこうだったけど、今はこうなっていて。1回話し合いましょう』と言って、そこから監督ともお話して、全員でもう1回やり直したんです。松岡さんはうまくかみ合っていないことを感じていたんでしょうね。僕はずっと見ていただけなので、どこで心の中を見透かされたんですかね。誰かの様子とか表情を見て、ピンポイントで雰囲気を察するのがうまい人なんだと思います」
――これまでそういった経験というのは…。
「初めてです。『どうですか?』とか『大丈夫ですか?』みたいなことは聞かれますが、『思っていたのと違うって思ってませんか?』とズバッと言われたことはなかったですし、僕は現場は監督のものだと思っているので。松岡さんは勉強熱心だし、(作品は)みんなで話し合って作るものだと思うから察せられる、だからみんなにも愛される。これからも応援したいですね」
――最後は曽田さん。ちょうど1年前にプロデュースされていた「彼女、お借りします」(同局)にも出演されていましたね。
「曽田くんって、あの世代であんなに色気がある人ってほかにいないんじゃないと思わされるくらい、僕が今までご一緒した方の中でもすごく特別な魅力を持った方だなと思っています。顔立ちはもちろん、一真の髪色や髪形が似合う人もなかなかいないと思います。あとは、100%じゃない、いい感じの脱力感を持っていると思うんです。美容師役でもあったので、手元のお芝居とか、そういう動きの色気を持った人を考えて出てきたのが曽田くんでした。たぶん、役者という仕事に対して天才気質なところがあるんだと思います。今回の役でも、撮影でお世話になった美容室の方に3時間くらい教わってそのまま撮影に入っていたので、ただただすごいなと。横浜流星さんみたいな色気といいますか、そんなものを『かのかり』(『彼女、お借りします』)の時に感じていたので、そういうところで一真にエッセンスを加えていただこうと考えていました」
――「かのかり」と本作、それぞれの曽田さんを見て「変わったな」と感じたことはありましたか?
「1年前と比べて、僕も含めスタッフとよくしゃべっているなと思いました。『かのかり』の時は1話ゲストだったのでそこまで議論が必要ではなかったのかもしれないのですが、コミュニケーションを取る量が非常に増えたと感じていました。それは、彼が途切れることなくいろいろな(作品の)現場にいるから、それだけ役に対する向き合い方も増えているのだと思います。『じゃあこんな感じでこうしてください』というよりは『監督、ここはこうですか? 僕はこうだと思うんですけど』と議論ができている感じがしましたね」
――メインキャスト5人のお話を伺ってきましたが、矢内さんから見て、5人がそろった時の魅力というのはどのように感じていますか?
「メインビジュアルを富ヶ谷の交差点の陸橋で撮ったのですが、5人ともキャラクターがかぶっていないので、めちゃくちゃバランスがいいんですね。ビジュアルを撮った時に『あ、これはいけるな』と内心思っていました(笑)。実は、5人でそろうことってあまりなかったんです。居酒屋のシーンでも、佐藤くんがいない日は康祐以外のところを撮って、工藤さんがいない時は明日美以外のところを撮って進めていたので、5人が集まったのは3日ぐらいかもしれないです。演じる5人も経歴が全然違うんですよ。役者一本でやってきた人もいれば、バリバリグループ活動中の方もいて、グループ活動から1回区切りをつけて『女優で輝きたい』と覚悟を決めている方もいたり、子役からずっとやってきた方もいる。そして、新進気鋭のカリスマ的な存在の方もいて、そのバランスが良かったのかなと思います」
――本作は康祐たち5人の成長物語ですが、裏にはキャスト陣の成長物語も隠れていそうですね。
「そうなっていたらいいですね。彼ら彼女らにとってもかなり悩みながら役を作っていたと思うので、『この芝居、これで合ってるの?』という会話は、ほかの作品と比べてだいぶ話し合えて作ることができたと思います」
――以前、工藤さんを取材させていただいた際に「こんなに笑いながらやった本読みはない」とおっしゃっていたのですが(https://www.tvguide.or.jp/feature/feature-2302693/)、その雰囲気は5人がNONKIで談笑するシーンにもそのまま表れているのかなと思います。
「『NONKI』で集まっているシーンを見ている時だけは、何も気兼ねなく見ていただきたくて、できるだけ“帰る場所”という感じにしたかったんです。漢字の『呑気』からローマ字表記の『NONKI』にしたのも、設定を2023年として考えた時に、赤ちょうちんの“和”な雰囲気のところに集まる5人でもいいけど、この物語のキープレイスだと考えた時に、『この作品が行くべき方向は“和”でできた方向なのか、今どきの格好よくてクールな方向にするか。どっちにしますか?』と質問を受けたタイミングがあって。その時に監督としては『絶対に今っぽい方が画の力は強いし、人間の心の中を描く作品だから、赤ちょうちんよりはクールで明るすぎない空間の方がいい』と言っていて、そこからバー設定の『NONKI』は生まれました」
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