家康の側室・於愛を演じた広瀬アリスが松本潤に感謝 「殿が本読みに付き合ってくださったおかげで、少しずつイメージを膨らますことができました」2023/09/24
第36回(9月24日放送)の大河ドラマ「どうする家康」(NHK総合ほか)では、徳川家康(松本潤)の側室・於愛(広瀬アリス)に焦点が当てられました。これまで朗らかな笑顔を見せ、周囲を明るくしていた於愛には、実は悲しい過去があり、於愛の日記から笑顔の下に隠されていた思いが明らかに…。
今回は於愛を演じる広瀬アリスさんから、於愛の人物像や家康を演じた松本潤さんとのエピソードなどを伺いました!
――初めに、於愛を演じ切った今のお気持ちをお願いします。
「期間が短かったのであっという間に終わった感覚でしたが、たくさん稽古を重ねながら役に染まっていく過程がすごく楽しかったです。撮影中は、於愛の明るさに自分も救われたことがたくさんありました」
――どんな資料を参考にしましたか。
「インターネットやスタッフさんからいただいた資料などを参考にしました。また、最初の頃『途中から入るのはすごく難しいことだから、本読みした方がいいのでは?』と殿(家康/松本潤)の方からお声がけいただき、本読みに付き合ってくださったおかげで、少しずつイメージを膨らますことができました」
――第36回はこれまでと違って、於愛のモノローグで描かれた少し珍しい回でしたが、最初に台本で読んだ時はどのように思われましたか。
「初めて登場した第23回(6月18日放送)は、於愛が殿を井伊直政(板垣李光人)と勘違いして、殿のお尻をバーンとたたくシーンから始まりました。彼女の過去は描かれていないし、“思い”も分からないので、そこではいちずに殿にお仕えしていたんです。すごく面白いキャラクターで、突拍子のない女の子が出てきたという感じでしたが、実はそこに伏線があって…。第36回の台本を初めて読んで、彼女の本当の感情を知った時には泣きました。於愛がものすごくつらい思いをしていたのに笑顔を作っていたことが明かされて、ちょっとゾクッとしましたね。暗い部分がしっかり描かれていて、彼女自身にもたくさん葛藤があったんだと思いました」
――松本さんのお尻をたたくシーンはどのように撮影されたのでしょうか?
「『遠慮なんかしなくていいからどんどん来てくれ』と言われましたが、松本さんのお尻をたたくなんて恐れ多いことでした。最初は遠慮していたんですけど、テストや手元、引きのカットなどを撮っているうちにだんだん慣れてきちゃって、たたく力が強くなっていきました(笑)。第35回(9月17日放送)で、もう1回、殿のお尻をペチッとたたくシーンがあったのですが、それはたたき慣れたもので、一発OKとなりました(笑)」
――そんな松本さんが演じる家康の魅力はどんなところだと思いますか?
「殿の魅力は、とても不器用なところだと思います。誰よりも一番上に立っていないといけない人だけど、実は弱くて。考えすぎて思うようにいかないことがあるなど、女性が横にいて本当に支えたいと思うような方。於愛としては、夜に殿と2人でお茶を飲みながら話すことが多く、殿の弱い部分にたくさん触れてきたので、そんなところが魅力だと感じました」
――史実では、とても美しく人柄が良くて、誰からも好かれたといわれている於愛ですが、演じるにあたって心掛けたことを教えてください。
「第36回で今まで見せたことのない於愛の表情をすべて出せればいいと思っていたので、第35回までは『こんな善人いるのか』というくらい大らかで優しく、明るい太陽のような女性を演じていました。そして、殿が徳川家康という鎧(よろい)を脱いで、1人の人間として居心地よくいれる場所を作り、とにかく殿にお仕えするよう意識しました。その方が見ている方たちには第36回の於愛の心情がより伝わるのではないかと思っていました」
――正室である瀬名(有村架純)が亡くなった後の於愛はどんな思いで殿のそばにいたと思われますか?
「妻ではあるけれど、本当にお慕いしている方ではないという葛藤が彼女の心の中にあって。それを一切見せないのが彼女の強さです。また、第35回までは、明るくその場を照らしてくれるのが彼女の強みだと思っていたんですが、実は自分の感情を押し殺しながらお仕えしているという強さに気付きました。さらに、過去を引きずりながらも殿に愛を与えようとしていたけど、実は殿から愛をもらってすごく助かっていたことに気付ける強さなどもたくさん描かれていたので、それを表現できればと思って演じていました」
――石川数正(松重豊)が出奔した時には、於愛が数正の仏像を隠し持っていたり、殿に直言したりするシーンもありました。於愛の役割はどう変化していったと考えていますか?
「女性ならではの意見や、女性が見ていて感じ取れる男性同士の絆の深さについて於愛が代弁し、行動している。それは、道を正すというより、こういう意見もあるよと提案して、手を差し伸べるキャラクターだったと考えています」
――好きなシーンや思い出深いシーンを教えてください。
「第30回(8月6日放送)で鷹匠をしている本多正信役の松山(ケンイチ)さんと話すシーンです。鷹を呼ぶシーンの『ほー』は渾身(こんしん)のシーンで。やっと、めちゃくちゃふざけられるぞと思いました(笑)」
――松山さんとのシーンはいかがでしたか?
「松山さんが大体リハーサルでアドリブを入れてくるので、それに乗っかれればいいかなと。本多正信と2人のシーンは少ないので、ご一緒できたことがうれしくて。於愛が『イカサマ師どの』と正信に声をかけるところが嫌みっぽく見えなかったらいいななどと、バランスは考えましたが、やはり演じていて楽しかったです。もう一つは第34回(9月3日放送)の数正の押し花を見て、皆で泣くシーンです。たくさん時間もかかりましたが、鼻水が出るくらい気持ちが入りましたし、久々に家臣団の皆さんが集まったので一体感もあって、その空気に完全に飲まれて。でもすごく心地が良かったです」
――於愛とご自身の似ている部分はありますか。
「あまり意識はないですが、似ているとよく言っていただきました。私はおっちょこちょいなところが多く、大体バタバタしていて、殿のお尻をたたいた於愛と同じように突拍子もないことが結構あるので、『ちょっと分かる』と思いながら楽しく演じていました」
――広瀬さんのコメディエンヌ的な魅力があふれていた於愛役について、やりがいを感じたことはありましたか?
「実はパッと明るくすることは自分も得意分野なんです。あらためてそれを再確認できたし、やっていて楽しいと心から思えたので、於愛という役を演じられて本当に良かったです」
――第36回の最後に、於愛が本当の笑顔を家康の前で見せるところがありましたが、そのシーンを撮影された時のエピソードを教えてください。
「最後、縁側でキャッキャしているところは完全にアドリブなんです。殿がどんな動きをするのかが分からなかったし、セリフのレパートリーがないから『どうしよう』と悩んでいたんですが、松本さんと動きを大まかに決めて、その中でやって、シンプルに楽しくできました」
――松本さんの座長としての振る舞いはいかがでしたか?
「殿は座長として現場を引っ張ってくださって、細かな気遣いもしてくださる方です。セリフでやりづらいところがあったら何度も確認してくださるなど、本当に360度、常に周りを見ている方なので『格好いいな』と思っていました。家臣団の皆さんが『殿ー!』とリーダーのように慕っている雰囲気が現場にあるんですけど、殿と一緒にいる時間が長いとそうなる意味が分かりました。本当に付いていきたいと思う方です」
――於愛は若くして亡くなりましたが、彼女の人生についてどのように感じていますか?
「彼女はお墓も女性としては本当に大きくて、人にとても愛されていました。瞽女(ごぜ)と呼ばれる、目の悪い方たちに食料や衣服を与えるなど、愛を与えるからこそたくさん愛されていて、とても愛にあふれた方だと思いました。彼女がもっと長生きしていたら、お方様として成長されて、瀬名さますらも超えるすごいお方になっていたのではないかと想像します。私と変わらないくらいの年齢で亡くなられているんですが、演じながら『この方がもっと年を取った姿を見たかった。誰もが引きつけられる女性だな』と感じました」
――於愛を演じて学んだことを教えてください。
「彼女の懐の深さです。殿の側室になる女性って、そこがすごいと思うんですよね。何があっても絶対的な味方だし、身も心も支えている。そういうシーンがたくさんありましたし、殿の頭の中を一番理解しているのが於愛だなと。それを明るく前向きな言葉に変えてくれて、プラス思考に変えてくれたのが於愛だと思います」
――ご自身にもそのような懐の深さは…。
「全くないです(笑)」
――そうなりたいと思われましたか?
「なりたいと思いました。本当に於愛のようになれたらすてきな大人になれるのでしょうが、どうしても自分を優先させちゃいます(笑)」
――今作は広瀬さんにとってどんな経験になりましたか?
「時代劇はあまり経験がなかったので、所作や笛の練習などいろんな経験を重ねて一から役を作っていったので、あらためてお芝居ってどんなものだったかを学べました。20代後半になると新しく学ぶ機会は少ないので、自分の中で大きな経験になりました」
――演じる楽しさをあらためて感じたと。
「そうですね、ちゃんと気持ちが入って、自分が於愛として殿と会話している。長いシーンは少なかったですが、程よい緊張感があり、ちょこっと心臓がバクバクしながらセリフを言って、終わった後にすごく達成感がある。そういう楽しさがありましたね」
――あらためて戦国時代の女性を演じて、感じたことや影響を受けたことはありますか?
「時代劇というだけで自分の中でハードルが高くて、すべて美しく見せなきゃいけないなどと考えて、すごく構えちゃっていたんです。だけど、台本を読むと於愛が人間らしくて。お方様と呼ばれる立場で、人の上に立つ瞬間もあるけれど、実はめちゃくちゃ緊張していたり嫌そうな顔をするなど、人間らしさがすごくにじみ出ていました。そして、この時代の女性たちは全員強いです。当時の男性や今の時代の女性よりも強いんじゃないかというくらい筋が通っていて、男性を支える強さがあると感じました」
――物語の中で特に強い女性として印象に残っている人は誰ですか?
「瀬名さまから側室をお願いしたいと言われるシーンがクランクインで、一気に引き込まれました。女性らしさもあるけれど、心(しん)の強さというか、太い何かが1本あるっていう。あれで、自分の於愛というキャラクターを少しつかめたような気がします」
――ありがとうございました!
【番組情報】
大河ドラマ「どうする家康」
NHK総合
日曜 午後8:00~8:45ほか
NHK BS4K
日曜 午後0:15~1:00ほか
NHK BSプレミアム・NHK BS4K
日曜 午後6:00~6:45
NHK担当/K・H
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