堤幸彦が明かす「ノッキンオン・ロックドドア」を“質の高いミステリー”にするためのこだわり、そこに掛け合わさる松村北斗&西畑大吾の“真面目さ”とは2023/09/01
――現在第5話までオンエアされましたが、印象に残っている回はありますか?
「第2話、第3話で、シャンパングラスを持って演説中に倒れるという謎はとても面白くて、『床から毒が検出されて、シャンパングラスの中に入っていたのだろう。でも無作為に選んだグラスにどうやって毒を忍ばせたのか?』という基本的な謎が徐々に解明されていきましたよね。あれはスリリングで面白かったです。倒理や氷雨たちが実演しながら解読していったり、解読した後にまた別の秘密が隠されていたりと、髙橋洋人監督が丁寧に作られていたことが面白かったです。第4話、第5話でも、女子高生役の方がたくさん出てきたのですが、女子高生役というと、どんなドラマでも記号的に扱うことが多い中で、稲留武監督が1人ずつちゃんとキャラ付けをしていたことがとてもよかったです。地下トンネルが少し不気味なイメージとしてきちんと浮かび上がってきたので、スリリングで面白く見ることができましたね。スケジュールなどいろいろな事情がある中で、これだけ緊密感のあるドラマを後輩たちが作ってくれたことにはとても頭が下がる思いですし、演出的なドラマのこだわりでは、2話と3話、4話と5話は両者とも方向性が違うけれど、今後、自分たちがグループとして作品を作ることへの財産になると思いました。場所選びにもこだわりがあって、探偵事務所は非常にリアルなスペースなんです。東中野の一角という設定なのですが、その設定で面白いのは、風景の中に中野サンプラザが映り込んでいる、実はそこに意味を持たせているんです。なぜ新宿の方向を撮らずにサンプラザの方を撮っているのかというと、そのうち(中野サンプラザが)なくなってしまうということで、70年代のロックシーンが好きな私にしてみると少し切ない思いもあって、サンプラザの画を入れています。そういう実景一つにしても、あの辺りで事件が起きているように見せられて思い通りにできているという意味では、とてもうまくいったと思います」
――「ノキドア」もいよいよ後半戦に突入します。今後の「ノキドア」の注目ポイントを教えてください。
「これから放送される第6話においては、密室劇といっても“推理側の密室劇”なんです。それが面白いんですよね。氷雨くんは別のところにいるけど、大部分のストーリーは探偵事務所の会話劇によって成立している。第6話だけ取り出して東京・本多劇場あたりで推理劇として構成もできるような、そんな内容になっています。そういう意味では、最終話までぜひご期待いただければと思います」
――ちなみに、クライマックスに向けて“キーパーソン”を挙げるならどの人物になりますか?
「美影です。犯罪コンサルタントというところまでは分かっているのですが、『何者!?』と感じている人が多いと思うんです。『美影がまた人を殺したぞ』なんてセリフもあるわけで、『どうやって人を殺しているのか』『なぜ人を殺しているのか』と、その辺が一番面白いポイントになってくるのかなと思います。役回りがだんだん解明されていくのですが、ミステリーそのものの立ち位置といいますか、美影と呼んでいる男の登場から最終回に向かっての立ち振る舞いが、実はこのドラマの大きな要素でもあるので、ここはあまり説明せず、オンエアを楽しみにしてもらいたいと思います」
【プロフィール】
堤幸彦(つつみ ゆきひこ)
1955年11月3日生まれ。愛知県出身。演出家・監督。95年のドラマ「金田一少年の事件簿」(日本テレビ系)で注目を集め、その後も「TRICK」(テレビ朝日系)、「ケイゾク」「SPEC」(ともにTBS系)など数多くの大ヒットドラマを演出。ほかにも、映画「20世紀少年」三部作、「イニシエーション・ラブ」「天空の蜂」「真田十勇士」「人魚の眠る家」「十二人の死にたい子どもたち」「望み」「ファーストラヴ」「ARASHI Anniversary Tour 5×20 FILM “Record of Memories”」、舞台「電車男」「テンペスト」「悼む人」「魔界転生」「巌流島」など数多くの作品を演出してきた。
【番組情報】
オシドラサタデー「ノッキンオン・ロックドドア」
テレビ朝日系
土曜 午後11:00〜11:30
※放送終了後、TVer(https://tver.jp/series/srlxv6mww1)で最新話を見逃し配信
※TELASA(https://www.telasa.jp/series/13629)では、全話独占配信中
取材・文・撮影/平川秋胡(テレビ朝日担当)
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