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堤幸彦が明かす「ノッキンオン・ロックドドア」を“質の高いミステリー”にするためのこだわり、そこに掛け合わさる松村北斗&西畑大吾の“真面目さ”とは2023/09/01

堤幸彦が明かす「ノッキンオン・ロックドドア」を“質の高いミステリー”にするためのこだわり、そこに掛け合わさる松村北斗&西畑大吾の“真面目さ”とは

――個性的なキャラクターが特徴的な物語だと思いますが、松村さんや西畑さんに「こう演じてほしい」「こういう立ち位置であってほしい」と何かオーダーはされましたか?

「松村くんは見ての通り、素晴らしい顔立ちなので、はっきり言えば無言でも成立するような人なんです。でもそれでは面白くないので『早口でバシバシ言って、言った後はそれがどう広がるかは考えなくていい。少しわがままなキャラであってほしい』と思っていたんです。そういう人が壁にぶち当たって悩む姿がドラマ的には一番面白いわけで、第1話においては、『ちょっと上から目線の人物』というイメージをお伝えしたことがあります。もちろん、彼は事前に本を読んですごく考えてきてくれていて、そんなに外れてもいなかったので、結果的には彼を後押しした形になってとても良かったです。西畑くんは『何かあっても一呼吸飲んでから話をする。ただ、丁々発止ではない、自分だけのリズム感を持っている人にしてほしい』『倒理がガッと来ても、それをキャッチボールのように受け止めるのではなくて、ちょっと変化するリズムを持っていてほしい』と伝えたような気がします。ああいうメガネキャラなので、言っていることはすごく理知的でありたいと思いましたし、登場の仕方も少しずつ変化していくので、『第1話においては倒理が曰(のたま)うことに対して少し受け身になるキャラかもしれないけど、徐々にそれは変化していくから』とも伝えました。リズム感が微妙に違う2人が、コンビとして成立しているのかしていないのか、それがよく分からない感じで出てくるドラマは面白いと思いましたし、松村くんも西畑くんもピッタリ当てはまったと思っています」

――倒理と氷雨にも関わる他のキャラクターについてはいかがでしょう?

「石橋静河さんが演じられている穿地決という人物は、実は一番難しい役なんです。目の前で見れば分かるということに『何してんだお前ら』とボケる刑事、そういうキャラはなかなか演じるのが難しいのですが、それを石橋さんが演じることは本当に面白くてしょうがない。大正解でした。場合によっては大食いキャラになったり、『私は自分の利にならないことはやらない』と言いながら、最後は刑事のさがで話に乗ってきてより一層面白くする。そのリズムの中でも石橋さんは変化球という意味ですごく良かったです。それから、駒木根隆介くんが演じている小坪清太郎というキャラが私は大好きでして。彼は置いておくだけでドラマとしての幅が出ます(笑)。畑芽育さんが演じている薬師寺薬子ちゃんもとにかくかわいらしいし、いろいろなツッコミ要因としては、事務所にいて本当に良かったなと思います。最後は主人公2人の感情を助長する、とてもいい立ち位置のところでもあるので注目していただきたいです。そして何より、私は渡部篤郎さんが大好きで、待ちに待った渡部さんの登場でした。とても若くて格好いい男の子2人が縦横無尽に活躍している中で、渡部さんで締めるというのも、もうこのドラマの“演出得”といいますか、演出していても目がうれしいという気持ちになりました」

堤幸彦が明かす「ノッキンオン・ロックドドア」を“質の高いミステリー”にするためのこだわり、そこに掛け合わさる松村北斗&西畑大吾の“真面目さ”とは

――制作発表会見や「ノキドア ドキュメント」(TELASA)でも、松村さんと西畑さんについて「期待通り、それ以上の方」とコメントされていましたが、俳優として感じるお二人の魅力を教えてください。

「松村くんは、どんな役でも引き受けてくれるんだろうなと思いました。今回のようにちょっと面白くて格好いい役どころはもちろん、性格的に破綻してダメな感じ、昭和っぽいレトロな香りのする男性、他の作品もすごく見てみたくなります。同時に、将来的に別の作品で組めるのであれば、今作とは全く違う、もっと“やばい人”をやっても似合うと思います。俳優としていろいろな色に染められるのが一つのタイプだとしたら、そういうことではないかと思うんです。西畑くんはとにかく勘がよくて、自分で役を咀嚼(そしゃく)して現場に臨むタイプ。彼も将来的に何か別の作品を一緒にやりたいのですが、僕が一番面白いなと思うのは、(消臭剤のCMの)鬼太郎で(笑)。あの特徴のある顔立ちを生かした役どころは、今後、彼の前に絶対現れるだろうし、ちょっとシュールで面白い存在感のようなものは出せると思っているので、将来がすごく楽しみです」

――堤監督から見て、松村さんと西畑さんの共通点、逆に全然違うと感じた点をそれぞれ教えてください。

「共通点は、2人ともとても真面目。本当に尊敬に値する真面目さです。役者といっても人間ですから、この時期だと暑さでの疲労感による少しの乱れだったり、若くて勢いのある2人でも、立っているだけでつらいという状況下で限界があるはずなんです。それを全く顔に出さない、カメラ越しにその波長が見られない。ある種のタフさといいますか、これもまた役者に求められる重要な要素で、それはもう十分クリアしています。節度とマナーを持ってわきまえていて、ドラマチームの要求にもちゃんと応え、それ以上の何かを残して帰るという点では、2人とも素晴らしい才能を持っています。2人の違いといえば、見た目のビジュアルが全然違いますから、格好いい顔をした松村くんが変なことやると面白いし、かわいい顔をした西畑くんが格好いいことを言うと格好よくなる。その辺はとても演出しがいがありますし、ドラマの中にもポコっとはまる、面白い2人だと思っています。お二人を見ていると『どう料理しようか』と、どんどんアイデアが湧いてくるんですね。だから、(倒理が)料理するシーンも人参を切るだけでも本当は難しいのに、松村くんは見事にクリアしていて。あのシーン、本当に野外で作っていたので『めちゃくちゃ暑い中でお湯を沸かして、その湯気の中でいかにおいしそうなものを作るか』という意味では、松村くんは天才的だと思いました(笑)」

――会見では「堤監督からのむちゃぶり」について西畑さんが触れていましたが、撮影でむちゃぶりはいくつかあったのでしょうか?

「むちゃぶりはしたかったのですが、30分の中ではちょっとずつしかできなかったです(笑)。むちゃぶりをすると、そこからさらに上乗せをしたり、それが発展したりするのが面白くて。かつて撮らせていただいた『トリック』はまさにその連続の応酬で、それが受け入れられた数少ない作品の一つなんです。今回は多少はむちゃぶりもしましたが、割とおとなしめだったので、皆さんはちょっとほっとしたんじゃないかな?(笑)。唯一、天川考四郎の『アディオス』だけは、渡部さんの顔を見ていたらどうしても浮かんできてしまったのでお願いしました」

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