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明智光秀役の酒向芳。松本潤が演じる家康を見て「松本さんはふてぶてしい時にはこういうふうになるんだと。優しいけれど、嫌な目をしていました」2023/07/22

明智光秀役の酒向芳。松本潤が演じる家康を見て「松本さんはふてぶてしい時にはこういうふうになるんだと。優しいけれど、嫌な目をしていました」

 第27回(7月16日放送)の大河ドラマ「どうする家康」(NHK総合ほか)で、織田信長(岡田准一)から富士遊覧のお礼として安土城に招かれた徳川家康(松本潤)。その酒宴の席で家康が魚料理が臭うと言い出したことで、信長は饗応(きょうおう)役の明智光秀(酒向芳)を叱責、任を解きました。その後、信長と対面した家康は激しく言い争うことに…。そしてついに第28回(7月23日放送)で、「本能寺の変」がぼっ発することになるのです。

 今回は光秀を演じる酒向芳さんから、酒宴の席で信長に殴られたシーンや家康に謝罪したシーンの裏話、「本能寺の変」の撮影エピソードなどを伺いました!

――大河ドラマ4作目のご出演となりますが、酒向さんにとって大河ドラマはどんな作品ですか?

「私にとってはどのドラマも同じです。ただ、とにかく衣装は重いです。甲冑(かっちゅう)を着けるのは2回目でしたが、こんなに重いものだとは思いませんでした。65歳を過ぎるとしんどいです(笑)」

――甲冑は何キロぐらいなのでしょうか?

「全部着けておよそ20kgだと聞きました。私の体重が65kgなんで、85kgはこういうものなんだと体感しましたね。私だけじゃなく、鎧(よろい)を着ける人は全員そうだったと思います。『これを着けて走った当時の人はすごいよな』『俺たちじゃ無理だよな』とみんなで話していました」

――明智光秀役に決まった時の心境を聞かせてください。

「どんなに歴史上の名のある人が来ても、『私がやるんだな』と思うだけで、特別身構えることはありません。こんなこと言ったらバチが当たるかも分かりませんが、歴史上の人に強い関心を持っていないので、『明智光秀を演じるんだな』と思っただけなんです。これは徳川家康でも織田信長でも、多分同じなんですよ」

明智光秀役の酒向芳。松本潤が演じる家康を見て「松本さんはふてぶてしい時にはこういうふうになるんだと。優しいけれど、嫌な目をしていました」

――光秀は過去にいろいろな役者が演じられていますが、過去の作品や役者が頭に浮かんだりはしましたか。
 
「それもないですね。長谷川(博己)くんが光秀を演じた大河ドラマ『麒麟がくる』も見ていないんです。かえって見ない方がいいのかなという気持ちもあって。また、光秀について調べることもしないので、不勉強だと言われればそうかもしれませんが、作品や演者によってまちまちだと思うので、与えられた脚本の中で想像して演じるだけです」

――今までも歴史上の人物を演じた時に調べることはしなかったのでしょうか?

「一度だけあります。原田(眞人)監督の映画『燃えよ剣』(2021年)でもらった役が実在の人物で、会津まで行って。会津の空気を自分の中に取り込めないかと考えた時に、図書館に行ったら郷土史に出ていたんです。たった4、5行でしたが、見た時に『本当に生きていた人なんだ』と実感しました」

――古沢良太さんの脚本を読んでいかがでしたか?

「自分の登場シーンから脚本が届いたので、そこから読んだのですが、古沢さんの照準の当て方が面白く、あまり大河ドラマらしくないなと。これまで家康がこんな形で表現されることがなかったので、それが見る側に伝わればいいなとも思いました」

――今作の光秀をどのように捉えて演じようと意識されたのでしょうか?

「監督からは嫌みっぽい人を演じてほしいという要望があったので、それに自分が色付けをしていく感じでした。光秀は私の故郷である岐阜の人なのですが、ふと、方言が出るのはどうだろうかと思って監督に提案したら、意見がマッチングしたんです。ただ、最初から方言で話すのではなく、天下を取った後、滅んでいく時に故郷の言葉が出るのが面白いのではないかと思い、そこで使いました」

――最期にどんな方言が出てくるのか楽しみです。ほかに印象的だった方言はありますか?

「“たわけ”という言葉は名古屋でもよく使いますが、私の地元の方ではクソがつくんです。“クソたわけ”と。愚弄(ぐろう)した言い方ですが、明智あたりの人が聞けばすぐ分かることでしょう」

――役に対してはどのように思って臨まれたのでしょうか?

「もらった役に関しては好きになりますよ。そうでなければ、役と仲良くはなれないので。いつまでも『この役嫌いだな』『肌に合わないな』と思うと、合わない服を着せられるようなもので、自分に合った服を選んで着たいというふうになるんです」

明智光秀役の酒向芳。松本潤が演じる家康を見て「松本さんはふてぶてしい時にはこういうふうになるんだと。優しいけれど、嫌な目をしていました」

――もらった役は好きになるということですが、光秀に対して共感できた部分はありますか。

「共感できるシーンはたくさんあります。嫌みなところや人を見下している部分は自分の中にもあるし、人間なら誰しも持っているものだと思います。それを出すのが私の仕事で、台本を読んだ時にその感情を分かっていなきゃダメなんです。分からない場合や自分の中にないものは表現できないですから。自分の中にあるものであれば、どんな嫌なものだって出していきます」

――光秀はどこで謀反を決意したと思われますか?

「もしかしたら画面では捉えていないところで決意したかもしれないと思うこともありますが、画面で見えている場面だったら、第27回の信長から任された饗応の場で、みんなの前で恥をかかされたことが最初ではないでしょうか。今とその時代の恥のかき方は全然違うんじゃないかと。今の何千倍、何万倍もやっぱりすごいものだったと思うので」

――その第27回で、饗応役として家康をもてなすシーンを演じられた際のエピソードを教えてください。

「とても緊張感がありました。光秀が人前で恥をかくシーンなので、もし自分が人前で恥をかいたらどうなるかを想像しました。例えば、ほかの俳優やスタッフの前で、監督から『できていないから役を降りたら?』と言われた瞬間は大恥をかくでしょう。自分ができなかったことを恨むよりも、恥ずかしいという思いが先立てばそこにはいられなくなるだろうなと。光秀は恥ずかしさの度を超えたから、信長を恨むことになったのかもしれないですね」

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――信長役の岡田さんとのお芝居はいかがでしたか?

「岡田さんとは今まで3、4回ご一緒していますが、強い岡田さんしか見たことがないんです。でも最近、岡田さんの映画『最後まで行く』(23年)を見たら、見たことのない弱い岡田さんが見えて。弱い岡田さんを見るのは、私にとっては楽しみでもあり、すごく面白かったです。しかし、今作で岡田さんが演じる信長は強いですよ。演出に要求されているから岡田さんは強い信長を出しているんでしょう。信長にも弱い部分は多分あると思うんですけども、それは画面には出てこないんです」

――そんな強い信長に光秀は殴られますが、そのシーンを演じていかがでしたか?

「扇子で殴られたのですが、『反応が早いです』と。扇子が顔のところにきてから顔を動かした方がいいと言われて。私はそれだと遅いんじゃないかと思っていたのですが、岡田さんはカメラアングルを考えて言ってくれていたんです。それを考えられるのは擬斗の才能がある岡田さんだからですよね。私はそっちのプロではないので『なるほど』と納得したと同時に、『この人はちゃんと言える人なんだな』と感心しました。遠慮せずに言ってくれるところは岡田さんの優れたところだと思います。年上だからとか、出演作が多いから遠慮して言えないというのは違うと思うので。そういう意味では、松本さんも私が近くに行ってむんずと器をつかんで駆け出す時に、ふてぶてしい顔をしていらっしゃって、それを見た時に『いい表情しているな』と思いました」

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――家康に「鯉が臭う」と言われた後、光秀が謝りに行きましたが、その時の光秀の胸中はどのようなものだったと思われますか?

「『恥かかせやがって』という思いがあったでしょうね。お前があの時に変な臭いがすると言わなければと。だって、光秀は毒を入れていないわけですから。家康のせいで成り下がって、歴史上では四国に行かされるんですよね。家康を見下していたことは事実であって、恨んだこともあの時にはありました。光秀の中では、ばかにすることが必要だったんでしょうね」

――その時の松本さんのお芝居はいかがでしたか?

「ふてぶてしいですよね(笑)。松本さんはふてぶてしい時にはこういうふうになるんだと。優しいけれど、嫌な目をしていました」

――光秀のように、大衆の前で恥をかかされたことはありますか。

「劇団に入ったばかりの時、私が演じていると、先輩から『下手はうつるから』と嫌な顔をされた時は恥ずかしかったですよ。でも事実でしたから。『うまいのはうつらないのよね』と言われて、『そうか、うまいのはうつらないんだ』と思ってね。そういう恥をかいたことがたくさんありますね」

――そういう感情が次のパワーにつながるんですか。

「やはり、へこみますよ。でも、このまま辞めたら何もすることがないじゃないかと思って、もうちょっと頑張ろう、見返してやろうと考えますね。好きで入った道なので、そう簡単には辞めるわけにはいかないぞというのもあります」

――それでは、光秀のように人を裏切ったことはありますか?

「約束を破ることは、いっぱいあります。でも、禍根になるほどのことはないです。妻との約束を破るなんていうのはしょっちゅうありますが、裏切ったことはないです。浮気はしていませんから(笑)。そう考えると、約束を破る程度で裏切ったことはないかもしれません」

――そして、光秀といえば「本能寺の変」が見どころですが、どのように撮影されたのでしょうか?

「コロナ禍が影響したのかもしれませんが、ほとんど室内の撮影でした。基本は建物の中にいて、外が映る場合にはLEDウォールが使われていました。戦いのシーンであっても、LEDウォールにより映像の背景が使われている場面もあります。でも、それはパッと見ただけでは分からないくらい精巧に作られています。第26回(7月9日放送)の富士の裾野で撮ったシーンは静岡ロケだったので、広々とした気持ちでできました」

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――「本能寺の変」についてどんな思いで撮影に臨まれたのでしょうか?

「順を追って撮影できれば自分の中で盛り上がっていくものがありますが、前後して撮ることがあるので、今日は『本能寺の変』、明日は『本能寺の変』の前の日の撮影となると、組み立てがなかなか難しいんです。セットに入って、建物の向こうにあるLEDウォールの映像が燃え上がっていればその気持ちにはなりますし、スモークをたいているので煙も出ていますが、火の粉は降らないので、臨場感を自分の想像力で補うしかないんです」

――組み立てが難しいとのことですが、ご自身でモチベーションを上げるためにしていることはありますか?

「それは周りの俳優さんが一緒にいるからできるんです。私の周りにいる家来たちが戦っている中にいるから、高揚感が上がるんですよ。一緒にやってくれている俳優さんの方の力が大きいですね」

――今回で言えば、どなたに助けられましたか?

「エキストラの方々です。擬斗をやってらっしゃる方は自分の目の前で本気で戦っていらっしゃいますからね。けがのないように何回もリハーサルをやっているのですが、本番となればやはりすごくて、そこに自分がいるわけですから、いや応なしにそういう気持ちにさせられます」

――最後に視聴者の皆さんへメッセージをお願いします!

「視聴者の皆さんは、今までに見たことがある『本能寺の変』は期待していないと思うんです。どんなシーンをやるんだろうと思って見てもらえたらと思います」

――これまでとは違う「本能寺の変」が見られるのでしょうか?

「そうだと思います。それは作り手もそうしたいんです。同じようなものを見せて視聴者が喜ぶかといったら喜ばないでしょうから。そのために頑張っていると思います」

――ありがとうございました!

明智光秀役の酒向芳。松本潤が演じる家康を見て「松本さんはふてぶてしい時にはこういうふうになるんだと。優しいけれど、嫌な目をしていました」

【番組情報】

大河ドラマ「どうする家康」
NHK総合
日曜 午後8:00~8:45ほか
NHK BS4K
日曜 午後0:15~1:00ほか
NHK BSプレミアム
日曜 午後6:00~6:45

NHK担当/K・H



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