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「一旦、全部を出し切ろう」。結成10年、さすらいラビーが手にした自信と2人の旅路【ロングインタビュー後編】2023/07/19

「一旦、全部を出し切ろう」。結成10年、さすらいラビーが手にした自信と2人の旅路【ロングインタビュー後編】

 年間400本以上のライブに出演し、全国にその名を轟かせる日を虎視眈々(たんたん)と狙うお笑いコンビ・さすらいラビー。2021年には「ABCお笑いグランプリ」、今年は「ツギクル芸人グランプリ」で決勝に進出し、「M-1グランプリ」では2年連続で準々決勝まで勝ち進むなど、今後の賞レースでの活躍にも期待がかかるコンビです。

 7月20日には、2カ月おきに行っている新ネタライブの集大成「ラッテ」が開催。インタビュー後編では、宇野慎太郎さん、中田和伸さんのお二人に、結成時のエピソードや、憧れの存在について語っていただきました。(前編はこちら:https://www.tvguide.or.jp/feature/feature-2324653/

結成の経緯&コンビ名の由来

「一旦、全部を出し切ろう」。結成10年、さすらいラビーが手にした自信と2人の旅路【ロングインタビュー後編】

――ここからは、結成当時のことを振り返っていただけたらと思います。出会いは大学時代とのことですが、お互いの第一印象は覚えていますか?

中田 「宇野は青山学院大学のお笑いサークルだったんですけど、韓国と日本のハーフの人と漫才コンビを組んでいたんです」

宇野 「相方が、確か日本に来て1年目とかで。日本語はカタコトでした」

中田 「2人の漫才が、その相方を生かしたスタイルで。完全に宇野がブレーンで司令塔で、相方をうまくコントロールして、めちゃくちゃ爆笑をとるような漫才をしていたんです。『すごいブレーンだな!』と思って。なんだっけ、『設定クソ野郎』だっけ?」

宇野 「あぁ、貫ちゃん(ストレッチーズの高木貫太)が言ってたやつね(笑)。『構成クソ野郎』だっけな?」

中田 「ニュアンスしか覚えてないですけど、なんか『ファッションで漫才やってないぞ』みたいな。『こいつは緻密な構成でネタを披露してウケをとる、構成クソ野郎だ』みたいなことを貫ちゃんが言っていたんですけど、僕もそのイメージでした。完全に宇野がブレーンだなと」

――そのコンビの時は、宇野さんがネタを書いていたのですか?

宇野 「僕が全部書いていました。中田は、当時『このよの』というコンビを組んでいたんですけど、『めちゃくちゃ面白いらしいよ』ってうわさは聞いていて。そしたら大会で初めて見る機会があったんですけど、もうとにかく中田の見た目や顔が印象的だし、パッと見ただけでボケの人というのが分かるし、期待通りめちゃくちゃ面白くボケるし。めちゃくちゃ漫才もうまくて、『同学年でこんなにはっきりと、しっかりボケる人がいるんだ。すごいな』というのが中田の第一印象です」

――そこから結成に至った経緯を教えてください。

中田 「僕の当時の相方が大学院に進学する、宇野の相方も就職するとなって。僕らも『お笑いの道に進みたい、でも就職もしないとな』みたいな、ちょっと揺れている感じだったんです。そんな時、『わらいを愛する学生芸人No.1決定戦』という大会にそれぞれ別のコンビでエントリーしていたんですけど、どちらも落ちてしまって。それがめちゃめちゃ悔しくて、そのタイミングでお互いに声をかけ合って、コンビを組みました。やるからにはプロを目指すことを前提で、コンビを組もうと」

宇野 「そうですね。お互いに『じゃあ、やってみよっか』って。どっちかが誘うとかではなかったです。大学3年生になるくらいのタイミングで、さすらいラビーを組みました」

「一旦、全部を出し切ろう」。結成10年、さすらいラビーが手にした自信と2人の旅路【ロングインタビュー後編】

――コンビ名の由来は?

中田 「当時Skypeがはやっていたので、Skypeで『コンビ名決めないとだね』と。『せーのでお互い単語を一つ出して、それをガチャッと組み合わせた名前にしよう』と言って、僕が『さすらい』、宇野が『ラビー』を出して、くっつけました。僕は結構考えたんですよ。『これは大事だ』と思って、意を決して『さすらい』と打ってエンターキーを押したら、同時に宇野が『ラビー』と『メロン』って2個出してきたんです。『さすらいメロン』よりは『さすらいラビー』か、となって決定したんですけど、この『せーので決めようぜ』という時に、2個出す神経が理解できなくて」

宇野 「ははは!(笑)。その時、Skype中に別の話をしていて、『そういやコンビ名決めなきゃね』ってなったんですよ。そういう流れの中だったんで考える時間もそんなになくて、『じゃあ打つか』って感じだったんですけど、当時、僕の頭の中の単語の引き出しの一番手前にあったのが『メロン』で。好きな食べ物がメロンなんですけど、当時の僕は何を聞かれてもすぐ『メロン』って答えちゃうような人間だったんです」

中田 「どんな人間だよ」

宇野 「そういう理由で『メロン』が一番に出てきたんですけど、『メロンて!』っていう思いも自分の中でちょっとあって。その時に使っていたパソコンがNECのLAVIEで、『ラビー』というのがパッと目に入ってきたので、『このままだとメロンって打っちゃう…』『ラビーも!』『でもやっぱりメロンも!』って、2個送っちゃった感じですね」

中田 「本当に残念な人間ですよね…」

宇野 「なんでだよ。いいだろ別に(笑)」

中田 「2個送ってくるってことは、魂を乗せてその1個を送った人を茶化してるってことなんですよ。その頃は未来しか見えてなかったんでそんなに言わなかったんですけど、『2個!?』とは思ってました。だんだん腹立ってきた」

宇野 「そんな言われると思わなかった(笑)」

――2012年には「関東大学生漫才グランプリ」で優勝されました。

宇野 「大学3年生の夏くらいでした。コンビを組んでわりとすぐのタイミングで、たまたま優勝させていただきました」

中田 「プロの道を目指すにあたって、自信にはなりました。『優勝できるんだ』って」

宇野 「それ以外にも、学生の大会とかでちょっとずつ優勝できたりして。結果を残すことが徐々に自信につながっていきました」

2人の大学時代「塾講師」「サー席」

「一旦、全部を出し切ろう」。結成10年、さすらいラビーが手にした自信と2人の旅路【ロングインタビュー後編】

――大学時代、お二人ともお笑いに打ち込んでいたかとは思うのですが、お笑い以外で頑張っていたことや時間を使っていたことはありますか?

中田 「僕は塾講師のアルバイトです。個別指導塾でのバイトに、とにかくいっぱい時間を割いていました。中高生の国語、数学、英語を担当していたんですけど、時間が2コマから7コマで分けられていて、『このコマとコマの合間、ちょっと空きができるからネタ合わせしに行こう』って、合間にお笑いもやって。『教え子を合格させたい』『自分もお笑いの大会で優勝したい』という2本柱でやってましたね」

宇野 「僕はなんだろうなー。お笑いサークルのみんなとずっと遊んでたんですよね。『ナショグルお笑い愛好会』というサークルだったんですけど、真空ジェシカのガクさんが一つ上の学年で、当時からめちゃくちゃ仲良くて。授業がない時も大学に行って、食堂に“サー席”っていうサークルのたまり場みたいな場所があったので、みんなでずーっとそこにいました。僕らのサークルは3年生の夏くらいでなんとなく卒業というか、就活も本格化してくるので、部会やサー席にも顔を出さなくなるっていう文化だったんですけど、僕の代は4年生の、卒業ギリギリまでみんなサー席にいて(笑)。僕の代は男が10人くらいいたんですけど、卒業のタイミングで就職したのが1人か2人だったんですよ。それ以外は僕みたいに芸人になったり、留年したり、なんかふらふらしてたり。後輩に『いつまでこの4年いるんだよ』って思われるくらい、大学時代はみんなでくっちゃべって遊んでたなぁっていう印象ですね」

――今、そのサークルからプロで活動されている人は多いんですか?

宇野 「僕の学年は僕1人で、一つ上だと真空ジェシカのガクさん、あとは二つ下で、太田プロのサディスファクション渋谷っていうピン芸人も後輩です。さらにその下になるんですけど、水溜りボンドも2人とも僕らのサークルの後輩なんです。当時は水溜りボンドとして普通にコントとかをやっていたんですけど、YouTube活動も始めると言って。あっという間にどんどん売れて、『すごーい』って。あとは吉本に入っている人も何人かいます」

「有田さんや徳井さんが、まさかテレビで自分を褒めてくれるなんて」

「一旦、全部を出し切ろう」。結成10年、さすらいラビーが手にした自信と2人の旅路【ロングインタビュー後編】

――今は年間何本くらい、ライブに出演されているのですか?

宇野 「(スマホでカレンダーを見ながら)7月は39本ですね」

中田 「え? そんなに?」

宇野 「年間だとだいたい400本くらいかなと思います」

――プロになって、本当に数多くのライブに出演したり、いろんなお仕事をされてきた10年だと思うのですが、一番うれしかったことと、一番悔しかったことを教えてください。

中田 「難しいな…。一番うれしかったのは、2021年に『ABCお笑いグランプリ』で決勝に進出できた時かなと思います。ずっと決勝にいきたかった大会で、やっといけて。初めて賞レースの決勝にいけた大会でもあったので、『こういう思いをいっぱいしていかないといけないな』って強く思った機会でした。悔しかったのは、2020年の『M-1グランプリ』。2回戦で敗退してしまったんですけど、コロナが始まった年で、『どうやって頑張っていけばいいんだろう』と思っていた時期で。そんな中『M-1』が開催されたんですけど、一緒に『風穴』というユニットライブをやっている、ひつじねいり、ママタルト、ストレッチーズの、僕ら以外の3組はみんな勝ち上がったんですよ。僕らだけ2回戦で負けてしまって。『仲間たちとみんなで上がっていくんだ』という感覚だったのに、自分たちだけ先に離脱してしまったなって。それが一番悔しかったです」

宇野 「僕も『ABCお笑いグランプリ』はめっちゃうれしかったですし、あと、わりと最近なんですけど、TBSの『賞金奪い合いネタバトルソウドリ~SOUDORI~』という番組で、有田(哲平)さんと平成ノブシコブシの徳井(健太)さんが、『解体新笑』というトークコーナーで僕らを褒めてくださったんです。しかも中田だけじゃなくて、僕のこともちゃんと名指しで褒めてくださったのがすごくうれしかったですね。学生時代、テレビで見ていたくりぃむしちゅーの有田さんやノブコブの徳井さんが、まさかテレビで自分を褒めてくれるなんて、って」

中田 「宇野のことだけを褒めてる5分間があったんですよ。ジーンときました」

宇野 「『どういうこと?』って。『俺はうれしいけど、いいんですか?』って思いながら(笑)。一番悔しかったことは、確かに僕らだけ落ちた2020年の『M-1』もそうだし…。あと、たまに僕、ライブの平場とかエンディングでめっちゃスベっちゃう時があるんですけど、スベりすぎると脇腹が痛くなるんですよ」

中田 「特異体質で」

宇野 「それで家に帰って、痛い痛いってやってると、奥さんが『病院に行きなさい』って言うんですね。『いや、行きたくない』って返すと、『そもそもなんで痛めてんの?』って聞かれるわけです。まさかライブでスベったとは言えないんで、『まぁまぁ…』って誤魔化すんですけど、あの時間は本当に悔しいですね」

中田 「悔しいな、悔しいよな。でも出続けなきゃだから」

宇野 「ライブには出続けます、今後も」

「僕らのネタを見たいと思ってくれている人が、こんなにいるんだ」

「一旦、全部を出し切ろう」。結成10年、さすらいラビーが手にした自信と2人の旅路【ロングインタビュー後編】

――目標とする方や、憧れの存在はいますか?

中田 「1人は、かもめんたるの岩崎う大さんです。かもめんたるさんのコントも、『劇団かもめんたる』も毎回見させていただいているのですが、本当にめちゃめちゃ面白いし、いろんな感情にさせられるんです。芸人としてはもちろんなんですけど、何かを生み出す者として、『こういう人に近づきたい』と思って、う大さんに憧れています。そして、爆笑問題さん。昔から変わらない破天荒さもありながら、知性もあって。『ツギクル芸人グランプリ』でもMCをしてくださったんですけど、本当に、若手芸人にも興味を持って、愛を持って接してくださる方々だなと。何から何まで格好いいなと思って、憧れています」

宇野 「僕は先輩方は全員憧れているんですけど、事務所の先輩のタイムマシーン3号さんです。最近、一緒に営業に行かせていただく機会があったんですけど、やっぱりどこに行っても爆笑をとっていて。テレビでも活躍して、営業に行けばネタで爆笑をとってという姿が格好いいなって思うんです。テレビにもめちゃくちゃ出ているのに、お客さんの前に立ち続けて、しかも爆笑をとれるなんて、本当に格好いいなって。そんなタイムマシーン3号さんに憧れています」

中田 「あっ、もう1組いいですか?」

――はい!

中田 「もう1組、ウエストランドさん。(河本)太さんもですし、特に井口(浩之)さん。真面目な感じになっちゃうんですけど、本当に昔からかわいがってくださったんですよ。僕、そんなに先輩付き合いがないんですけど、井口さんはご飯とかもすごく誘ってくださって。井口さんって、本っっっ当に変わらないんです。舞台に立っている時と全く同じ熱量で愚痴も言うし、マシンガンのようにずーっと愚痴を言い続けているんです。最初は『すごく愚痴を言う人だな』くらいに思っていたんですけど、その異常性にだんだん気づいてきて。でも、『こういう人が売れていくんだな』っていうのをまざまざと見せつけてくださったのが井口さんなんです。どう言っても茶化してる感じに聞こえちゃうと思うんですけど、本当にすごい人だと思っています」

宇野 「本当にすごい方です、井口さんは。でも、憧れ…? 憧れてはないかもしれないですね、僕に関しては」

中田 「いやいやいや」

宇野 「『す、すげぇな…』みたいな」

――尊敬?

中田 「それです。尊敬です。同じ人生を歩みたいかと言われるとちょっと分からないんですけど、尊敬してます」

宇野 「尊敬? そうですね、まぁ、尊敬か…」

「一旦、全部を出し切ろう」。結成10年、さすらいラビーが手にした自信と2人の旅路【ロングインタビュー後編】

――2023年に入ってから、1月、3月、5月、7月と、2カ月おきに新ネタライブを行っています。このペースで新ネタを作るのも大変なのではないかと思うのですが、この開催を決めた理由と、7月20日の新ネタライブ「ラッテ」に向けての意気込みや見どころを聞かせてください。

中田 「やっぱり何にしても、賞レースで勝つことが糸口になるはずだと。じゃあネタを頑張らなきゃなという思いで、無理矢理頑張るために新ネタライブを始めました。すべては賞レースで勝つため。ただ、1月、3月、5月と続けていく中で気づいたのが、『僕らのネタを見たいと思ってくれている人が、こんなにいるんだ』『僕らの作るネタを、いいと思ってくれている人がこんなにいるんだ』って。賞レースに向けて始めたことではあるので、予選が本格化していく、この7月で一旦区切りにはしようと思っているんですけど、例えば賞レースに出さないネタだとしても、『これはこれで僕らが生み出したもので、何か価値があるんだ』と思えるようになったのが大きいなと思います。そういうプライドを持ってやれるようになったかなって。この新ネタライブをやってみたことで、そこへの意識はすごく強くなりました。賞レースに出せるようなネタを作りたいという思いはもちろん持っているんですけど、僕らだからこそできるネタを、皆さんにお見せしたいなという気持ちです。本当に、本当にヒーヒー言いながらなんですけど、一旦、全部を出し切ろうという思いでやっているので、皆さんに見てほしいです」

宇野 「僕も本当に中田の言った通りなんですけど、今はネタで世の中に知ってもらうほかないと思っています。なので、とにかく今はネタを作って、仕上げて…というのを頑張るしかないなと。2カ月に1回、全力で挑んでいて、それは自分の中でもいいサイクルになっているなとも思うんです。頑張ってますので、ぜひ見に来ていただきたいです。絶対楽しいものを作れているという自信がありますので、どうか来てほしいなと思います!」

手書きプロフィールも書いていただきました!

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【プロフィール】

さすらいラビー
宇野慎太郎(1991年12月17日生まれ、東京都小平市出身)と、中田和伸(1991年9月9日生まれ、東京都文京区出身)が大学時代に出会い、コンビ結成。2012年に「関東大学生漫才グランプリ」、13年に「第11回笑樂祭」で優勝し、大学卒業後はプロの道へ。タイズブリック所属を経て、16年9月に太田プロダクションの養成所「太田プロエンタテインメント学院」を8期生として卒業し、太田プロ所属に。21年、「第42回ABCお笑いグランプリ」決勝進出、21、22年、「M-1グランプリ」準々決勝進出。23年、「ツギクル芸人グランプリ」決勝進出。太田プロライブ「月笑」では19、22年に年間チャンピオンに輝く。音声配信アプリ・stand.fmにて、ネットラジオ「さすらいラビーのオーライパパ」が毎週月曜に更新中。7月20日、さすらいラビー新ネタライブ「ラッテ」が東京・西新宿ナルゲキにて開催。チケット好評発売中。

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【締切】2023年8月15日(火)正午

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取材・文/宮下毬菜 撮影/尾崎篤志



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