本当の人間ではないのは誰だ? 綾野剛×二階堂ふみ×柳楽優弥の三角関係が切ない「フランケンシュタインの恋」~河野英裕プロデューサーインタビュー2017/06/01
綾野剛さん演じる不老不死の“怪物”が、憧れていた人間界で初めて恋というものを経験し、そのいとおしくも切ない情景が魅力のドラマ「フランケンシュタインの恋」(日本テレビ系)。理系の女子大生・津軽継実(二階堂ふみ)と恋に落ちる怪物=深志研(人間界での名前)ですが、その恋は前途多難。生まれながらの難病を抱え、恋に積極的ではない津軽さん。津軽さんのことが好きな稲庭聖哉(柳楽優弥)との三角関係。120年間、怪物が森の中で過ごしていた頃から唯一の心のよりどころだった、大好きなラジオ番組に都合良く利用され…。
第6話では、ラジオに出演した深志研を快く思わないラジオパーソナリティー・十勝みのる(山内圭哉)が、深志研のみならず津軽さんに対しても言いたい放題な状態に。その言動に血が上った深志研は、十勝の顔に触れ、彼は顔面にキノコが生えた状態で意識不明の重体という事態へ…。人間と関わるなかで、自分の気持ちをうまく伝えることができない深志研の葛藤に、胸が苦しくなる後味となりました。
物語も折り返しとなり、どのような収束に向かうのか気になる本作ですが、このたび河野英裕プロデューサーに、2度目となるインタビューを決行。今後の展開はもちろん、ドラマの細かい描写や裏設定など、ここでしか聞けない話も、たっぷりと語っていただきました。
●稲庭くんの存在が、間接的だけど津軽さんを救う…そんな三角関係を描きたい
── ドラマも折り返し地点となりましたが、これからどのような展開になっていくのでしょうか。
「クライマックスに向けて、まず120年前のことをしっかりと描いていきます。『フランケンシュタインの恋』というタイトルにも注目していただければと思うのですが、本来、“フランケンシュタイン”は怪物を作り出した博士のことを指します。つまりこの物語は、怪物だけでなく、博士の恋でもあるんです。斎藤工さん演じる深志研太郎博士と、怪物になる前の深志研、津軽さんの先祖・サキ(二階堂/2役)の3人の間で、120年前に何かがあった。その三角関係から、博士がどうして一度死んでしまった怪物を再びよみがえらせたのかが明らかになります。さらにその3人の関係が、現代に生きる深志研、津軽さん、稲庭くんの三角関係にもリンクしてきます」
── 深志研は、120年前のことを思い出すのでしょうか。
「第8話では、津軽さんはブランチ病が原因で倒れてしまうのですが、そのことをきっかけに深志研は森へ帰ります。稲庭くんに『行くところがあります』と言葉を残して…。森に帰った深志研は、博士が残した手記やある写真を通して、120年前の事実を突き付けられます」
── 津軽さんの病気の謎についても描かれるのでしょうか。
「津軽さんの病気には、怪物の存在が大きく影響しているんです。昔、怪物は自分が持つ菌が原因で知らず知らずのうちにサキを殺してしまった。その時の出来事が彼女の家系に影響を及ぼしていて、代々遺伝的な病に侵されているのですが、そのあたりは第9話でじっくりと描いていきます」
── これからの物語の鍵を握る人物はどなたでしょうか。前回のインタビューでは稲庭くんと答えてくださいましたが…。
「(即答で)やっぱり今後も稲庭くんです。津軽さんの病気のこともあって、ますます彼の存在が大事になってきます。津軽さんへの恋心もあるし、その一方で、恋のライバルである深志研に対する友情も芽生えている。そのような状況で、稲庭くんがどのような行動をとるのかに注目していただきたいです」
── 深志研さんの持つ菌が、津軽さんの病気の特効薬になるのではないかと予想しているのですが…?
「絶対そう思いますよね(笑)。それも含めて、これまで深志研を追い詰めたり、陥れようとしたりしたけれど、そのことを稲庭くんがちゃんと分かって、ケンさん(深志研)のこともちゃんと分かってあげて、間接的だけどそれが津軽さんを救うことにつながっていくような、そんな三角関係にできたらいいなと思っています」
── 津軽さんは人間ですよね?
「人間ですよ(笑)。深志研と同様、怪物ってことですか? 怪物同士の恋…アナーキーで良いですね(笑)」
── 深志研さんの正体が怪物と知りつつも、対一人の人間として人間と同様に接する登場人物が多い中、津軽さんだけが、いまだにクールで、判で押したような敬語で話していることに少し違和感がありました。見当はずれかもしれないのですが、これには何か理由があるのでしょうか。
「彼女は生まれながらに病気を抱えていて、いつ死んでしまってもおかしくないので、恋に積極的ではないんですね。そのため丁寧語で話すキャラクターにしようと、意図的にそうしています」
●物語は絶対にハッピーエンドじゃないといけないと思っているので、二人のことは幸せにしてあげたいです
── 台本では、津軽さんのせりふには「津軽」と書かれています。家族が何人か出てくる作品の場合、名字が同じなので、名前で記すことが多いと思っていたのですが、継実を「津軽」と表記しているのにはこだわりがあるのでしょうか。姉の晴果さんは「晴果」となっていますが…。
「僕が台本に下の名前で表記するのがあまり好きじゃないんです(笑)。あと、元々地名から名字を付けていて、室園さん、稲庭くん、津軽さん…全部、響きで決めました。僕が熊本県出身なんですけど、熊本に室園町というところがあるんですよ。玉名さんも熊本の玉名市というところから取ったんです。下の名前は脚本家の大森(寿美男)さんに決めてもらったんですけど、津軽さんの継実っていう名前、かわい過ぎませんか?(笑)。でも、作品の中での呼び名は『津軽さん』だし、いいかと思って、名前が決まりました。以前手掛けた『泣くな、はらちゃん』(2013年・同系)というドラマでも、『越前さん』という名前を響きで決めました。余談ですけど、越前ガ二から連想して、越前さんはカニの缶詰工場で働く設定にしよう!って思って相談したら、現場から『無理です!』と言われて、結果、かまぼこ工場になりました」
── 深志研さんと津軽さんの恋はどのような展開を迎えるのでしょうか。
「今のところ二人は両思いなんですが、怪物と人間という人間同士ではない二人が、どうすればこの先もずっと一緒に生きていけるか、それを導き出すべきだと思っています。二人にとっての成就の形ってなんだろう、と。世間に怪物だということが知られてしまって、奇異の目で見られることもあるでしょうし、逆に二人を守ろうとする人たちも出てきたり。でも僕は、基本、物語は絶対にハッピーエンドじゃないといけないと思っているので、形は色々あれど、二人のことは幸せにしてあげたいです」
これまで、「Q10」(10年)、「妖怪人間ベム」(11年)、「ど根性ガエル」(15年)といった作品を手掛け、人間ではない登場人物を描くことに長けている印象がある河野プロデューサー。“怪物”が主人公である「フランケンシュタインの恋」ですが、6月4日放送の第7話は、「人間とは何か?」を考えさせられる回となっています。十勝の罵声に怒りの感情を抱き、菌を放出してしまった深志研に対し、「それはプライドだよ」と諭すように声を掛ける稲庭。「人間には誰だってある。なくちゃならないものだ」と続ける稲庭ですが、津軽さんは「だけど、どんなことがあっても怒ってはいけないんです。自分を抑えなくちゃいけないんです」と戒めるかのように言葉をはさみます。言葉一つで、人を苦しめたり、また一方で喜ばせたりすることができると知った深志研。そんな深志研に「人間じゃないのは自分だ」と告げる人物がいて…。本当の人間とは? 純粋無垢(むく)な怪物を通して自分を見つめ直すきっかけになる、余韻の残る回となりそうです。
【番組情報】
「フランケンシュタインの恋」
日本テレビ系
日曜 午後10:30~11:25
日本テレビ担当 M・M
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