高橋優「舞台を見に行くと、スポットライトが当たっていないのにちゃんと演技し続けている人を見てしまう」――「褒めるひと褒められるひと」主題歌インタビュー2023/06/13
6月13日に高橋優さんがDigital Single「spotlight」をリリースしました。夜ドラ「褒めるひと褒められるひと」(NHK総合)の主題歌として書き下ろされた新曲で、毎日を頑張って生きているすべての人への力強いエールと、そんな人々にスポットライトを当てている高橋優節が光る楽曲となっています。
今回は、高橋さんに楽曲制作の裏側や、ドラマで森川葵さん演じる市川詠子を褒めまくる先輩社員・坂東一役を務める川崎鷹也さんとのプライベートのエピソードなどをお聞きしました! 真剣な話1割、雑談や脱線話9割!?の楽しいインタビューとなりました。
――「褒めるひと褒められるひと」は毎日頑張っているすべての人に“褒め”を届けるドラマということで、まさに高橋さんの楽曲イメージにぴったりですが、主題歌のお話を聞いた時に何を思いましたか?
「ドラマのお話をいただける時はもちろん、ご縁があったんだなと感謝の気持ちが一番大きいんです。ドラマに対して、どういう色を加えられるのかなと考えます。原作を調べたり、できるだけスタッフの方に制作意図を聞くようにしています」
――期待に応えられるように、という気持ちが大きいということでしょうか?
「実は期待に応えたいと思ったことはあまりなくて。自分自身が映画や漫画が好きなので、少なくともまずは自分の納得できるものを作りたいと思っています。たまに、面白い映画だったけど、エンドロールだけ『なんでこんな曲なんだろう?』と不思議に思う時、ありません? 僕は友達とご飯を食べながら、あのエンディングが最高だったよねとか、BGMが良かったよねと、勝手に批評をする時間が好きなんですよ。そういうのは自分が見る側の意識として大切にしたいものの一つですね。今回で言うと、お話をいただいた時は、まだ原作とざっくりとしたプロットしかなくて。その中で、自分がドラマを見ているところを想像しながら、どういう花を添えられるかなと意識しました」
――ドラマ制作スタッフと打ち合わせをした際に、“褒められたような気持ちになれる楽曲”というリクエストがあったそうですが、具体的にはどんなことをお話されたのですか?
「制作スタッフの方が、毎日料理を作っているからいつもはおいしいとは言ってもらえないけれど、時々『あれ? 今日なんか味変えた? おいしい』って言われると、めちゃくちゃうれしいとおっしゃっていて。だから、特別な仕事をした瞬間に“すごいね”と褒められるよりも、毎日やっていることを見ていてくれているんだとか、俺、私がやっていることを意識してちゃんと感じてくれていたんだと分かった瞬間に、すごくうれしく感じるんだと気付きました」
――分かります。ご自身は褒めたい人はいますか?
「僕は人を褒めることができないんですよ。ドラマを批判するつもりは一切ないんですけど、褒めることって上から目線になる気がして。それでも無意識にやっちゃう時ってあるじゃないですか。『すごく上手でしたね』とか、『奇麗なアクセサリーを着けていますね』とか。上からものを言われたくない人に言ってしまうと微妙な反応をされて、『今、偉そうな感じで褒めちゃったんだな』って思う時があるから、あまり褒めることはしないし、したくもない。得意じゃないんです」
――今後も褒めることはないですか?
「あんまりしたくないんですよ。実はこういうインタビューもあまり得意じゃないし、言葉で思いを伝えることがほかの人よりも苦手だから歌詞を書いて、曲で伝えたいんです。僕なりに、“雑談力”とか“褒める極意”みたいな本を読んだりして、ちょっとでも相手に喜んでもらえる言葉を発信できる人になりたいとは思っていますが、褒める言葉にはつながらないんですよね。僕も、『肌のハリがいいですね』って言われたらうれしいんですけど、自分が恐縮して…多分、土地柄もあると思うんですよ。秋田県出身の僕の中では、東北の人たちは表に立ったり上に立ったりするのが得意じゃない人が多い印象で。僕もそうなんですよ、実は。何年も人前で歌わせてもらっていて、何言ってんだって感じもするんですけど」
――そうなんですね。
「そんな僕ですが『全人類自分以上』と思って生きているんです。生まれたばっかりの赤ちゃんでさえも、僕よりも魅力があると思って。いや、これ本当なんですよ! だから、逆に言えば、褒めたい場所はいっぱいあります。みんな褒める場所しか見当たらないくらい。『何をそんなにみんな疲れて病んでいるんだ。あなた方は魅力に満ちています』と思いながら生きています。僕自身は、何かにしがみついたり、本当に身を削って努力しないと、そういうすてきな方々と肩を並べられないと思ってやっています」
――私も田舎出身なので人前に出るのを苦手とする人が多いというのは共感しました。東京に来て変わりましたか?
「表に出るお仕事をしていると、思ったことは言わないと流れていくので、自分を出すようにしています。でも、主張し過ぎると角が立っちゃってね。相手を傷つけたいわけでもないのに傷つけちゃったりすることもあるから。相手を否定するんじゃなくて、自分の主張をしっかり言うことのバランスは、東京に来てからより考えるようになりましたね。ただただ謙遜しているだけなのも楽だし、主張しているだけなのも楽じゃないですか。そこで楽してしまわないというか、どのバランスが一番いいんだろうって考えることが増えましたね」
――表や上に立たずに田舎で暮らすのも、穏やかで平和ですよね。
「うーん。田舎のネットワークって、インターネットより早いって言いますよ。全部、窓のカーテンの隙間から誰かが見ていると思った方がいいですよ。『誰々さんちの誰々。今帰ってきてる』ってすぐ広がる。インターネットなんか必要ないです。家が全部SNSみたいな」
――都会の方が生きやすいこともありますよね。
「でもね、もうちょっとたったら地元もいいなって思うかも」
――秋田が嫌いで北海道の大学に進学したんですよね…?
「そう、18歳までは」
――どのくらいたってから、地元の良さが分かるようになりましたか?
「離れてすぐに。けんかするのもわがままを言うのも、何するにも全部させてもらっていたことに、1人になってから気付いたんですよね。けんかする相手もいなくなったら寂しいもんですよね。確かに最初の2週間くらいは楽だ、最高って思うんですけど、1、2カ月たって、1人で大学に行って勉強して、アルバイトして。バイト先の人たちも思いの外、話が合わない人が多かったり、都会に行くと、同じ日本語をしゃべっているのになんでこんなに通じないんだろうという人もいるじゃないですか。そういう中で、同じジャンルの話題でけんかできるって幸せだったのかもとか、洗濯物のことでわがまま言っていたこと、食器洗ってもらっていたことのありがたみに気付きました。食に関しても、僕は秋田県の内陸出身で山菜などを食べていて、それで元気が出ていたんだなと。北海道のやきそば弁当というカップ焼きそばが大好きで毎日食べていたら、どんどんパワーが減っていって…。今でも大好きなんですけど。月並みだけど、野菜や山菜を食べたり、ばあちゃんが作ってくれたみそ汁を飲んでいたのが良かったんだなと、離れてすぐに実感しました。当時は出てきた手前、言いたくなかったですけどね」
――そうなんですね。
「今だから結構言えるかも。今は、『秋田 CARAVAN MUSIC FES』という野外フェスを開催させてもらっているんです。恩返しじゃないですけど、自分の地元を盛り上げたい思いを形にし出したのが、30歳過ぎてからで、デビューして5年以上たってからです。実行するまでに結構時間がかかりましたね」
――ドラマに出演されている川崎さんと、プライベートでも仲がいいとお聞きしました。エピソードを教えてください!
「お互いの眼鏡を交換してしゃべったり、朝方までお酒を飲んだりしています」
――お酒を飲みながら、音楽について語り合ったりしているんですか?
「音楽について語ることはあまりないです。カラオケに行って、ずっと歌っています」
――どなたの歌を歌うんですか?
「(川崎)鷹也くんには、彼の曲の『魔法の絨毯』を僕が3回くらい入れて、歌ってもらっています」
――川崎さんはご自分の歌を歌ってくれるんですか!? ワイワイ楽しんでいるんですね!
「熱く語り合うこともあるんですけど…逆に言うと、お酒が入っているのに真面目な話をしている人って、説得力あると思います? お酒が入ったからこそ、仕事につながった人も実際にいると思うので否定はしないんですけど、個人的にはお酒を飲んじゃうとばかになりたいというか、できるだけ思考しない方にいっちゃいます。お酒の席で真剣な話している人の話をあまり真剣に聞けないんですよ。お酒の勢いで言ってるじゃんって思っちゃって、場合によっては信用できなくなる時もあるんです。だから、音楽について熱く語らうにしても、具体的なことを何個かしゃべるだけですね。この間は、『眼鏡のイベント、一緒にやりたいね』と。鷹也くん、wacciの橋口(洋平)くん、BLUE ENCOUNTのボーカルの田邊(駿一)くんとか、sumicaの片岡(健太)くん。大御所でいうと、くるりの岸田(繁)さん、南こうせつさん、さだまさしさんと、眼鏡をかけている人だけで集まるフェスみたいなのやりたいねと話したところ、『お、やろうよ』で終わって、どんどん話がそれていって。今の取材のムードに似ているんですけど、真剣な話1割で、9割は雑談や脱線話みたいな(笑)。個人的には、飲みの席ではそれぐらいがちょうどいいと思っています」
――確かに…。
「真面目な話がずっとできる人は尊敬します。そういう人は、学校の先生に向いているなって思いますね。僕は音楽家だから真面目な話は音楽の話しかしないけど、ずっと音楽の話ができる人は、本当にすごいなと思います」
――褒めることはしたくないとお聞きした上で申し訳ないのですが、ドラマにちなんで川崎さんを褒めてください!
「(川崎)鷹也くんはね、みんながどういうふうに思って見ているか分からないですけど、男らしい人なんですよ! 格好よくて、どちらかというと『ONE PIECE』のルフィタイプです。優しくて温かくて、物腰が柔らかくて、ほんわかしたイメージで、歌もそういう歌が多いですし。そこはもちろんすてきなんですけど、会って話していると、野望とはニュアンスが少し違いますが、『僕はこういうことやりたい』っていう夢がいっぱいあるところが格好いいなと思っています。お酒も強くて、飲んだ翌日でもちゃんとライブしていますし。僕は、ライブ前には飲めないですからね(笑)」
――ありがとうございます。ここからは新曲「spotlight」について質問させていただきます。最近は漫画「推しの子」がはやっていて、アニメではYOASOBIさんの「アイドル」が主題歌となっています。それを意識してのタイトルなのでしょうか?
「僕は、“推し”っていうことがまだ分かっていないんですよね。具体的に何をするんですか?」
――ファンとしてグッズを買ったり、ライブに行くなど。高橋さんを推している方々だったら、高橋さんのSNSの投稿にコメントしたりとか。
「そういうことをすれば、“推し”ってことになるんだ。何人もいていいんですか?」
――アイドルオタクの用語で、「誰でも大好き」という意味で「DD(ディーディー)」という言葉がありまして。
「誰でも大好き。じゃあ、全人類を推してる」
――いやいや(笑)。DDは、推しが複数人いるということです。
「勉強になるね。アイドルの皆さんはお奇麗だったり、格好よかったりするんですけど、僕は特定の1人を推していないんですよね」
――流行を意識してspotlightというタイトルにしたわけではないんですね。
「今の推し文化に限らず、昭和の時代から、うちわに写真をはめ込んでライブに持っていったり、部屋にポスターを貼ることはあったと思うんですよ。でも、推されているアイドルの方々だって見えていないところにフォーカスを当てたら、誰も見ていないところでも頑張っているっていうニュアンスをこの曲では表現したかったんです。僕は、舞台を見に行くと、華麗なヒロイン役が泣いている演技を見て会場中が鼻をすすって見ている中、すごく端っこの方で、スポットライトが当たっていないのにちゃんとずっと演技し続けている人を見ちゃったりするんですよ。その辺を歌詞にできないかなと思いましたね」
――最後に、高橋さんのファンの皆さま、そしてドラマを楽しみにしてくださっている方々に熱いメッセージをお願いします。
「今まで僕の曲は、歌詞に注目して聴いてもらう機会が多かったんです。今回ももちろん注目してもらえたらうれしいんですけど、アートワークも見てほしいです! 指パッチンをしているイラストがダウンロード版のCDのジャケットになっていて、僕もそのシャツを着てアーティスト写真を撮りました。ミュージックビデオもカラフルで、見ても楽しめる作品になっています。聴いているだけでウキウキしてくる曲になったらいいなという思いが強くて。軽い気持ちで聴き流すような感じで聴いてもらえるのもすごくうれしいですし、お友達とかお子さんと一緒に指パッチンしながら歌ってもらえるのもうれしいです。ぜひドラマと共に、楽しんでこの曲を聴いてください」
――ありがとうございます!
【取材後記】
カメラマンがインタビュー後に「高橋さんはカラオケで何を歌うんですか?」と質問したところ、「吉幾三さんの『酒よ』や『雪国』をしっとり歌い上げている」と渋い(?)お答えが。また、初めての対面インタビューでガチガチに緊張していた記者に「ハードロックカフェのTシャツ着ているんですね。僕も好きでよく行きます」と話を振ってくださいました。演歌からロックまで詳しい高橋さん、本当に優しい方で…ありがとうございました!
【プロフィール】
高橋優(たかはし ゆう)
1983年12月26日生まれ。秋田県横手市出身。2010年4月、デビュー前に「福笑い」が東京メトロCMソングとして大抜てきされ、7月に「素晴らしき日常」でメジャーデビュー。13年、初の武道館公演を行う。16年から野外音楽フェス「秋田 CARAVAN MUSIC FES」を主催している。
【番組情報】
夜ドラ「褒めるひと褒められるひと」
NHK総合
月曜~木曜
午後10:45~11:00
【プレゼント】
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【締切】2023年7月10日(月)正午
【注意事項】
※ご当選者さまの住所、転居先不明・長期不在などにより賞品をお届けできない場合には、当選を無効とさせていただきます。
※当選で獲得された権利・賞品を第三者へ譲渡、または換金することはできません。
※賞品をオークションに出品する等の転売行為は禁止致します。また転売を目的としたご応募もご遠慮ください。これらの行為(転売を試みる行為を含みます)が発覚した場合、当選を取り消させていただくことがございます。賞品の転売により何らかのトラブルが発生した場合、当社は一切その責任を負いませんので、予めご了承ください。
※抽選、抽選結果に関するお問い合わせにはお答えできませんので予めご了承ください。
取材・文/Kizuka(NHK担当) 撮影/蓮尾美智子 スタイリング/上井大輔
衣装協力/ネックレス¥15,400:ROLE 株式会社(03-6380-4836)、ブレスレット¥41,800:buff(0154-38-2600)、その他スタイリスト私物
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