「いだてん」四三の幼なじみ・美川秀信役の勝地涼。「勘九郎さんと、なんで美川くんと友達なんだろう?って話しています(笑)」2019/06/01
1920年にベルギーで行われたアントワープオリンピックが描かれた5月26日放送(第20回)のNHK大河ドラマ「いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~」(NHK総合ほか)。たった2人の選手で挑んだストックホルムオリンピックに思いをはせながら、2回目の出場を果たした金栗四三(中村勘九郎)でしたが、結果は振るわず…。傷心の四三は「オリンピック報告会」にも現れず、ヨーロッパをさまよっていましたね。その際、四三のことを「ストレイシープだね」と表現したのは、四三の幼なじみの美川秀信(勝地涼)。人の日記や手紙を勝手に読み、四三の妻・スヤ(綾瀬はるか)に「美川!」と呼び捨てにされてしまう彼です。今回は、そんな美川を演じる勝地涼さんのインタビューをお届けします。
──美川といえば、非常に個性的な人物で、特に口調が印象的ですが、意識されているのでしょうか?
「口調は特に意識しているわけではないです。ただ、『金栗氏』というセリフがたくさん出てくるので、それをねちっこくやっています。いきなり『金栗氏~』と入ってくることが多いので、そこはちょっと印象付けられたらと思っています。撮影前に熊本で美川さんのご親族の方々とお会いして、本当に好奇心旺盛で新しいものが好きという話を聞く中で、『自由にやらせてもらっていいですか』と伺うと、『どうぞ、どうぞ』と言っていただけて。脚色している部分もいっぱいあると思うんですけど、楽しく演じています」
──髪形も当時としてはなかなか個性的だと思うのですが…。
「衣装合わせをしていくうちに、変わっていったんです。四三さんが丸刈りになるからちょっと違う方がいいねという話になり、『天然パーマっぽいのがいいよね』という感じで決まりました。放送後に、『前髪クネ男じゃなくて、全髪クネ男』みたいなことを言われて『確かにそうだな』と思ったけど、全然意識していなかったです(笑)。熊本の中学で地元エキストラの子供たちと一緒になった時はさすがに浮かないかなという心配はありましたけど、監督陣にこだわってつくっていただきました」
──ほかにも、『美しい川で美川です』というせりふや、とても大きい猫を抱いていたりするなど、ワンシーンごとのインパクトが強いですよね。
「『美しい川で美川です』というのは、現場でのアドリブだったんです。『いだてん』は、その場にいるメンバーとみんなで作っている空気があって、好き勝手にやっていたことが使われていたりするんです。猫は、台本には書いてなかったんですが、かわいかったので『抱っこしていいですか?』と聞いたところ、美川が壮行会に入れないシーンでも抱っこしていようということになりました。とんでもなくでかくて重たい猫でしたけど(笑)」
──先ほど、熊本で美川さんのご親族に会われたとおっしゃっていましたが、印象的だったお話を教えてください。
「当時、車を持つことが珍しいことなのにすぐに車を買ったというエピソードは印象的でした。相当破天荒な方だったようです。ご親族の方々も面白い人だったといわれていたので、愛されていたんだろうな~と思って。だから、ずけずけいろんなところに行くけど、愛されるキャラクターでいなきゃいけないなと思いました」
──物語では、美川は浅草の遊女・小梅(橋本愛)と駆け落ちして、四三の下宿先に転がり込みますが、今後小梅とはどうなるのでしょう?
「美川は気付いたらストーカーみたいになっています。自分も台本を読んでて、『ああ、そうなんだ』という感じなので、受けた印象のままやるようにしています。実際、台本を読んでいで面白いので」
──小梅を演じる橋本さんとのシーンはいかがですか?
「決しておしゃべりではないですけど、現場から離れない方ですね。撮影前に、僕がポロっとセリフを言うと次のセリフを言ってくれるので、居心地がいいというか。あと思い切りがすごくいいんです。ビンタをされるシーンがあるんですけど、最初からひっぱたかれていたんで『おお、そうか』と思って(笑)。それが僕にはやりやすかったし、テンションも上がりました」
──それでは、四三を演じる勘九郎さんと共演してみて思うことはありますか?
「勘九郎さんとはいつか仕事がしたいって思っていたんです。中村座の公演を見た時に感動して、絶対一緒にやらなきゃいけない人だと思っていました。公演後に勘九郎さんと七之助さんが食事に連れていってくださって、その時には勘九郎さんが『いだてん』をやることは決まっていましたけど、僕はまだ呼ばれてなかったんです。帰り際、勘九郎さんたちが帰っていく後姿を見て『絶対一緒にやりたい』『むしろ、呼ばれなきゃな』と、決意した夜でした。その後、『いだてん』に出演が決まった時には、本当にうれしかったのを覚えています。実際に勘九郎さんとご一緒できて感動もしましたけど、幼なじみという設定が僕の中で結構大きいことでした」
──ストックホルム編では四三と三島弥彦(生田斗真)が絆を深め合ったりしていましたが、美川と四三の幼なじみという関係性で感じることはありますか?
「普通に冷静に見たら友人として成立していないと思うんです(笑)。よく勘九郎さんと『なんで美川くんと友達なんだろう?』って話をするんですけど、それが熊本で育った同郷の良さなのかなって思います。美川が東京出身で、四三と学校で出会っていたとしたら、友達にはならなかったのかもしれない。『こういうのが格好いいらしいよ』って同じ赤ゲットをまとって上京してきたことを想像するとかわいいなと思います」
──そんな美川は果たして今後どうなっていくのでしょうか?
「どうなっていくんですかね? 僕も聞きたいです。昨年、宮藤(官九郎)さんと舞台で一緒だったので、『どうなるんですか?』と聞いたら『ちょっと分かんないね』と言われました。でも、今後は自分としてもちょっとうれしいシーンがある感じです。そういえば、ネットニュースで弥彦と美川くんが面白いという記事を見てうれしかったので、(生田)斗真くんに『よかったよね』ってメールを送ったら、『な』とだけ返信がありました(笑)。『な』ってなんだよって思いましたけど(笑)。斗真くんとは、自分の方が宮藤さんに愛されているというのをいつも競い合っているんです。俺の方が愛されている、いや俺の方が宮藤さんと何本もやっている、いや俺も何本もやっている、俺なんて歌まで出しているから! というやりとりをしていたので感慨深いというか。弥彦のキャラも面白いですし」
──「いだてん」で勘九郎さんと共演されるという夢がかなったわけですが、今後、勝地さんがやりたいことはありますか?
「これは冗談も本気も入っているんですけど、宮藤さんに落語をやりたいと言っています。美川が落語をやることは絶対にないんですけど(笑)、『落語やりたいです』と言い続けようと思います。今後、落語を題材にするドラマをやる時に思い出してくれればうれしいですね」
──なぜ落語をやりたいと思ったのでしょうか?
「(森山)未來くんが落語をやっているシーンを間近で見てすごく感動したんです。酔っぱらってうまくできないんだけど、だんだんのってくるというシーンに見入ってしまって。未來くんは自分とは全然タイプが違う役者ですけど、すごい先にいる人だなと思っていて、久々に未來くんのお芝居を見たけど、やっぱりすごいんですよね。安易ですけど、未來くんとは違う落語があるだろうなと感じて、チャレンジしたいと思ったんです」
──ありがとうございました! 美川として勝地さんが落語をやることはないかもしれませんが、いつか別の作品で拝見できる日を楽しみにしています。
6月2日の放送では、アントワープオリンピックでメダルを取れずに“ストレイシープ”としてヨーロッパを巡っていた四三が、第1次世界大戦の傷跡が残るドイツのベルリンで、スポーツを楽しむ女性たちを目にします。それを見た四三は大いに刺激を受け、日本に女子スポーツを根付かせようと決意するのですが…。確か、四三はオリンピックが終わったら熊本に帰ると言っていたはず…。果たしてどうするのでしょうか? 同じ頃、美川にもある変化が訪れるので、そちらもお見逃しなく!
【番組情報】
大河ドラマ「いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~」
NHK総合ほか 日曜 午後8:00~8:45
NHK BS4Kほか 日曜 午前9:00~9:45
NHK BSプレミアム 日曜 午後6:00~6:45
NHK担当 K・H
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