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溝端淳平、「どうする家康」今川氏真の抱える葛藤に共感。「見えないものと戦っている中、蜷川さんの言葉に救われた」2023/03/26

溝端淳平、「どうする家康」今川氏真の抱える葛藤に共感。「見えないものと戦っている中、蜷川さんの言葉に救われた」

 第12回(3月26日放送)の大河ドラマ「どうする家康」(NHK総合ほか)では、徳川家康(松本潤)が、兄弟同然に育った今川氏真(溝端淳平)と直接対決をすることに。武田信玄(阿部寛)から攻め込まれ、家臣にも見限られた氏真の心中やいかに。

 今回は、今川義元(野村萬斎)の嫡男でありながら、偉大な父を持つがゆえに劣等感に苦しむ今川氏真を演じる溝端淳平さんから、氏真に対する思いや家康を演じる松本さんとのエピソードなどを伺いました!

――初の大河ドラマ出演ですが、手応えはいかがでしょうか?

「見ている人が圧倒的に多いとあらためて感じました。地元にいる親戚のおじいちゃん、おばあちゃんや、僕より年上の方々からの反響が大きかったです。体感としてはその時代に生きた人もいなければ話し言葉も分からないので、大河ドラマをリアルに演じることは難しく、『明日、攻め入るぞ』というのは現代人にはなかなか理解ができない感覚ですが、自分の日常生活に置き換えられない熱量と世界感と集中力は、蜷川演劇の『シェイクスピア』に近いものがありました。演劇という壮大でスケールが大きい話で鍛えていただいた経験は大きいんだなと。今回はそれを存分に出して、自分の中にあるものを全部出していかなきゃと思って演じました。20代の頃に苦しみつつも蜷川(幸雄)さんや吉田鋼太郎さんに食らい付いてよかったです」

――氏真は上に立つ人になりたいけれどその器が及ばず、心的なプレッシャーが相当あった人物です。どんな理想を抱いていたと思われますか?

「氏真は人に弱みを見せられない繊細な人間だと思います。自分がストイックにやればやるほど周りから人が離れていき、人を信じられなくなっていく。氏真は人徳も才能もなかったので、家康のように人に甘えられて、支えてくれる人がいて、自然と人が集まってくるような人格に憧れていたんだと思います。僕はジュノン・スーパー・ボーイ・コンテストでデビューして、最初はお仕事をたくさんいただいていましたが、そこに自分の実力が追いついていないことや、ほかに実力のある方々もたくさんいることも実感していました。20代の頃は自分には才能がない、身の丈に合ったものができていないという葛藤を感じていたので、そういった部分で氏真に共感できましたね」

溝端淳平、「どうする家康」今川氏真の抱える葛藤に共感。「見えないものと戦っている中、蜷川さんの言葉に救われた」

――撮影に入るにあたって、準備されましたか?

「やりや弓の稽古をしました。また、準備ではありませんが、東京の観泉寺にお墓参りに行きました。氏真さまと糸さま(早川殿)のお墓が仲むつまじく並んでいるのを見て、愚将や今川家を滅ぼしたと言われているけど、幸せだったんだろうなとお墓を見て感じたんです。先入観なのかもしれませんが、いい気も感じましたし、お墓の並びを見て、仲良く寄り添っているようにも思えたんです」

――第12回はズバリ「氏真」というタイトルです。どのように捉えて臨まれましたか?

「オファーをいただいた時には、第12回までの台本ができていました。なので、第1回(1月8日放送)や第3回(1月22日放送)で批判が殺到した瀬名役の有村架純さんを襲うシーンなど、ヒールに描かれている面もありましたが、自分の中では逆算して氏真という人物を作り上げられたと思っています。家康とはずっと対極に描かれているんです。望んではいないのに天命に選ばれ、どんどん出世していく家康と、望んでいるが才能と時代に見放されて、落ちていく氏真。それがいよいよ第12回で決着がつきます。ただのライバルというわけではなく、幼少期から兄弟のように育ってきて、楽しい思い出もたくさんある家康と氏真の現在と過去が交互に描かれていきます。戦国の世でなければ、きっと仲良くお互い手を取り合って、同じ目標に向かってまい進できたのにと考えると、何とも言えない切なさやもの悲しさ、戦乱の世を恨むような感情になります。そんな氏真役はやりがいもありますし、人物造形が深いと定評がある古沢(良太)さんの台本なのでやっていてとても楽しかったです」

溝端淳平、「どうする家康」今川氏真の抱える葛藤に共感。「見えないものと戦っている中、蜷川さんの言葉に救われた」

――家康を演じる松本さんのすごいなと思ったエピソードはありますか?

「第6回(2月12日放送)で、川を挟んで今川家の重臣の子どもと瀬名たち人質を交換するシーンの撮影をする時に、今川家側から撮っていたので松本さんは代役でも大丈夫だったのですが、『今川勢の方に失礼だから』と早朝から撮影に臨まれたんです。しかも前日に松本さんの呼びかけでみんなで食事をしました。チームワークを大事にしているので、現場は一体感があります。僕のような大河ドラマ初出演の人に対しても演技がしやすいようにと、常に最善を尽くしてくれています」

――松本さん、有村さんとは「失恋ショコラティエ」(フジテレビ系)以来の共演ですが、今回の現場で当時のお話をされましたか?

「松本さんとは、『失恋ショコラティエ』が終わってからも連絡を取らせてもらったり、舞台を見に来ていただいて一緒にお酒を飲みに行ったりしていました。昨年、ちょうど小栗(旬)さんが『鎌倉殿の13人』の主演をしていて、松本さんは『どうする家康』が決まっていて。自分たちより1世代上の目標にしていた先輩方が大河ドラマの主演をやるんだと勝手にうれしくなっていたと同時に、自分はまだ大河ドラマに出ていないという葛藤もありました。『どうする家康』の主演に松本さんが決まった時には『おめでとうございます』と連絡をしました。その時に自分もこの作品に携わることができればというやりとりをしていたのですが、後に出演のオファーをいただいたので、ちゅうちょしながら『本当に決まりました。よろしくお願いします』と連絡をしました。すぐに電話をいただいて、普段はあまり口には出さない方なんですが、行動や気遣いから喜んでくださっているのが伝わってきました」

――有村さんとはいかがでしょうか?

「有村さんとは、たまたま放送局などで会ったことはありますが、共演するのは『失恋ショコラティエ』以来です。あの時は有村さんの相手役のオリヴィエという役でしたが、クランクイン後、間もない頃『どうする家康』の衣装部屋で僕が衣装を着ている時にちょうど有村さんがいらっしゃっていて、後ろから『オリヴィエ~』と言ってくれて。『懐かしいね』と話しました。10年前の役名で呼んでくれる粋な有村さんにキュンとしました(笑)」

――第12回で家康と対峙(たいじ)した氏真の心境をどのように捉えて演じましたか?

「憎き家康、裏切り者、お前のせいで人生狂ったんだぞと思っていた家康が現れて決着がついた時に、ホッとしている自分がいました。きっと、早くこの乱世から降りたかったんだと思います。直前に『なかなかに 世をも人をも恨むまじ 時にあわぬを 身の咎(とが)にして』と詠むくらい、才能にも時代にも恵まれなかった中で、とどめは家康に刺してほしかった。最後は家康に一目会いたかったんだと演じていて感じました。ただ憎き敵ではなく、幼少期の頃からのいい思い出もたくさんあって、本当にかわいい弟だったと思うし、手を取り合って父上を支えよう、越えよう。今川家をもっと繁栄させるぞと本気で思っていた仲だったので。氏真は最後、家康にある言葉を放ちます。野球選手で例えるなら、大谷翔平さんみたいになりたいと思っても、きっとなれない人の方が多いと思うんです。でも、なれたらなれたで悩みはつきものなんだというメッセージが伝わってくるので、第12回はすごく好きですね」

溝端淳平、「どうする家康」今川氏真の抱える葛藤に共感。「見えないものと戦っている中、蜷川さんの言葉に救われた」

――第12回について、ほかに印象に残っていることはありますか?

「やはり家康と対峙するシーンですね。普段、松本さんと共演するシーンがある時は、コミュニケーションをとって、会話をしてお芝居をすることが多かったんですが、対峙するシーンに関してはほとんどしゃべらなかったんです。本当にお芝居だけで通じ合っている感覚でした」

――見応えのあるシーンになっていそうですね。

「どんどん偉くなっていく家康と、もはや家臣もいなくなってボロボロの氏真。かつて、家康が兄と呼んでいた氏真が地ベタをはいつくばっていて、対照的なシーンになっています」

――氏真はシリアスなシーンを担っている役ですが、現場で和やかな、笑い合った瞬間はあったのでしょうか?

「終始シリアスなシーンが多かったです。松本さんとも一緒のシーンが多かったわけではないですが、松本さんがいる時は、結構にぎやかでしたね(笑)。実年齢では松本さんより年下ですが、役では僕の方が年上で兄的な存在だったので、『なんでお前を敬わなきゃいけないんだ(笑)』と言われたりしていました。年上役に苦労はしていないです。初めて共演する先輩だったら多少気を使いますが、本当に兄貴みたいな存在なので、逆に遠慮する方が怒られちゃいます」

――初の大河ドラマ出演で得たものはありますか?

「氏真役はシリアスなシーンや象徴的なシーンが多いのですが、リハーサルの時から、スタッフの方が芝居の手助けになるような小物などを、何をどう使ってもいいようにたくさん用意してくださっていたんです。何かに似ているなと思ったら、蜷川演劇と似ていたんです。芝居でやってはいけないことはないんだということを蜷川演劇で教わったのですが、そこが似ていて血が騒ぎました。毎回とことん役者の持っているものを全部出すくらいまでやらせてもらえたので、とてもありがたかったです」

溝端淳平、「どうする家康」今川氏真の抱える葛藤に共感。「見えないものと戦っている中、蜷川さんの言葉に救われた」

――氏真とご自身が重なるということですが、20代の頃の葛藤や壁をどのようにして乗り越えましたか?

「20代の頃は、仕事は順調だけれども自分のお芝居を誰一人認めてくれないという孤独感がありました。そのうち、結果が伴わなくなってきて、自分もどうしたらいいか、何がしたいのか分からない状況の中で蜷川さんに出会いました。見えないものと戦っている中、蜷川さんから正面切って『お前は下手くそだ、才能がないんだ』と言われたことで、すっきりしたんですよ。『才能がないなりに頑張ればいい。ちょっとずつできるように積み重ねていけばいいんだ』と思えて、自分に期待しすぎない感覚になって、それが第12回の氏真と近かったんです。父上に『お前に将としての才はない』とはっきり言われた氏真ですが、その才能がないからと言って駄目なわけではないというのが、自分の今までの俳優人生の中での答えです。今でも反省点ばかりですが、回を重ねて自分のお芝居を見て取材をしたいと言ってくれる人がいることがすごく幸せです」

――蜷川さんの言葉や経験があって今があるんですね。

「本当にそうです。泥くさく生きてきましたが、結果的に人に恵まれていたし、周りの人に救われました。蜷川さんだけではなくて、吉田鋼太郎さんや横田栄司さん、藤原竜也さんなど、厳しくも温かく見守りつつ、たまに叱咤(しった)激励もしてくれる先輩たちがいてくれたおかげで乗り越えられました」

――最後に第12回の見どころをお願いします!

「今川家を家康が滅ぼし、終止符を打つ回です。家康にとってもすごく大きな回で、その中で僕が演じる氏真と家康の葛藤があります。とにかく第12回は全編エモーショナルで、ずっと感情が高ぶりつつ、最初から最後まで駆け抜ける回です。いい意味で緊張感のある第12回なので、そこをぜひ楽しんでいただきたいです。氏真はある種、戦国の敗者。最終的には生き残って勝者にも見える数奇な運命をたどった氏真の第1部が一旦完結します。今の時代だからこそ、氏真の人物像が皆さんに刺さるんじゃないかと思います」

――ありがとうございました!

溝端淳平、「どうする家康」今川氏真の抱える葛藤に共感。「見えないものと戦っている中、蜷川さんの言葉に救われた」

【番組情報】

大河ドラマ「どうする家康」
NHK総合
日曜 午後8:00~8:45ほか
NHK BSプレミアム・NHK BS4K
日曜 午後6:00~6:45

NHK担当/K・H



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