「自由な女神-バックステージ・イン・ニューヨーク-」でドラァグクイーンを演じる武田真治。伝説のロックスター・忌野清志郎は「夢を諦めかけた自分をまたステージに連れ出してくれた人」2023/03/25
モデルや番組司会、多数のコマーシャルなどに出演し“シンデレラガール”を地でいく井桁弘恵さん。3月28日よりスタートするドラマ「私がヒモを飼うなんて」(TBSほか)でも主演を務める井桁さんが、フジテレビ系ドラマで初主演を務めた土ドラ「自由な女神-バックステージ・イン・ニューヨーク-」は、ファッションあり、三角関係ありのちょっとディープなシンデレラストーリー。
井桁さんが演じるのは、服作りが好きで、ドラァグクイーンと出会ったことで人生が一変するサチこと渡辺幸。そして、武田真治さんが演じるのは、豊富な人生経験を生かし、ショーを通して多くの悩める人の人生を変えてきたドラァグクイーンのクールミント。知らぬ者はいない伝説のドラァグクイーンに扮(ふん)した武田さんに、演じる上で大事にしたことや印象的なセリフなどをたっぷり伺った。
――まず、座長を務められた井桁さんの印象を伺えますでしょうか。
「この人は国民的に愛される女優さんになるんだろうなという感じがしました。現場を明るく保ってくれましたし、いろんなシーンに対して前向きにチャレンジされていました。サチというキャラクターにも、それを演じる井桁さんにもひかれるところがたくさんありました」
――共演前後で印象に変化はありましたか。
「実は、共演する前は演技を見たことがなかったのですが、最初の本読みで、『ご自身のプランと180度別の感じで演じてみましょう』と言われても見事に調節していっていて。すごいなと思いました」
――クールミントを演じてみた感想も伺えますか。
「クールミントは、人の弱い部分に寄り添う現代のロックスターだなと思って演じました。うまく演じられたかどうかというのは判断しかねるのですが…自分としては、このような格好いい役をやらせていただけて、本当にありがたい限りだなと、素晴らしい経験になったと思っています」
――役作りをする上で大事にしたところがあれば教えてください。
「昨年、ちょっと足をけがしまして。習慣になっていたジョギングから遠ざかっていたことで、年末あたりは若干ぽっちゃりしていたんです。でも、やっぱりシャープな方がいいのかなということで、ジョギングを再開して体を絞りました。内面的な工夫としては、先ほどロックスターのようなキャラクターだと申し上げたんですが、決して上から目線にならないように意識しました。自分も同じように人生につまずき、苦しんだ者として、勢いはあっても、そこに優しさみたいなものも込められたらなと思って演じておりました」
――ロックスターをイメージして演じられたんですね。
「伝説のロックスター・忌野清志郎さんという方がいるんですけれども、彼は、僕が体調を崩したことで心もちょっと折れてしまった時に出会った不思議な人で。それこそ、ファッションも僕の理解を超えたような出で立ちでステージに上がっていた人。ちょっとつまずいてしまっただけなのに、完全に自分の夢を諦めてしまった自分をまたステージに連れ出してくれて、自分がいるべきところに連れていってくれたという恩が今でもあるんです。そんな清志郎さんを思い演じた部分はすごくあります。僕は直接、清志郎さんに恩返しができなかったので、役を通して、僕が清志郎さんにしてもらったことが視聴者の方に伝わったらいいなという思いで演じていました」
――本作にはグッと刺さるセリフがたくさん登場しますが、印象に残ったセリフはありますでしょうか。
「僕もこの作品の中で一番好きで、若い人たちに言ってあげたいセリフの一つが『“なりたい自分”が見つからないなら、“なりたくない自分”から逃げなさい。なりたくない自分に捕まらないように全力で走るの。やみくもに走って、汗だくで逃げて、そうしたらいつの間にかなりたかった自分になってる』なんです。僕自身も、もしかしたら、自分が生まれ育った町で、少なくともあの時代には、なりたい自分になれないかもしれないなと思ったんです。その時、どうしたらなりたい自分になれるかは分からないけど、一度なりたくない自分から逃げてみようと思って、やみくもに東京に出てきた部分はあるんですね。なので、本当に自分の人生に起きたこととして、あのセリフを言わせていただきました」
――ご自身と重なる部分がたくさんあったんですね。
「そうですね。このクールミントにも強さだけじゃなくて、弱さもあるし、時々、矛盾もあるし、とっ散らかるんです。全然格好いいスーパーヒーローじゃなくて。そして、サチや自分を見失っているケン(古川雄輝)にとっての“あしながおじさん”でも“ナントカ先生”でもない。ただ、一緒になって成長していくところがクールミントというキャラクターのよさだと思っています。自分が言ったことの実践者であろうとする姿が人間らしく映るところにまた、共感して演じることができたと思います」
――サチの上京物語という点もドラマのポイントの一つですが、ご自身が上京される前、東京にどんなイメージをお持ちでしたか。
「僕が上京したのが1990年でした。80年代後半から90年代初頭にかけて、バブル全盛期だったんですね。本当にテレビで見る東京はキラキラしていて、まぶしくて。ニューヨークやロサンゼルスよりも憧れの遠い街っていう印象でした。実際に東京に来てみて、サチがクールミントに会うように、僕もいろんな人たちに出会うことができました」
――実際に東京に出てきて、地元・北海道の見え方や思いに変化はありましたか。
「自分が上京して、割と早く東京という街に、芸能界にちやほやされるようなことがあったので、『もっとみんな東京に出てきたらいいのに』『東京チョロい』みたいに思っていた部分があったかもしれません。結局は、自分を見失ってしまって、芸事を目指して東京に出てきたことを悔やんだ時期や、ちょっと体調を崩した時もあったりしたんです。だけど、それも含めて、人間として成長させてくれたのは東京という街だったなと思います」
――サチはクールミントと出会って人生がガラっと変わりますが、人生の転機となった作品があれば教えてください。
「これになるんじゃないかという予感がすごくあるんですよね」
――井桁さんもおっしゃっていました!
「僕もそう思えるくらい取り組めたんです。なるべく多くの方に触れていただきたいし、触れていただいた方の中に、結構鮮明に印象に残る…メッセージが残る作品になるんじゃないかな。もしかしたら、数年後『この作品を見てこの世界を目指しました!』みたいな方が、そう遠くない未来に現れてもらえそうな気がしています。僕が未来を生きる楽しみがまたできました」
――井桁さんは「次はニューヨークで撮影がしたい!」とおっしゃっていました。
「ファッションモデルさんでもある井桁さんからしたら、そういう願望もあるでしょうけど、撮影が終わってみて、日本だから作り出せた美しいメッセージがあるのかなって思い始めているんです。撮影前はニューヨークで撮影できたらと思っていたんですけど、サチの成長過程をシリーズものとして撮影できたらなあと思ったりしています。ニューヨークに行かないことで、この物語のゴールを先延ばしにしたいんです(笑)。『いつまでニューヨークで撮影したいって言ってるんだ!?』『もう5年もたちましたね』って(笑)」
――また同じキャストで撮影できる日が楽しみですね!
「終わって間もないから、こんなに恋しいのかもしれないんですけどね(笑)。井桁さん、古川雄輝くん、三浦獠太くんにまた会える時は、今回と同じようにサチ・ケン・篤史として会いたいなあ…と思っています!」
【プロフィール】
武田真治(たけだ しんじ)
1972年12月18日生まれ。北海道出身。89年に「第2回ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト」でグランプリを受賞後、90年に俳優デビュー。その後、NHK大河ドラマ「江~姫たちの戦国」「晴天を衝け」、「南くんの恋人」(テレビ朝日系)、「ホタルノヒカリ」(日本テレビ系)、「凪のお暇」(TBS系)、映画「嫌われ松子の一生」「今日からヒットマン」「Diner ダイナー」などの作品に出演。
【番組情報】
土ドラ「自由な女神-バックステージ・イン・ニューヨーク-」
フジテレビ系
土曜 深夜0:10~1:05
取材・文/Y・O(フジテレビ担当) 撮影/尾崎篤志 撮影/池田正之 スタイリスト/伊藤伸哉 ヘア&メーク/堀江万智子
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