中村雅俊、浅田次郎原作のドラマ「おもかげ」に主演! 生と死のはざまで過去をさまよう主人公との共通点も2023/03/27
浅田次郎さんの小説「おもかげ」がドラマ化され、3月27日にNHK BS4Kで放送されます。主演を務めるのは、中村雅俊さん。孤独を抱えながら昭和の復興期を生きてきた竹脇正一が、謎の美女たちに連れられて、過去をさまようノスタルジーとミステリーが入り交じったドラマです。
物語は、商社マンとして65歳で定年を迎えた正一(中村)が、送別会の帰りに地下鉄の車内で倒れ、病院の集中治療室に運び込まれることから始まります。ここでは主演の中村さんに、正一の人物像や自身との共通点、共演者とのエピソードを伺いました!
――本作は浅田次郎さん原作のドラマ化になりますが、脚本を読まれていかがでしたか?
「脚本を読んだ後に原作を読みました。浅田先生の作品は生と死のはざまの描き方がすごく面白く、普通に生と死をさまよっているだけじゃ終わらないストーリーがきちんと描かれています。脚本は原作をフィーチャリングしている部分や、原作にはあるけれど描かない部分があり、どちらも面白く読ませていただきました。演じることを前提に読んでいたので、役者や監督、カメラマンの立場を意識してしまい、生と死をさまよう場面などを映像化するのは難しいのではないかとも感じましたね。でも、逆にそれができたら、とても感動するなと。実際に演じていた時に手応えはありましたが、やはり大変でした(笑)。長く役者をやっていますが、どんな映像になっているんだろうと思うところが多々あります。完成した作品をまだ見ていないので、今は完成した作品を見るのが楽しみです」
――正一はどのような人物だと捉えて演じましたか?
「正一はエリートで成功を収めた男。65歳で定年退職を迎え、見事なまでに自分の人生を歩んできて、はたから見るとうらやましがられる人生を送っている。実際そう見えるんですが、実は孤児院、いわゆる児童養護施設で育って親を知らないんです。努力していい大学や会社に入り、自分の人生にきちんと結果を残したけれども、彼自身、生い立ちを引きずっていて、ものすごく大きな悲しい出来事を背負っている。その後、病気に襲われ、集中治療室に入った正一の周りに謎の人物が次々に現れるんです」
――正一のどこに魅力を感じましたか?
「偶然にも正一と俺には共通点が多いんです。正一は昭和26年12月24日生まれでウサギ年で、実は俺もウサギ年。原作を書いた浅田次郎先生も同じウサギ年なんですよ。それにドラマの主人公・正一はおはぎが大好きなんですが、俺もあんこが大好きで、中でもおはぎが大好きなんです。そういうこともあって、正一をすごく身近に感じながら演じました。それに、時代背景や周りにあった景色、いろんな出来事について共感できる部分も多かったですね」
――演じていて難しかった点はありますか?
「集中治療室にいる正一のもとに謎の人物が何人も出てきて、正一はその人物たちにいろんな場所へ連れていかれて会話を重ねていくのですが、状況を理解できないまま物語は進んでいきます。テンポよく進むので面白いのですが、演じる方としては『どういうこと?』と、いつも不思議そうな顔をしているのが難しかったです」
――謎の美女(三田佳子、余貴美子、さとうほなみ)たちに連れられて正一は過去を巡りますが、印象深いシーンはありますか?
「ストーリーとはあまり関係ないんですが、撮影で大変だったのは冬場に夏のシーンを撮ったこと。皆さん、真夏のビーチみたいな感じで演じていて、中には海パン1枚で海へ飛び込む人もいて、本当に頭が下がる思いでした。相当の覚悟を持って水の中に入っていましたから(笑)。俺は見ているだけでしたが、それでも寒さで口が回らなくてセリフが言いづらい時があって、スタッフに『大丈夫?』と何回も確認しました。今回の撮影を振り返ると、映像化すること自体の難しさだけではなく、寒さとの戦いもありましたね」
――共演者とのエピソードを教えてください。
「余さんとは先ほど言ったビーチでの撮影が多くて、本当に寒い中、一緒に演じました。ほなみさんは俳優と同時にミュージシャンでもあるので、撮影の合間に共通の知り合いのミュージシャンの話など、音楽の話ができたので楽しかったです。竹を割ったような性格ですごくさっぱりしているけれど、いろんなことを考えている方なんだなと。また、ミュージシャンなのでセリフの言い方にリズムがあるんです。歌う時のキー(音域)をはっきりと持っている方で。そういうのをはたから見ていて、『この人面白いな』と観察しているのがすごく楽しかったです」
――セリフを話す時にキーがあるんですね。
「実は歌に限らずセリフにもそういうキーがあるんですよ。これが役者の個性を作っていると思いながら、いろんな役者さんの話し方やキーを意識して聞いています。三田さんとは、同じ建築家に家を作ってもらっていたという共通点があって、昔からその話で会話が弾むのですが、今回もその話で弾みました(笑)。今、三田さんはワインに凝っているそうで。俺もワインは結構飲むんですが、こだわりがなく、なんでも飲んじゃうんですけど、三田さんはすごくこだわりがあって、お気に入りのワインの話をした次の撮影日には、そのワインを持ってきてくださって、飲んだらとてもおいしかったです(笑)」
――撮影は寒さとの戦いでもあったということですが、そんな中で楽しかったことはどういったことでしょう。
「寒くてどうしようもなかったと言いながら、撮影自体はすごく楽しんでいました。真冬の海に海パン1枚で飛び込んでいる人たちを大変だろうなと思いながらも、俺自身は楽しんで見ていました(笑)。それに、謎の女性を演じた三田さんと余さん、妻役の浅田美代子さんらとの久しぶりの共演も楽しくて。全体を通してリラックスして、楽しい時間を過ごすことができました」
――劇中、正一は病気で倒れますが、ご自身はそういった体験はありますか?
「倒れたことはないですね。どちらかというと、年の割には元気だと言われることが多いので。でも最近は、血圧がどうだとか、ちょっと調子が悪いと周りの人間に語ることが多くなりました。2年前に70(歳)の大台に上ったんですが、その時に残り時間がそんなに多くはないなと気付いたんです。バリバリやっても80歳くらいまでかなという感じもあるし、こればかりはよく分からないんですが、先のことを考えるよりも、今のことを考えなきゃという気持ちになって、今の人生を丁寧に生きていこうと思うようになりましたね」
――過去を巡るストーリーですが、もし過去に行けるとしたら人生のどこのポイントに連れていってもらいたいですか?
「1年ほど前、余さんがナレーションをされている『ファミリーヒストリー』(同局)に出演させていただいた時に、父親のことをきちんと知ったんです。おやじは俺が四つの時に40歳で亡くなったのですが、亡くなる直前、40歳なのに年老いた写真1枚しか見たことがありませんでした。『ファミリーヒストリー』のおかげで、おやじの若い時の写真を見ることができました。生まれてこの方、『お父さん』と呼んだこともないし記憶もほとんどないので、過去に行けるなら『おやじってこんな顔しているんだ』と。2歳か3歳の頃に行って、おやじの動いている姿を見てみたいです」
――ありがとうございました!
【番組情報】
4Kドラマ「おもかげ」
NHK BS4K
3月27日 午後9:00~10:59
NHK担当/K・H
関連リンク
この記事をシェアする