「うらやましいなって、指くわえて見てますよ」――天才ゆえに苦悩する画家役・池田エライザ「左ききのエレン」インタビュー2019/10/17
10月20日からMBSでスタートするドラマ「左ききのエレン」(MBS/TBSドラマイズム)において、天才ゆえの苦悩と孤独を抱えながらニューヨークで活動する画家・山岸エレン役を務める池田エライザさん。自らの才能の限界に苦しむ“凡才”のデザイナー・朝倉光一(神尾楓珠)と相対する、圧倒的な芸術的才能に恵まれる“天才”を演じます。
元々かっぴーさんによる原作の愛読者で、リメーク版の作画をnifuniさんが担当することが決定した2年前にも、Twitterにアップしていた絵にリプライを送っていた池田さん。もし実写化をするならエレン役をやりたいと思っていたことを明かし、さらに「もしほかの女優さんがエレン役だったら、絶対見ないです(笑)」と言うほど。
高校時代のエレンとの出会いに突き動かされる光一。一方、幼い頃に見た父親の姿が忘れられないエレン。誰かの存在が誰かに影響を及ぼす中で、「自分は何者なのだろう」と葛藤する登場人物たち。そんな作品と向き合う池田さんは、どのような影響を受け、どのような思いでエレンを演じているのか。クランクインから数日後というタイミングで、インタビューをさせていただきました。
“理解してもらえない苦しみ”と“誰かに理解してもらえる幸せ”を丁寧に拾って
──本作では、高校時代のエレンとの鮮烈な出会いが、その後の光一の原動力となっていきます。池田さんにとって、高校時代はどのような時間でしたか?
「勉強は嫌いじゃなかったので勉強したり、高校1年生で『ニコラ』(新潮社)を卒業して『CanCam』(小学館)の専属モデルになって、上京したり。それでもやっぱり、お人形さんみたいになるのが嫌だったのでSNSを始めてみたり…。わりと気ままに生きていました。でもなんか、すごく時代を見詰めている時期だったのかなと思います。世の中がどういうふうに動いていて、みんなが何に関心があるんだろうって。そういうことを研究していたように思います」
──エレンや光一のように、過去の経験や人との出会いが、今の自分の性格や行動に影響しているなと思う部分はありますか?
「結構、全部が素直に影響しているなと思います。エレンのお父さんが画家だったのと同じように、私はお母さんがシンガーだったことに影響を受けていますね。うちは父がすごく寡黙で母が天然なんですけど、ちゃんと2人を半分ずつ受け継いでいるなと思いますし。ただ、お母さんは天然ボケで、私はボケなんです(笑)。親友に言わせてみれば『抜けてる』って言われちゃうんですけど、認めるつもりはなくて(笑)。でも物をどこに置いたかがすぐ分からなくなっちゃうので、きっぷとかは全部、友達に預けてます(笑)。そんなふうに、父と母をしっかり受け継いで、今の自分があるなぁと思いますね」
──本作は“凡才”と“天才”の2人を中心に物語が描かれますが、“天才”側のエレンという人物をどのように捉えていますか?
「天才を演じるというプレッシャーももちろんあったんですけど、エレンに向き合っていると“理解してもらえない苦しみ”みたいなものを常々感じるようになったんです。『どうしてそういうふうに考えるの?』って言われても、『いや、最初からこう思ったから』としか説明ができなかったり。“誰かに理解してもらえる幸せ”ってあるじゃないですか。だからこそ、『本当に自分のことを“全部”分かってくれる人がいない』という孤独もあるし、天才だからこそ、自分のコンディションが良くないと“自分が”納得できるものが作れないという葛藤もあって。演じながらですけど、エレンの人間らしさや心の部分をつかんでいく瞬間がたくさんあります」
──以前「小説を読んだ時、『実写化するとしたら、自分ならこういうふうに撮りたい』と想像する」と話されているのを拝見しました。今回は原作がある作品を池田さんが演じる立場ですが、大事にしていることはありますか?
「エレンが絵に向き合って、没入している時の迫力やスピード感が表現できたらいいなと思っています。漫画だとコマに集中線が描かれているような効果を、目力や動きで見せていくというか。なるべく、普段の無気力なエレンと“天才エレン”が見える瞬間に分かりやすい変化をつけるように考えています」
──ドラマ公式Twitterで、スプレーで壁に絵を描くシーンの撮影風景を拝見しました。難しかったですか?
「撮影自体は半日くらいかかりました。左手の限界を5回くらい感じました(笑)。スプレーでむせながら、跳ね返ってきたのを浴びながらで、大変でしたね。今もマグカップとか、重い物をつかめないくらいぷるぷるしてます(笑)」
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