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「いだてん」人見絹枝役・菅原小春が初めての大河ドラマで魂の演技を見せる!2019/07/06

「いだてん」人見絹枝役・菅原小春が初めての大河ドラマで魂の演技を見せる!

 ついに、第二部がスタートした「いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~」(NHK総合ほか)。金栗四三(中村勘九郎)から田畑政治(阿部サダヲ)の物語となり、時代も大正から昭和へと大きく動きました。6月30日の放送では、新聞記者になった口達者な田畑ことまーちゃんが、嘉納治五郎(役所広司)にぶん投げられたかと思えば、時の大蔵大臣・高橋是清(萩原健一)からアムステルダムオリンピックの渡航費をぶんどってくるなど、四三とは異なる破天荒さを兼ね備えていましたね。また、まーちゃんが是清から大金をもらってくる場面は、落語「火焔太鼓(かえんだいこ)」と見事にシンクロしていて、宮藤官九郎さんの脚本の妙に思わずうなった人も多いのではないでしょうか。

 そうして迎える7月7日の放送は、アムステルダムオリンピックで日本人女性として初めて銀メダルを取った、人見絹枝がクローズアップされる回となっています。今回は、女性アスリートの先駆者ともいえる絹枝を演じた菅原小春さんからお話を伺いました。

──ドラマ出演は初めてとのことですが、なぜデビュー作に「いだてん」を選ばれたのでしょう?

「人見さんのような魂を持った女性は、今の時代とても少ないと思うんです。人見さんは、魂と自分の体を張って日本を背負って海外に行ったんです。それを次の世代の人たちに伝えるために、私も魂を燃やしてやりたいなと思ったのでやらせていただきました」

──実在された人見さんを演じるにあたって、ご自身で調べたりされましたか? また彼女のエピソードの中で印象深いものがあれば聞かせてください。

「人見さんのお写真を見た時に、一瞬で何かを感じさせられるすさまじい人だなぁと思いました。それで、誰かが調べて書き上げたものを自分の情報にしたくないと感じて、特に調べることはせず、人見さんの三段跳びや幅跳び、走り幅跳びの映像を見たインスピレーションで演じました。撮影後に、人見さんのご親族にお会いして、銀メダルや当時使っていたバッグなどを見せていただきました。写真を撮るのが好きだったとのことで、アムステルダムに行く途中のシンガポールに寄った遠征の時の写真やチームの写真などを貼った日記みたいなものも見せていただきました。その日記は、ちょっとギャグが混じっていて、文字がすごく魅力的でチャーミングな女性だと思いました」

──実際にはチャーミングな女性だったのかもしれませんが、当時、日本では女子が陸上をすることに対して偏見があり、世の中の人々から「化けもの」だとか「男おんな」などと誹謗中傷されるシーンがあります。それを演じていかがでしたか?

「私も身なりは振り切っているけど、心は女性で裁縫やご飯を作るのが好きだし、みんなと温かく触れ合いたいんです。バックダンサーをやっていた時に、目立ちすぎてシンメトリーが取りにくいから、『ちょっと下がって踊って』とか、『エナジーを抑えて踊って』と言われたことがあって、骨格や体形が人と違うことにコンプレックスを抱いていた時期があって。でも海外に飛び出した時に、『なんだ、全然普通じゃないか』と気付いて、そのコンプレックスを自分の強みに変えていかなきゃいけない、努力をして、それを磨いていかなきゃいけないと思ったところがあったので、そういうところは人見さんと通じるところがありました。でも、田畑さんから『化けもの』と言われるシーンの時は、阿部さんに『本当に傷ついています』と言っていました(笑)。言われると本当に傷つくんですよ!」

──コンプレックスを力に変えていったことに加え、四三らとの出会いにより“陸上”という居場所を見つけた人見さんに共感するところはありましたか?

「共感するところはありました。私は海外に行く時も何をするにもずっと一人で、自分は孤独だなと自暴自棄になることがあって…。帰国後、孤独にさいなまれてお風呂に浸かりながら『わー』って泣いたりすることもあるんです。一人で振り付けをして踊ることをやりすぎていて、勝手に自分をストイックに追い込んでいたんですけど、人に頼ればいいんだということに気付いてからは楽になりました。また、仲間がいるとこんなにも温かくて笑えるんだとか、話しかけたら笑いが起きるんだということを人見さんの人生を演じていても、ドラマの現場でも感じることができました」

「いだてん」人見絹枝役・菅原小春が初めての大河ドラマで魂の演技を見せる!

──女性の未来のために800m走に挑みたいと野口源三郎(永山絢斗)に伝えるシーンは、菅原さん自身から湧き出ている感情のような気がしましたが、実際に演じてみていかがでしたか?

「泣くというお芝居が分からなくて…。普段家で泣いているのと同じようにやったので、作りこんだという感じはないです。人見さんやシマさん(杉咲花)など、 すべてのことを思ったらああいうふうになっていました」

──また、人見さんはさまざまな記録保持者でスポーツ万能な方でしたが、ご自身は体育は得意だったのでしょうか?

「全部不得意です。今回のテニスの練習も大変だったんですけど、集中して練習したら波に乗るところが分かって余裕ができて楽しくなりました。ダンスもそうですけど、テニスをする時や走る時には音があるんです。絶対無理だなと思ったらその音は出てこないんです」

──作中には出てきませんが、人見さんは新聞記者でもありました。菅原さんの好きな本はありますか?

「私、本を読まないんです。父から『文字を読むな。自分の行動で文字を生み出していけ』と教わっていたので。学校の朝の読書でも私だけ毎回本が変わらないんですよ。ずっと頭の中でイマジネーションやクリエーティブなことを考えるんです。だから、そこはちょっと人見さんと違いますね。でも最近ちょっとずつ文字の面白さに気付くようになってきました。今まではダンスを通して人と通じて、ダンスで会話することができていたので、言葉のコミュニケーションは難しいと思っていたんですけれども、大人になってからは文字も生きているんだなと思うようになってきています」

「いだてん」人見絹枝役・菅原小春が初めての大河ドラマで魂の演技を見せる!

──オリンピックから帰ってきた後、二階堂トクヨ先生(寺島しのぶ)が考案したダンスを踊るシーンがありましたが、ダンサーとしてやってみていかがでしたか?

「リハーサルの時に、これキレキレに踊ってみたいなと思って本気でやったんですよ。そしたらみんな爆笑してしまって(笑)。『これは違うやつなんだな』と思って、おしとやかに気持ちよく晴れやかに踊りました。美しいフォーメーションで、その当時の奇麗なダンスだなと思いました」

──シマが手紙の中で「あなたに対する中傷は、世界に出ると称賛に変わるでしょう」と言っていましたが、あらためて女子スポーツの先駆けである人見さんを演じて思うことはありますか?

「シマさんに出会えてなかったら、ずっと魂を生かせなかったんだと思うんです。イマジネーションの中の世界にいた人見さんですが、シマさんやトクヨさんと出会うことによって、一つずつ扉が開いていったのだろうなと思います。仲間たちがいて最強の状態で、みんなで取ったメダルなのだろうなと思いました」

──最後に、女優としてお芝居をしてみていかがでしたか? 今後女優としてやってみたいことがあれば教えてください。

「面白いです。ダンスは常に面白くはないので…(笑)。ダンスは大好きすぎちゃって大っ嫌いなんです。言い方は悪いかもしれないけど、自分の畑じゃないので、面白がってできる余裕があり、リラックスして作品に挑めました。(演出の)大根仁さんにも『リハーサルがいいからちょっと抑えてくれ』と言われたことがあって、『ダンスのような感覚で演技していたな』と思ったこともありました。今後は、人見さんのように共鳴できる人に出会えた時や、私の魂を燃やす意味がある、私の体と心を通して何か伝えられるものがあると思った時にやりたいです」

──ありがとうございました! 

 身振り手振りを交えて熱くお話をされている菅原さんの姿が、まるでダンスをされているようで、とても印象的でした。

「いだてん」人見絹枝役・菅原小春が初めての大河ドラマで魂の演技を見せる!

 さて、7月7日放送・第26回は、田畑が大蔵大臣の高橋からもらった資金で無事、選手たちがアムステルダムオリンピックに向かいます。アムステルダム大会から女子陸上が正式種目となり、国内予選を席巻した絹枝も参加するのですが、期待されていた100m走は惨敗。このままでは女子スポーツの未来が閉ざされると感じて、未経験の800m走に挑むこととなります。菅原さんの魂の演技は涙せずにはいられません。現在、第26回の見どころを紹介したスペシャル動画がYouTubeとNHK公式ホームページで公開されているので、そちらと併せてお楽しみください。

【番組情報】 

大河ドラマ「いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~」 
NHK総合 日曜 午後8:00~8:45ほか
NHK BS4K 日曜 午前9:00~9:45ほか
NHK BSプレミアム 日曜 午後6:00~6:45

NHK担当 K・H



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