仁村紗和と松尾諭が「NHKスペシャル」南海トラフ巨大地震のドラマ化で地震の怖さを実感。「1人でも多くの人に見てほしい」2023/03/03
近いうちに必ず起こるとされる南海トラフ地震を、ドラマとドキュメンタリーで伝えるNHKスペシャル「南海トラフ巨大地震」(NHK総合)が、3月4日、5日の2夜連続で放送されます。4日には、時間差で巨大地震が連続する“半割れ”といわれる現象に特化したドラマ、5日には被害を最小限に抑えるためにするべきことを、専門家たちと考察していきます。
ドラマパートは、大阪で町工場を経営する森澤一家と高知で暮らす両親、東京で暮らす妹を軸に、それぞれ離れた場所で暮らす家族が見舞われる南海トラフ地震が描かれます。先日行われた記者会見には、大阪で町工場を営む森澤貴彦役の松尾諭さんと、東京で気象庁に務める妹・森澤あかりを演じた仁村紗和さんが登場。ドラマを経て感じたことや震災への思いを明かしました!
――それぞれの役で南海トラフ巨大地震に直面されましたが、どのように感じましたか?
仁村 「気象庁の大規模災害課に務める女性を演じたのですが、専門的な職業なので、言葉の意味を理解して話すことから始まったので、すごく難しかったです。南海トラフ地震については、小さいころから南海トラフ地震が起きると言われていて昔から知っていましたが、このドラマに参加するまでは、どこか慢心している自分がいたと気付きました」
松尾 「脚本が非常によくできていて、『NHKスペシャル』で来るべき南海トラフ巨大地震を扱うことがすごく意義があるなと思いました。僕も19歳の時に阪神・淡路大震災で被災しているので、その時の体験を生かしながら、新たに巨大地震の恐ろしさを1人でも多くの人に伝えられたらと思って演じました」
――今作は“半割れ”と呼ばれる、時間を置いて2回巨大地震が起きるというシナリオでしたが、それを聞いた時にどのように思いましたか?
仁村 「恥ずかしながら、“半割れ”という現象自体をこのドラマに参加してから知りました。巨大地震を想像しただけで絶対にパニックになると感じているので、あらためてこういうドラマやドキュメンタリーを見て、正しい地震の知識を付けていただけたらいいなと思います。気象庁で働くあかりとしては、臨時情報などを出すことへの難しさを感じました。情報を一つ出すことで被災地への支援が遅れることがあるし、救援隊が動きづらくなるという影響があるんです。だけど、臨時情報を出すのは本当に人命に関わる大事な情報で、すごく大切なことなんです。そういう認識を受け手の私たちがあらためて学んでいけたらいいと思います」
松尾 「僕も仁村さんと一緒で、“半割れ”という言葉を今回初めて知りました。すごく大きな地震が来るであろうことは理解していたんですが、このドラマでは西に地震が来た後、東に地震が来るんです。“半割れ”のシナリオを想定した時の被害の大きさが、思っていた以上のものでした。実際はそれがどういうふうな形で来るか分かりませんが、とにかく想像した以上の被害が出ることを頭に入れておかないといけない。とにかく大変なことになるのは間違いないので、少しでもその意識を皆さんが持ってくれることが大事で。何もかもが通用しないかもしれませんが、覚悟があるのとないのでは全然違うと思います」
仁村 「知っているのと知っていないのでは、絶対に次につながる行動が変わってきますよね」
――年の離れたきょうだいという設定で、共演シーンが1回もなく、電話でのやりとりしかないことにやりにくさはありましたか?
仁村 「私は難しかったです」
松尾 「僕は難しくはなかったんですけど、同じシーンがなかったのが残念で。仁村さんがちょっと前に僕の出身地である尼崎が舞台のドラマをやられていたので、勝手に妹のように思っていました。また、本読みと顔合わせの時に初めてお会いして、隣で声を聞いた時に『いいな』と思っていたので、余計に面と向かって芝居をするシーンがなかったのは残念でした」
仁村 「ありがとうございます。私も同じ気持ちです。私は離れて暮らす家族がちゃんとできているか心配でした。それを全部電話のシーンで表現しなくてはいけなかったんです。録音した松尾さんの声や、お母さんの声を聞きながら電話をするシーンを演じるのですが、お互いの息を吸うタイミングなどを合わせていくのが難しかったです」
松尾 「離れているもどかしさは、もしかしたら、かなり出ていると思います。後編で、伝言ダイヤルを使うシーンがあるんです。存在は分かっているけど、有事の際にどういうふうに利用するのかパッと分からない人が多いと思うんですが、それがドラマの中で表現されているんです。伝言ダイヤル以外にも、避難の仕方や避難グッズなどの知識もいろんなところに散りばめられているので、そういう点でも見どころはかなりあります」
仁村 「高知、大阪、東京と離れた家族を描いているので、自分に近い存在の登場人物を探して見ていただくとか、自分だったらどう動くかを考えながら見ていただけるといいですね」
――ドラマで演じてから、ご自身の家族と地震について話し合われましたか?
仁村 「家族だけじゃなく、マネジャーや会う人会う人に防災対策はどういうのをしているかと話をするようになりました。私自身が東京に住んでいて、家族は大阪に住んでいるので、本当にあかりとリアルな感じでは共感していて、伝言ダイヤルの話もしましたし、待ち合わせ場所や防災グッズの話は家族で話しました」
松尾 「僕もある程度はしました。例えば水をためておいた方がいいなどを話したのですが、このドラマの撮影を経て僕が得た危機感と家族が僕の話を聞いて得る危機感にちょっと温度差があったので、ドラマを家族みんなで見終わってから話し合いたいと思います」
――完成したドラマをご覧になった感想と、撮影を経て思うことを教えてください。
仁村 「音がついた映像やCGの津波のシーンが本当に恐ろしくて。ドラマの撮影中もモニターの震度分布図が赤く染まっていく西側を見ていると、本当に恐ろしい気持ちになりました。怖さは地震大国と呼ばれる日本に住んでいたら分かってはいると思うんですけど、あらためてドラマで見るとすごくリアルで。もしかしたら、被災した方がフラッシュバックしてしまうかもしれない怖い映像が流れているかもしれないですが、あらためて怖い気持ちを思い出してもらうことで、1人でも多くの方々に地震や防災の知識を知っていただければ、いざその時が来た時に考えられる余裕が生まれると思うんです。それが大事な人や自分を守ることにつながると思うので、ぜひ自分ごとのように考えて見ていただきたいです」
松尾 「南海トラフが来るかもしれないということは、随分前からいろんなところで話が出てきていましたけど、これだけ面と向かってしっかりと注意喚起を促す番組は、たぶんなかったと思います。今作は『NHKスペシャル』とNHKのドラマ制作部が組んで、家族でも1人でもしっかりと見られる番組になっています。はっきり言って怖いシーンもいっぱいあります。目を背けたくなるようなことや、もう見ていられないと思うようなところもあるかもしれないですが、それだけ怖いものが来るという心構えをしておくことが防災につながると思います。先日、トルコや北海道でも地震がありましたけど、いつか来るというよりも、必ず来るので、とにかく1人でも多くの人に見てもらえたらうれしいです」
――お二人はドラマだけでなく、南海トラフ巨大地震にどう備えればいいかを考える第2部にも参加されたそうですが、あらためて考えたこと、感じたことはありますか?
仁村 「スタジオ収録は、名古屋大学の先生が面白い先生で、地震や防災のことを本当に分かりやすく伝えていて、すごく勉強になります。先生が『準備していたら怖くないよ』とおっしゃっていたんです。先生は“備えあれば憂いなし”を実行していらっしゃる方で、そういう人が1人でも広がれば何か変わるんじゃないかと強く思いました」
松尾 「先生が楽しんで備えをしていると言われていたのが印象深かったです。趣味みたいな感じで面白い防災グッズがいっぱい出てきて、防災って面白いんだよと。その感覚は確かになかったなと。怖いとか注意喚起とか、そういうことばかり言っていますが、前向きな感じで捉えていくことも大事ですよね。地震はもちろん嫌ですが、例えばいい水を用意しておいて、もし防災で使わなかったらお酒で水割りを作るのに使えるからとか、堅苦しくない感じで備えればいいと思います」
――松尾さんは阪神・淡路大震災で経験したことをドラマに生かしたとお話されていましたが、具体的にどんなことをされましたか?
松尾 「まず、揺れですね。阪神・淡路大震災の時は西宮の団地に住んでいたんですが、あの揺れの激しさは、どんな遊園地のアトラクションに乗っても経験できないほどの揺れだったんです。僕は揺れる直前にちょっと目が覚めて、その後バーって揺れた時に地震だと思わなかったし、恐ろしくて動けなかったんです。ラグビーをやっている19歳で、すごく体力もあった若者が動けなかった。だから、現場では南海トラフ地震で揺れが来た時に、すぐに動けるのかということを話し合いました。揺れた時にすぐに立っては動けないだろうと。僕が体験した揺れは、揺れというよりも世界が回っている感じで。天井や壁、全部が動いていると感じたんです。ほかにも、揺れた後の避難や火事が起こるなどの周りの状況ですよね。戦争を体験したことはないですが、本当に戦争中のように西の空が真っ赤に燃えているという恐ろしさを思い出したりしながらやりました」
――お二人は東日本大震災の時には何をされていましたか?
仁村 「私は大阪に住んでいる学生で、ラーメンを作っていた時に地震が来て、火を止めてテレビを付けると津波の映像が流れていて、同じ日本ではないんじゃないかという信じられない光景が広がっていました。私自身、今まで被災したことがないので、このドラマに参加して勉強させていただいた部分ではあります」
松尾 「僕は東京の家にいたんですけど、上の子が生まれたばっかりで、阪神・淡路大震災の時と比べると揺れがそこまで強くなかったんで、大丈夫やと思ったんです。でも、沖縄出身の妻は地震をほとんど経験したことがなくて。揺れが終わった後に、僕は舞台を見に行く約束があったので、『舞台を見に行ってくるわ』と言ったら、妻が『何考えてるの』と。妻は怖くて動けなかったんですよ。『これぐらい大丈夫やと思うで』と言っていたんですが、阪神・淡路大震災の時と大きく違ったのは、津波が来たということ。あんなことが起こるなんて想像できていなかったので。しかも、次の南海トラフ地震は、それが両方、さらにもっとすごい規模が来る。そう思うと、もう本当に怖くてしょうがないですね。自分1人だったらまだしもですが、今は家族が増えたので。想像したくないですが、想像しないといけないんで、覚悟しないといけないと思っています」
――防災グッズで実際に購入されたものがあったら教えてください。
仁村 「最近、買い直しました。本当においしそうなご飯のパウチで入っているパックがいっぱい売っていたので、余裕を持って追加しました。ご飯やお水、保温してくれるサバイバルシートや寝袋など、自分の家を最高の避難所にすることが目標だと思っていて。それが一人一人そうなったら素晴らしいですよね。あと、犬を飼っているので、ワンちゃんと一緒に避難するためのグッズもあります」
松尾 「それで言うと、僕は全然やっているうちに入らないんですが、備蓄している水がそろそろ賞味期限を迎えるので、それを今飲みながら次に買う水を探して注文したところです。もう一つはポータブル電源。太陽光でも充電できるものをどれにしようかなと選んでいるところで、ちょっと高いのですぐに決断できないでいる段階です(笑)」
――ありがとうございました!
【番組情報】
NHKスペシャル 南海トラフ巨大地震
NHK総合
第1部 ドラマ
3月4日 午後7:30~8:48(前編)、午後10:00~10:54(後編)
第2部 “最悪のシナリオ”にどう備えるか
3月5日 午後9:00~9:59
NHK担当/K・H
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