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「原点に戻ろうか」。熱血青春コント師・サンシャインが見つけた一筋の光【ロングインタビュー前編】2023/02/22

「原点に戻ろうか」。熱血青春コント師・サンシャインが見つけた一筋の光【ロングインタビュー前編】

 吉本興業所属のお笑いコンビ・サンシャイン。地元・福岡の大学の同級生として出会い、在学中はお笑いサークルで活動。大学卒業と同時にプロを目指して上京し、東京NSC16期生として入学。2013年、結成3年目で「キングオブコント」準決勝進出を果たし勢いに乗るも、数年後に訪れたのは「地獄の3年間」。

 賞レースで結果が出せない。1軍にいたはずの劇場のピラミッドで、2軍に降格。身近に感じていた同期が「キングオブコント」決勝へ。

「原点に戻ろうか」。熱血青春コント師・サンシャインが見つけた一筋の光【ロングインタビュー前編】

「自分たちの武器が、分からない」。

 そんな葛藤を抱えながらも日々舞台に立ち、気づけば芸歴は12年。本気でコントと向き合い、コントを愛し、コントにささげた12年を、いや、35年の人生を、5年ぶりとなる単独ライブにすべてぶつける。もがき、さまよい、ぶつかりながらも、走り続けた2人が一筋の光を見つけるまで。坂田光さん、のぶきよさんのお二人に、思いを聞いた。

「原点に戻ろうか」

「原点に戻ろうか」。熱血青春コント師・サンシャインが見つけた一筋の光【ロングインタビュー前編】

――2月26日に、単独ライブ「ハイライトサーチライト」を開催。5年ぶりの単独ライブとのことですが、開催を決めた理由を教えてください。

坂田 「2014年に初の単独ライブをやったんですけど、それからは毎年単独ライブを開催していたんです。2人ともバナナマンさんや東京03さんの単独ライブが大好きなので、単独ライブはめっちゃ力入れてて。年2回やる年もあったくらい。でも、5年前に神保町の劇場で開催した後くらいから、芸歴も重ねてきたのもあって、『本気で賞レースで結果を出したい』と考えるようになって、そっちを優先して頑張ることにしたんです。そこから毎月の新ネタライブに加え、年に1回、ベストネタライブもやって。2018年から19年には100本ネタ作ったり、『365本ネタ作る!』って頑張ったりしてたんですけど、昨年の『キングオブコント』で準々決勝で落ちてしまって。それで一旦話し合って、『原点に戻ろうか』と。自分たちが本当に好きなことを、好きなようにやろうか、ということで、このタイミングで単独ライブをすることになりました」

のぶきよ 「やっぱり、もうとにかく結果が欲しくて。5年前に単独ライブをして、その次の年くらいから『絶対賞レース取る!』って気持ちがより強くなったんです。それこそ優勝してる人とか、結果出してる人よりいっぱいネタ作らなきゃという思いだったし、それも単独ライブでやるようなネタじゃなくて、賞レースに特化したネタが必要だなと。だからこの4年くらいは、“好きなネタをやる”という感覚が本当になくなっていた時期でもありますね」

――5年前に開催した前回の単独ライブは、どんなライブだったんですか?

坂田 「2018年の2月に神保町花月で開催した『僕はビアンカを選んだ』という単独ライブでした。今は『神保町よしもと漫才劇場』という名前で若手の劇場になっているんですけど、当時は僕らも結構出ていたんです。ドラクエのゲームにビアンカとフローラというキャラクターがいるんですよ。ビアンカが主人公の幼なじみの女の子で、フローラがお嬢さまなんですけど、どちらかと結婚しなくちゃいけないっていう魔の選択をさせるんですね。それが印象に残っていたので、“どっちを選択するか”みたいなことをテーマにした単独にしました。その時も、好きなことを伸び伸びとやっていました」

――そこから賞レースに照準を合わせたネタを作っていくのは、楽しいというより…。

坂田 「しんどかったですね。賞レース用に、早くボケて、早く笑いが取れるネタばっかり意識していました。“ウケるネタ”より、“勝てるネタ”のことばかり考えて」

のぶきよ 「めちゃくちゃしんどかったです」

坂田 「『キングオブコント』でバイきんぐさんが優勝した時、『1年に50本、2年間で100本作って、そこでできた2本で優勝した』とおっしゃっていたので、『じゃあ俺らは倍でいかないと!』って思って、1年で100本ネタを作ることにしたんです。しんどかったんですけど、そしたら2019年に、久しぶりに準決勝にいけて。すごく手応えもあったので、こうやってもがくのも意味はあるなと。今思い返してもその日々はしんどすぎたんですけど、その分いいネタができたし。でも、伸び伸びやれていたかと言われると…。やっぱり“縛られている”という感じでした」

のぶきよ 「あとは、いわゆる“勝負ネタ”を振り返ると、『これは絶対賞レースでかけるんだ!』って作ったネタより、『これ、今度新ネタライブで下ろしてみるか』って作ったネタの方が『意外といいやん!』って残っているイメージがあって。だったら単独ライブという形で好きなネタをもっとやった方が、実は残るネタができやすいのかな?と。だから、今回坂田に『単独やろうか』って言われた時、僕も『いい頃合いだな』って感覚がしたんです。『絶対賞レースで勝てるネタを!』というよりは『いいネタを単独でやるんだ』という思いなので、今回の単独が楽しみです」

自分たちの“色”は「熱い」「青春」「衝動」

「原点に戻ろうか」。熱血青春コント師・サンシャインが見つけた一筋の光【ロングインタビュー前編】

――ネタは坂田さんが書いていらっしゃるんですか?

坂田 「僕が一応作って、投げて、アイデアをもらって完成させていく感じですね。すごくいいネタが出そろったので、あとは本番まで詰めていくだけです。いい感じです!」

――開催を目前に控えた今、どういう心境ですか?(取材は2月13日に実施)

のぶきよ 「5年前、6年前の単独の時は、もうこの時期ピリピリして。それこそコンビ間がギスギスして…って感じだったんですけど、それから実際に100本ネタを作ってみたことによって、なんとなくコンビとしての“色”が見えたんです」

坂田 「(何度もうなずいて)それ! それだ!!」

のぶきよ 「コンビとしての“色”が分かった状態での単独が初めてなので、なんか、今すごく雰囲気がいいというか」

坂田 「そうでした。すげぇいいこと言ってくれた。この5年間、めちゃくちゃ数作って、自分たちに合うネタとか、『自分たちはこれが強みなんだ』っていうのを見つけることができたんですよ。それまでは本当にがむしゃらだったし、“ガチャ”じゃないですけど、『いい設定来ないかな』って感じで」

のぶきよ 「頭の中、『設定、設定』でいっぱいで。『いい設定を見つけるんだ』となってしまって」

坂田 「自分たちに合う、合わないよりも、僕たちがネタに合わせにいこうとしていたんです。今は自分たちに合うものが何かが分かっているので、ネタを作りやすくなりました。だから、今までとは全然違う単独ライブかもしれないです」

「原点に戻ろうか」。熱血青春コント師・サンシャインが見つけた一筋の光【ロングインタビュー前編】

――言葉にするのは難しいかもしれないですが、お二人で見つけた、自分たちの“色”とはどういうものになりますか?

のぶきよ 「テーマでいうと『熱い』とか『青春』ですね」

坂田 「僕らのネタって日常を切り取ったものが多いんですけど、今回はファンタジーっぽいもの、中でもお互いの人柄が出るネタもやろうかなって。僕らって、派手でもないし、めちゃくちゃ普通の人間なんですよ。だからこそ“日常の中にも輝く瞬間はある”というのをテーマでやりたいなと思って、『ハイライトサーチライト』というタイトルにしました。僕らなりの熱量とか、青春、言葉にできない衝動をコントで出せたらいいなと」

――坂田さんは、音楽もそういうものが好きな印象です。

坂田 「そうなんです。今回、“初期衝動”みたいなものはめちゃくちゃ意識して作りました。音楽もそうなんですけど、本当に、もう本当にシンプルでいいから、終わった後に走り出したくなるような単独にしたいなと思ってます。ダサい表現なんですけど(笑)」

――それは自分たちが、ですか? お客さんにも「走りたい」と感じてもらえるような?

坂田 「お客さんにもそう思ってもらいたいですね。僕が中学、高校時代に聴いたパンクロックがそういうイメージなんです。田舎で育ったんですけど、曲を聴くと『こうしちゃいられんな』って衝動に駆られたんですよ。『なんかしなきゃ!』って」

――その価値観は、お二人の中で一致しているのですか?

のぶきよ 「一致しています。2014年に初めての単独ライブを∞ホールでさせてもらったんですけど、いろんな芸人が見学に来てくれたんです。終わってTwitterでエゴサーチをすると、『走り出したくなりました』って書いてくれた芸人がいたりして。それを見た時、『これがコンビとしての良さなんだ!』『これがサンシャインの単独ライブで伝えたいことなんだ』って思ったんですよね。今回もそういうふうに、人の心を動かす単独にできたらという思いがあります」

 インタビュー後編はこちら:https://www.tvguide.or.jp/feature/feature-2053453/

「原点に戻ろうか」。熱血青春コント師・サンシャインが見つけた一筋の光【ロングインタビュー前編】
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「原点に戻ろうか」。熱血青春コント師・サンシャインが見つけた一筋の光【ロングインタビュー前編】

【プロフィール】

サンシャイン
坂田光(1987年8月4日生まれ、福岡県みやま市瀬高町出身)と、のぶきよ(1987年12月9日生まれ、福岡県福岡市出身)が、大学の同級生として出会い、在学中はお笑いサークルで活動。大学卒業と同時に上京し、ともに東京NSC16期生として入学。2011年にコンビ結成。13年、結成3年目で「キングオブコント」準決勝進出を果たす。19年、初の著書「この高鳴りを僕は青春と呼ぶ」(ヨシモトブックス)を発売したほか、20年4月より1年半、「SCHOOL OF LOCK!」(TOKYO FM/JFN38局系列)で校長に就任(坂田)。23年2月26日、東京・よしもと有楽町シアターにて、5年ぶりとなる全2公演の単独ライブ「ハイライトサーチライト」を開催予定。会場チケット発売中(夜公演のみ配信あり)。

取材・文/宮下毬菜 撮影/尾崎篤志



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