【今月のSPOTLIGHT】Vol.9 アントニー・スター2024/07/27
最低最悪なスーパーヒーロー
やりたい放題のセレブなスーパーヒーローたちと、彼らの暴走を止めようとする者たちの死闘を描いた人気ドラマ「ザ・ボーイズ」がシーズン4に突入。そんな中、ヒーローなのに相変わらず人として最低最悪なのが、アントニー・スター演じるホームランダーだ。
そもそも、同名のDCコミックスを原作にした「ザ・ボーイズ」の物語世界には、ヒーローものに対する皮肉がたっぷり。スーパーヒーローたちは自らの能力を駆使して人助けに日夜奔走…するのではなく、金のなる木として企業に管理されていて、テレビやCM出演にも忙しく、すっかりタレント化してしまっている。となれば、ヒーローと言えども人間性に問題のある者は増えてきそうなもので、その最も厄介なケースがホームランダーという存在。目からビームを出せるし、空を飛べるし、怪力だし…とヒーロー能力は100点満点だが、その無敵さゆえに人間はもちろん仲間のヒーローたちのことも見下していて、「自分大好き! 自分さえよければオールOK!」を貫いている。
そんなホームランダーのこと、普通なら足元をすくわれる展開が待っていそうなものだが、シーズン4でも彼はまだまだ元気。それどころかむしろパワーアップしているようにも感じられ、セクハラもパワハラも当たり前のクズっぷりを嬉々として発揮し続けている。ちなみに、打倒ホームランダーの最重要人物として、このドラマにはビリー・ブッチャー(カール・アーバン)という主人公がいるのだが、彼が悪行ざんまいのホームランダーをやっつける日は果てしなく遠いような…。しかも、シーズン4にはホームランダーの(ちょっとだけ)人間らしい内面が垣間見えるエピソードもあったりして、悔しいことに彼からますます目が離せない感覚にも陥らされる。
演じるアントニー・スターはニュージーランド出身の実力派で、明るすぎるブロンドヘアに胡散(うさん)臭いスマイルが特徴的なホームランダーとは見た目からして別人。おそらく、街で彼を見かけても「ホームランダーだ!」と瞬時に気付くのは難しいのではないかと思われるほど、作り込んで役に臨んでいる。「役者さんってすごい…」の一言に尽きるのだが、当の本人はホームランダーと自身を混同されて困惑することもあるそう。しかしながら、“悔しいけど目が離せないホームランダー”が誕生したのは、まぎれもなくアントニー・スターの功績。「ザ・ボーイズ」があと1シーズンで完結し、ホームランダーの暴挙を見られなくなるのにも一抹の寂しさを覚える。
【プロフィール】
アントニー・スター(Antony Starr)
1975年10月25日生まれ。ニュージーランド出身。主演ドラマ「Banshee/バンシー」(2013~16年)で保安官になりすます元犯罪者を演じ、注目を集める。ほかの出演作に、資産家一家の崩壊を描いたサスペンスドラマ「アメリカン・ゴシック 偽りの一族」(16年)、ガイ・リッチー監督の映画「コヴェナント/約束の救出」(22年)など。
【番組情報】
「ザ・ボーイズ」シーズン1~4
Prime Videoで独占配信中
文/渡邉ひかる
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