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伝説のクイズ番組「天才クイズ」が本格復活!? プロデューサーが語る再始動の裏側2024/07/30

伝説のクイズ番組「天才クイズ」が本格復活!? プロデューサーが語る再始動の裏側

 東海エリアで生まれ育った人であれば誰もが知っているCBCテレビの人気長寿番組「天才クイズ」が、令和に復活! 司会に向井慧パンサー)さんを迎え、「Pascoプレゼンツ 新天才クイズ ~2024夏~」として、8月3日、10日、17日、24日の4週連続で放送されます。また“応援隊”として、3日、10日はチャンカワイ(Wエンジン)さん、17日、24日は松陰寺太勇ぺこぱ)さんが出演します。

 1967年7月から2004年9月までのレギュラー放送で、のべ11万人もの小学生が出場した伝説の番組はいかにして復活、再始動したのか? その魅力とは? 自身もこの番組を見て育ったという平岩莉央プロデューサーと、レギュラー放送時より番組を見守ってきた山田もと子ディレクターにお話を聞きました。

全国で放送されているかと思っていた!?

――37年2カ月にわたってレギュラー放送され、「パネルクイズ アタック25」(ABCテレビほか、1975年4月~2021年9月)に抜かれるまでは、日本最長寿のクイズ番組だった「天才クイズ」、まずは復活の経緯からお聞かせください。

平岩 「2022年に放送された『復活!天才クイズ』で初めてプロデューサーとして携わり、そのときに“今の時代に『天才クイズ』をやっても通用するんだ!”と感触を得たことで、『新天才クイズ』として再始動させるに至りました。レギュラー復活とまではいかなくても、年に何回か特番を放送できたらいいなと思い、昨年8月に『新天才クイズ~2023夏~』を、今年3月には『新天才クイズ~2024春~』を特番として放送、今回で4回目となります」

――公共放送・キー局・ローカル局を問わず、多くの子ども向け番組が放送されてきましたが、CBCテレビの放送エリアである愛知県・岐阜県・三重県では、「天才クイズ」が大人気だったと聞きます。

平岩 「地元が愛知県なもので、私自身も子どもの頃から親しんできました。最近まで全国で放送されているとばかり思っていました」

山田 「(笑)、みんな知ってると思っていたんだ?」

平岩 「『復活!天才クイズ』に携わったときに、東海地方でしか放送されていなかったことを知って、衝撃を受けました(笑)」

――参加資格は小学生のみ。3人1組でチームを組む(途中までは相談可。戦略的に3人が同じ答えでなくてもよい)。クイズはイエスorノーの○×解答で、間違えたら脱落。最後まで勝ち抜けた人が「天才賞」をもらえるという、シンプルかつクイズ番組の王道スタイルが広く、長く支持されて。

平岩 「まさにシンプル・イズ・ベストです。かつては6人1組だったチームの人数や問題数を減らすなど変更した点もありますが、ルールは“○×の2択”で、解答するときには“○×が描かれた帽子を使う”という大事なポイントは、『新天才クイズ』でも継承しています」

山田 「たとえ答えが分からなくても、○か×どちらかを選べば正解できるところが小学生にハマったんだと思います。知識だけではなく、運でも勝ち抜けることができますからね」

――山田さんはいつごろから「天才クイズ」に?

山田 「私がかかわったのは3代目の司会者、斉藤ゆう子さん(現:斉藤祐子、1984年1月~1994年5月)から4代目の林家こぶ平さん(現:林家正蔵、1994年6月~2004年9月)にバトンタッチするタイミングでした。私どもの会社(テレビ番組・CM制作会社「コックスプロジェクト」)は、もともと番組内のVTR素材を作っていたんですが、その後スタジオ収録のお手伝いもさせていただくことになったんです」

平岩 「私も、まさにこぶ平さん時代を見て育ちました。小学生のときは、それこそチームを組んで応募もしましたね」

お子さんの本質は昔も今も変わりません

伝説のクイズ番組「天才クイズ」が本格復活!? プロデューサーが語る再始動の裏側

――本日は「新天才クイズ~2024夏~」の初回の収録も拝見しましたが、観覧席には斉藤さん、こぶ平さん時代を見ていたであろう親御さんが大勢、お子さんの応援にいらっしゃっていました。

平岩 「レギュラー終了から間が空いたので復活する際は不安もあったのですが、応募人数の多さに驚きました。今回は応募総数2300組以上、その中から4週合計で80組240人にご出演いただくことになりました」

山田 「きっと当時を知る親御さんの方が熱心に応募されたんじゃないでしょうか(笑)。実際に今日の収録でもいらっしゃいましたが、子ども時代に番組に出演された方とか、応募したけれど、出場がかなわなかった方が、お子さんに夢を託して。それだけに、皆さんものすごい熱量でしたね」

――ある年齢以上の東海エリア出身者は歌えるという「ドッキン、ドッキン、どっちかな♪」でおなじみのテーマ曲は、今のお子さんたちにも浸透していましたね。

山田 「みんな元気よかったよね?」

平岩 「出場が決まったお子さんには番組からメールで歌詞と楽曲をお送りしているんです。みんなで歌ってもらえたらいいなと思いまして」

山田 「あるいは、今、お子さんが出演できる番組って限られていますので、“テレビに出たい!”とモチベーション高く臨んでくれたのかもしれません。クイズ自体もブームですから、クイズが得意なお子さんも大勢いらっしゃった印象でした」

――昭和から令和へ。大声でテーマ曲を合唱して、クイズに正解すれば喜んで、不正解なら悔しがる。スタートから57年を経た今もお子さんの本質は変わらないのかなという感想も持ちました。

山田 「オーディションのPR動画でも3人で声を合わせてくれたり、衣装をそろえてくれたり。今日もみんな楽しんでくれているようでしたし、本番では悔し泣きする子もいましたし。そういうお子さんたちの昔も今も変わらない一生懸命さやけなげさを見て、私たちスタッフもウルっときました。“カメラ慣れ”という意味では、スマホなどで撮られ慣れている今のお子さんの方が緊張のないように見えましたが、基本的には同じなんだなと思いました」

平岩 「確かに、リラックスして見えましたね」

向井さんの「天才クイズ」愛がすごい!

――そんなお子さんたちを、時に褒め、時になぐさめ……と、場を取り仕切るパンサーの向井さんが、これまで培ってきた番組のカラーにピッタリでした。

山田 「おっしゃる通り、過去を振り返っても適任だと思いました。安心させながらも、お子さんたちの意見やコメントを引き出すのがお上手だなと」

平岩 「そもそも向井さんも愛知の出身で、ご自身のラジオ番組で天才博士のものまねをされるなど、“『天才クイズ』愛”にあふれていることを存じ上げていましたし。『子どもの頃に大好きで、いつも見ていた番組の司会ができるなんて!』という意気込みで臨んでくださっているので、お任せして本当によかったと思います。本来であれば今のご時世、“ちゃん・くん”呼びは微妙なのかもしれませんが、向井さんはお子さんと距離を縮めるのがお上手なので、何も問題ないと思っています」

山田 「当然ですが、地元ネタも豊富で、向井さんとのやりとりに、お子さん、親御さんとも喜んでおられましたね。喜ぶといえば、天才博士が登場すると、大歓声があがって」

――「天才クイズ」の象徴であり、クイズの出題者でもある“天才博士”。「博士~!」と、会場であるCBCホールに呼び込む様子がほほ笑ましかったです。

平岩 「今のお子さんですからね、“中の人”の存在も薄々は分かっているはずなのですが(笑)、それにしても、ものすごい歓声でした」

山田 「そのへんも、お子さんは変わらないんだなと思い、妙に安心しました(笑)」

平岩 「普段はあまり出せない大声を出していただいて。『天才賞』をもらえなかったお子さんも楽しんで帰っていただければうれしいですね」

知識だけでも運だけでもない絶妙な問題

伝説のクイズ番組「天才クイズ」が本格復活!? プロデューサーが語る再始動の裏側

――「新天才クイズ~2024夏~」では、東海地方にまつわるバラエティーに富んだクイズを出題。クイズ作成において、昔と今で変化はありましたか?

平岩 「権利問題など、昔とは勝手が違う点が多々ありますので、みんなで苦労しています」

――ちなみに、記念すべき「天才クイズ」放送第1回(1967年7月26日放送)の1問めは「パーマンのスピードは、時速91kmである」で、当時の答えは「イエス(○)」。しかし1983年スタートの新作アニメより設定が変更されて、空を飛ぶ速度は119kmへと改定。同じく第4問「世界一長い川は、ミシシッピ川である」も、正解は「○」でしたが、現在は詳しい調査の結果、ナイル川が世界最長となっているとのこと。

山田 「スタートから50数年の間に、教科書もずいぶん変わっていますからね」

平岩 「90年代は、どんな感じで作られていたのですか?」

山田 「1人の作家さんが問題を考えていました。当時は1回に10問の時代でしたから、ちょうど10問、予備問題も2問くらいしかなく、手書きの原稿を渡されて。2本撮りとはいえ放送は毎週あるため、今のように会議で“もむ(練り直す)”時間は今よりかなり少なかったと記憶しています」

平岩 「今では考えられない、スリリングな現場だ(笑)」

――前々回「新天才クイズ~2023夏~」から、構成&クイズ作家としてバラエティー番組やクイズ番組、リアル脱出ゲームなどで活躍する矢野了平さんが参加。

平岩 「『復活!天才クイズ』の放送時に矢野さんがX(旧Twitter)で触れてくださって。いろんなご縁が重なって、ご一緒いただけることになりました。向井さんのラジオの構成も矢野さんが担当されていたことで、打ち合わせもスムーズで。『天才クイズ』がクイズ業界で認知されていたからこそ、お引き受けくださったと思うと、番組の重みを改めて感じます」

山田 「矢野さんが作る問題はどれも普遍的で、知識だけでも運だけでもない加減が素晴らしいです。大人も楽しめる、ちょうどいい難易度の問題ばかりだと思いました」

平岩 「矢野さんとは、例えばゲームの設定内の知識を問うような、限られた方だけに有利な、知らないお子さんにとっては運頼みになるような問題は避けましょうと言っていて。そうすると、自然と原点回帰しますね。明日ちょっとだけ誰かに披露したくなる知識と言いますか、家族の会話のきっかけになり得る問題がたくさんありますので、皆さん一緒に考えていただきたいです」

新天才クイズが、東海地方の文化として再び根づくよう

――長い歴史の中で、ハプニング……例えば、1問めで全員が脱落するなどなかったのですか?

山田 「あったと思います。そのときは、確か天才博士からの特別措置ということで、最初からやり直しました。逆に、天才賞まで残ったお子さんが多すぎて、最後に着替えるマントと帽子が足りなかったこともあります。ほかにも一時期、博士がロケに出ていた時代に、お子さんから着ぐるみの頭を取られたことがあるとも聞きました」

平岩 「えっ!? どうなったんですか?」

山田 「そのときは、博士がとっさにしゃがんで事なきを得たみたい(笑)。誰にも中身を見られずに済んだようです」

――「新天才クイズ」も回を重ねるごとに、視聴者参加型クイズ番組の魅力が凝縮された番組であることが再認識されてきたのではないかと。

平岩 「今回の観覧は家族、ご親戚に限定していたんですけど、クラス単位で応援してくれたり、先生も来場したいと言ってくださったり。そうした声も多く寄せられたので、できるだけご要望にお応えできればと考えています」

伝説のクイズ番組「天才クイズ」が本格復活!? プロデューサーが語る再始動の裏側

――「目指せ、レギュラー化」というのは気が早いかもしれませんが、今後の展望はありますでしょうか?

平岩 「スポンサーさんと並走してきた番組でもあるので、無邪気には言えませんが、より多くのお子さん方に見ていただいて。小学生の私が楽しみに見ていたように、東海地方の一つの文化として再び定着してくれるといいなと願っています。出演してくれたお子さんがクラスのヒーロー、ご近所のヒロインになってくれたらと」

山田 「私は単純に、テレビ離れが叫ばれている昨今、『新天才クイズ』をきっかけにお子さんたちがテレビに触れてもらえるようになると、いちディレクターとしてうれしく思います」

平岩 「それと遠い将来ですが、10年後、20年後に(今回から天才賞の賞品になった)天才博士トロフィーを持っているかつての少年少女に会いに行けたら楽しいだろうな考えています。ともあれ、久しぶりに毎週『天才クイズ』が見られるこの8月は、ぜひ『Pascoプレゼンツ 新天才クイズ ~2024夏~』で楽しんでください」

 Locipoでの配信により東海エリア、さらにそれ以外の場所で暮らす人も見ることができる「新天才クイズ~2024夏~」。お子さんの奮闘と、親御さんの情熱、そしてクイズが本来持つ楽しさを存分に味わってみてはいかがでしょうか?

【プロフィール】
平岩莉央(ひらいわ・りお)
愛知県生まれ。CBCテレビ コンテンツデザイン局 IPプロデュース部 プロデューサー。
2015年、CBCテレビ入社。報道部、営業部を経て、2022年より現職。このほか、ドラマ『民宿のかくし味』『マクラコトバ』、開局65周年記念番組『ツナガル、夜に。』、アニメや舞台などのコンテンツプロデュースを手掛ける。

山田もと子(やまだ・もとこ)
愛知県生まれ。コックスプロジェクト 制作部ディレクター。
コックスプロジェクト入社後「名古屋発!新そこが知りたい」などの制作を担当した後、1993年より現在まで、すべての「天才クイズ」の制作に携わる。

【番組情報】
「Pascoプレゼンツ 新天才クイズ ~2024夏~」
CBCテレビ
2024年8月3日、10日、17日、24日 後1:00~1:54

取材・文/橋本達典



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