スターチャンネル「GO!GO!私のサンダーバード」短期連載/西村友2022/02/28
短期連載でお届けしてきた「サンダーバード55周年プロジェクト」企画。連載最終回は「サンダーバード」のコンサートで指揮と編曲を担当した西村友さんが登場! 音楽面から「サンダーバード」を語ります。
スターチャンネル「サンダーバード55周年プロジェクト」×デジタルTVガイド
1 ◆子ども時代はドラマよりメカの発進シーンが好き
僕は「サンダーバード」と同じ55歳。再放送で楽しんだ世代です。ひたすらメカのカッコよさにシビれていました。サンダーバード5号はいつ活躍するんだろう、とか思いながら(笑)。だからペネロープが前面に出てくるとちょっと残念でしたね。ドラマ重視になってメカがあまり登場しないから。大人になって見返してドラマ部分の面白さに気付きましたが、1号、2号の発進シーンを省略せず見せてくれる回はやっぱり燃えますね。
2 ◆管弦楽から吹奏楽アレンジに挑戦
2015年に「サンダーバード」の50周年記念コンサートに関わりました。「サンダーバード」の音楽はもともとオーケストラ(管弦楽)で演奏されていますが、今回は吹奏楽でという話になり、当時僕が正指揮者を務めていたプロの交響吹奏楽団、オオサカ・シオン・ウインド・オーケストラで演奏することに。オリジナルの楽譜を借りて僕が吹奏楽にアレンジするはずだったんですが、手配されておらず耳コピでと言われ、なんとかしました(苦笑)。大変でしたけどカッコいいものになったと思います。
3 ◆「メイン・タイトル」の生音を再現したい!
これまで何度かコンサートを指揮しました。今年1月の「サンダーバード55周年シネマコンサート ~世界の人の命を守る科学と勇気の物語~」は映像つきのコンサートでした。生の演奏は、その日その日で微妙にテンポが変わります。でも映像はいつも同じだから、生のよさを生かしつつ、微調整して映像に合わせる必要がある。特にテレビ本編のオープニングが映し出される「メイン・タイトル」は大変で、前触れなしに出る映像に「ファーイブ、ジャーン!」と音が重なるのを生で再現したい。でも、完全に前触れなしだと演奏が合わせられない。かなりの工夫が必要でした。権利関係で映像がない曲の方が、演奏面では自由でした。
4 ◆バリー・グレイの経験を生かした“間”にも注目
「サンダーバード」音楽の作曲者、バリー・グレイは空軍に所属した経験があって、その経験が生かされていると感じます。たとえば、ヘリコプターが着陸して、すぐに音楽が始まるのは不自然ですよね、しばらく大きな音が鳴っているから。「サンダーバード」の音楽にもそういう“間”があったりする。勇ましいマーチが有名ですけど、それ以外にも面白い曲が多い。思い入れがある曲は、1月のコンサート用にアレンジした「サンダーバード6(シックス)」。映画「サンダーバード6号」のテーマです。
5 ◆“今”を大事にもっとおいしい構成を目指す
コンサートは懐古趣味的なものではなく、今の僕らの意思を、今を生きる人々に届けるものにできるはず。「サンダーバード55/GOGO」が、そう考える契機になりました。あの作品を見たある方に、「今を生きるコンテンツになっていた。あなたのコンサートと同じで」と言われまして。力づけられました。ただ、15年に演奏した曲はどれも主食もおかずも入ったお弁当のような構成になっていた。なので、1月のコンサートではメインディッシュになるような曲を作りました。それが「サンダーバード6」です。でも、全体的にもっとコース料理としておいしい構成にできる余地がある。これからも取り組んでいきたいですね。
【プロフィール】
西村友(にしむら ゆう)
1966年5月8日生まれ。神奈川県出身。牡牛座。AB型。指揮者、作曲家。劇団四季の「ライオン・キング」をはじめ、数々のミュージカル、オペラなどを指揮。「サンダーバード」のコンサートは2015年から携わる。
【番組情報】
「サンダーバード55/GOGO[劇場版] 」
スターチャンネル1
3月6日 午後9:30~11:15
3月21月 午前9:30~11:15
日本放送開始55周年を祝して1月に劇場・オンライン公開され好評を博している新作が早くも独占プレミア放送決定。イギリスで本放送当時に制作された音声ドラマに映像をつけて完成させたエピソード3話を、監督の樋口真嗣が日本公開用に構成。映像はラリビエーらスタッフがオリジナルの手法を再現し、人形とミニチュアを駆使して撮影を行った。日本語キャストは満島ひかり、井上和彦、大塚芳忠、森川智之ほか。
庵野秀明 構成・編集「シン・コンプリート・サンダーバード[HDリマスター版] 」
スターチャンネル1
3月6日 午後5:45~7:30
3月21日 午前11:15~午後1:00
告知動画:https://youtu.be/arLN1aOLxVM
1985年に監督の庵野秀明氏がプロとして初めて構成・編集に関わった「サンダーバード」本編のダイジェスト版の映像に修復とHDリマスターを施し、修復されたリマスター音源をあて、再び庵野の構成・編集により新生させた。庵野氏は、「当時描いていたがかなわなかった構成と編集を、オリジナル音楽音源の発掘とデジタル編集技術によるバージョンアップで当時の思い以上にできた」と語る。
「サンダーバードができるまで/スーパーマリオネーションの軌跡」
スターチャンネル1
3月6日 午後11:15~深夜1:00
3月25日 午後1:45~3:30
いかにして「サンダーバード」が生み出され、パペットアニメーションが世界に知られていったか。新たなインタビュー映像や貴重な未公開映像とともに解き明かしていく。
「ようこそ!“サンダーバード”スタジオへ」
スターチャンネル1
3月27日 午後9:45~10:30
「サンダーバード」を生み出したセンチュリー21プロダクションのスタジオ建屋の解体が決まった18年に製作されたドキュメンタリー。監督や特撮監督、人形オペレーターらが解体前のスタジオを訪問し、当時の製作の舞台裏を紹介する。貴重な映像が満載。
「ネビュラ75」(全11話)
スターチャンネル
日曜 午後9:00~9:30
金曜 午後1:00~1:30
※3月6日は午後7:30~9:30放送(#1~#4)
「サンダーバード55/GOGO」のプロデューサー・監督・特殊効果監督のスティーブン・ラリビエー氏が、「サンダーバード」などの作品に使用したパペット人形や模型などを駆使して生み出した、新作スーパーマリオネーション。宇宙の彼方に取り残された宇宙船「ネビュラ75」のクルーたちが、帰還の道を模索しながら、さまざまな出会いを経験する。
「謎の円盤UFO」(全26話)
配信:スターチャンネルEX(https://ex.star-ch.jp/series/2376)
スーパーマリオネーションを製作し続けてきたジェリー・アンダーソンが、人間の俳優を起用して創り上げたSF特撮TVシリーズがスターチャンネルEXで配信中。ミサイルを機首に装備した迎撃機インターセプターや、船体前部が超音速ジェット機として分離できる万能潜水艦スカイダイバーなど、メカデザインの秀逸さやバラエティーにおいては傑作「サンダーバード」に勝るとも劣らないクオリティーに。ジェリーの妻で「サンダーバード」の共同制作者でもあるシルヴィア・アンダーソンが手掛けた未来感あふれるファッション、「サンダーバード」同様にバリー・グレイが担当した楽曲も見逃せない(配信のみ。放送予定はありません)。
取材・文/佐藤新 撮影/尾崎篤志
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