スターチャンネル「GO！GO！私のサンダーバード」短期連載／樋口尚文2021/12/16
短期連載でお届けする「サンダーバード55周年プロジェクト」企画。今回は、映画評論家・映画監督として活動する樋口尚文さん。映画制作者ならではの視点で「サンダーバード」の新たな魅力を教えてくれました。
スターチャンネル「サンダーバード55周年プロジェクト」×デジタルTVガイド
1 ◆英国独特の「箱庭美学」にハマった！
4歳の頃にテレビをつけたら、ちょうど第1回が放送されていて、それから毎週見ていました。英国式の「箱庭美学」にハマりましたね。リアルさを求めるアメリカのSFドラマにはない、日本の特撮のミニチュア文化にも通じる美学です。それが凝縮されていたのがトレーシーアイランド。「サンダーバード秘密基地」という商品名のプラモデルが発売されていて、憧れでした。あの島は当時の日本人の夢だった南国のリゾートアイランドそのもので、そこにメカたちが隠されているのがカッコいい。メカより島全体に魅了されていました。
2 ◆カラーで見た映画のモダンさに感動！
本当の意味で「サンダーバード」の魅力に開眼したのは、1967年日本公開の映画第1作を劇場で見た時。家のテレビは白黒だったので、スクリーンで初めて色つきで見て、そのカラフルさ、モダンさに感動しました。特にトレーシー邸のインテリアにシビれた。ミッドセンチュリースタイルでタイ風の人形とか日本風の絵が飾ってあって、とにかくおしゃれですよね。もちろんミッドセンチュリーという概念は後に見返して分かったんですが、メカよりもインテリアに目が行ってしまった子どもでした（笑）。カラフルで曲線が多いからスペーシーでSF作品になじむ。「サンダーバード」はその最高の成功例だと思います。
3 ◆シルヴィアのセンスに呼応していた
映画も含めて一番好きなシーンは、映画第1作でアランが夢の中でペネロープと宇宙にあるクラブ「スウィンギング・スター」に出かけるところ。そこでクリフ・リチャードが歌う「シューティング・スター」を聴くんですが、展開もデザインも音楽もおしゃれの極致です。「サンダーバード」はジェリーとシルヴィアのアンダーソン夫妻が制作した作品で、衣装のデザインなどおしゃれ部分はシルヴィアが担っていた。僕は彼女のセンスに反応していたんです。
4 ◆複葉機が6号のユーモアもシャレてる
メカはサンダーバード1号から5号まで均等に好きですけど、一番好きなのは、映画第2作「サンダーバード6号」に登場するタイガー・モス号です。劇場で見てひっくり返りました。第1次世界大戦時代の小さな複葉機が、1号、2号にもできない救助を成功させて、6号と呼ばれることになる！ この発想、ユーモアもしゃれている。「サンダーバード」は劇場版もテレビシリーズもアメリカではヒットしなかったんですが、肌に合わなかったというか、おしゃれさが理解されなかったんだと思います（笑）。
5 ◆新作の日本語キャストも楽しみ
新作映画「サンダーバード55／GOGO」、正確には劇場用に構成される前の三つのエピソードを拝見しました。再現性がスゴいし、本編第1話より前のエピソードもあって、「ビギニング」として楽しめるのもいい。3話ともペネロープがストーリーの軸になっていましたが、もともとドラマ的なことはほとんど彼女が背負っていたから当然という印象でした。ペネロープはおしゃれですよね。テレビシリーズ本編にあった、乗馬する格好で紅茶を飲んでいるシーンなんか、ひたすらカッコよかった。本編の日本語キャストは黒柳徹子さんでしたが、最新作は満島ひかりさんが担当されるということで、そちらも楽しみですね。
◆トレーシーアイランドを解説！
▼クリフハウス
滑走を見下ろす自家用飛行機の管制室。岩肌が開き2号が姿を現す。
▼トレーシー邸
一家が住む住居。ラウンジには格納庫への通路などが隠されている
▼ラウンドハウス
日光浴ができる施設兼図書館。中央の開口部が3号の発射口になる。
【プロフィール】
樋口尚文（ひぐち なおふみ）
1962年4月21日生まれ。佐賀県出身。おうし座。AB型。近刊「大島渚全映画秘蔵資料集成」をはじめ長年映画評論を手がけるかたわら、映画「葬式の名人」（2018年）などで監督も務める。
【番組情報】
日本語劇場版「サンダーバード55／GOGO」公開記念特番【Side－A】【Side－B】
スターチャンネル1
12月18日 午後2：15～2：45ほか【Side－A】／午後10：45～11：15ほか【Side－B】 ※無料放送
スターチャンネル3
12月21日 午後7：15～7：45ほか【Side－A】 ※無料放送
スターチャンネル3
12月22日 午後6：50～7：20ほか【Side－B】 ※無料放送
「サンダーバード55／GOGO」の公開記念特番を。樋口真嗣氏に番組案内人の市川紗椰がインタビューするほか、キャスト陣の対談などを。
樋口真嗣監督が選ぶ！サンダーバード エピソードBEST3【日本語吹替版】
スターチャンネル1
12月25日 午後3：30～7：00 ※一部無料放送
日本語劇場版「サンダーバード55／GOGO」の構成を手がける映画監督の樋口氏がセレクトしたベストエピソード3話を放送。市川も挙げている「ニューヨークの恐怖」と「情報員MI.5」と「すばらしいクリスマスプレゼント」を。樋口氏による解説コメントも放送。
シン・コンプリート・サンダーバード【HDリマスター版】
スターチャンネル1
2022年1月30日 午後9：00～10：45
1985年に庵野秀明氏がプロとして初めて構成・編集に関わった「サンダーバード」本編のダイジェスト版を、修復とHDリマスターを施して新生させた作品を独占放送。庵野氏によると「アナログ編集時代に膨大な時間と手間を掛けて何とか形にした」「個人的に不本意な音響状態のまま発売されたもの」だが、それを最新技術を用いて「当時描いていたものにできる限り近づけたバージョンアップ版として形にするつもり」とのこと。期待大だ。
【作品情報】
「日本語劇場版 サンダーバード55／GOGO」
2022年1月7日公開・1月8日オンライン上映開始
日本放送開始55周年を祝して公開される、世界唯一の日本語劇場版。本放送当時に制作された音声ドラマにオリジナルの撮影手法で映像をつけた三つのエピソードを、樋口真嗣氏が日本公開用に構成したもの。国際救助隊が本格始動する前の“幻の第1話”とも言えるエピソードや、国際救助隊のメカとペネロープが活躍するスリリングな救出劇などファン必見の物語が描かれる。
製作：イギリス 配給：東北新社／STAR CHANNEL MOVIES
取材・文／佐藤新 撮影／蓮尾美智子
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