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草刈正雄のアクションは必見! 制作陣が「探偵ロマンス」ワールドの魅力を語り尽くす!2023/01/21

草刈正雄のアクションは必見! 制作陣が「探偵ロマンス」ワールドの魅力を語り尽くす!

 江戸川乱歩デビュー100年の節目に送る“知られざる江戸川乱歩誕生秘話”を描くドラマ「探偵ロマンス」が、いよいよ本日、1月21日よりNHK総合でスタート! 20世紀初頭の帝都(東京)で初老の名探偵・白井三郎(草刈正雄)と出会った平井太郎(濱田岳)は、どのようにして作家・江戸川乱歩になっていくのでしょうか?

 今回は、制作統括の櫻井賢さんと演出の安達もじりさんを直撃! 「探偵ロマンス」ワールドの魅力を深掘りしていただきました! 連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」(同局)でもタッグを組んでいた制作陣ならではのエピソードもお届けします。

――なぜ、“江戸川乱歩誕生秘話”をドラマ化することになったのか、その経緯を教えてください!

櫻井 「大嶋慧介という、第3、4話の演出をしているディレクターの企画で、乱歩さんが作家デビューする前に私立探偵の事務所で働きたいと門戸をたたいた、という史実から始まりました。虚実の入り交じる中で、乱歩さんの世界の面白さも入れ込みながら描きたいと思い、太郎が名探偵に出会うバディものにしようと決めました。それがやがて、明智小五郎を生み出すヒントにもなりますし。脚本の坪田文さんと話し合った当初は、世の中の酸いも甘いも知り抜いている中年探偵と青い純な太郎のバディの水と油のような関係を考えていましたが、具体的に物語が浮かび上がってくると、坪田さんの方から『中年ではなく、“じじい探偵”にしたい』と言われて。今作の探偵は生きづらい若者たちの心の叫びを受け止めてくれる大切な役なんですが、そういう人間の深みは40代や50代のギラギラしたおじさんにはまだ出せないだろうし、太郎とも絶対に仲良くなれないだろうということで、白井三郎が生まれました」

――江戸川乱歩が探偵事務所で働きたかったとは知りませんでした!

櫻井 「今回、初めて読んだのですが、乱歩さんが自伝を書かれているんですよ。面白いのは、最初から偉大だったわけではなく、どちらかというと駄目な人で、給料をもらったら放蕩(ほうとう)三昧。会社に行くのが嫌になったら、押し入れに閉じこもって居留守を使い、出社拒否(笑)。30歳でようやく連載デビューするんですが、当時は印税システムがない時代で、たくさん書かないと生活できないから連載をいっぱい引き受けて、構想もないまま書き続けていくうちに自分の書いているものがあまりにもひどく世間に出すのが嫌になって、連載をほっぽり出して1年半姿をくらますんです。そんな乱歩さんに、生きづらくて学校に行きたくないとか、仕事をしたくない今の若い子たちの気持ちと重なるものを感じました。結局、乱歩さんは探偵事務所で働かなかったのでフィクションなのですが、もし乱歩さんが探偵業に接して、彼が見た時代を物語に反映させられたら面白いんじゃないかという思いに、坪田さんが見事に応えてくださいました。また、平井太郎は乱歩さんの本名なんですが、ご遺族の平井憲太郎さんが『祖父をどうぞ好きに、ご自由に描いてください』と言ってくださったんです。乱歩さんも自分が書いたものをいろんな形で面白く映像化されることをすごく楽しんでいらしたそうで、そういう言葉に背中を押されながらこのドラマを作りました」

――草刈正雄さんが演じる白井三郎の想像を超えるアクションが見どころの一つですが、草刈さんを起用された理由と手応えを教えてください。

櫻井 「ギラギラしていなくてとても強いという、ファンタジーの面白さを草刈さんが体現してくれたらいいよねということから、オファーが始まりました。草刈さんと私はこれで4作目。前作は60代前半でテニスをバンバンやっていらっしゃいましたが、今は70代。なんてむちゃをさせるんだというところから始まりまして…(笑)。草刈さんも想定をはるかに超えているアクションだと知った時には、かなりおののいていらっしゃいました(笑)。とはいえ、これまで培ったアクション、銃の構えや見せ方一つにしても、さすがは草刈さん。見事に演じ抜いてもらいまして、草刈さんと濱田さんの2人の丁々発止もとても魅力的で、楽しんでいただけるものになっています」

――アクションシーンの演出をつける際、草刈さんはどんなリアクションをされていましたか?

安達 「“とことんやります”というノリで始まったところはありつつも、どこまでお願いしていいんだろうと探り探りやっていました。しかし、いざ撮り始めてみると、びっくりするぐらい切れ味がすごくて、むちゃくちゃ足が速く、すごいなと思いました。若い頃にいろんなアクションを数多くこなしてきた方なので、ちょっとした構え一つとっても様になるんです。最初は『もう忘れちゃったよ』なんておっしゃっていたのですが、どんどん乗ってきてくださって、楽しんでアクションをやっていただけました」

――さまざまな小道具を使ったアクションが出てきますが、どなたのアイデアだったのですか?

安達 「坪田さんが描いてくださった脚本を元に、映画『ザ・ファブル 殺さない殺し屋』などを手掛けた横山(誠)さんと相談をしました。自転車を使ったアクションは現場から出たアイデアです。坪田さんや横山さんのアイデアもありますし、現場スタッフのアイデアもありますね」

――アクションを演出する上での苦労を教えてください。

安達 「どこまでやっていいんだろうというドキドキを持っていました。今回はハードなアクションというよりは、楽しめるアクションをやりたいという思いがみんなの中にあって。バーンとピストルの弾が当たって打たれた時に、あえて血のりを出さないようにして、ちょっと笑えるアクションを目指したところはあります。竹を使ったアクションは横山さんのアイデアなんですけど、『これ出てきたら面白いですね』などと言いながら、楽しんでやっていました」

――アクションにはCGもあるのでしょうか? また、第1話以降もたくさんアクションシーンがあるのでしょうか?

安達 「アクションはほぼ毎回出てきます。基本的にはCGではなく、ワイヤーアクションです。もちろんワイヤーを消す作業はしていますが、すべて人が演じています。また、最後にはすごいことが待ち受けているので、期待していてください」

櫻井 「アクション撮影は実にアナログなんです。出演者の体にワイヤーを付けて、人力で『せーの!』と掛け声を掛けて、ロープを引いています。そういう意味では、今時珍しいアナログな撮影現場で、ワンカットずつ積み重ねていきました。草刈さんも、『そんなアホな』というツッコミが入るようなちょっと笑ってしまうアクションのエンタメ性を理解して、チャーミングに演じてくださいました。太郎の『なんてじじいだ!』というセリフに尽きますが、斜に構えている太郎の心の扉を開けていくバディの要素としては、とても効いているアクションになっていると思います。また、草刈さんだけじゃなくて、濱田さん、蓬莱美摩子役の松本若菜さん、住良木平吉役の尾上菊之助さんも(ワイヤーで)つっています。草刈さんは『大丈夫なのか、尾上菊之助さんにあんなことをして』とおっしゃっていましたね(笑)」

草刈正雄のアクションは必見! 制作陣が「探偵ロマンス」ワールドの魅力を語り尽くす!

――いろんな方のアクションシーンも楽しみです! 草刈さんにはアクションを中心にお願いされたと思いますが、濱田さんにはどういったことを要求されたのでしょうか?

櫻井 「くさくさして世の中に不満を抱えていて、『こんな世の中ダメだ、俺なんか嫌だ』と言っている若き乱歩さんを演じる力量があって任せられる人は岳さんだよねと。この企画が動き出して最初に私がやったのは、濱田さんに連絡をすることでした。乱歩さんの若かりし頃のかわいらしい風貌などどこか重なる部分もあって、『岳さんならこの難役をやってくれるだろう』というところから始まり、すごく豊かな現場になりました」

安達 「櫻井も言いましたが、実は難しい役で。主人公として嫌なやつに見えないためのさじ加減を、最初は濱田さんと細かく話し合いました。その後はどんどん役自体を引っ張ってくださったので、さすがだなと思いました。また、文語的、文学的なセリフが多く、そこに感情を乗せて言う時にどんなトーンがいいのかと、いろんなパターンを試しました。アクションに関しては、基本的には後ろからついていく役どころだったので、濱田さんは最初『みんな、大変だな』という感じで見ていた節がありましたが、最後の最後、自分も(ワイヤーで)つられてしまうところまでやっていただきました」

――20世紀初頭の大正時代の映像も見どころかと思います。当時の時代を映す上でどんなところを意識しましたか?

安達 「大正時代を調べていくと、いろんなことが豊かな時代だったと感じました。今のいわゆる大衆文化が日本で花開き始めた時代とはどんな世界だったんだろうという興味から、いろんな場面を作っていきました。物語の中では、たくさんお金を持っている人とお金がなく生活に苦しんでいる人の対比が重要なキーポイントになっています。それは今の時代にも似通った空気感です。あえて前作と比較するとしたら、『カムカム』が時間の物語だったとすると、今作は場所の物語にしたかったんです。お金持ちの人が集まる空間はとことんゴージャスに、苦しい生活をしている人たちが集まるところは分かりやすく汚して。それぞれの場所で表現できることがいっぱいある気がしたので、美術チームと連携しながら特徴を出すように心掛けました。また、冒頭に出てくるトンネルは、神戸の街中に残っている古いトンネルで、実は初めてロケをしました。トンネルのシーンは江戸川乱歩という人の脳内を表現する意味合いのシーンなので、『ここでやりたい』と。第2話以降も要所でたくさん出てきます」

――街中にいる人々も印象的ですよね。

安達 「いわゆる通行の人たちだけじゃなく、そこで生きて常にそこにいる人という表現をやってみたいとの思いがありました。物語の中にバーが出てくるのですが、岸部一徳さんに演じていただいた伝兵衛という役も、実は自分の表現の中では同じ意味合いで、あのバーにしか出てこないんです。そんなふうに、いろんな場所にああいう人たちがいたら重層的な表現ができると思い、『ごめんなさい。座っているだけなんですけど、出ていただけませんか』と、ものすごく達者な役者さんたちに無理を言って出ていただきました。彼らがこの後、どのように物語に絡んでくるかということも含めて楽しんでもらいたいです」

――また、三郎が黒いマスクをしていましたが、あえて黒いマスクを付けていたのでしょうか?

安達 「今の時代とリンクさせる気持ちも少しだけありましたが、設定した時代がまさにスペイン風邪の時代だったので、マスクが登場しています。マスクについては、白、黒だけでなく、もっと変な形のマスクをしていた人たちなど、割といろんな人がいたようです。基本的には似合うかどうかで付ける色を判断しました。草刈さんが白いマスクをしていてもよかったんですが、黒の方が衣装に合っていたので、そうした次第です。マスクでいうと、生活が苦しいエリアの人たちはほとんどマスクを付けず、通行人も含めてお金を持っている役の人にマスクを付けてもらっています」

――白井三郎という役名は、横溝正史の小説に出てくる登場人物と同じ名前ですが、これは偶然ですか?

櫻井 「偶然です。白井三郎は、日本の私立探偵が東京に10人いたかどうかという時代に実際に活躍されていた方がモデルとなっています。記者に武勇伝を語っていた人の事件簿が残されていて、坪田さんに命名をお願いしたところ、白井三郎という名を提案されたんです。そしてその事件簿のタイトルが『探偵ロマンス』だったんです。著作権も版権も切れている本なんですが、ロマンスの言葉の響きがよかったのでタイトルとして拝借しました」

――では、英語で「乱歩より愛を込めて」というサブタイトルが入っている意図も教えていただけますでしょうか?

櫻井 「江戸川乱歩の若き日を描くことをキャッチフレーズとして入れた方がいいという思いがあったことと、今後、海外配信を見据えた時に、英語のタイトルもあった方がいいんじゃないかと。『カムカム』でお世話になった奈良橋陽子さんのチームに相談したところ、このサブタイトルのアイデアをいただきました」

――濱田さん、菊之助さん、土平ドンペイさんの再集結は「カムカム」の制作スタッフならではの布陣で、「カムカム」ファンにとってはうれしいと思いますが、「カムカム」出演者は今後もっと出てきますか?

櫻井 「後工田寿太郎役の近藤芳正さん、男装の麗人役で市川実日子さん、そして上白石萌音さんが、大切な場面で登場します。ほかにも、『カムカム』に登場していた方が出ていらっしゃるのですが、もしその方が分かった『カムカム』ファンがいたらうれしいですね」

――最後に、第1話で注目してほしいポイントをお願いします!

安達 「ストーリーとしては、実は第1話でほとんど何も明らかになっていないので、最後まで見た上でもう一度、第1話を見ると『そういうことだったのか』ということがいっぱいあります。これは第1話以降もそうなんですが。そして、各話で江戸川乱歩さんの小説に出てくるものをいろんなところにこっそり忍ばせているので、乱歩ファンの方は、そこも楽しんでいただけるのではないかと思います」

――ありがとうございました! 見つけられるか分かりませんが、乱歩作品に関連したものを頑張って探してみたいと思います!

草刈正雄のアクションは必見! 制作陣が「探偵ロマンス」ワールドの魅力を語り尽くす!

【番組情報】

土曜ドラマ「探偵ロマンス」
1月21日スタート
NHK総合 
土曜 午後10:00~10:49

NHK担当/K・H



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