杉野遥亮主演「スカム」小林勇貴監督インタビュー【前編】 「極端な貧困層には人々は共感してくれない」2019/08/06
原作ファンに向けた接待で作られた作品は“下劣な娯楽”
自ら脚本(さらに撮影、編集も)を担当した映画「ヘドローバ」、一方で「我が一家全員死刑」(鈴木智彦・著)を原作とした映画「全員死刑」。「スカム」には“原作”はないが、原作のあるものを扱う時に大事にしていることを伺うと、力強い口調でこう答えた。
「フィクションでよく言われるのが、『原作にあるシーンと同じシーンを入れている=原作リスペクト』とか、漫画原作だとキャラクターが似ていたらそれだけで称賛されたりしますよね。みんな、模写に対して褒めるじゃないですか。それってすごく下劣な娯楽だと思うんです。原作ファンに『“再現”をしてみろ』って言われるのは、接待でしかない。それって『俺はこの歌が好きだから、お前、ちょっとカラオケで歌ってみろ』『俺はあのアイドルの踊りが好きだから、お前、ほらそこで踊ってみろ』って言われているのと同じですよね。ものすごく娯楽として乱暴だと思うんですよ。原作ものを扱う時、その“再現”は断固拒否したくて」
話は止まることなく、「やらなきゃいけないのは、その漫画だったり小説といったフィクションに触れた時に抱いた感情、読中感、読後感――これは絶対に再現すべきだって思うんです。『スカム』に関しては現実の話なので、抜き出した要素を“再現”する。それと合わせ技で、読みながら『ここで悔しい気持ちになった』とか『ここで突き放された』とか、そういう気持ちを再現する。これが原作ものを扱う時の僕の考え方ですね」と熱い思いを言葉にする。
作品に込めた思いや撮影の裏話、杉野遥亮さんの印象をお聞きしたインタビュー【後編】も公開中。
【プロフィール】
小林勇貴(こばやし ゆうき)
1990年9月30日生まれ。静岡県富士宮市出身。監督作は、映画「Super Tandem」「NIGHT SAFARI」「孤高の遠吠」「逆徒」「全員死刑」「ヘドローバ」、ドラマ「GIVER 復讐の贈与者」(テレビ東京系)、「すじぼり」(U-NEXT独占配信)など。2019年秋には、映画「爆裂魔神少女 バーストマシンガール」が公開予定。
※「すじぼり」配信情報は2020年10月時点のものです。最新の配信状況はU-NEXTにてご確認ください。
【番組情報】
「スカム」
MBS 日曜 深夜0:50~1:20
TBS 火曜 深夜1:28~1:58
※放送時間は変更の場合あり。
取材・文・撮影/宮下毬菜(MBS・TBS担当)
関連記事
- 「スカム」小林勇貴監督インタビュー【後編】 怒り狂う杉野遥亮のアドリブに「俺はこれが撮りたかったんだ!!」
- 杉野遥亮「スカム」インタビュー【前編】 わずか23日間で全9話撮了「もっと俳優という仕事について考えようという気持ちになりました」
- 杉野遥亮「スカム」インタビュー【後編】 小林勇貴監督にかけた電話を無視された理由は…?
- 山本舞香が思い返す、上京後の思い入れのある街「怒濤の10代でした」 「死にたい夜にかぎって」インタビュー
- 山田裕貴「全然舞い上がってないです」 エキストラ時代の悔しさから「過去一」のシーンを作り上げた「ホームルーム」インタビュー【前編】
- 山田裕貴「自分は自分だって言い聞かせて」 劣等感を抱きながらも、コツコツと前に進み続ける強さ「ホームルーム」インタビュー【後編】
この記事をシェアする