「スカム」小林勇貴監督インタビュー【後編】 怒り狂う杉野遥亮のアドリブに「俺はこれが撮りたかったんだ!!」2019/08/06
杉野遥亮は「共感性のバケモノ」
期待を超えるアドリブで見事誠実を演じきった杉野さん。以前杉野さんにインタビューさせていただいた際の話では「監督と、しっかり会話して作っていくという感じではなかった」(※1)とのことだったが、小林監督にそのことを伝えると「そうですね、細かく話し合うことはなかったです。朝会った時に『誠実、どう?』って聞くくらいで。その意味としては『今日撮るシーンの感情って何?』っていうことを聞いて、遥亮が『誠実はこう思ってるよ』って話をしてくれて、『なるほどな』って。そこからプランを考えて撮影に入ってましたね」と振り返る。杉野さんからの答えに対して、違うな、一致しないなと思ったことはあるのかを聞くと「なかったっすね!」と笑い、絶大な信頼を寄せている様子を見せた。
(※1:https://www.tvguide.or.jp/feature/feature-199761/)
小林監督から見た、杉野遥亮という俳優の印象を伺うと「共感する力がめちゃくちゃ高い方です。後半は杉野遥亮の狂気によって、“共感”を超えて“同一”になってましたね。トム・ホランドの『スパイダーマン』で、スパイダーマンとして街の平和を守りつつ普通の大学生としての人生を必死に生きていたピーター・パーカーが、次第にスパイダーマンを演じているのではなく『ピーター・パーカー=スパイダーマン』として描かれていくと思うんですけど、まさにそれで。遥亮も最初は誠実という役を演じてたんですけど、後半は遥亮そのものが誠実でした。共感性のバケモノですよ。本当に優しい男なんだなって思います」と熱く語る。さらに、撮影の序盤の頃に杉野さんが口にした言葉を振り返る。
「記憶に残っているのが、遥亮と前野(朋哉)さんと、若林(拓也)の4人で食事に行った時、『やっぱり詐欺はだめだよ』なんて話をしていて。僕は怒りに満ちてこれを撮ってるんで、『いや! (巻き舌になり)やればいい!! 全部ひっくり返しちまえ!』ってわーわー言ってたんですけど、隣に座ってた遥亮がそんな僕をずーっと見ていて。そしたら僕が一通りしゃべり終わった後に、遥亮がぼそっと『なんか…俺もそんな気がする…』ってつぶやいたんですよ(笑)。その頃はまだ半分も撮っていない段階だったんですけど、遥亮が、誠実を演じる上での栄養がしっかり摂れていることが分かったんです。誠実っていう役の要素が蓄えられていく貯金箱があって、その残高を言葉で表したとしたら『俺もそんな気がする…』になるのかなって」
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