杉野遥亮「スカム」インタビュー【前編】 わずか23日間で全9話撮了「もっと俳優という仕事について考えようという気持ちになりました」2019/07/19
現在放送中の連続ドラマ「スカム」(MBS/TBS)。2009年の東京近郊を舞台に、リーマンショックの影響により入社半年で新卒切りに遭い無職になり、さらに父親の大病による高額の治療費の捻出が重なって、職とお金を失った若者が振り込め詐欺に手を染めていく姿が描かれる作品です。
主人公の草野誠実を演じるのは、本作が連ドラ初主演となる杉野遥亮さん。最初は葛藤するものの図らずも詐欺師として躍進し、裏社会でのし上がってしまう誠実。全9話を通して等身大の若者から犯罪者へ身を堕としていく役どころを演じきった杉野さんに、役への印象や撮影時のエピソードなどをお聞きしたインタビューを前編・後編にわたってお届けします。
連続ドラマ初主演──励みになった、柄本佑さんからの言葉
──本作が連続ドラマ初主演作となりましたが、撮影を終えられて今のお気持ちはいかがですか?
「いい意味で、主演とか座長ということを重く受け止めていませんでした。現場に入る前に、(以前共演した)柄本佑さんから『主演はただ、人より寝る時間が短いだけだから。でもその分いろいろな景色を見ることができるよ』と言っていただけて、そのおかげで変な気負いをすることなく現場に入ることができました」
──実際に主演を務められて、どのような景色が目に映りましたか?
「自分が見ていないシーンなんてほとんどないくらい、いろんなシーンを見させていただきました。『あー、現場で生まれていくってこういう感じなんだな』って感覚で、そのすり合わせも楽しいなって思えました。9話を撮った後に2話を撮って…というふうに順番通りではない撮影スケジュールだったんですけど、その中でも自分の中で細かく計算して頭で考える部分と、感情でこう動きたいなっていう部分の調整も現場で話しながらやったら楽しかったし。最初の方のシーンでは、台本に書いていない余白の部分がそれぞれの演技を受けてどんどん変わっていった印象もあって、そういうのがすごく楽しかったです。充実してたなって思います」
──撮影期間はどれくらいだったのでしょうか。
「撮影自体は23日間でした。短かったですね。クランクインする前は、さすがに『マジ!?』って思いました(笑)。最初に感じていた不安は、そこに対しての不安だったのかもしれないですね。大丈夫かな、生きて帰れるかな、って(笑)。でも始まってみれば全然そんなことなくて、むしろもっとやっていたいって思いました。あと何話も撮れるくらい体力は残っていたし、そう思えたのは現場で関わっている方々が楽しんでいたからかもしれないです」
──誠実を演じるにあたって、参考にしたものはありますか?
「原案の『老人喰い』(鈴木大介/著)を読みました。詐欺のことについて全然知らなかったので“出し子”とか“かけ子”とか詐欺の構造を学んだんですけど、セリフより覚えられないなって(笑)。でも、原案や最初にいただいたプロットを読むうちに誠実の気持ちが分かるようになっていきました」
──誠実に共感する部分はありますか?
「誠実のように窮地に追い込まれた人がどこかに支えを求めたり、感銘を受けたことに寄り添っちゃう気持ちは分かります。最初は罪悪感の比重がすごく高いと思うし、誠実もそうだったと思うんです。その中で、自分の思っていることや感じていること、不安を代弁してくれる言葉や人がそこにあったんです。たぶんそれが一つのきっかけになって、誠実が心を動かされたというのはすごく分かります」
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