杉野遥亮「スカム」インタビュー【後編】 小林勇貴監督にかけた電話を無視された理由は…?2019/07/19
放送中の連続ドラマ「スカム」(MBS/TBS)で、葛藤しながらも振り込め詐欺師としてのし上がっていく若者・草野誠実役を演じる杉野遥亮さん。インタビュー後編では、小林勇貴監督とのエピソードや、この夏挑戦したいことなどをお聞きしました。(【前編】はこちら)
「『監督、絶対起きてるのに寝たふりしたな』って思って(笑)」
──台本を読ませていただいたのですが、スリリングな展開やスピード感がどのように映像に反映されるのか楽しみだと感じました。一方、短期間での撮影ということもあり、1日の終わりにはかなり疲れていたのではないでしょうか…?
「(スタッフの方を見て)どう見えてました?(笑)。結構エネルギーを使ったので、割とぐったりしてたかもしれないです。現場にいる最中は気を張っているんですけど、終わった後にすごくエネルギーを使ったことに気付いてぐったりすることはありました。でもそれは現場で生まれるものが作品に反映されるんだなって手応えがあったので、いい疲れが出ていたんだと思います」
──小林監督からの言葉で、印象に残っているものはありますか?
「撮影が終わって監督と話していた時に、『誠実がここでこうしたいって思う気持ちと、俺が誠実をこう見せたいっていう気持ちがほとんどリンクしてた』と言っていただけて。現場でしっかり会話して作っていくというわけでもなくお互い撮影に臨んでいたんですけど、そう言っていただけたのはうれしかったです」
──言葉を交わさずとも、監督との共通認識が育まれていたんですね。
「それが顕著にあったのが、次の日の撮影のために監督に電話をした時のことなんですけど、自分の中で気持ちの確認をしたかったり、あとちょっとした相談というか、話をしたくて電話をかけたんです。でも、出てくれなくて。僕は『監督、絶対起きてるのに寝たふりしたな』って思って(笑)。翌日現場で聞いたらやっぱりそうで、しかも『そこからTwitterの更新もやめた』って言われて、すごく計算した上での寝たふりだったんですよ(笑)。ただそれにはちゃんと理由があって、その日撮るシーンは『現場で自分が感じたことを演じてほしいから出なかった』って言ってくださったんです。その言葉を聞いて、僕は話をしたかったというよりはどこか安心したかったんだなって思ったし、監督が正直に言ってくれたこともうれしかったです。僕の気持ちを分かってもらえてたんだな、それを知った上での無視だったんだなって思いました」
──小林監督というと「暴力」「不良」「殺人事件」などをテーマにしたバイオレンスな映画を得意とする印象ですが、杉野さんから見た小林監督はどのような方ですか?
「最初の打ち合わせで初めてお会いした時に『押忍!』みたいな、(任侠映画でよくありそうな)あいさつをされて、『マジ!?』って思いました(笑)。でも日を追っていくごとにピュアな部分が見えてきて、赤ちゃんみたいな人だなって。例えば初めて2人でごはんに行きましょうってなった時も、僕は居酒屋とかでいいのに、個室で正座して座るようなお店で(笑)。衝撃でした。でも面白い人だなって思ったんです。現場では自分の感情が先に動いちゃって言葉がついてこない場面もあったりして、そんな姿を見てピュアだなって思ったし、それを見て一緒に頑張りたいって思える監督でした。またご一緒したいって強く思います」
──先ほど「誠実が(詐欺グループに)心を動かされたというのはすごく分かります」とおっしゃっていましたが、このドラマを通して伝えたいのはどのようなことでしょうか。
「誠実のような立場に置かれている人を通して、詐欺に対しての犯罪意識を明確に持ってほしいなと思います。ただそれと同時に、詐欺に手を染めたことで誠実がのびのびしたり、生きているって実感するのも事実としてあって。あんまり良くはない道だったかもしれないけど、そこで刹那的なきらめきを発揮している誠実を僕は否定できないし、むしろ肯定できるなって思うんです。誠実が何に心を動かされたかというのは直接的に映し出されるわけではないのですが、それぞれいろんな捉え方をしながら見ていただいて、その時に感じたことが強く残ればいいなと思います」
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