大沢たかお＆要潤、戦後最大のミステリー「帝銀事件」の闇に迫る！ Nスペ「未解決事件」で松本清張と彼を支える編集長役2022/12/29

　NHK総合で12月29、30日に2夜連続で放送される「NHKスペシャル未解決事件File.09 松本清張と帝銀事件」。これまで「未解決事件」を徹底的に追跡・検証し、未来へつながる教訓を探ってきた同シリーズですが、今回は“戦後最大のミステリー”といわれる占領期の闇「帝銀事件」とその謎に挑んだ国民的大作家・松本清張の闘いを、清張の死から30年後の今、再現ドラマとドキュメンタリーの2本で描きます。

　1948年、連合国軍の占領下で起こった「帝銀事件」。帝国銀行・椎名町支店に厚生省技官を名乗る男が現れ、「近くで集団赤痢が発生したので予防薬を飲んでほしい」と銀行員らに液体を飲ませ12人を殺害。当初、この事件の犯人として警察が捜査で追っていたのは「軍関係者」でした。しかし、逮捕されたのは画家・平沢貞通。事件後、死刑判決を受けた平沢は無実を訴え続け、獄中死します。この事件に疑問を持った松本清張は丹念かつ緻密な取材で、事件の壮大な「闇」に分け入っていくことに。

　ここでは、再現ドラマで松本清張を演じた大沢たかおさんと、清張を支える文藝春秋編集長・田川博一を演じた要潤さんの作品への思いや撮影中のエピソードをご紹介します。

　「まさか松本清張先生の作品ではなく、ご本人を演じるとは思っていませんでした」と驚きを口にする大沢さんは、「お話をいただいた時も不思議な感じで、『なぜ自分なんだろう』というふうに思ったのを覚えています。外見はかなり違うと思っていた時、外見ではなく内面の部分で選んでいただいたというお話を聞いた時はうれしくなりました。でも衣装合わせに行ったら、眼鏡や服装など松本先生と同じ格好をさせられて、外見も似ているのかなというオチで終わりました（笑）」と撮影前の心境を振り返ります。

　続いて、田川博一を演じた要さんは「言論統制がある、表現が難しい時代の雑誌編集長というのはどんな気持ちなんだろうと思いながら、ものを作る田川の思いと、松本さんの世に出したいという思いを一番に考えて演じていました」と作品への思いを明かし、「撮影現場はスタッフの皆さんがすごく熱意があって、協力して撮影できている感覚が毎シーンあったので、ものすごくいい作品に仕上がっています」と自信をのぞかせます。

　今回のオファーに対して「僕はテレビドラマに3年ぐらい出ていなくて、今後一生出ることはないだろうと思っていました」と打ち明ける大沢さんは、「そんな中でお話をいただき、企画書を見た時に素晴らしいなと思いつつも、自分にできるかなと不安がありました。でも、今後一生このようなお話をいただくことはないなという企画だったので、ぜひ挑戦させていただきたいと思って受けました」と並々ならぬ思いを吐露。

　一方、「お話をいただいて、台本を読んだ時はすごく絶望しました」と話す要さんは、その真意として「いまだに解決されていない事件があるんだっていう思いと、こんな残酷な事件が解決されていく世の中になってほしいなっていう気持ちがあった」と言います。その上で「この作品を見た視聴者に希望を見いだしていただくにはどうしたらいいかすごく考えさせられました。でも完成した作品を見た時はすごく熱意が伝わってきて、希望が見いだせる作品になったと思います」と手応え。

　また、要さんの印象について大沢さんは「最初に要くんの名前を聞いた時に、編集者のスマートで格好よくて、松本先生の行き過ぎた情熱をいさめてくれたり、時には励ましてくれるイメージにピッタリだと思って、本人の性格も知っていたので、安心して自分も存分に演技ができるなって感じました。撮影中も終始それを感じていました」と信頼を寄せます。その要さんも「僕は毎回、胸を借りる気で信頼して演じさせていただいております」と相思相愛で、「20年ぐらい一緒に演じさせていただいておりますが、いまだに底が見えないぐらい心が深い方で、僕はそこに飛び込んで行けばいいという気持ちで演じました」と安心して取り組めたよう。

　さらに、「作品への熱量が強い」という今作で苦労した点について、大沢さんは「松本清張さんの生きざまをみんなで表現するという強い思いを感じていて、僕も作品への熱量はありましたが、それを超える思いが現場に流れていたので、付いていくのに必死でした。松本先生はとにかく怒濤（どとう）のような人だったので、撮影が終わるとぐったりしていました」と現場の熱量に圧倒されつつも充実感をにじませます。要さんも「カテゴリー的には再現ドラマの要素が強いので、いかに昭和の時代を再現できるかを考えていました。その昭和独特の荒い部分があり、現代みたいに発展して、まとまった世の中と違って、これから発展していく世の中の雰囲気を僕なりの立ち居振る舞いで表現できるように意識していました」と時代背景の違いを心掛けていたと語りました。

　大沢さん演じる松本清張の力強さと、その思いを受け止める編集長の田川とのやりとりに思わず見入ってしまう本作。作中の戦争の描写も思わず目を背けてしまいたくなるぐらい迫真の映像で、1本の映画を見ているような感覚になるぐらい濃い内容になっています。ぜひ「NHKスペシャル未解決事件 File.09 松本清張と帝銀事件」をご覧ください。

第1部　松本清張と「小説帝銀事件」あらすじ

　1957年、「点と線」や「眼の壁」など次々とヒット作を手掛け、日本中に名をとどろかせ始めていた松本清張。次なる題材として注目していたのが「帝銀事件」だった。逮捕された画家・平沢貞通（榎木孝明）は真犯人ではないと疑いを抱いた清張は、文藝春秋編集長の田川博一と共に独自に取材を開始。やがて警察が軍関係者を追っていた事実を突き止め、底知れぬ闇へと分け入っていく。事件の核心に迫ろうとする中で清張はノンフィクションの執筆を決意するが、そこに巨大な「壁」が立ちはだかる…。