高橋一生、「岸辺露伴は動かない」第3期は「僕の凝り固まった露伴像を崩してくれた」。バキン役の犬に衝撃を受けたエピソードも告白2022/12/19
荒木飛呂彦さん原作の「ジョジョの奇妙な冒険」から派生した同名漫画を高橋一生さん主演でドラマ化した「岸辺露伴は動かない」(NHK総合)。2020年の第1期、21年の第2期も大きな話題となりましたが、第3期となる今回は12月26日、27日の2夜連続放送となります。
26日放送の「ホットサマー・マーサ」は、バキンと名付けた子犬と散歩に出かけた露伴(高橋)が神社に迷い込み、巨木の根本の洞(うろ)に入ることから物語が始まり、27日放送「ジャンケン小僧」は、行く先々に現れ、ジャンケンを挑んでくる少年・大柳賢(柊木陽太)と露伴の対決が描かれます。
3年目となり、もはや冬の定番になりつつある本作への思いや、今回撮影した2作や共演者との撮影エピソードを高橋一生さんに伺いました!
――まずは、2作の収録を終えた感想をお願いします!
「1期、2期ともに、ゲストの方やシチュエーションを含めとても楽しく充実していたので、これ以上に濃い方々とご一緒できることはないだろうと思っていましたが、3期は主にお芝居をしていたのが動物と子役の方、また違うベクトルで。犬に向けてお芝居をし続けるということは、僕の中ではあまりない経験でした。(渡辺)一貴さんの演出によってどのようになっているのか、非常に楽しみです。撮影のスタッフの皆さんは、これまでと同じ方々なので『お久しぶりです』という時間を置いた感じはなく、いつもの感覚でお芝居ができる環境でした」
――2期では、穴開きの衣装を着たいとリクエストされていましたが、3期で要望を出したことはありましたか?
「今回は完全にお任せしました。2期の時は発展させていくために、1期のイメージをもっと拡張したかったので、原作のテイストをふんだんに入れつつ、ちょっと人格が変わってしまったんじゃないかと思えるくらい、お芝居に広がりを持たせました。3期においては、これまでとは少し違う露伴の側面が強く出てきたので、スタッフの皆さんが持っている露伴像を投影させたものに僕が乗っかる形を取りたかった。そしたら、柘植(伊佐夫)さんがデザインしてきた衣装は、1期の衣装の色味を真逆にするというのが出てきたんです。そうするだけでも全く変わりますし、露伴はこういうものが好きなんだという連続性が見えてきます。その面白さは、皆さんにお任せしていた部分で強く感じました。ただ、この太さでオッケーだった黒のパンツが、白になると膨張色だからかボンタンっぽくなって絞ったりするという微調整はたくさんされていたような気がします。スタッフ間で作り上げている露伴像を垣間見ることができて、非常に面白かったです」
――お芝居の面で第3弾ならでは、という部分はありますか?
「一貴さんとお話をさせていただいて、お芝居を1期の頃に戻してみようということになったので、『岸辺露伴は動かない』というタイトルに沿うというか、犬や柊木さんのお芝居を受けることを意識しながら演じていました。自分から能動的にお芝居をふっかけていくやり方を極力少なくしているので、そういった意味では1期とも違いますが、ベースは1期から持ってきたような気がします」
――「ホットサマー・マーサ」は荒木先生が現代の岸辺露伴を描いた作品ですが、最新作の撮影ができることについて、心境はいかがですか?
「僕は『ジョジョの奇妙な冒険』で出てくる、杜王町で東方仗助たちと一緒にいた頃の露伴のイメージをこれまで演じてきました。どちらかといえば、偏屈な奇人変人で、ただ1本芯の通っている人間。『ジョジョ~』の表現の仕方で言うと、“彼は彼なりの黄金の精神を持っている”。ですが近年、荒木先生が描かれている露伴は、キャラクター性が膨らみをどんどん増していて、新たな側面が出てきたと感じました。僕の中では岸辺露伴という人間が涙目のような表情になることは想定していなかったですし、バキンという子犬を飼うことすらイメージにはなかった。『ホットサマー・マーサ』の露伴の人間性は、僕の凝り固まった露伴像を崩してくれるありがたいエピソードでした。露伴を多角的に見た時に『こういうところもあるんだ』という部分が如実に出ていたので、露伴を1人の人間にしていく上ではとてもいい作業をさせてもらえたと思っています」
――犬との共演はいかがでしたか?
「子犬から成犬までご一緒したんですが、あまりにも子犬の成長が早くて。子犬を抱える用のバックに入れると、明らかに重みが1週間前と変わっているんです。大型犬の子犬は成長がこんなにも早いのかという驚きがありました。また、成犬の子との撮影では、引っ張り回されてしまって…。大型犬を飼うのは難しいなと感じました」
――それでは、「ジャンケン小僧」で勝負を挑む大柳を演じた柊木さんとの撮影がいかがでしたか?
「柊木さんはとても大人っぽい方で、お芝居に対してこだわりやビジョン、自分のお芝居の質感みたいなものを把握できている方でした。お芝居の中で会話していく上で、2人の心理戦が繰り広げられている感じは出せたと思っています」
――2人で相談されることはあったのでしょうか?
「基本的に、共演者の方と事前に相談するということをしないんです。『こうしてみるといいんじゃないですか』『こういうふうにしたいと思うんです』と言った時点で、気を使わせてしまうと考えているので、お芝居の中でキャッチボールできればいいかなと。それは柊木さんにおいても変わらず、柊木さんの演技を受けてお芝居をしたいと心掛けていました」
――ちなみに、ジャンケンはお得意ですか?
「じゃんけんに得意とか不得意とかありますか? 実際、撮影を重ねていくと、ジャンケンには確率というよりも、運の問題があるんだろうなと思います。柊木さんも僕も台本に描かれているジャンケンをやっていくわけですが、台本にはグーと描かれているのに、なぜかチョキを出して負けることがあって…。リハーサルの段階で、『それだと負けちゃう』と一貴さんに何度か言われてしまいました。柊木さんはちゃんと出せるんですけれど、僕は『ここでチョキを出すんだっけ? グーを出すんだっけ』と迷って、なぜかチョキを出したくなってしまって」
――以前「ジャンケン小僧がやってくる」は、演技したいエピソードの一つであると言われていましたね。
「『ジャンケン小僧』では、子どもだからという思いを全部排除したお芝居の仕方をしています。露伴には『子どもだからしょうがない』とか『子どもだから大目に見る』という感覚が一切ないんです。1期、2期で子どもにサインを求められた時も、対等の人間として見ていて。僕は、そういう感覚の露伴に賛成で、それはできそうでできないことだと思うので、露伴から学べたところではありました」
――子どもと本気で対峙(たいじ)する露伴がお好きとのことですが、「ジャンケン小僧」の大柳に対してはどんな感じなのでしょうか?
「最初から圧をかけるんです。心理戦として『これをやったら崖っぷちなんだけど、崖っぷちだと分かっている?』と言うような。背に腹は代えられない状況になったら、人間は誰でもそうなると思いますが、それを最初から周りの目を気にせず、初動で全力を出せる岸辺露伴という人間は、とてもすてきだなと思いました。そういうところが全くない岸辺露伴に僕はとても影響されています」
――今回新たな露伴の面も見つかったとはいえ、3期目だからこそ、自然とやってしまうことはありましたか?
「はい。アウトオブコントロールになってしまうからこそ、ちょっと気を付けたいところもありました。エピソードによって、ある側面が際立って出てきてしまうので。荒木先生がどうお考えになっているのか直接伺ったことはないんですが、もしかしたら先生の頭の中には、近年ハリウッド映画などが取り入れているマルチバースという世界観があったのではないかと。その概念を先生はそれよりもずっと前から漫画に落とし込んでいたような感覚が僕の中にはありました。だからこそなるべく僕が1本芯を通して、露伴の人格に整合性をつけていこうと。エピソードによっては、別人格に見えてしまう恐れが出てくるので、そこのつなぎというか、ブリッジは非常に意識していました。無意識で動くこともありましたが、自分の中で納得できないことについては、気を使っていたかもしれません」
――無意識にやっていたことと、すごく考えてやったことが混在していたということですね。
「3期においては混在していたと思います。というのは、『ジャンケン小僧』は初期につくられたエピソードで、『ホットサマー・マーサ』は最新のエピソードだったので、そこの整合性をどういうふうに橋渡しするかは、常に意識していました」
――露伴を演じていて、当初から変わらない部分と変わってきた部分を教えてください。
「変わらない部分というのは志です。何を一番に考え、何を優先するかは、露伴の中ではぶれていない気がします。それは、特に意識してお芝居してきたことです。変わったことと言えば、怪異に対する対応の仕方でしょうか。『これは怪異かもしれない』という思考に早くシフトできるようになっている。それはまるで、原作においての“スタンド攻撃”かもしれないと思えるような。ドラマでは、“ギフト”と呼んでいる特殊能力をもらった露伴は、若い段階から怪異に対峙してきたかもしれませんが、ここまで顕在化してきたのは、僕が演じ始めた1期の頃からなんじゃないかと考えています。これまで八つの怪異と対峙してきたので、対応の仕方は前よりは柔軟になっていると思います」
――作中に四角形より三角形が安定しているというエピソードが出てきますが、シンパシーを感じることはありましたか?
「非常にシンパシーは感じていました。僕の誕生日の数字が全部3の倍数なので、ゲン担ぎに使う時も3、6、9、12…と3の倍数を気にしていて、思い入れがあったかもしれません。だからこそ、そこに非常にこだわってしまう露伴の気持ちは、感覚的には分かります」
――ジャンケン小僧もすごいこだわっていますよね。
「こだわっていますね、露伴以上にこだわっています」
――また、物語に登場する四つ辻には怪異が潜んでいるような感じがしました。
「それこそ古くから辻斬りという言葉があるなど、“辻”という言葉自体がちょっと怖いなと思わせるところがあります。僕は道で言えば、どちらかというと、Y字路が好きなんです。四つ辻は四方八方から来てしまうような感じがあって、辻は、何か恐ろしいものと出会ってしまう場所なんじゃないかという感覚は、以前からありました」
――それもこの作品ならではですが、そこに面白さを感じていらっしゃるのでしょうか。
「怪異自体って、『火のない所に煙は立たぬ』というものだと思うんです。怪異といわれる多くのものは、ずっと語り継がれていますから。怪異のベースにあるのは、人間の恐怖なんじゃないか、怪異の出どころは人間なんじゃないかという思いが常にあるので、非常にいい収穫を得たとともに、自分が望んでいた世界に岸辺露伴としていられることの幸運を感じています」
――ありがとうございました!
【プロフィール】
高橋一生(たかはし いっせい)
1980年12月9日生まれ。東京都出身。ドラマ、映画、舞台など幅広く活躍。2023年1月14日スタートの土曜ナイトドラマ「6秒間の軌跡~花火師・望月星太郎の憂鬱」(テレビ朝日系)では主演を務める。
【番組情報】
「岸辺露伴は動かない」
NHK総合
12月26日・27日 午後10:00~10:54
12月21日 午後11:50~深夜0:39(第1~3話一挙放送)
12月22日 午後11:50~深夜2:19(第4~6話一挙放送)
NHK担当/K・H
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