「ウケればウケるほど、僕らはすごく緊張します(笑)」――仲野太賀が「ジャパニーズスタイル」で感じた“意外なプレッシャー”とは2022/10/21
テレビ朝日系では、明日10月22日からドラマ「ジャパニーズスタイル」がスタートする。本作は、テレビ朝日初となる“本格シットコム”(シチュエーションコメディー)。舞台となるさびれた温泉旅館の中で、30分ほぼ一発撮りのノンストップ・コメディーが繰り広げられる。
脚本を「俺の話は長い」(2019年/日本テレビ系)、「コントが始まる」(21年/同系)で話題を集めた金子茂樹さんが、演出を「にじいろカルテ」「和田家の男たち」(ともに21年/テレビ朝日系)など多くの作品を手掛けてきた深川栄洋さんが担当し、実力派の2人がタッグを組むことに。先日公開された第1話のPR映像には「見る以外の選択肢がない」「絶対面白い!」と反響が集まっているが、そんな本作で主演を務めるのは、テレ朝ドラマ初主演にもなる仲野太賀さんだ。
これまで数多くの作品に出演し、今年放送・配信された「拾われた男 LOST MAN FOUND」(NHKほか)、「初恋の悪魔」(日本テレビ系)でも主演を務めた仲野さんだが、この「ジャパニーズスタイル」にはどんなことを感じているのか。シットコムという未知のジャンルに挑戦して感じたもの、緊張感漂う撮影の舞台裏を、作品への熱い思いとともに語ってくれた。
“30分ほぼ一発撮り”――独特なドラマ撮影の舞台裏を明かす
――“シットコム”作品の話が来て、どんなことを感じましたか?
「日本ではあまりなじみがないけど、海外ではよくあるスタイルで、それに挑戦できるのはすごくすてきなお話だなと思いました」
――シットコム作品で印象的な作品はありますか?
「『フレンズ』(1994年)という作品です。英語の勉強も兼ねて見ていたんですけど、シットコムだからできる表現というか、作品ごとにチューニングがあるような気がしました。『芝居のトーンとか、この作品はどういうチューニングが合っているのか』という意味では、シットコムも独特な立ち位置にあるなと思うので、そこにチューニングを合わせていくのはすごく楽しいし、ほかの現場では経験できないことだと思います。収録にお客さんがいるのもまた大きいですし、シットコムのノリというか、本当に似るものがない感じがして貴重な経験させてもらっています」
――脚本を担当される金子さんとは「コントが始まる」でもご一緒されていましたが、金子脚本の魅力について教えてください。
「すごく会話が面白いというか、セリフ一つ一つがキャラクターの個性となって物語が膨らんでいく。キャラクターの厚みがあるような気がしますね。今回演じる柿丘哲郎もすごく丁寧に設定が描かれていて、セリフを言っていてもすごく楽しいですし、ここまでクズな役もなかなかできることがないので、楽しく演じさせてもらっています」
――30分ほぼ一発撮りということでも話題が集まっていますが、体感としてはどんな30分でしょうか?
「すごくあっという間ですね。9時ぐらいから19時ぐらいまで、稽古も1日ぎっしりやりながら次の日に本番を迎えるんですけど、本番になってギリギリ芝居が立ち上がっていくというか。なかなか時間のない中でやっているんですけど、出ているキャストもスタッフも、その一瞬のために労力と熱量を込めてやっているんじゃないかなと思います」
――ほぼ一発撮りの撮影の後には、意見交換のようなものもされるのでしょうか?
「もうちょっと時間があれば、いろいろとやれることはあるのかなとも思うんですけど、反省する間もなく次の撮影が来るので、終わってから反省というのはまるでしてないです(笑)。次のセリフを覚えることでもう精いっぱいですね」
――深川監督からは演出について何か指示はありましたか?
「演出はそこまで細かくはないので、割と全員に自由度がありながら、『何が一番いい形なのか』を皆さん探りながらやっているような感じです。セリフがぎっしりあるので、そのリズムを崩さない範ちゅうでアドリブもあったりするんですけど、本番になると皆さんの芝居の質がぐっと変わってくるので、それはやっぱり楽しいなと思います」
仲野が感じた、ほかでは経験できない“シットコム”の楽しさとは
――シットコムに初めて挑戦して感じたことを教えてください。
「大変なんですけど、どの演劇とも、どの映画とも、普通のドラマとも違う。芝居自体は変わらないと思うんですけど、ワンシチュエーションですし、やっぱりすごく楽しいのが一番大きいです。“シチュエーションコメディー”というジャンルを名乗っているので、大きな芝居をしてもそんなに違和感のない世界観になっていると思います。演劇だと1カ月稽古して1カ月本番というリズムが多いと思うんですけど、1日稽古して1日本番、しかも1回やったら終わりなので、そのリズムもすごく新鮮ですね。あと、みんな経験のないことをやっているので、普段感じる現場の空気とは少し違う高揚感というか、緊張感もあって。特別なことをしている、そういう時間を感じていますね」
――ほぼ一発撮りというと、覚えるセリフの量もいつもより多そうですよね。
「そうですね。すごく苦労しながら覚えているんですけど、ギリギリまで入り切らなかったりするので、スタッフの皆さんは本当にヒヤヒヤしながら見ているのかなって(笑)。本番でなんとか言えたという時もあるので、本当にギリギリな感じです」
――お芝居としては変わらないとのことですが、事前に役作りされたことは何かありますか?
「じっくり役作りする時間はあまりないかもしれないです。その代わり瞬発力がすごく鍛えられるし、紡いで編んでいくような作業というより、これまで自分が培ってきたものをフル動員してその30分にぶつけていくみたいな。そういうお芝居に近いような気はしますね。とにかく力が入っています」
――撮影の時にお客さんが入っているというお話もありましたが、 実際にお客さんが本番中に入って感じたことはありますか?
「前説の芸人さんが毎回来てくださるんですけど、その方がウケればウケるほど僕らはすごく緊張しますし、プレッシャーも感じます。コメディー作品なので、これから面白おかしいことをやろうとしている中で、めちゃめちゃウケるのは『この後大丈夫かな…』と緊張はしますけど、前説をやってくださる芸人さんが盛り上げてくださるからこそ、お客さんは笑ってくださっているので、それはとても力になっています」
――共演者の方とは、稽古の合間に何かお話しされますか?
「もうみんな大変なので、その大変さから逃れるように休憩中に全く関係ない話をしています(笑)。差し入れを入れてくださる方も多くてその話をしたり、たわいもないゲームをしたり。 KAƵMAさんがムードメーカーでみんなをつないでくださるので、いてくれて本当によかったなと思っています」
――KAƵMAさんはドラマ初出演になりますよね。現場ではどんな方なのでしょうか?
「いろんな人に気遣いをしてくださっていて、みんながいっぱいいっぱいの時に場の空気を良くして朗らかにしてくれる。そういう意味ですごく助かっていますね」
――では、仲野さんから見てほぼ一発撮りに強いと感じる共演者の方を教えてください。
「誰かな…石崎ひゅーいさんは、普段はミュージシャンなのに浅月凛吾郎という役を堂々とすごく魅力的に演じきってくださるので、毎回すごいなと思っています。もう普通に役者さんとして接しているような、でも冷静に考えれば『ひゅーいくんはミュージシャンだもんな…』と思うんですよ。普段お芝居をしている俳優でも大変なのに、実は僕ら以上にすごい挑戦をやっているような気がします。KAƵMAさんもたくさんセリフの練習をされているみたいで。普段お芝居をしないひゅーいくんとKAƵMAさんは、基本的にミスせずにすごく安定しているので、そういうところは地肩の強さを感じます」
――前クールには「初恋の悪魔」に出演されていましたが、切り替えの部分で大変なことはありましたか?
「大変なことはあまりなかったです。でも、使う筋肉がちょっと違う感じがします。作品の質感もトーンも違うので、そうすると発露の仕方も違うんですよ」
――培ってきたものをフル動員してぶつけるお話がありましたが、主演作が続く中で、この現場に生きていることはありますか?
「やっぱり、多少は度胸をつけられたのかなと思います。気負いみたいなものはそんなにないんですけど、主演をやっていてあらためて思うのは『いかに周りの人にちゃんと助けてもらえるか』。それはすごく大事なことかなと思っていて、そうやって人を信頼してもの作りをしていくことは、『初恋の悪魔』でも『拾われた男』でも強く感じました。今回は柄本明さんや檀れいさんといった方がいらっしゃってものすごく心強いし、お芝居に関しては楽しさしかないです」
――ちなみに、コメディー作品とミステリアスな作品でやりやすいと感じるのはどちらでしょうか…?
「作品にもよりますね。カレーを食べたい時もあれば、ラーメンを食べたい時もあるじゃないですか。それと同じ感じがして、どちらも違う楽しさがあるので、どっちも好きです(笑)」
「ここからこういう選択肢が一つでも増えたらいいなって思います」
――影島駿作役の要潤さんが「今の時代にあるからこそ、新しいものになる」とコメントされていましたが、撮影をしていてそういった実感はありますか?
「そうですね、新しいことをやっていると思います。1日で1話撮り終わるってこともまずないですし、倉庫で舞台セットを組んで、お客さんを呼んでその前でお芝居をすることもないので、ここからこういう選択肢が一つでも増えたらいいなって思います」
――今までにないような疲れも?
「もちろんあります。第1話、2話を見てもらうと分かると思うんですけど、全員汗だくなんです。夏だからというのもあるんですけど、めちゃめちゃ疲れますね。稽古の時点でみんなヘロヘロなので、本番日はみんな『もうやるしかない…!』という満身創痍(そうい)な感じなので、終わるとそれが抜けていくというか、終わった後の開放感や充実感はすごくありますね」
――日本のドラマファンはシットコム作品になかなかなじみがないと思うのですが、そういった点も踏まえて、視聴者の方に向けた「ジャパニーズスタイル」の注目ポイントを最後に教えてください。
「お客さんの笑い声も映像に入っているので、テレビの前で一緒に見ているような、そういう臨場感を感じてもらえるといいなと思っています。あとは、団体芸を見てほしいですね。ほぼ一発撮りっていう緊張感もですけど、みんな汗だくで『ゼェゼェ』言いながら一生懸命お芝居をしているので、そういう気迫を感じてもらいたいです。『ジャパニーズスタイル』のメンバーの団体芸を見ていただければ、それは伝わるかなと思います。ぜひ楽しみにしてください」
【おまけエピソード&第1話あらすじ】
――第1話の収録が終わって、“150点”とコメントされた理由は…?
「そう言っておかないとこの後やっていけない(笑)。自分を鼓舞している感じです」
撮影での大変さの中にも、それ以上の充実感や楽しさがあることが伺えた今回のインタビュー。気になる第1話では、哲郎が実家の旅館「虹の屋」の窮地を救うために10年ぶりの帰宅を果たすも、そこには変わり果てた旅館の姿、そして、旅館に居座る一筋縄ではいかない従業員たちの姿が。そんなことはつゆ知らず、哲郎は案の定「お引き取りください」と跳ね返されてしまうことに。果たして、哲郎は家に上がることはできるのか。ドラマ「ジャパニーズスタイル」は明日10月22日午後11:30からスタート。土曜の夜に繰り広げられる“真剣な悪フザけ”、ぜひお見逃しなく。
【プロフィール】
仲野太賀(なかの たいが)
1993年2月7日生まれ。A型。主な出演作にドラマ「ゆとりですがなにか」「今日から俺は!!」「コントが始まる」「初恋の悪魔」(日本テレビ系)、「この恋あたためますか」「#家族募集します」(TBS系)、「拾われた男」(NHK、Disney Plus)、映画「MOTHER マザー」(2020年)、「すばらしき世界」「あの頃。」(ともに21年)など。11月18日公開の映画「ある男」への出演を控えている。
【番組情報】
土曜ナイトドラマ「ジャパニーズスタイル」
10月22日スタート
テレビ朝日系
土曜 午後11:30〜深夜0:00
※放送終了後、TELASA、TVer、アベマで見逃し配信あり。TELASAでは各話放送後から全話放送予定
取材・文/平川秋胡(テレビ朝日担当) 撮影/蓮尾美智子 スタイリスト/石井大 ヘア&メーク/高橋将氣
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