賀来賢人×山本舞香「死にたい夜にかぎって」インタビュー “男と女”の6年に及ぶ波乱の同棲生活に「私にしかできない役だ」2020/02/26
「『もっともっとアスカを自分に入れたい』って、こんなふうに感じたことは今までなかったです」(山本)
──本作への出演にあたって、賀来さんは「いい予感しかしません」、山本さんは「気合入ってます!」と意気込んでいらっしゃいましたが、撮影がスタートした今、あらためてこの作品についてどのように感じていますか?
賀来 「さえない男と、とてもオープンで元気だけど決して心が強いわけではない女性という、全く相反する2人の話なんです。“ラブストーリー”という分かりやすいものっていうより、“男と女”の話だなと思って。すごいドラマがあるわけでもないし、分かりやすい何かが起きるわけでもないんだけど、2人のやりとりで泣けたり笑えたりする物語です。いろんな要素が詰まっているので、それをドラマ化するというのが、自分の中では今までの日本では見たことのない作り方だなって思いました。自分がやったことのないものだし、プラス、実は一番やりたかったことでもあったりして。監督も面白い方ですし、以前からお付き合いのある方だったので、『ぜひやらせてください』とお返事しました」
山本 「最初にお話をいただいた時に、今の自分がやるべき作品だなって思ったんです。今年で芸歴10年目になるんですが、こういう役はやったことがなかったし、自分の経験としてすごくやってみたい作品だなと思いました」
──浩史、アスカという役を、それぞれお二人はどのように捉えていますか?
賀来 「アスカがうつ病になってから、浩史はアスカに首を締められたり、いろいろなことがあるんですけど、2人にとってはディープで暗くなっちゃうようなことも、浩史はすごくポジティブに捉えるんです。『ま、いっか』って乗り越えられるのが彼の魅力だと思っていて。その『ま、いっか』っていう部分に、彼のすべてが集約されている気がします」
山本 「アスカはすごく明るい子で真っすぐなんだけど、普通と思っていることが周りの人からしたら普通じゃなくて。例えば唾を売ってたりとか…。そんな中、浩史が頑張っているのを見て『ちゃんと仕事をしよう』って頑張るんだけど、働き始めたことでうつ病になってしまって。そこから浩史と一緒に治していこうとするんだけど、『自分を支えているせいで浩史が苦しんでるんじゃないか』『自分と離れた方が浩史は幸せになれるんじゃないか』って、そういう思いから首を締めてしまうんじゃないかなって。私はそう感じてるんですけど…。難しい役だけど、笑う時は笑うし、かわいらしい女の子で、本当に浩史のことを好きなんだろうなと思います」
──そんな浩史、アスカという役に、共感する部分はありますか?
賀来 「よく監督とも話すんですけど、浩史はいつも『どうせ俺なんて』っていうところから入るんです。そこがアスカと出会うことで変わっていく部分でもあるんですけど、常にそういう空気をまとっていて。でも人って自信があるように見せていても、自信がないじゃないですか。不安とかって誰にでもあるものだし、すごく人間らしいキャラクターだなと。あと、アスカにどれだけ首を締められようが、どれだけひどいわがままを言われようが、すべてを受け入れるんです。アスカに浮気されたら、自分は風俗に行って『これでおあいこだ』って(笑)。そういうところはよく分からなかったりもするんですけど(笑)、ちゃんと人を許せる人だなって。ちゃんと人と向き合えるのがうらやましいです。自分に似ているというよりは、強い人だなって思います。ピュアですてきな人なんだなって、演じながら感じています」
山本 「アスカが抱えるような心の病気のイメージがなんとなく分かるからこそ、今の自分がやるべき作品だなって思ったんです。手が震える、自分じゃない自分がいる、人を殺したくなる…。そういううつ病の症状も自分でしっかりと演じたいなって思ったし、声を掛けていただいた以上、『私にしかできない役だ』という気持ちで臨んでいます」
──これまでさまざまな役を演じてきた山本さんですが、そういった思いをいつも以上に感じたということですか?
山本 「初めてですね。『もっともっとアスカを自分に入れたい』って、こんなふうに感じたことは今までなかったです。毎日苦しいし、お芝居をしてない時も息がしづらくなるんですけど、それは今この時期に経験しておかなきゃいけない苦しさだと思っています。この作品が終わった時、自分がどれだけ成長できるかが自分自身も楽しみだし、共演者の方々やスタッフの皆さんに『成長したな』って思ってもらえたらうれしいなっていう気持ちでやっています」
賀来 「山本さんは本当にはまり役だと思います。放送が始まっていろんな人の目に触れたら、間違いなく話題になると思うんです。アスカは明るい時は明るいけど、暗い時はどん底まで堕(お)ちてしまうような、起伏の激しい役で。そういう空気を話し合うことなく作ってくれるから、芝居をしていても『うーん…』って思うことがない。普段、かみ合わないなと思ったら話すようにしてるんですけど、そういうのは1回もないです」
山本 「やったー!」
賀来 「(笑)。偉そうに聞こえちゃったかもしれないんですけど、そういうつもりじゃなくて。本当に、すごくいいものが撮れてるんじゃないかなって思います」
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