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“パパムス”飯沼愛&長尾謙杜が教室で議論!? 胸キュンシーンは2人が練り上げたもの!――「パパとムスメの7日間」インタビュー2022/09/13

“パパムス”飯沼愛&長尾謙杜が教室で議論!? 胸キュンシーンは2人が練り上げたもの!――「パパとムスメの7日間」インタビュー

 TBSでは、ドラマストリーム枠第3作となる「パパとムスメの7日間」を放送中。五十嵐貴久氏の同名小説を原作に、舘ひろしさん主演、新垣結衣さんがムスメ役を演じて2007年7月期に日曜劇場枠で放送され人気を博した「パパとムスメの7日間」が15年ぶりに復活。

 前作同様、イマドキの女子高校生・川原小梅(飯沼愛)がさえない会社員のパパ・恭一郎(眞島秀和)と事故に巻き込まれ、お互いの人格が入れ替わってしまうことからスタート。令和版では、入れ替わったパパとムスメが元に戻れる日を信じて奮闘する従来のストーリーに加えて、意中の先輩・大杉健太(長尾謙杜)と結ばれたい小梅と、健太にムスメを奪われたくない恭一郎、そして小梅より恭一郎の性格にひかれているかもしれない健太という “パパとムスメとカレ” の奇妙な三角関係ラブコメディーとなっています。 

 ここでは、最終回に向けて編成を担当する中西真央さんと、大河原美奈プロデューサーのインタビューをお届け。これまでの振り返りや現場の様子、さらにはリメーク作品を手掛けるにあたって考えたことなどたっぷり語っていただきました。 

――人気作を15年ぶりにリメークするにあたって、意識した点や大事にしている部分があればお聞かせください。  

中西 「本作では、恋愛軸を面白くラブコメディーにしていくのが当初からの大きな方向性でした。前半1話、2話とかは、割と前作の流れを踏襲している部分が大きいんですけど、後半になるにつれてオリジナル要素が増えました。出版社の方から『原作者もOKですので変えちゃってください』と言っていただいたので、がっつり恋愛方面で変えてみることになりました」 

大河原 「前作のもともとの面白いところは変えずに組み取りながら、それにいかにラブを足していくかを考えてきた形です」  

―― 胸キュンシーンが序盤から出てくるのが意外だったのですが、第6話までで一番こだわったシーンはどこでしょうか? 

大河原 「どうやったらみんなを“キュン死”させられるかを重点的に考えていたので、必然的に胸キュンシーンは多くなりました」  

中西 「第3話を見てくれた人の感想をTwitterで拝見したら『なぜそっちから回って、その体勢になるんだ!』 って言われてましたね」  

大河原 「実は、布巾を取りに行くためにそちらから回っているんですけど、なかなか気付いてもらえなかったみたいです…(笑)」  

中西 「ラブストーリーならではの切なさも出せたらとは思っているんですけど、コメディーですし、深夜の30分の番組なので、胸キュンもありつつちょっと笑っちゃうぐらいのあんばいがいいのかなと思っています」  

大河原 「外見は飯沼さんですが中身はお父さんなので、基本的には突き抜けた作りにして、みんなに笑ってもらおうみたいな考え方で作っています。場合によっては、最終地点の胸キュンを盛り上げるために逆算で話を作ったりしていて、例えば第3話では、最後の“おまじない”で顔を近づけるから、このシーンではもう少し離れておこうという話もしました」  

「『変顔やりすぎ注意!』と言いに行くくらいに」

“パパムス”飯沼愛&長尾謙杜が教室で議論!? 胸キュンシーンは2人が練り上げたもの!――「パパとムスメの7日間」インタビュー

――主演の飯沼さんは、ちょうど今年の夏で女優デビューから1年。彼女のフレッシュさと成長度合いを教えていただきたいです。 

大河原 「飯沼さんは、まるでスポンジみたいです。クランクインした日と、最後にクランクアップした日で小梅が全然違う人になっていて、飯沼さんが本作を経てそれぐらい女優として成長したのだと、眞島さんも(母親役の)羽田美智子さんも口をそろえておっしゃっていました。お二人は撮影している順番をご存じなので、前の方に取ったシーンが後半戦の回に入っていたりすると一瞬で見抜けるみたいで、それぐらい成長が著しくて、目を見張るものがあります。それは現場にいた監督やプロデューサーをはじめとしたみんなが感じていましたし、こちらからお願いしたことをすべて吸収して、それを上回る吸収度合いで成長していくので驚きました」  

――デビュー作の「この初恋はフィクションです」の時よりも、表情のバリエーションがすごく増えていますよね。 

中西 「同作では、どちらかというと優等生キャラを演じられていたと思うんですけど、今回は明るく弾けるようなキャラクターをお願いしたいと相談していました。現場で試行錯誤しているうちに、気が付いたらものすごく面白い変顔ができるようになっていましたね」  

大河原 「最初の数日間は手探りなところもあって、どういう小梅にしようかってご本人も悩んでいたと思います。『どんな小梅がいいですか?』と、制作側と相談することもあったのですが、役をつかんでからは本当にすごかったです。『こういう顔をしたら小梅はかわいいと思う』とか、『パパだったらこういう顔するような気がする』と言えるようになっていきました」  

中西 「モノローグが多いドラマなので、最初に声取りをさせてもらってからクランクインしたのですが、読み合わせした時から声がすごくいいなって思っていて、それが彼女の持ち味で、武器でもあると思うんです。そこに本作では表情での表現力も加わったんじゃないかなと」  

大河原 「何回もやっていくうちに、中身がパパになった小梅を徐々につかめていくようになって、そこからは『また変顔しちゃった!』って言葉が出てくるくらいになりました」  

中西 「気が付いたらしゃくれてるんですよね(笑)」  

大河原 「そうそう。気付くとついついやり過ぎちゃう時があって、『変顔やり過ぎ注意!』と言いに行くくらい頑張っていました」  

――小梅になったパパを演じる眞島さんのキュートさも素晴らしいですよね 

中西 「私たちからしたら、読み合わせの段階から素晴らしい女の子の演技をしてくださっていたのですが、眞島さんの中ではもっと丁寧に描きたくて、悩む部分も多かったらしいんです。例えば、内股にすれば女になるっていうのも決めつけっぽいですし、そのままおじさんでもかわいいことが大事だと考えてくださっていましたね」  

大河原 「最初の頃は、小梅もパパもそれぞれをつかまなきゃいけなかったので、お互いの癖について現場で話していました。眞島さんも小梅の動きを見て研究するにとどまらず、レギュラーの生徒さんを観察して、『若い子たちはこういう動きするんだな』としぐさを盗んでいた時も。飯沼さんの質問に対しては、眞島さんが『おじさんはね、こういう時は間を置くんだよ』とか、『座る時にはいちいち声が出るんだよ』と答えているやりとりを見かけたこともありました」  

“パパムス”飯沼愛&長尾謙杜が教室で議論!? 胸キュンシーンは2人が練り上げたもの!――「パパとムスメの7日間」インタビュー

――長尾さんは憧れの先輩という役どころですが、芝居でお願いしたことや期待を超えた部分など印象をお伺いしたいです。  

中西 「読み合わせの時は、陽気でかわいい感じのそのままの長尾さんだったのですが、その後、『もうちょっと高根の花感がほしい』というリクエストをしたら『分かりました!』って。次に現場に来たら、ちゃんと健太先輩になってましたね」  

大河原 「あの変化は素晴らしかったですね。“憧れられている人”だということは常に意識して演じてくれていました。でも、長尾さんはサッカーが大好きなので、撮影でもサッカーのシーンで夢中になると、“長尾謙杜”に戻っちゃう時もあって(笑)。そういう時は、ふざけて『健太先輩だよ! 目の中に星作って!』と言いに行っていました」 

――ちょうどサッカーのシーンの現場を見学させていただいたのですが、本当に夢中になっていましたね。 

大河原 「そうなんです。何にでも一生懸命なので、第5話のちょっとふざけたバラのシーンでも、『これでいいかな?』とか言いながら、真剣に取り組んでくださって、何回もやってくれました。そういう一つ一つのシーンをすごく大事にしてくれていますし、健太先輩ってどういう人かっていうのを考え抜いてやってくれているので、格好いいキャラクターにできたのかなと思います」  

声をかけるのをためらうぐらい議論

“パパムス”飯沼愛&長尾謙杜が教室で議論!? 胸キュンシーンは2人が練り上げたもの!――「パパとムスメの7日間」インタビュー

――胸キュンシーンを作るにあたり、飯沼さんと長尾さんはどんな様子で撮影に臨まれていますか? 

大河原 「2人ともとにかく真面目で、休憩時間は何してるのかなって見に行くと、教室に2人で机並べてお芝居の議論をしてるんです。練習をしている時もあれば、声をかけるのをためらうぐらい議論していることも多い。多分あの胸キュンシーンは、2人で練り上げたものを現場に持ってきているんだと思います」 

――計算し尽くされているんですね。  

大河原 「現場でよくあるのは、お互い別々に休み時間は過ごして、ドライ(カメラなしで、スタジオでそれぞれの位置関係を確認する作業)で現場に来て、そこから徐々に作り上げていく流れなのですが、本作では、2人で『この時はこういう感情だよね』とか、『こういう動きをするよね』というのをちゃんと話し合った上で現場に来るんです。2人の空気感も含めてちゃんと練り上げて作られたものであって、だからこそ、いい距離感と関係性が築かれていると思います」 

――お二人のほかにも、小栗有以さんや松本怜生さんも作品に彩りを加えてくださっていると思います。4人でいる時の現場の雰囲気はいかがでしょうか? 

大河原 「4人のシーンだと、いつも一緒にいて楽しそうにわいわいしゃべっていることが多いです。本当の高校生みたいで、いい友達を作ったような感じの雰囲気の撮影現場でした」  

中西 「設定も含めてまぶしく作った方がいいなと個人的に思っていたのですが、4人の関係性のおかげで、それが上手にできたかなと思っています。長尾さんも、今まではいじめられっ子など割と影のある役を演じることも多かったと思いますが、本作ではすごくまぶしい役を演じてくれています」  

大河原 「皆さん、演じているキャラクターとご本人の性格は違ったりすると思います。そんな中で、4人それぞれがちゃんと個性があるように見えるようにキャラクター作りを頑張ってくださって、それがいい具合に作中で描かれていると思います」  

“パパムス”飯沼愛&長尾謙杜が教室で議論!? 胸キュンシーンは2人が練り上げたもの!――「パパとムスメの7日間」インタビュー
“パパムス”飯沼愛&長尾謙杜が教室で議論!? 胸キュンシーンは2人が練り上げたもの!――「パパとムスメの7日間」インタビュー

当初と違う展開で、健太先輩のキラキラ感が…

――最終回に向けて、物語を作る上で悩んだことはありますか? 

大河原 「第7、8話はすごく悩んで、本当に時間がかかりました。実はクランクイン前には全然違う7、8話が出来上がっていたんですよ」  

中西 「そうそう。クランクイン直前ぐらいに、『やっぱりこうしてみたいです!』って大河原さんに相談して」  

大河原 「『私たちが2022年に作る“パパムス”は本当にこれでいいのか』と、なんとなく私たちの中で引っかかっていたんです。当初予定していた話も面白く出来上がっていたのですが、それを超えられるものができるんだったら、時間はかかるけどやってみようみたいな。びっくりするぐらい2人で相談して、作家さんにも『一度書いてもらったんですけど、やっぱりこうしたいです』っていうお願いも積み重ねて、今のお話になっています」  

中西 「結果的に、後半はこれまでの長尾さんのキラキラ感が失われるという…(笑)」  

大河原 「第7話の健太先輩は、本当に別人ですよね。全然格好よくなくて、それがある意味、長尾さんがすごいなって思わせる部分。笑っちゃうぐらい別人になっていますからね」  

中西 「健太先輩のあのキラキラ感は、やっぱり頑張って出してくださっていたんだなっていう気づきにもなりました」  

――特に注目してほしいところはありますか? 

大河原 「終盤はかなり忙しい展開になっていて、飽きずに見ていただけるのではないかなと思います。ドラマって、最終回辺りはなんとなく物語をまとめにかかる側面があるじゃないですか。本作は全然そうじゃなくて(笑)、最後まで飽きさせないようにとたくさん話し合いました」 

中西 「いろいろ考えたアイデアもいっぱいあったのですが、放送尺に収まらなくてたくさんカットされてしまっているので、考察とかできるほどうまく作られていないかも。でも、『そうはならないだろ!』みたいな展開も、コメディーだから楽しめると思うので、力を抜いて見てほしいですね」 

大河原 「とにかく“キュン死”してもらうのと、笑ってもらうっていうのが本作のテーマということもあり、普通のラブコメだったら王道にちゃんと壁ドンするところを、あえて失敗させるシーンも狙って作っていて、ちゃんと最後にキュンとさせるための手段だったりします。2回目を見たら、ここはこういう意味あいでこうなってたのかっていう気づきはあるのではないかな」 

中西 「ツッコミどころも満載なので、たくさんツッコんでもらって全然大丈夫です!」  

“パパムス”飯沼愛&長尾謙杜が教室で議論!? 胸キュンシーンは2人が練り上げたもの!――「パパとムスメの7日間」インタビュー

――SNSが一層盛り上がりそうですね!  

大河原 「そうですね。SNSでは、なるべくすべてのメッセージに目を通すようにはしていて、視聴者の皆さんはこんなことを考えながら見てくださっているのかと、勉強になっています。最近だと“キスするのかしないか問題”のツイートがたくさん出てきていて、『へへへ』って思いながら見ています(と、楽しそうにほほ笑む)」  

――視聴者の皆さんが楽しんでくれている様子が伝わりますね。 

中西 「最終回に向けて、個人的にはさらに話題になったらなって願いもあります。同じ深夜ドラマで目指すなら『おっさんずラブ』(テレビ朝日系)みたいな。もともとのファンじゃない人も“なんか話題になってるらしいね”みたいな感じで届いたら、目標達成かなって思っています」  

大河原 「そういえば、この間たまたま電車に乗ってたら、隣の人がスマホで『パパムス』を見てくれていて、すごくうれしかったですね。ゴールデンプライム帯だとよくあることかもしれませんが、深夜のドラマをそうやって見てくれていて感動しました。ものすごくニヤニヤしながら見てくださっていたので、『笑ってくれてるぞ! 次は何が来ますよ〜』って思いながら、リアルな反応を観察させてもらいました。そうやって笑って見てもらえている様子を見ると、少しでも視聴者の皆さんに元気を与えられているのかなと、手応えを感じることができました」 

――では、最後に視聴者の皆さんへメッセージをお願いいたします。  

大河原 「今まで大笑いしてキュンキュンしていたのに、終盤は全く違う展開になります。ストーリーが深くなったと感じていただけるところもあると思うし、ほろりとするシーンもあると思うので、そのあたりも楽しみに見てもらえたらなと思います!」 

“パパムス”飯沼愛&長尾謙杜が教室で議論!? 胸キュンシーンは2人が練り上げたもの!――「パパとムスメの7日間」インタビュー

プロフィール 

中西真央(なかにし まお) 
2016年TBS入社。「書類を男にしただけで」のプロデュースを務めたほか、「最愛」「石子と羽男―そんなコトで訴えます?―」の編成も担当している。


大河原美奈(おおかわら みな) 
2008年TBSスパークル入社。バラエティーのプロデューサーを経て、20年にドラマ映画部へ異動。異動後に携わった作品は「私の家政夫ナギサさん」「着飾る恋には理由があって」など。 

【番組情報】

「パパとムスメの7日間」
TBSほか
火曜 深夜0:58〜1:28(一部地域を除く)
Paraviで全話配信中

取材・文/TBS担当 A・M



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