西島秀俊と“小鳥さん”は「にじみ出る優しさとかすてきさが合致する」――「ユニコーンに乗って」プロデューサーインタビュー2022/09/05
TBS系で放送中の永野芽郁さんが主演を務める火曜ドラマ「ユニコーンに乗って」。本作は「好きな人がいること」(2016年)、「グッド・ドクター」(18年)、「ラジエーションハウス~放射線科の診断レポート~」(19、21年)、「ナイト・ドクター」(21年)などの脚本を手掛けてきた大北はるかさんの完全オリジナルストーリー。
永野さん演じる成川佐奈は、貧しい家庭に育ち、満足な教育環境に身を置けず、学校になじめなかった過去をバネに高卒から独学で勉強し、教育系スタートアップ企業「ドリームポニー」を創設させた雑草魂を持つ若き女性CEO。そんな佐奈のもとに、ある日突然、会社の雰囲気とは全く異なるおじさん会社員・小鳥智志(西島秀俊)が部下として転職してきたことで、仕事に恋に奮闘しながら、夢に向かって真っすぐ生きる主人公たちの成長を描く大人の青春物語です。
最終回を前に、プロデューサーを務める松本友香さんと岩崎愛奈さんにインタビュー。見どころや作品に込めた思い、西島さんを起用した経緯などについてお伺いしました。
――いよいよ最終回を迎えますね。あらためて制作に至るまでの経緯と、作品に込められた思いやメッセージを教えてください。
松本 「今、世界で数多くのユニコーン企業が生まれている中で、日本はまだ新しいことを始めることに抵抗感が強い精神風土なのかなって。また、それがまだ周りに認められていないような風潮があるのかなって。そう考えた時に、新しくチャレンジすることをもっと素直に応援できるような空気が生まれたらいいなと思い、本作の企画を思いつきました。何歳でも新しいことにチャレンジしてもいいですし、自分の立場や状況などに関係なくやりたいって思ったら一歩踏み出しみるとか、勇気を出してみる。そういった前向きな行動によって、何か景色が変わるかもしれない、世の中が一つ変えられるかもしれない。そういった気持ちを応援したいなという思いで作っています」
――制作過程で大変だったことはありますか?
松本 「今の時代のちょっと先のメッセージを投じた方がいいのか、それとも同じラインに立って今の時代ってこういう感じだよねって伝えた方がいいのかという、世の中全体と物語のラインの足並みをどうそろえていくかみたいなところは大変でした。別にアナログを批判したいわけでもないですし、もちろん、デジタル化は進んでいるけれど、それだけではできないこともある。そういった人間格差のバランスみたいなことをどうコントロールしていくべきなのかというところは、やっぱり大変だったなと思います」
岩崎 「今回スタートアップ企業を描く上で、リアリティーさと夢を抱けるようなドリーム感のバランスがとても難しかったなと思います。本作を見て、やっぱり起業することって難しいじゃんって思われるのも寂しいですし、あまりにリアリティーだけを追求し過ぎて描くのも違うなと。もちろん、キラキラしているだけではなくて、そこに努力や苦労や行動力、真っすぐな気持ちとかも必要だということを伝えられたらと思っていたので、そこは佐奈に担ってもらい、取り組む姿勢や言動、仲間との支え合いなど描きつつ、どう視聴者の方へ伝えられるのかという部分はすごく難しかったかなと」
――スタートアップ企業を描かれた狙いがあれば教えてください。
松本 「先ほど、『日本ってまだ新しいことを始めることにすごく抵抗感が強い精神風土』ってお話しましたが、その先の新しいアイデアを世の中に発信していく力とか、新しい技術を大きくする力という点においても、他の先進国に比べて整っていないのかもしれないと感じることがあり…。そう考えた時に、少しでもそういった空気感を変えられたらなという思いでスタートアップ企業をテーマにしました。また、最近海外では、こういった題材のドラマが増えている中で、今こそ日本も、自分がやっていきたいことを形にするという選択肢を増やせるようなお仕事ドラマを作れたらという狙いもありました」
――制作していくにあたり、参考にされていたことはありますか?
松本 「実際にスタートアップ企業を5社ほど見学や取材をさせていただきました。そこで働いていらっしゃる方にいろんな意見を聞いたり、起業する難しさとかやりがいなどをお伺いしたりして、それを物語に取り入れていることはすごく多いです。また、オフィスの作り方や雰囲気なども参考にさせていただいていることも多く、本当にありがたい限りです」
――スタートアップ企業を取材されてみて、最初に抱いていたイメージから変化はありましたか?
松本 「もちろん、最初からスタートアップ企業で働く方やCEOの方たちってすごいバイタリティーを持っているんだろうなとは思っていたんですけど、想像をはるかに超えるバイタリティーを持たれているなと。あと、自分のアイデアでビジネスをして本気でこの世の中を変えられるという信念の強さとか、意志の強さみたいなものを貫き通している感じの格好よさを実際にお会いして感じました。だけど、ファッションやライフスタイルは自由だったり、人間関係もすごくラフだったり! そういう方たちにすごく憧れを抱きましたし、取材に行けば行くほど、私もこういう会社に入りたいな、私も起業できるかも!って思うぐらい感銘を受けました」
――今回、お二人は「私の家政夫ナギサさん」(2020年)以来のタッグですが、好評だった前作から生かしていることがあれば教えてください。
松本 「『火曜ドラマ=キュンキュン』というイメージが強い中で、前作の『私の家政夫ナギサさん』を経て感じたのは、キュンにもさまざまな種類があり、心の癒やしとか心のつながりみたいなものが求められているなと思いました。自分よりも人生経験が豊富な人からもらえる言葉だったり、普通の男女とは違う関係性から得られるものって、心の癒やしとか心のつながりになっていると思っていて、前作を意識しているところはあります」
岩崎 「『ナギサさん』をやっていた時に、世代間のギャップとか『あの世代はこうだから』とか、『若い子たちってこうだよね』みたいなバイアスのかかった考え方が、結構自分たちを窮屈にしているなという発見があったんです。例えば、立場や考え方、生き方も違う2人が出会うことで何かギャップを埋められることができたらいいんじゃないかというのは、今回も共通して思っていたことです。やっぱり何もかも違うからと言って偏見するのではなく、お互いに心を開いてみると、故(ふる)きを温(たず)ねて新しきを知る、反対に新しきを温ねて故きを知るということもあると思いますし、それがお互いを尊重する動きの一歩になったらすてきだなというのは、前作の時から考えていました」
――松本さんのおっしゃる“心の癒やし”という部分を小鳥さんが担っているのかなと思うのですが、今回西島さんを起用された経緯を教えてください。
松本 「西島さんへはもともと格好いいハードな役が似合う方というイメージだったのですが、ここ数年の『きのう何食べた?』(19年/テレビ東京系)などで見たエプロン姿の柔らかい印象とのギャップにやられ、小鳥さんに求めるイメージが、西島さんからにじみ出る優しさとかすてきさに合致するなと確信しました。また、日曜劇場ではなくて、火曜ドラマに出ている姿を純粋に見たいなと思いすぐオファーさせていただきました。西島さんは、現場でいつも台本以上のアイデアを出してくださって、すごく楽しんでお芝居をされている姿がとても刺激になります」
岩崎 「西島さんは、男女問わず世代を超えて愛されている俳優さんだなと。今回そういった世代間の考え方やギャップの違いを軽々超えていけるような作品を作っていけたらなと思っていたので、もし西島さんにそういう象徴の小鳥さんを担っていただけたら最高になるんじゃないかなという思いでした。実際、本当にすてきな方ですし、一緒に作品を作っているということを楽しんでくださっていて、それに私たちも感化されて、もっとこうしてみたいなというアイデアにつながってきていたので、ありがたかったです」
――ちなみに、採用された西島さんのアイデアがあれば教えてください。
松本 「杉野遥亮さんと前原滉さんが電動キックボードに乗って出勤してくる役なんですけど、それを撮影していた時に西島さんがその撮影を見られていて、『小鳥さんも若い人たちの会社で働いて成長していく中で、彼らに影響されて電動キックボードに乗るようになるのも面白いかもね』ってお話しをされていて、自分も乗りたいなとおっしゃっていたので、第9話で西島さんが電動キックボードに乗っているシーンを作りました」
――貴重なお話をありがとうございました! 最後に最終回を楽しみにしている視聴者の方へ向けてメッセージをお願いします。
松本 「最終回も、仕事に恋に背中をそっと押しくれるような内容になっています。大人の青春物語のゴールを楽しんでもらえたらなと思います」
岩崎 「最後まで希望あふれる物語になっていると思うので、そこを楽しみに見ていただきたいです。私たちもこのドラマに愛着を持って、彼らの幸せとか結末をとてもワクワクしながら台本作っていました。彼らの進化や未来は、どこまでも続いていくんだという希望を感じて最後まで見ていただけたらうれしいです」
――ありがとうございました!
【番組情報】
火曜ドラマ「ユニコーンに乗って」
TBS系
火曜 午後10:00~10:57
TBS担当 M・M
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