【創刊60周年記念 平成令和編集長対談④】二つの時代の編集長が見据える、これからの「TVガイド」とは?2022/08/24
8月に「TVガイド」が創刊60周年を迎えたことを記念して、1998~99年に編集長を務めた武内朗と、2019~22年まで編集長を務めた塚本泰介の両編集長が、知られざる「TVガイド」の歴史を語るスペシャル対談。
第1回「TVガイドの変容」(https://www.tvguide.or.jp/feature/feature-1679781/)、第2回「ジャニーズ表紙の歴史」(https://www.tvguide.or.jp/feature/feature-1682204/)、第3回「誌面作りのデジタル化」(https://www.tvguide.or.jp/feature/feature-1705584/)に続き、最終回となる第4回は「これからのテレビ、これからの『TVガイド』」をテーマに語ります。
思い出に残っている表紙
塚本 「思い出に残っている表紙ってありますか?」
武内 「ジャニーズJr.のジーンズに上半身裸の表紙は象徴的だったかもね(1998年8月7日号)。タッキー(滝沢秀明)を中心に、嵐結成前の松本(潤)くん、相葉(雅紀)くん、二宮(和也)くんと生田斗真くんの5人で。編集部としても、ある種の冒険なんですよ。創刊記念号だったんだよね。特別な号だから上半身裸でやらせてください、って事務所にお願いをしに行ったわけだから。それまではそういうアプローチで考えたことなかったと思う。今じゃ普通になったけど、結構そういうものの走りだと思うよ。みんないい笑顔だし(笑)」
塚本 「その後、僕が編集部員の頃もジャニーズの上半身裸の表紙をやっていた号が続いていましたね」
武内 「『TVガイド』のグラビアをどのように進化させるかということを、その時々の編集部が考えていったんだと思うな。存在感をどう示していくかという。世の中に対しても、事務所やタレントさんに対しても“頑張っていくんだ”というところがあったんだろうな」
塚本 「僕の中では、最近の号の木村拓哉さんの表紙が印象に残ってますね(2022年4月22日号)。裏表紙に『コムドット』っていうYouTuberを掲載したんです。昔からずっとテレビに出続けている木村さんの裏側に、YouTubeという新しいメディアで人気を集めているコムドットがいて、今、テレビとYouTubeという二つのメディアがぶつかっているところを象徴してるのかなと思ったりもしたんですよね」
武内 「その話は、すごくシンボリックでいいと思うな。ただその一方で、今でもそこにいるのは木村さんなんだなっていうのは一つあるかもしれない。それは、木村さんがいかにすごいかということでもあるんだけど、ブレークしてかれこれ30年近く経っているのに、いまだに日本を代表するテレビスターといえば“木村拓哉”なんだ、というね。そこらへんが今のテレビにとって一番シンボリックなことなのかもしれないね」
塚本 「(明石家)さんまさんやタモリさんとかが、今でもトップにいるっていうのと同じですね」
武内 「そうだね。タモリさん、さんまさんは40年以上、ダウンタウンにしても30年でしょう? それに代わる人が出てきていないのは、彼らの偉大さの証明であると同時に、テレビ側の怠慢なのかもしれないね。コムドットとか、芽はあるんだから、そこにもう少し目を向けててもよかったかもしれないね」
塚本 「そうですね。今、そういったYouTuberを含めた新しい芽を起用する番組が段々と増えていっているようにも思うので、期待したいですね」
これからの「TVガイド」
武内 「ただね、ダウンタウンやウッチャンナンチャンが出てきた時の圧倒的な新鮮さというか、面白さ、パワーみたいなもの? そういう大きなムーブメントみたいなものが、その後のテレビ界にあったかというと、どうだったんだろうと思うよね。それは今でもそうで、YouTubeなどのメディア自体は浸透したけれど、そのクリエーティビティーがどこまで広がっているかというと、まだ難しいかもしれない。若者からお年寄りまで、社会全体に影響を与える力があるかどうかはまだ答えが出ていないと思うな。逆に、今の若い才能に感じるものはある?」
塚本 「どうなんですかね。いるにはいるんでしょうけど、国民的スターみたいにはならずに、分散していますよね。各世代ごとにいて、みんなが認知している人というのはあまり見ないかもしれないですね」
武内 「『TVガイド』ブランドの持つ一つの価値として、“テレビを楽しく見るお手伝いをする”ということがあると思うの。ジャニーズなどのグラビアとかとは別にもう一つ、そういう柱を持っておくというのは、大事なことだと思うんだ。それが60年やってる価値でもあるから。どの番組を見たらいいのかということと、どういうふうに見たらその番組が楽しく見られるのかということを伝える、というね」
塚本 「『TV“ガイド”』ですもんね。テレビの見方をガイドしないといけないですね」
武内 「『サッカーマガジン』が『サッカー』に詳しいのは当たり前でしょ? 同じように『TVガイド』は『テレビ』に詳しくて当たり前なんだよ。じゃあ『テレビ』に詳しいとはどういうことか、ということをテーゼとして考えていくと、これからの『TVガイド』がまた面白くなっていくと思う。それは、今と昔では違うから。Netflixとかをどう扱うかとか。いつでも面白いものを探しているという視点が大事だよね」
塚本 「そうですね。そうやって、この先の『TVガイド』がより面白いものになっていければと思いますね」
【プロフィール】
武内朗(たけうち あきら)
1986年入社。「TVガイド」編集部に90年に配属。その後、「TV Bros.」編集長などを経て、98年に「TVガイド」編集長に(~99年)。
塚本泰介(つかもと たいすけ)
2003年入社。「TVガイド」編集部に05年に配属され、その後、「月刊TVガイド」など他媒体の編集部を経て、19年に「TVガイド」の編集長に(~22年4月)。
撮影/蓮尾美智子
関連記事
- 【創刊60周年記念 平成令和編集長対談①】それぞれの時代で「TVガイド」を編集してきた2人が誌面の変容を語る!
- 【創刊60周年記念 平成令和編集長対談②】二つの時代の「TVガイド」の編集長が見てきたジャニーズ表紙の歴史
- 【創刊60周年記念 平成令和編集長対談③】インターネットの登場で「TVガイド」の誌面作りはどう変わったか?
- テレビを見続けてきたコラムニスト&大学教授&雑誌編集者の座談会「平成令和てれび談議」が配信中!
- 「テレビとCMで見る平成・令和ヒストリー展2022」にTVガイド創刊60周年記念コーナーが登場!
- 史上初! ジャニーズ12グループが「TVガイド創刊60周年記念特大号」の表紙に。木村拓哉のSPグラビアも
- あの日、あの時── 日本のテレビは、何を映してきたのか? 常にテレビと共に歩んできた「TVガイド」の59年にわたる番組表をひもとき、その時代を振り返る
この記事をシェアする