羽生結弦「これからも戦い抜く姿を応援してください」 新たなステージへと向かう“決意表明会見”をリポート!2022/07/21
2014年ソチ五輪、18年平昌五輪で連覇を達成したフィギュアスケーターの羽生結弦選手が、7月19日、都内で記者会見を開き、プロスケーターへの転向を発表しました。
多くの報道陣が集まる中、スーツ姿で登場した羽生選手は、まず自身の言葉で今後の活動について説明しました。
「これまでたくさんの応援のおかげで、僕はここまで頑張ってこられました。そして、ここにいてくださっているメディアの方々、カメラマンの方々も含めて、本当にたくさん応援していただきました。そういった皆さんの応援の力の中で、羽生結弦としてフィギュアスケートを全うできることが本当に幸せです。まだまだ未熟な自分ですけれども、プロのアスリートとしてスケートを続けていくことを決意いたしました。…本当に緊張しています(苦笑)。こんなしがない自分なので、言葉遣いが悪かったりかんだりしても許してください。これから競技者としてほかのスケーターと比べ続けられることはなくなりました。これからは自分のことを認めつつ、また、自分の弱さと過去の自分と戦い続けながらこれから滑っていきたいと思っています。そして、4回転半ジャンプ(4回転アクセル)にもより一層取り組んで、皆さんの前で成功させることを強く考えながら、これからも頑張っていきます。どうか、戦い続ける姿をこれからも応援していただけたらうれしいです」
「そして、1人の人間として自分の心を大切にし、守っていくという選択をしていきたいと思います。僕がこれまで努力してきたことが応援してくださる方々に評価していただいたり、見てもらえたり、そこで何かを感じていただけたり…そんなことが本当に幸せです。その幸せも大切にしていきたいなと思っています。いろいろな選択をしていく中で『失望したな』とか『もう見たくないな』と思われてしまうととても悲しいですけれど、それでも『自分(羽生)のスケートがやっぱり見たいな、見る価値があるな』と思っていただけるように、これからももっともっと頑張っていきますので応援していただけたらうれしいです。これまでどんな時でも応援してくださったたくさんの方々…、今回の会見でも『緊張するだろうけど、応援してるよ』とコメントを寄せてくださって、僕はいつも救われています。本当にありがとうございました。最後になりますが、羽生結弦として、イチ人間として、ここまで育ててくださった幼稚園、小学校、中学校、高校、大学のいろいろな先生方、フィギュアスケートを教えてくださった先生方、本当にありがとうございました。また、自分のことを大切にしてくれた人たち、本当に本当にありがとうございました。僕は、自分の口から(会見で)決意を言いたいなと思っていたので、事前に大切な人たちに(決意を)言うことはできなかったんですけれど、それでも何も言わずに自分のことを大切にしてくれて、そういう大切な方々をこれからも大切にしていきたいなと思いました。僕なんかのことを大切にしてくださり、ありがとうございました。これからもより一層頑張っていきます。まだスケートを生で見たことがない方も含めて、『見て良かったな』『絶対に見る価値があるな』とか、そういうふうに思っていただけるように、これからもさらに頑張っていきます。そして、4回転半ジャンプを含めて挑戦を続け、これからさらに高いステージに行けるように頑張っていきます。これからは、プロのアスリートとして、スポーツであるフィギュアスケートを大切にしながら、加えて羽生結弦の理想を追い求めながら頑張っていきます。どうか、これからも戦い抜く姿を応援してください」
支えてくれたすべての人々へ感謝を伝えた羽生選手。そして「自分で考えてきたことだけでは話せないことがいっぱいあるので、どうかいっぱい質問してください」と質疑応答へ。印象的だったコメントを紹介します。
――競技者として勝負の場から離れる決断に寂しさはありますか?
「寂しさは全然ないです。この会見の案内文を考えていた時に『今後の活動に関して』みたいなことを書いていただいたんですけれど、自分の中で『なんかそうじゃないな』と。もっと決意に満ちあふれたものですし、もっともっと希望に満ちあふれたものだと自分の中で思っていたので、むしろ自分としては『これからも期待してやってください』と胸を張って言えるという気持ちでいます。これからさらに頑張っていきたいなと思いますし、もっともっと試合という限られた場所だけではなく、もっといろいろな方法で自分のスケートを見ていただく機会があるかなというふうに思っていますし、作っていきたいなと考えているので、ぜひ楽しみにしていただきたいなと思います」
――羽生選手は五輪に3度出場されて、二つの金メダルを獲得され、多くの国民に夢や希望を与えました。あらためて、羽生選手にとって五輪はどういうものなのでしょうか。
「自分にとって2連覇できたことは、今の自分の立場だったり、こうやって発言をさせていただく場所だったり、そういうものを作ってくれた大切なものだと思います。それプラス、やはり北京五輪で…もちろん挑戦が成功したわけではないのですけれど、それでも自分が夢を追い続けた、頑張り続けられた…ある意味、それを証明できた場所でもあったと思います。そういう中で皆さんがその姿を見てくださり、『格好いいな』『応援したくなるな』とか、『自分も何か前に進もう』と思っていただけるような機会になったことが何よりもうれしいなと思っています。一つずつ五輪に対して意味づけをしてしまうと長くなってしまうのですが、僕にとっては“自分が生きている証し”で、“皆さんとともに歩み続けた証し”でもあり、これから頑張っていくための土台でもあるかなと思います」
――今後は競技会には出ないということでしょうか? また、この決断に至った経緯を教えてください。
「競技会に出るつもりはありません。僕がこれまでやってきた中で、競技会、結果ということに対して取るべきことは取れたかなというふうに思ってます。そこに対する評価を求めなくなってしまったのかなという気持ちもあります。(決断をするにあたり)揺れ動いたりはもちろんありましたが、そもそも平昌五輪の時点で『もう引退しよう』と思っていて…引退という言葉はあまり好きじゃないので使いたくないのですが…。僕が16、17歳ぐらいの時のインタビューで『2連覇したらどうするんですか?』と言われた時、『そこからがスタートです』と本当に自分の心の中から言える時期があって。今は本当にそういう気持ちでいます。自分の中では平昌五輪からプロのアスリートとしてスタートするのだと思っていたのですが、4回転半だったり、四大陸選手権など金メダルを取れていない試合があったので、それを取りたいと思って続けました。4回転半にこだわり続けた結果、北京五輪まで続いたのですが、今はもう『競技会で降りなくても(成功させなくても)いいじゃん』と思ってしまっています。これからさらに自分が努力したい方法だったり、自分が理想としているフィギュアスケートの形であったり、そういったものを追い求めることは競技会じゃなくてもできる、むしろ競技会じゃない方が皆さんに見ていただけるんじゃないかなと思い、決断しました。これからもよりアスリートらしく頑張っていきたいと思います」
――競技者として貫けたと思うこと、そして、これからも貫いていきたいことを教えてください。
「常に挑戦し続けることは、これからも続けていきたいと思います。線引きがとても難しいなと思っているのですが、競技者としてのアスリートなのか、プロとしてのアスリートなのかという点に関しては、すごく線引きが曖昧で。僕がここで『プロになりました』と言ったら、そういう世界なので『そう』としか言えないところがあるんですけど、でも、僕の気持ちとしてはそんなに大きく変わったつもりはないんです。とにかくこれからも常に夢、目標に向かって努力していきたいなと思いますし、あとはより自分の発言や行動に責任を持って、アスリートとしての活動を全うしていきたいという気持ちでいます。もちろん、4回転半ジャンプも成功させて、それを皆さんと共有できたり、皆さんの前で成功させられたりしたらいいなということを強く思っています」
――今後の活動について、どんなプランがありますか?
「自分の中で考えている、ちょっと話し合ったぐらいの段階でしかないんですけれども、いろいろと進めようとしていることはあります。まだまだ自分の頭の中の構想を伝えただけなので、実現できるか分からないですし、具体的に言うのははばかられるので、申し訳ありません。ただ、競技者としてやってきた時は、試合前の露出や試合での演技などに限られてきましたが、もっともっと今の時代にあったスケートの見せ方であったり、スケートを見たことない方々も含めて『これだったら見たいかもな』と思えるようなショーであったり、応援してくださる方々が納得できるよう場所や演技だったり、そういったものを続けていきたいなと。期間など具体的に言うことはまだちょっと難しいのですけれど、ぜひ期待してほしいなと思っています」
――プロのアスリートとして今後の人生の優先事項を三つ挙げるとしたら何でしょうか?
「三つ…(悩んで)、そうですね『成功させられる努力をすること』が自分にとって一番上の優先事項です。4回転半の成功も含め、“自分自身が目標としている演技たち”をしていくにあたって、過去の自分よりもうまくなったと言ってもらえるような、理想としている演技ができるように努力をしていきたい。それが自分にとって、第一優先です。あと二つ…難しいな…。これは“プロになったから”ではないかもしれないんですけど、『人間として美しくありたい』と思っています。言葉で全部を表現するのは難しいんですけど、明日の自分が今の自分を見たとして、 ちゃんと『昨日の自分、頑張ったな』と思ってもらえるような自分を大切にしていきたいと思いますし、胸を張って生きられる生き方をしていきたいなと思っています。そして三つ目は…難しいですね。そうですね、『常に勉強し続ける』ということを三つ目に挙げたいなと思います。フィギュアスケートの競技というところから抜けて、新たなステージ、一歩高いところに上がっていくというふうに自分の中では位置付けているのですが、『これからもずっと勉強していきたいな』と思っています。最近は『ダンスをうまくなりたいな』と学んでいたり。あとは力学や運動工学、人間工学だったり…またはパフォーマンスをどういうふうに見られるのか、どういうふうに評価されるのかとか。そういったことも含めて、これからもどんどん勉強して、どんどん深い人間になっていきたいなと。常に勉強し続けられる、アップデートし続けられる人になりたいと思います」
そして、羽生選手の新たな出発を祝い、所属先のANA(全日本空輸株式会社)より、花束が贈呈されました。
フォトセッションタイムでは、報道陣からポーズのリクエストが。サービス精神満点の羽生選手は「何がいいですか?」と悩みながらも、自身のプログラム「SEIMEI」のポーズなどをばっちり決めてくれました。
最後に、羽生選手は支えてくれるファンへメッセージを。
「あらためまして、応援していただき、本当にありがとうございます。『ました』ではなく『ます』にさせてください。これからも応援していただけるように、ただ演技を楽しむだけでなく、応援していただけるようこれからも戦い続けます。これからも羽生結弦らしく全力でスケートをやっていきますし、全力で努力を続け、全力で結果を求めていきたいなと思っています。どうかこれからも応援してやってください。長い時間、こんな自分の会見に参加していただき、見ていただき、撮っていただき、注目していただき、本当にありがとうございました。これからもよろしくお願いします」
会見終了後、深々と頭を下げ、会場を後にした羽生選手。これからも大きな夢に向かって、さらに進化を続けていく羽生選手から目が離せません。新たな挑戦を全力で応援しましょう!
【最新雑誌情報】
「TVガイド特別編集 KISS&CRY 氷上の美しき勇者たちVol.44 ファンタジー・オン・アイス2022特集&2021-2022シーズン総括号」
(表紙・巻頭特集/羽生結弦選手)
発売中
https://honto.jp/netstore/pd-book_31729305.html
撮影/麻生えり
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