「2人にできるだけ自由に遊んでもらえる土俵に」新井順子×塚原あゆ子の注目タッグ作品! 「石子と羽男ーそんなコトで訴えます?ー」プロデューサー&監督インタビュー【前編】2022/07/08
TBS系では、7月15日から「石子と羽男―そんなコトで訴えます?―」がスタート。「カフェで充電していたら訴えられた!」「コンビニでお釣りを多く受け取ったら訴えられた!」 など、一見ささいに思えるが、どんな小さなトラブルでもその裏に存在する誰かの“大切な暮らし”。そんなトラブルに向き合うのは、4回司法試験に落ちた崖っぷち東大卒のパラリーガル・石田硝子(有村架純)と司法試験に1回で合格した高卒の弁護士・羽根岡佳男(中村倫也)。正反対のようでどこか似た者同士の2人が、さまざまなトラブルに挑む中で自らのコンプレックスに向き合い、成長していく姿をオリジナル脚本でコミカルに描きます。
本作は、「アンナチュラル」「MIU404」「最愛」など数々のヒットドラマを生み出す新井順子プロデューサーと塚原あゆ子監督のタッグ作品ともあり、放送前から注目を集めています。今回は、初回放送を前に、新井さんと塚原監督のツーショットインタビューを前・後編でお届け。見どころはもちろん、ダブル主演の有村さん&中村さんの起用理由や、現場での様子を語っていただきました!
――まず初めに、発案のきっかけを教えてください!
新井 「以前から弁護士ドラマをやりたいと思っていたのですが、その中でもちょっとコミカルな作品にしたいと思ったのがきっかけです。大きな事件を扱っている弁護士ドラマが多い中、身近な事件を取り扱ったら新しいドラマになるんじゃないかと考えました」
――“身近な事件”というのは作品のキーワードになっていますよね。
新井 「はい。最近、お店で電子機器を充電している人をよく見かけますが、ある時それが罪に問われる場合があるということを知ったんです。それが、身近で『そんなこと訴える?』というような事件を扱うアイデアにつながりました。小さな事件がきっかけで、さまざまな物事が動いていく作品にできたら面白いなと。企画自体は結構前から温めていたのですが、今期やっと放送にこぎつけることができました」
――塚原監督は、弁護士ドラマをやると聞いていかがでしたか?
塚原 「日曜劇場『グッドワイフ』などを担当した時の経験から、法廷セリフが難しいと知っていたので、視聴者に伝わる作品にするために弁護士の言葉から逃げずにやろうと覚悟しました。弁護士らしいキャラクターを作ろうとすると、どうしても言葉が難しくなってしまうんですよね。視聴者に何を言っているんだろうと思われないように、弁護士らしさと分かりやすさの両立に奮闘しているところです」
――出てくる言葉が難しい一方で、コメディー色が強い作品になっているかと思います。これまでの作品と意識して変えようとした演出などはありますか?
塚原 「今ちょうど第1話の編集をしているところなのですが、残念ながら人間そんなに才能があるわけではないので、ふたを開けたら似たり寄ったりになっているかも…と自分では思っています。なのであまり大きな声で『コメディー頑張ってます!』とは言いたくないんです(笑)」
新井 「塚原監督と一緒に手掛けたコメディー作品って何がありましたっけ? 『私 結婚できないんじゃなくて、しないんです』とかかな。本作に限らずですが、特別に決めたり変えたりしていることはありません。作品ごとに色は変わるものですしね」
塚原 「『MIU404』も『アンナチュラル』も少しコメディーが入っているけど、それがメインではないもんね。私の場合は深夜の作品で試していることも多いけど、ゴールデン帯では初めてかも。コメディーという分野はすごく難しいので、限られた才能のある人だけがやっていい分野だと思っています。それで言うと私の演出はコミカル止まりなのかも」
お芝居の中にも、芝居を「する」選択肢と、「しない」選択肢がある
――有村さんと中村さんを起用された理由をあらためてお伺いしたいです!
新井 「有村さんは『中学聖日記』でご一緒して、コミカルな有村さんのお芝居も見たいなと思ったのが大きな理由です。中村さんは、ここ最近だと『この恋あたためますか?』などでも演じていたような格好いい役が多かったのですが、私は『メグたんって魔法つかえるの?』(日本テレビほか)で演じていた、パンツが見えると記憶が飛んでしまう成瀬寛人のような役を演じている中村さんが好きなんです。そういう中村さんを最近見ていなかったので、有村さんとタッグを組んでもらったら面白いかもと思ってオファーしました」
塚原 「有村さんは、表情豊かでコミカルなセリフ回しに自ら乗っかってきてくださるので、今までやってもらった路線とは違う、新しくて表情豊かなキャラクターになっていると思います。中村さんは、こういうキャラクターが初めてというわけではないので、羽男というキャラクターの中で振り幅をつけるようにしています。コミカルな部分だけでなく羽男のバックボーンだったり、何かを抱えている時の表情で、中村さんだからできる幅の広さをお届けできればなと」
新井 「中村さんって芸歴も長くて鍛えられてるから、完璧だしなんでもできちゃうんですけど、その中にも“生っぽさ”があってすてきなんですよね」
塚原 「そうですね。お二人とは、その時感じたことだけを表現するとどうなるのか、というアプローチで“生っぽさ”を狙っていけたらなと思っています。コミカルだけど、グッとくる表情も捉えていきたいなと。お芝居の中にも、芝居を『する』選択肢と、『しない』選択肢があるので、分かりやすく顔に表現しなくても伝わるような演出を行っていきたいです」
――お二人の役への向き合い方は、新井さんと塚原監督から見てどんな感じなのでしょうか?
塚原 「2人とも真摯(しんし)に台本を読み込んで向き合ってくださっています。私は撮影での段取りを固める方ではないのですが、本作ではいつにも増してできるだけ何も言わないようにしています。コメディーは瞬発力が必要なので、段取りを固めすぎるとそれ以上の展開もありませんし、自由にやってもらったところに新たな発見がある気がしていて、それを目指したいんです。ダブル主演でバディものの醍醐味(だいごみ)もそこにあるのかなと。2人にできるだけ自由に遊んでもらえる土俵にしていきたいなと思っています」
――現場での展開が多いんですね!
塚原 「はい。台本はあくまで設計図であって、現場での化学反応を楽しむものなので、『よーい、ドン!』って撮影が始まればあとは2人の世界。一方が間違えれば、間違ったまま事は進んでいきます(笑)」
新井 「よく俳優さんたちがセリフを話している時に、順番がごちゃごちゃになることがあるんです。でも、そうやって口に出るってことはそれが一番自然なので、そういう時は入れ替えてくださいとお伝えしています。そして、2人とも本当に真面目ですよね。あれだけ芸歴が長いのに」
塚原 「そうそう。真面目だけど、コミカルをやるって分かっているから、現場には真面目な顔をして入らないようにしていらっしゃって、本当にプロだなと思います」
新井 「本作はいつにも増してセリフが多いし、長いし難しいんですけど、2人とも絶対覚えてるんです。『なんだっけ?』って言ってるの聞いたことないかも…」
塚原 「絶対現場に台本を持って入らないし、すごいですよね(と、感心を込めたため息まじりに)」
新井 「この前なんか、苦手って言ってた数字のセリフを入れちゃったんですけど、やばいやばいと言いながらもバッチリ決めちゃうんです。どこで息吸ってるんだろうみたいなセリフなのに…。そういうのは現場で見ていてワクワクします!」
――さすがですね…! ちなみに、お二人は昨年の「最愛」の吉高由里子さん、本作の有村さんと、偶然にも再タッグとなる作品が続いていますが、もう一度一緒に作品を作りたくなる人の決め手などはあるのでしょうか?
塚原 「私はすぐにもう一度って思っちゃいます。でも実は、2度目って相当恵まれていないとかなわないんです。一期一会って本当にあるもので、ラッキーなタイミングの人ともう一度ご一緒できてるってだけで、『パート2やりたい!』とか言っていてもそうそうやれません。2度3度ご一緒できる人もいれば、もう一生やれない人もいる。こればかりは神様のタイミングですね」
新井 「私も特別な決め手はありませんね。企画を作って、イメージキャストとして浮かんだ人が『最愛』では吉高さんだったし、本作は有村さんでした。もちろんスケジュールが難しくて断られたら違う人になっていたと思います」
気になる後編は来週公開予定。後編では本作を彩る赤楚衛二さん、おいでやす小田さん、さだまさしさんについてもお伺いしました。ぜひチェックしてみてください!
【プロフィール】
新井順子(あらい じゅんこ)
TBSスパークル所属。ドラマプロデューサーとして活躍。主な担当作に「最愛」「着飾る恋には理由があって」「MIU404」「わたし、定時で帰ります。」「中学聖日記」「アンナチュラル」「リバース」「私結婚できないんじゃなくて、しないんです」「Nのために」「夜行観覧車」などがある。
塚原あゆ子(つかはら あゆこ)
TBSスパークル所属。プロデューサー、ディレクター。主な担当作に「最愛」「着飾る恋には理由があって」「MIU404」「アンナチュラル」、日曜劇場「グランメゾン東京」「グッド・ワイフ」ほか多数。2018年「コーヒーが冷めないうちに」で映画監督デビュー。23年にはSnow Man・目黒蓮が主演を務める「わたしの幸せな結婚」の公開が控えている。
【番組情報】
「石子と羽男ーそんなコトで訴えます?ー」
7月15日スタート
TBS系
金曜 午後10:00〜10:54 初回は午後10:00〜11:09
取材・文/TBS担当 A・M
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