【「白い巨塔」連載】柳葉敏郎・岸本加世子が語る、作品の外でも本当の家族のような「佐々木家」とは?《第3夜》2019/05/24
岡田准一さんが財前五郎役を務める、「テレビ朝日開局60周年記念 5夜連続ドラマスペシャル 山崎豊子 白い巨塔」(テレビ朝日系)が5月22日午後9時から5夜連続で放送中。今回、第3夜からご出演の佐々木家の主人・佐々木庸平役の柳葉敏郎さん、庸平の妻・よし江役の岸本加世子さんに取材を敢行。クライマックスに向けて物語が動きだす今夜、黒く染まっていく「白い巨塔」に佐々木家はどう向き合っていくのか…。佐々木家への愛たっぷりのお二人のインタビューをお楽しみください。
──「白い巨塔」に出演が決まった時の気持ちをお聞かせください。
岸本 「こんなすごい作品に出られるんだなと思いました。ギバちゃん(柳葉さんの愛称)が旦那さん役と聞いて、すごくうれしかったです」
柳葉 「まったく同じ気持ちです。この作品に参加させてもらえるということは、役者として誇りに感じてもいいことだと思うし、カー子(岸本さんの愛称)が相手役と聞いて、断る理由が何もなかったです。気合を入れて参加させてもらいました」
──台本を読んで役どころを見て、最初どんなふうに感じましたか。
岸本 「すごく悲劇的な夫婦なんです。夫役がギバちゃんだったんで、気持ちが入っちゃいました。プロデューサーさんからも、『ギバちゃんだったからすごく頑張っていたね』と言われるくらいに」
柳葉 「あはは(笑)。カー子との芝居に関しては何も不安なことはなかったです。悲惨な家族なんですけれど、そこを重んずるよりも、佐々木家の夫婦と親子が普段幸せであればあるほど、そのあと起きてしまう事故が余計にさみしく感じてしまうんだと思いました。俺は死んでしまう役柄だから、生きている時は幸せいっぱいな家族でいられればそれが一番なのかなという思いで演じていました」
──佐々木家に対する思いはどうやって作っていかれましたか。
柳葉 「僕たちは普通の繊維問屋を営んでいる。普通の家族をどれだけ表現できるかだけを考えていましたね。病院側にしてもその後に開かれる裁判にしても、それ自体が大変なことで重いことだし。お母ちゃんたちはその裁判にずっと立ち会っていたわけだから、その気持ちのつらさを維持することは大変だったかもしれないですよね。だから、佐々木庸平という男が生きている時にはごくごく普通の生活感をみんなで作っていけたらなと思っていました」
岸本 「佐々木家は息子役の向井康二くんと3人家族なんです。1回だけ大阪ロケがあって1泊だったので、その日の撮影終わりにギバちゃんが私と向井くんをご飯に連れて行ってくれたんです」
──そうだったんですね。本当の家族みたいな…。
岸本 「はい、本当に家族と食事みたいな。そこで向井くんに対してギバちゃんが『頑張っていけよ、この世界で大きくなれよ!』ってね、すごく優しく励ましていたんですよ。それを見ていたこっちも感動するくらいで、温かく激励する本当のお父さんのようでした。いい雰囲気だったんです。ギバちゃんは優しいなと思いながら見ていました。劇中ではギバちゃん(演じる庸平)が亡くなった後、ずっと裁判が続くんです。法廷のシーンでは胸にギバちゃんの写真を持っていたり、机に置いて裁判をするんです。悔しくて泣かなきゃいけないシーンで、向井くんが本当にボロボロ泣くんです。『柳葉さんのことを思ったら自然に涙が出てきた』って言うんです。ずっとギバちゃんのことを思って、そして食事をした日の夜のことを思い出して、柳葉さんがもういないんだって思うと泣けてくるんだって言ってました。役作りじゃなくて、本当に自然に向井くんを温かく励ましていたギバちゃんの思いが、そのままドラマに家族愛として反映されたっていう面があってすごく感動しました」
──柳葉さんは本当の息子に話しかけるお気持ちで向井さんにあの言葉を…?
柳葉 「男ですからね。しかも同じ仕事をこれからやっていこうとする夢も希望もある一男子に向かってきっと話したんでしょうね」
岸本 「大阪にいるからお好み焼きやさんに行くかという話をしていたら、ギバちゃんが『ダメだ! 肉だ! 若者には肉を食わしてあげなきゃダメなんだ!』って」
柳葉 「あはは(笑)」
岸本 「私なんかどうでもいいの。若者や息子には肉を食べさせてやりたいって言ってね。本当に優しいの」
──岸本さんからのエピソードで優しさが伝わってきます。
岸本 「佐々木家はこうやって本当の家族のような雰囲気を作っていったんです」
──このエピソードを聞いたからこそ、物語が進んでいくにつれてぐっときますよね。
岸本 「そうなんですよ。家族愛がね、本当にそのままドラマに生かされたというか…」
柳葉 「ものすごくピュアな家族なんですよね。裏のない、純粋な気持ちで毎日過ごしている夫婦と親子なんです。現場でもそんな空気はあったような気はします」
──息子役の向井さんは撮影中どうでしたか。
柳葉 「あの子は真面目なんだよね」
岸本 「そうね」
柳葉 「真剣に受け止めて真剣に考えて、真剣に培ってやっていくタイプなんだと思いますよ」
岸本 「向井くん『滝沢歌舞伎ZERO』に今出ているんです。息子が出ているから見に行ったんです」
──もうまさに本当のお母さんのようですね…。
岸本 「終わった後に楽屋に行ったら、涙ぐんでくれて…」
柳葉 「お~!」
岸本 「また、『お父ちゃんとご飯いこうね』って約束したんです」
柳葉 「そうなの。あはは、楽しみだなあ」
──さて、佐々木家は第3夜からの出演ですが、現場の雰囲気ってどうでしたか。
柳葉 「別に気にならなかったよね。佐々木家は佐々木家の家庭で始まっているので。さまざまな問題が起きるのは周りで起こっていくから…」
岸本 「初日の撮影の時に、お父ちゃんを診察にむりやり連れて行くシーンがあったです、そこに、岡田准一さん扮する財前(五郎)先生の総回診に出くわすんですよ。その時に『うわ~! 白い巨塔だ!』と思いました(笑)」
柳葉 「そう思ったな! 今までの作品を見てるし、それはものすごく感じたな。『白い巨塔』の世界に入ってきたんだなって」
──お二人から見て、欲望にまみれた財前を演じた岡田さんと患者一番の里見(脩二)を演じた松山さんの印象はいかがでしたか。
岸本 「私たちは第3夜からなので、その時にはお二人ともしっかり役に入り込んでらっしゃいましたね。すごいオーラでしたよ」
柳葉 「2人ともね、ストイックでした。すんなり本番に入らずにちょっとでも引っかかったことに関して、ちゃんと監督としっかり話をしている姿を見させてもらいました。それぞれが抱く役に対しての思いの強さをしっかり感じさせてもらいました。だからこそ、佐々木家は普通の親子でいこうと思わされましたね」
──普通を普通に演じることはすごく難しいのではと思っているのですが、普通と感じさせるような家族にみせるために工夫したことはありますか。
柳葉 「なんだろうな」
岸本 「生活感かな。私たちのところしか生活感を出せるシーンがないので」
柳葉 「確かにね~」
岸本 「あとはみんな病院とかのシーンだからね」
柳葉 「基本的には設定が佐々木家に関しては難しい設定はないので、そのままやっていたら普通になれていったと思うんですよね。普通を作ろうとしなくても」
岸本 「でも、ギバちゃんだからこそ、すっとすぐに普通の家族になれたというのは大きいですね」
──今回、向井さんからお話が聞けないことが残念なくらい、温かいエピソードに胸いっぱいなのですが、「白い巨塔」では影となる部分も多くありますよね。
岸本 「権力争いだったり、人間の醜さや欲望が色濃く描かれているドラマなんですよね。だから、この家族はその中で純粋で温かい、どこにでもある家庭。そこに悲劇が起こるから、余計悲しくなっていく。そこも見ている人たちにも感じ取っていただきたいなと思っています」
──柳葉さん、岸本さんありがとうございました。第3夜の放送が今から楽しみです!
【プロフィール】
柳葉敏郎(やなぎば としろう)
1961年1月3日生まれ。秋田県大仙市出身。18歳の頃に日本テレビのオーディション番組「スター誕生!」へ応募したが落選し、司会の萩本欽一から「バンザイ、無しよ!」の洗礼を受ける。これがきっかけで上京し劇団ひまわりに入団。その後劇男一世風靡に入団し、その中から結成された「一世風靡セピア」のメンバーとして歌手デビューを果たす。88年以降は多くのトレンディードラマに出演。97年から放送された「踊る大捜査線」シリーズ(フジテレビ系)で室井慎次役を演じた。
岸本加世子(きしもと かよこ)
1960年12月29日生まれ。静岡県島田市出身。77年にTBS系列で放送された「ムー」でデビュー。90年代以降は、北野武監督作品で複雑な個性を持つキャラクターを演じているほか、小説やエッセーなどの執筆活動も行っている。
【番組情報】
「テレビ朝日開局60周年記念 5夜連続ドラマスペシャル 山崎豊子 白い巨塔」
テレビ朝日系
5月24日 午後9:00~10:24
※25、26日は9:00~11:10
テレビ朝日担当 Y・O
撮影/尾崎篤志
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