ドラマスペシャル「不協和音 炎の刑事 VS 氷の検事」“氷の検事”中村倫也──“青”に秘めたる信念2020/03/11
田中圭と中村倫也が生き別れた兄弟役を演じるドラマスペシャル「不協和音 炎の刑事 VS 氷の検事」(テレビ朝日系)。冷静で時に冷徹にも見える検事の弟・唐沢真佐人役を演じる中村に、現場での兄・川上祐介を演じる田中との関係性や役作りのこだわり、印象的だったシーンを聞いた。
■圭くんは、暴投しても拾いに行ってくれる“兄貴”みたいな存在です(笑)
「圭くんとは今まで何回か共演させていただいているんですが、“芝居をし合う”ことはほとんどなかったので、ガッツリ仕事したいと思う先輩の1人でした。そんな中で、今回兄弟役をやらせていただくことになり、しかもちょっと訳ありで、お互い抱えるものがありつつタッグを組んで事件に挑む物語だったので、すごくうれしかったです。圭くんも現場で言ってくれていたんですけど、“こういう役柄や台本だから”ということだけで芝居をせずに、相手の空気感を含めたいろんな要素で化学反応が生まれるので、そういった部分を大切に、楽しみながら演じました。圭くんは何をやってもどっしりと受け止めてくれる人なので、何をやっても成立する感じがあるんですよ。安心して球を投げられるし、暴投してもちゃんと拾いに行ってくれる“兄貴”みたいな存在です(笑)。その安心感や懐の深さは、やっぱり圭くんならではなんだろうな、とすごく思います。“実はちょっとシャイなところもあるのかな”というところが垣間見えたのも楽しかったです。フランクにコミュニケーションができる一番楽な距離感で共演できたので本当によかったです」
「僕が演じる真佐人は、情熱を内に秘めているタイプですが、僕自身はどうですかね…。自分では“熱い”と思っているんですけど、学生時代からそれがどうも表に出ないタイプらしくて、仕事を始めた頃は特にやる気がないように見えて、周りからよく指摘されていました。“いや、誰よりもやる気はあるつもりなんだけどな…”というのが悩みの一つだったりするんですが(笑)。熱くなるのはやっぱり仕事のことですね。最近思うんですが、細かいディテールに結構こだわりたいタイプで“伝わらなくてもいいからやりたい”という気持ちがあるんですよ。作品を作る上でも“もっとこうできるな、こうしたいな、ああしたいな…”というように、いろんなことを常に考えています。それから、ベストな状況でなくてもベターなものは何なのかということをずっと探しているところはありますね」
「真佐人は眼鏡をかけていますが、眼鏡をかける役の時は、衣装合わせで最初に手に取った眼鏡に決まることが多いんですよ。ただ、今回は、真佐人の人間的な部分と、外から見える部分のイメージにギャップがあればあるほど面白いなと思っていたので、“見た目はクールな感じだけど話し出したら違う一面も見える”という状況を作ることを意識しました。それで、振り幅を持たせる意味で今回の眼鏡をチョイスしたんです。“あの眼鏡を選ぶアイツが面白いな”って感じられるように…(笑)。だって、ああいうスクエアのフレームが薄い眼鏡をかける人って最近なかなかいないですよね。実は相当こだわって眼鏡屋であの眼鏡を選んで、『これください』って言っているアイツを思い浮かべると、ちょっとクスッとできる、っていう…。髪形も、毎朝丁寧に自分でやってるのかな、みたいな(笑)。いつも役作りをする時には、そういう演じる役の裏の事情を想像できる遊びをするのが結構好きですね」
「物語の序盤で21年ぶりに真佐人が祐介と再会するシーンがあるんですが、僕の中で、真佐人は祐介がいるのを知っていて現れたけど、祐介が弟だと気付いてくれなくて距離感が測れなくなった、という設定を自分で作ったんです。ちょっと寂し気というか、“この関係、どうなるんだ”と探っている微妙な一瞬を表現して、それまでの真佐人の人物像が垣間見えるように演じました。それから、特に印象的だったのは、中盤に祐介と真佐人が積年のものをぶつけ合うシーンで、台本を読んだ時からすごく楽しみでした。結構長回しで撮ったんですが、すごく手応えを感じられたシーンでしたね。真佐人は普段硬派でセリフの口調がラフなノリじゃないので、そのシーンではあえてどう演じるか、ということもテーマの一つでしたし、“冷酷”というキャラクター性の強い役ですが、特にそのシーンでは、それとは裏腹な弟としての不確かな“何か”が出せたらいいなと思いました。21年ぶりに会った兄貴に対する距離感の測り方に悩んでいる気持ちや照れといった感情が、ポロッと出ちゃうけど引っ込めるという“押し引き”をすごく考えて演じましたね。圭くんとの掛け合いを特に大切にした時間でした」
「真佐人は21年の間、自白強要で冤罪(えんざい)を生んだ刑事である親父のことも含め、どんなことを考えて、どんな選択をしてきたのか…そういったバックボーンをいろいろ考えて現場に行っていたのですが、そこは作品を見る人が想像する余地を残すべきだと思っているので、ぜひ自由に、“真佐人がどんな女性と付き合ってきたのかな”など考えて見ていただければと思います(笑)。祐介と真佐人は、最初、対立していることもあって言葉数が多いんですが、クライマックスに向けてだんだん減っていき、本当に少ない言葉数で会話が成立していくので、兄弟っぽく見えてくる気がします。どのシーンも、どの芝居も、どのセリフも、どの目線も…見てくださる方の想像が膨らむようなものになればいいなと思って演じたので、ぜひ楽しんでいただけたらうれしいです」
■田中圭 VS 中村倫也 これなら勝てると思う対決は?
「動物クイズ。圭くんも含め、人類の7割に勝てると思います(笑)。寝る前に動物のことを調べるのが日課なんです。動物とか生き物のサイトがあって、それを眺めて、そこから興味を持った生物の分布や進化の過程や生息や生態などの情報を収集しています。かわいいとかカッコいいとか、そういうライトな感じでは見ていないので(笑)、生物学的なクイズ限定でお願いしたいです」
【プロフィール】
中村倫也(なかむら ともや)
1986年12月24日東京都生まれ。やぎ座。A型。 4月スタートのドラマ「美食探偵明智五郎」(日本テレビ系)と5月15日公開の映画「水曜日が消えた」、6月より上演の舞台「ケンジトシ」で主演。映画「騙し絵の牙」が6月19日、「サイレント・トーキョー」が12月公開。
【番組情報】
ドラマスペシャル「不協和音 炎の刑事 VS 氷の検事」
テレビ朝日系
3月15日 午後9:00~11:05
刑事だった父が自白強要で冤罪(えんざい)を生んだことが引き金となり、父の死後、幼くして生き別れた兄弟が、譲れない信念をぶつけ合いながら真相を解明していく極上のミステリー。新米刑事の祐介(田中)は、妻殺しの被疑者と目される城崎(岡部たかし)を取り調べることに。勾留期限が迫る中、一緒に取り調べをした警部補の小寺(杉本哲太)が自白を取るが、その後、担当検事が倒れ、城崎が黙秘に転じてしまう。焦った祐介は捜査を続行するが、城崎は不起訴に。しかも、その判断を下した後任検事が、生き別れた弟・真佐人(中村)だと知り、がく然。すぐさま真佐人の元へ押しかけるも、冷たく一蹴されてしまう。かくして21年ぶりの再会は最悪のものと思われたが…。
取材・文/四戸咲子 撮影/小林ばく
ヘア&メーク/松田陵 スタイリング/戸倉祥仁
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