男性ブランコが語る、同期との大阪時代「外出たら全然通用しないよって言われてるみたいで」【ロングインタビュー後編】2022/02/25
「キングオブコント2021」準優勝の男性ブランコ。インタビュー後編では、浦井のりひろさん、平井まさあきさんのお二人に、葛藤の日々の思いや、同期とのエピソードを語ってもらった。(前編はこちら:https://www.tvguide.or.jp/feature/feature-1397812/)
「自分が作るようなものは、お客さんを集めるのは無理なんだ」
――2021年は「キングオブコント」や「M-1グランプリ」で結果がついてきたと感じる1年だったのではないかと思います。お二人の中で、何か変化があったのでしょうか。
平井 「去年、『キングオブコントだけを目指そう』って意思を固めたんですよね。『キングオブコント』で全然結果を出せなくて、2020年には2回目の準決勝までいけたけど…」
浦井 「決勝には進めなくて。ただ、『キングオブコント』って本当に積み上げなんですよ。次の年に向けて、印象を残していくことが大事で。だから一昨年に準決勝までいけたから、次の年はまぁまぁチャンスがあるんじゃないかって」
平井 「でも一方で、もう『キングオブコント』で名を知ってもらうのは難しいんじゃないかという思いもありました。だったら『いい単独ライブをやってお客さんを集められるようになろう』って考えたりもして、それで去年結構たくさん単独ライブをやったけど、全然お客さんが集まらなくて。なんなら減っていってるくらいの体感で…。『無理なのか…』って。自分が作るようなものは、お客さんを集めるのは無理なんだと。それならもう、真っすぐ『キングオブコント』に照準を合わせて頑張るしかないと思ったんです。運良くいいネタが2個できて、その2個をむちゃくちゃブラッシュアップしていきました。明確に目標を『キングオブコント』に定めたのが、結果につながったのかなと思います」
――「M-1グランプリ」において、芸人さんが「M-1用の漫才がある」「M-1の戦い方がある」とおっしゃっているのをよく耳にします。「キングオブコント」も、やっぱり違いますか? 賞レース用のコントというか…。
浦井 「うん、違いますね」
平井 「全然違いますね。それもそれぞれのコンビごとに違うというか。例えば去年の僕らでいうと、ほとんど無名の状態で決勝にいったんです。無名のやつが最初に見せるネタとしてふさわしいコントって、絶対あるんですよね。無名のやつらがむちゃくちゃ長いフリをしてたら、たぶん見てられないんですよ。見てられないというか、不安になっちゃうんです。『何が起きるんだろう?』っていうワクワクじゃなくて、『この子ら、大丈夫?』ってなっちゃって、笑う雰囲気にならないんです」
――それはお客さんが、ですか? それとも審査員?
平井 「お客さんが、ですね。審査員の人に目掛けてというのは難しいと思うので、基本お客さんに向けてでいいと思うんです」
浦井 「うん。そう思います」
平井 「だから、無名のやつがやってても、グッと引き込むというか、見てもらえるようにしないとなということだけは意識していました」
――それで1本目に選んだのが、「ボトルメール」でした。
平井 「『何が起こるんだ?』って多少は思ってもらえるネタなんじゃないかなって。これが、もっと名が知れてきたら戦い方は全然違ってくるんですよね。多少フリが長かろうが、『この人たち面白いから安心して見れるわ』ってなるんですよ。ただ、そうなるとハードルが上がるので、今度はそのハードルを越えないといけないっていう難しさが出てくる。たぶん無名の方がアドバンテージはあったと思います」
――決勝で披露した2本、あの2本に決めるのは即決でしたか? それとも悩みましたか?
浦井 「1本目はもうあれでいこうと。2本目は最初は別のネタがあったんですけど、いろんなライブでやっていくうちに違うなってなって、あのネタになりました」
平井 「しかも結構変えたしな~。準決勝からもめっちゃ変えたんですよ。ギリギリのギリギリまで修正して。それくらいやらないとと思ったし、1本のネタでも、まだまだやれることはあるなと思いましたね」
――今年の目標に「キングオブコント優勝」と掲げていらっしゃいますが、既に考えていることはありますか?
平井 「とにかく単独ライブですね」
浦井 「はい。毎月単独をやって、たくさんネタを作ろうと」
平井 「『キングオブコント』で優勝するために、毎月やろうとしています」
コントは「競うものじゃないという考えがどうしても根底にあるんです」
――少し話が逸れて申し訳ないのですが、以前「『R-1グランプリ2022』やります会見」の際に、男性ブランコさんと同期のZAZYさんに取材をさせていただいたんです(https://www.tvguide.or.jp/feature/feature-1254611/)。
浦井 「ZAZY!」
平井 「ZAZYは大阪でね、ずっと一緒で」
――お二人が「キングオブコント優勝!」と言葉にするのと同じように、ZAZYさんも力強く「R-1絶対優勝」とおっしゃっていて。その後「賞レースで戦い続けることは、苦しいですか…?」と聞くと、「ちょっと楽しいですね」とニヤッと笑っていて、さすがだなと思いました。
平井 「いやいや、うそですよ!」
浦井 「強がってます。いつも歯食いしばってますから」
平井 「ホンマ、泣き言しか聞いたことないですから」
――平井さんは、一時期ZAZYさんと一緒に住んでいたんですよね?
平井 「そうなんですよ。ZAZY、『うわぁ~~~~~!!』って言ってました(笑)」
浦井 「絶対もうやりたくないはず(笑)」
平井 「でもそれが僕は格好いいと思います。『楽しいですね』『絶対優勝します』って言えるのは、ZAZYのいいところだと思います。自分を追い込んでるというか」
――「M-1グランプリ」や「R-1グランプリ」と違って、「キングオブコント」は芸歴に制限がないですが…。
平井 「そうですね。優勝するまではやめられない(笑)」
浦井 「やめるにやめられない(笑)」
――ZAZYさんと同じ質問になりますが、お二人は、賞レースに挑戦し続けるのは、楽しいですか…?
浦井・平井 「あー………」
平井 「でも目標があるのはやりがいはあるし、『これちょっといいネタかもしれん』っていうネタができた時はめっちゃ楽しいですね。ただ、競い合うのが…。なんかこう、『これは面白くなくて、これは面白い』って決められるのは心外ですね(笑)」
浦井 「順位がつくのがね」
平井 「こっちが望んでエントリーして『順位つけてください』って出てるのに、『心外です』なんて言われても『知らんがな!』だと思うんですけど、コントに関しては、やっぱり競うものじゃないという考えがどうしても根底にあるんです。漫才は、競技性があると思うんです。センターマイクがあるというルールがあるから。それに対してコントはルールがほぼないんですよ。たくさん音を使ってもいいし、照明を使ってもいいし。なんていうのかな、『バーリトゥード』っていうの?」
浦井 「『総合格闘技』というかね」
平井 「なら体重重いやつが勝つやんってなるけど、コントってそういうわけでもないんですよね。いろんな手段があるし、武器を使ってもいいし」
浦井 「コントこそ、『THE MANZAI』みたいな番組があればいいなって思います。『THE CONTE』みたいな」
平井 「そうそう。こんなにいろんな面白いコントがあるんだよって見せるような、ショーケースだったらいいんですよね。賞レースじゃなくて」
浦井 「(平井さんの方を見て)あっ!!」
――「賞レース」じゃなくて「ショーケース」!
平井 「そう! ショーケースだったらいいんですよ!! もう大丈夫か、今日!(笑)」
浦井 「(平井さんにおじぎしながら)ありがとうございます!」
平井 「(笑)。でも『キングオブコント』で順位をつけてくれることによって、『これが面白いんですよ』っていうハンコを押してくれますから。これがないと、コント師が面白いっていうハンコを押してもらえないので、賞レースは必要です」
浦井 「それはそうだ」
平井 「だからなくなったら困ります」
浦井 「はい。これを足掛かりにしないといけない人たちがいますから」
平井 「これが絶対に必要だと思いますし、僕らも挑戦しますし!」
浦井 「はい」
「劇場では強いんかもしれんけど、外出たら全然通用しないよって言われてるみたいで」
――お二人の同期は「キングオブコント2015」優勝のコロコロチキチキペッパーズさん、「M-1グランプリ2018」優勝の霜降り明星さん、「R-1グランプリ2021」準優勝&「歌ネタ王決定戦2021」優勝のZAZYさんなど、すごく華のある期だなと思うのですが、大阪で一緒にされていた頃はどういう雰囲気でしたか?
浦井 「そういう時、前の世代の方は『ピリピリしてた』って言うことが多いと思うんですけど、僕らはわりと和やかというか。面白いと思ったら、お互いちゃんと面白いって言うし。ライバルとして意識はしてますし、先いかれたら嫌ですけど、仲は良かったと思います」
平井 「切磋琢磨してきた感じかなぁ」
浦井 「『ここ、こうしたら?』みたいなのは普通に言い合ってましたね」
――そんな同期の中で、男性ブランコさんは「天才だ」と言われていたと…。
平井 「いやいや、言われてないですよ。本当にそんなことないですし。たぶんランキングに入るのがちょっと早かったとか、それくらいだと思います」
浦井 「劇場のバトルの成績がわりと良かっただけで」
平井 「それこそ『キングオブコント』も、ほかのテレビのオーディションも1回も引っ掛からなかったですし。だからずっとしんどかったですね。僕らを知ってるお客さんの前でやる劇場では強いんかもしれんけど、外出たら全然通用しないよって言われてるみたいで。井の中の蛙じゃないですけど、つらかったですね…」
浦井 「そうですね…」
平井 「今も仲いい期だとは思いますけどね。ギスギスはしないかな。まぁ、ZAZYくらい…」
浦井 「ZAZYはもう、全員にけんか売ってます」
――その取材の時に、ZAZYさんに「ここぞという時にするゲン担ぎはありますか?」と質問したのですが、「『他人を悪く言う』ですね。『みんな俺よりちょっとおもんないもんな』とか言います。皆さんもやったらいいと思います」とおっしゃっていて、衝撃を受けました。
平井 「良くない!(笑)」
浦井 「良くないって…」
平井 「ゲン担ぎどころかゲン捨ててるって!」
浦井 「ちゃんと嫌われてますからね、そこに関しては。ネタは面白いけど…」
平井 「ホンマにそこらへんがね。不器用なんですよ、あの男は」
浦井 「そうしないともう人とコミュニケーションを取れないんです。人に嫌なことを言うことでしか他者と関われない。悲しいですよね」
――(笑)。ZAZYさんも、お二人も、去年から知名度も一気に上がりましたよね。同期の仲間が上がっていくのは、うれしい気持ちはありますか?
平井 「うれしいとかはないですね」
浦井 「うん。ないですね」
平井 「余計、『自分、何やってんだ』って方に向きますね。悔しいです。僕らの同期って、みんなホンマにいいやつなんですよ。賞レースで結果出してバーンっていったとしても、『今は俺らがいったけど、お前らも順番くるし』って励ましてくれるような、いいやつばっかりなんです。それもめちゃくちゃうれしくて、『頑張ろう』って気力になるんですけど、ZAZYが『お前ら、キングオブコント全然いけてないやんけ』って言ってくるのは、正直気持ちいいなって思うんです。そんなん言われるのは嫌は嫌ですけど、結構ダイレクトに『クッソーーー!!』ってなりますから(笑)。悔しさをエネルギーに変えることができるんです」
――大人になると、真正面から嫌なこと言ってくる人ってあんまりいないですよね。
平井 「そうですよね。この年になって『またいかれへんかったんか』って言われたりすると、『クッソーーー!!』って。でもね、ZAZYは事実を言うんです。言わんでいい事実を」
――悪意はそこになくて、「いけなかった」という事実のみを?
平井 「いや、悪意はあります」
浦井 「そこがね…」
平井 「悪意が乗っかってる事実を言うんです」
浦井 「そこがナダル(コロコロチキチキペッパーズ)との大きな違いです。ナダルは本当に純粋に事実を言うんです。だからそれはまぁ、気持ちいいというか。『なんでそんなこと言うねん!』ってツッコめるんですけど、ZAZYはちょっと悪意を混ぜてくるんです。同じことをZAZYとナダルに言われたとしても、腹立つ度合いが違うんですよ」
平井 「まぁでもそれで悔しいって思えて、『頑張ろう』って思えるんで。そうやって嫌なことばっかり言う時もあるんですけど、僕にとっては一番の友達くらいの存在なので、一緒に飲みにも行きますし、真剣な話もしたりしますし。もちろんけんかもしますけど…。ホンマZAZYくらいちゃうかな、ちゃんとけんかして、仲直りして、飲みに行ったり飯行ったりするの。30代でけんかして、何してんねんって思いますけど(笑)」
――最後に、お二人にとって今年の目標は「キングオブコント優勝」が大きいと思うのですが、今後やってみたい番組などあれば教えてください。
平井 「僕は、男性ブランコでEテレの5分間がほしいです。『ピタゴラスイッチ』じゃないですけど、ワクワクさんの『つくってあそぼ』みたいなことができたら最高ですね。ボケなしで、牛乳パック切って、『できたよ~』って」
――すごく似合いそうです!
平井 「あとは科学の実験とか、生き物の観察とか。マジでEテレに出たいです!」
浦井 「僕はドラマに出たいですね。僕、社会に出たことがないんです。バイトしかしたことがないんですよ。就職したことがないんですけど、それでカッチリしたスーツ着て、社会派のドラマとか出れたらいいなと思います。あとは、眼鏡をかけれる時代の時代劇に出たいですし、テレビ東京の深夜のドラマにも出たいです。グルメ系とか。『孤独のグルメ』とか、憧れます」
平井 「マジで似合いそうやからな、『孤独のグルメ』」
――すごく想像できます(笑)。ナレーションもお上手そうですよね。
浦井 「ナレーションもやりたいなー」
平井 「『孤独のグルメ』の主人公の井之頭五郎さんが歩いてて、後ろから歩いてくるもう一人のサラリーマン役みたいな」
浦井 「荻窪四郎?(笑)」
平井 「浦井が歩いてきたらめちゃくちゃおもろいと思う(笑)」
【プロフィール】
男性ブランコ(だんせいぶらんこ)
浦井のりひろ(1987年12月3日生まれ、京都府京都市伏見区出身)と、平井まさあき(1987年8月1日生まれ、兵庫県豊岡市出身)が別々の演劇サークルで出会い、その後ともに大阪NSC33期生として入学。2011年、コンビ結成。16年より、活動拠点を大阪から東京に。「キングオブコント2021」準優勝、「M-1グランプリ2021」敗者復活戦3位。22年3月20日に東京・ヨシモト∞ホールにて「男性ブランコのコントライブ『変身東京ウミウシ』」、3月24日に大阪・ナレッジシアターにて「男性ブランコのコントライブ『変身大阪ウミウシ』」を開催予定。両公演ともに会場チケットは完売となり、配信チケットがFANYオンラインチケットにて発売中。
【プレゼント】
サイン&メッセージカードを2名様にプレゼント! 何が書いてあるかは当選した方だけが分かる、秘密のスペシャルカードを書いていただきました。たくさんのご応募、お待ちしております!
TVガイドweb公式Twitter @TVGweb (https://twitter.com/TVGweb)をフォローし、下記ツイートをリツイート。
https://twitter.com/TVGweb/status/1497108153879523331
【締切】2022年3月24日(木)正午
取材・文・撮影/宮下毬菜
関連記事
- 上京から6年、「長かった」。男性ブランコが歩んできた道【ロングインタビュー前編】
- 「錦鯉さんの優勝は“ありがた迷惑”」!? 38歳と40歳の実力派コンビ・シシガシラ ロングインタビュー【前編】
- 注目のお笑いコンビ・シシガシラ、千鳥・大悟のまぶしい背中に飛躍誓う【ロングインタビュー後編】
- 「紙芝居で世界を変える」ピン芸人・ZAZYインタビュー「『R-1』で優勝するのは最低条件」
- 単独ライブが反響を呼ぶ実力派コンビ・空気階段のコントは「全部リアル」!?
- 【「でっけぇ風呂場で待ってます」脚本担当の人気コント師インタビュー②】空気階段・水川かたまり☆単独ライブにも生かされたドラマ初脚本での“学び”
- 霜降り明星が明かす、現在地「まだ、知名度足りない」――「オトラクション」ロングインタビュー
- 25周年を迎えた「いないいないばあっ!」ワンワンに特別インタビュー!「レジェンドたちがワンワンのために集まってくれました」
この記事をシェアする