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「鎌倉殿の13人」で主人公・北条義時を演じる小栗旬が、“三谷節”さく裂の脚本で印象に残ったセリフとは?2022/01/08

「鎌倉殿の13人」で主人公・北条義時を演じる小栗旬が、“三谷節”さく裂の脚本で印象に残ったセリフとは?

 小栗旬さん主演で三谷幸喜さんが脚本を担当する大河ドラマ「鎌倉殿の13人」(NHK総合ほか)が、いよいよ1月9日からスタートします! 小栗さんが演じる北条義時は北条政子(小池栄子)の弟で、政子と源頼朝(大泉洋)の結婚をきっかけに運命の歯車が回り始める人物。もともとは野心と無縁だった若者が、御家人たちとのパワーゲームの中で武士の頂点に上り詰めていく様子が描かれていきます。そんな義時を演じる小栗さんに、義時の人物像や三谷脚本の魅力、現場の雰囲気などを伺いました!

――三谷さんの脚本で話題となっていますが、台本を初めて読まれた感想を教えてください!

「脚本を読んだ時に『なるほど、こういう切り口でいくんだな』と感じました。頼朝を推挙して挙兵するまでは、北条家のホームドラマみたいです(笑)。そこは三谷さんらしいユーモアがあって、楽しんで見てもらえるんじゃないでしょうか」

――読んだ時に印象に残ったセリフはありますか?

「大河ドラマや時代劇では『ちょっと』と、絶対に言ってはいけないと思って参加するんですが、三谷さんの脚本には『ちょっと』というセリフが結構出てくるので、言っていいんだと(笑)。頼朝役の大泉さんも『ちょ、ちょ、ちょっといいかな』というセリフがあって『まさかこんなセリフ、大河で言うとは思わなかったな』と言っていましたね(笑)。言葉の縛りが薄いので、面白くできているという面もあると思います」

「鎌倉殿の13人」で主人公・北条義時を演じる小栗旬が、“三谷節”さく裂の脚本で印象に残ったセリフとは?

――今回、演出を担当される吉田照幸さんは、連続テレビ小説「あまちゃん」や「エール」(NHK総合ほか)を手掛けた個性的な監督ですが、吉田さんの印象はいかがですか?

「最高です。『NHKのど自慢』や『サラリーマンNEO』を手掛けていたなど、出自や歩んでこられた道のりが普通の監督とは異なり、今まで出会ってきた監督とちょっと毛色が違うんです。それでいて大河ドラマに参加するのは初めてということで、吉田さんの中でもいろんな迷いや葛藤があるとは思うんですが、『今、こういうことで悩んでるんですけど、小栗さんどうですか』と、それを僕に話してくださるんです。そこはとても信頼できるし、吉田さんが悩んだ末に見つけた演出が腑に落ちることが多いので、一緒にやっていてワクワクしています。三谷さんと吉田さんの掛け合わせが現場でいい方向に向かっていると感じていますね」

――これまでも大河ドラマ「天地人」で石田三成や「西郷どん」で坂本龍馬、「八重の桜」で吉田松陰など名だたる人物を演じていらっしゃいますが、思い出深い役はありますか?

「ありがたいことに、今挙げていただいた三つはとても印象に残っています。松陰先生は、出演話数は少ないんですが、当時の演出の方に『今回の吉田松陰はONE PIECEのルフィーのような感じでやってほしい』と言われて、たこ揚げをしながらダッシュで走るところから始まったのが、非常に印象に残ってます(笑)。長く参加させてもらった石田三成は、長時間かけて彼の人生と向き合ったイメージがありますね」

――そんな中、あらためて今回大河の主役を演じてみていかがでしょうか?

「意外に普段と変わらないのですが、ただ道のりが長いので大変だなと。ほぼ毎日撮影をしているので、不思議な感覚です。もう半年も撮影しているのに、まだ全然ゴールも見えないですし」

「鎌倉殿の13人」で主人公・北条義時を演じる小栗旬が、“三谷節”さく裂の脚本で印象に残ったセリフとは?

――不思議な感覚というのはどんな感覚ですか?

「普段のドラマの撮影は仕事に行っている感覚なんですが、仕事というより生活の一部みたいになってきて『こういうことをライフワークというのかな』と。今回の北条義時は10代から演じていて、日々そのことを考えているから、自分が義時なのか義時が自分なのかよく分からなくなることもありますね。そういう経験は、大河ドラマで主役をやらせてもらっている醍醐味(だいごみ)だと実感しています」

――あらためて北条義時はどんな人物だと捉えていますか?

「これが難しいんですよ。あくまで僕たちが作っている作品の話ですが、もともとは自分の置かれている立場に不満がない青年だったんです。戦に興味がなく、米蔵で米の勘定していることが楽しい男が、平家に虐げられている現状に不満を抱いている兄の宗時(片岡愛之助)らに巻き込まれてしまう。その後、頼朝の横で政治の在り方などを見てきた結果、清濁併せのんだ計算高い人になっていくんです。歴史劇としては非常に面白いのですが、義時を演じている自分としては、真っすぐだった彼が、一族や家族を守るため、徐々にいろんなことに手を染めていくのが悲しい感じもありますね」

――先ほど10代から演じたとおっしゃいましたが、10代を演じるにあたり意識したことや難しかった点はありますか?

「本作では年齢を曖昧にしているので、無理に若々しくはしていないんです。歴史上の義時の年齢と照らし合わせて、だいたい10代前半くらいでスタートしているので、ハツラツとして元気な感じは出しています。11月の今は25歳ごろの撮影をしているのですが、20歳から25歳あたりが義時にとって大きな変化が生まれるところなので、この辺の機微は、逆には難しいですね」

――義時はドロドロの権力争いに巻き込まれていきますが、小栗さんご自身は権力争いについてどのように感じていますか?

「権力争いはいつの時代もあるし、人間だからどうしても避けられない道なのかなと。そういう歴史を経て自分たちがいるので、一概に醜いものとは言えない。今回、自分が演じている義時は、決して権力が欲しかったわけではなく、守らなければいけない人たちを守るために決断せざるを得なくて、果ては権力争いに参加してしまうんです。権力争いの裏で一体どんな苦しみやどんな物語があったのか。本来の心根が見えてくると受け取り方が違ってくるし、その裏側を知ることで、歴史の中の人間ドラマが見えてくるんじゃないかと思っています」

――序盤は義時が周囲に巻き込まれて困惑する様子が描かれますが、後半になるにつれ、義時のダークさが顕著になっていきます。そのあたりの計算も含めて演じられたのでしょうか?

「最初の頃に演出陣と『ジャズのセッションじゃないけれど、突発的に生まれるものを大事にやってみないか』と話をして、先を見越して進めていくのは止めようということになりました。義時たちも先のことは分からず、その日その瞬間に考えて選択してきたわけですから。ちなみに、現在撮影しているあたりでも、義時はひたすら振り回され続けているんですよ(笑)。とにかく振り回されていて、その中で何が自分にできるんだろうとチョイスしているんです。義時自身も気付いていないけれど、回を重ねるごとに、その選択肢がどんどん増えているのは事実で、そこが面白い形になっています。振り回されることに対しては、一つ一つにしっかりリアクションを取っていこうと意識してやっていたかもしれません」

――また、クランクインされて約半年が過ぎましたが、撮影現場の様子はいかがですか?

「約半年間で少しずつ積み上げてきた関係性や信頼によって、現場の雰囲気がどんどん良くなっている感覚はあります。特に北条家の姉・政子役の小池栄子さん、妹・実衣役の宮澤エマさん、兄・宗時役の片岡愛之助さん、父・時政役の坂東彌十郎さんとは、家族としての結束がどんどん強くなっています。父の日に、北条のメンバーで彌十郎さんにワインをプレゼントしたら、彌十郎さんがとても喜んでくれたことは印象に残っていますね」

「鎌倉殿の13人」で主人公・北条義時を演じる小栗旬が、“三谷節”さく裂の脚本で印象に残ったセリフとは?

――兄弟の力関係も少しずつ見えてくるようですね。

「姉上(政子)にはいつも強く言われるんですが、妹の実衣にはすごく強く当たる義時なんていうのも出てきます。『お前、ここにしか強く出られないんだな』って思っちゃいます(笑)。政子を演じる小池栄子さんについては、どしっと構えて受け止めてくれる方なので、姉上とのシーンは面白くて楽しいものに仕上がっていますね。今回の現場は、自分より年齢が上の方が多く、義時が一番若いポジションなので、僕としては自由にやらせてもらってる感じがしています」

――義時は頼朝の第一の側近となるため、頼朝を演じる大泉さんとの共演シーンが多いと思います。共演で刺激を受けている点や印象に残っている場面はありますか?

「シーン自体が面白くなっているのかどうか不安な時には、毎回大泉さんに『これで面白くなってますか?』と確認しています。大泉さんから『いやー、旬ちゃん面白かったよ』と言われたら、『よかった。正しいことをやったんだな』って安心して。印象に残っているのは、義時が頼朝と温泉に入るシーンです。そこで義時は初めて頼朝の思いを聞くという意味でとても印象に残っています。あのシーンがどんなふうに完成して、視聴者の皆さんにどういうふうに見えるのかも気になっています」

「鎌倉殿の13人」で主人公・北条義時を演じる小栗旬が、“三谷節”さく裂の脚本で印象に残ったセリフとは?

――今作は合戦も見どころの一つだと思いますが、義時の見せ場を教えていただけますか?

「最初の挙兵では全然戦えなかった彼が、石橋山の戦いでの敗戦を経て、徐々に戦に慣れていきます。義経(菅田将暉)が登場するあたりからは、義時が毎回戦場に出ているわけじゃないので、たくさん戦ったのは最初の挙兵のあたりぐらいなのですが、それ以降の義時の見せ場としては、先々の源平合戦のシーンで馬の上から走りながら2回弓矢を打つところです。これはずっと練習してきたものを出せたので、見てほしいですね」

――個性あるキャラクターが大勢登場するのも大河ドラマの魅力ですが、小栗さんが気になっているキャラクターや好きなキャラクターはいらっしゃいますか?

「彌十郎さんが演じる北条時政です。出演者の皆さんも『いい役だな』と言っているので、作品においても一番いいキャラクターだと思います。それに、菅田くんが演じる源義経のキャラクターもすてきです。今回の三谷さんの脚本は、散りゆく人々の散り際がものすごく格好よく描かれているんですよね。義時は最後の最後まで去らないので、それはちょっとうらやましいな、いいなと思って見ています」

「鎌倉殿の13人」で主人公・北条義時を演じる小栗旬が、“三谷節”さく裂の脚本で印象に残ったセリフとは?

――最後に、放送を迎える今の心境と見どころをお願いします!

「オンエアを迎えるのは楽しみです。三谷さんらしさ全開の着眼点が面白い鎌倉時代の物語になっています。この時代は陰謀渦巻く世界で、第15話あたりから一気に物語が加速していきます。鎌倉時代が好きな方はもちろん、この時代をあまり知らないという方たちに見ていただいて、この世界観をどういうふうに感じていただけるのかを聞いてみたいですね」

――ありがとうございました!

「鎌倉殿の13人」で主人公・北条義時を演じる小栗旬が、“三谷節”さく裂の脚本で印象に残ったセリフとは?
「鎌倉殿の13人」で主人公・北条義時を演じる小栗旬が、“三谷節”さく裂の脚本で印象に残ったセリフとは?

【プロフィール】

小栗旬(おぐり しゅん)
1982年12月26日、東京生まれ。98年、「GTO」(フジテレビ系)でドラマ初レギュラーに。以降、舞台、映画、ドラマで幅広く活躍。2021年、「日本沈没―希望のひと―」(TBS系)で天海啓示役を好演。大河ドラマには、「八代将軍吉宗」(95年)、「秀吉」(96年)、「葵 徳川三代」(00年)、「義経」(05年)、「天地人」(09年)、「八重の桜」(13年)、「西郷どん」(18年)に出演した。

【番組情報】

大河ドラマ「鎌倉殿の13人」
NHK総合 
日曜 午後8:00~8:45ほか ※1月9日は午後8:00~9:00
NHK BSプレミアム・NHK BS4K 
日曜 午後6:00~6:45 ※1月9日は午後6:00~7:00

取材・文/K・H(NHK担当) ヘア&メーク/渋谷謙太郎(SUNVALLEY) スタイリスト/臼井崇(THYMON Inc.) 衣装協力/ジョルジオ



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